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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
378/429

祝と呪1-王太子の婚儀

 そして、思い出深い島で朝を迎えました。


「兄貴達~! 朝だよ~っ♪」


むくり、むくりと兄達が起きる。


 そっか~♪

 これも、ここからだったんだね~♪


「家賽 片付けちゃうよっ!

ねぇ、起きてってば~!」


「まだ暗いじゃねぇかよぉ」


「ハク兄、婚儀でしょっ」


「朝っぱらから元気だよなぁ」


「若いからね~♪

俺、魔竜王城に行くからね♪

ちゃんと起きてねっ!

アオ兄、家賽 片付け――あれ? アオ兄どこ?」


「隣の小屋だろ」「なんで?」


「サクラが出したんじゃねぇかよ」


「アオ兄を? 俺が? なんで?」


「家賽の小屋をだよっ!」「なんで?」


「寝ボケて術してたのか?」「術? 何の?」


「アオに聞けよなっ!」「ん~、そぉする~」


サクラはアオと話し始めたらしく、静かになった。


「ハク、行くぞ」「ん? ああ」

キンはハクの肩に手を当て、曲空した。



「見に行く~♪」ぴょんぴょこ出て行った。


『ヒスイが二人!? えっ!?

こっちアメシス様なのっ!?

アオ兄、ちゃんと教えてよぉ!!』


「ホントにサクラは寝たまま術してたんだな……」


「クロ兄様、それは後にしましょう。

リリスも中の城に居るのですよね?」


「そっか。迎えに行かねぇとな。

アカ――いねぇな。小屋どーすんだ?」


「まだサクラもアオ兄様も居ますから、このままでよいのではありませんか?」


クロとフジも曲空した。



――中の城。


「黒之介様♪ 藤之丞様♪

本日はお日柄も良く、真に目出度き――」


「志乃! 船の刻じゃと何度申せば出立出来るのじゃっ!?」


「只今っ! お待ちあれっ!」パタパタパタッ。


「クロ、来ておったのか♪

リリス♪ フジが来ておるぞ♪」「はい♪」


見事な錦で、その身を包んだリリスが現れた。


「人としての正装じゃ。

これでもよいのじゃろ?」「ああ、勿論だ」


「フジは如何じゃ?」


「お~い、フジ。どうした?」肩をポンッ。


「え? ……あ、あまりに綺麗で……」


「見惚れてたんだな?♪」ニヤニヤ。


「リリス、とても素敵です」にこっ。


「聞こえておらぬよぅじゃぞ」


「だな。もうオレ達なんか見えてねぇよな。

二人は ほっといて、姫も着替えろよ」


「父上と志乃を船まで送ったらの」


「志乃さん、どこに消えたんだ?」


「さぁのぅ……」


「ひとまず殿を運ぶか――って、殿もどこだ?」


「うぬぬ~、勝手に来ればよいのじゃっ!」


「そりゃムリだろ」


「姫様ぁ、あ♪ クロ様も♪

おはようございますぅ」


「おっ♪ ミズチ、久方ぶりじゃのぅ♪

その箱を持って来てくれたのじゃな♪」


「船の方には、箱で移動すると伝えておりますぅ」にこにこ♪


「家老、流石シッカリしてるなっ♪」


鏡を立て掛けた。

「出口は控え室でございますよ♪」


「うむ♪ 確かに流石じゃ♪

では、クロ。ここは任せて参ろぅぞ♪」


「フジ――は、行っちまったな。ん、行こっ♪」


手に手を取って弾みながら着替えに行った。




♯♯ 赤虎工房 ♯♯


「アカ兄、ワカナさん、ありがと♪

じゃ、また後でね~♪」曲空♪


「行ったか?」着替えて出て来た。


「あ……」


「どうした?」


「なっ、なんにもっ!」あわあわわっ!


 王子様に『王子様だ~』って思っちゃったぁ!

 当たり前だし、初めて見るのでもないのにぃ!


「ワカナ様、お召し替えを」「はいっ!」




♯♯ 魔竜王城 ♯♯


「ラン~♪」「あ♪ サクラ♪」


「新しい外套留めだよ♪」


「まあっ♪ 両国の紋章が♪」


「赤虎作なんだ♪」「素敵っ♪ 綺麗ね~♪」


きゃっきゃしながら扉の前へ。


ひと呼吸。


王と女王になって廊下に出た。




♯♯ 赤虎工房 ♯♯


「ん……」曲空する、と手を差し出す。


「あの……変じゃない? 私――」


「……綺麗だ……」ボソッ。


「え?」手を取られ――



――王子と婚約者達に囲まれた。


(自信を持て。ワカナが一番だ)


(あ……アカ……)


照れて目を合わせない二人は、手を繋いだままだった。



♯♯♯



「あれ? ルリ姉、そっちの顔なの?」


「こちらの顔で婚約したからな」にこっ。


「ホントの顔の方が美人さんなのにね~」


「それは俺だけの宝物だからね」「アオ!」


「術技『偽装』はお教え頂いたから、御両親には時々見せるかな」にこにこ♪


「あ、ありがと……」


「俺、ランとこ行く~」退散。



♯♯♯



 天竜王城での王太子達の婚儀は荘厳華麗に、続く魔竜王城での虹紲大臣就任式は粛々と滞りなく進み、終了した。



(クロ、アカ、結界を確かめよう)


三人、王都上空に曲空した。


(ふむ……念のため補強する)詠唱開始。


クロが供与し、アオも光の結界を成した。


(祠からの結界も、前回より強くなったな)


(祠が完成したからね)


(これなら明日の祝列も大丈夫だろう)


(釈迦様と弥勒様もいらしてくださるんだよ)


(流石、抜かり無いな)(ありがと)


(戻るぞ)(うん)二人、曲空。


(二人だけで話すなよ!

終わったら終わったって言えーっ!)


(あ、忘れてた……)


(ひっでぇなぁ。笑うなっアカ!)



 クロがアオとアカを追いかけて控え室に曲空すると、王太子と妃まで来ていた。


「何で王太子まで、ここに居るんだよ」


「お前らだって各々の部屋にゃ行かねぇじゃねぇかよっ」にこにこ♪


「ハク兄、顔ゆるゆる~♪」きゃははっ♪


「お前らもだよっ」へらへらへら~♪


「で、アオ。夜中の――どこ行くんだよ?」


「執務。急ぎだけ片付けて、すぐ戻るよ」



「ボタン様、ミカン様、素敵でした~」

「あら? リリス様、お着替えになったの?」

「静香様も……綺麗なお着物でしたのに」

「この後、踊らねばならぬと……のぅリリス」

「はい♪ それだけは楽しみなんです♪」

「あぁぁぁ緊張してしまいますぅぅぅ」

「ワカナ殿、大丈夫じゃ。楽しめばよいのじゃ」



「楽しそうだよな……」


「そうですね。

リリスも……人であっても受け入れて頂けて、本当に良かったです」


「だよな。姫なんてイッチバン偉そうだしなっ」


「確かに……」ははは……。


「にしても、スッゲー威厳放ってた虹藍女王様が、にこにこ座ってんだよな。

ああしてるとカワイイ女の子だよな~。

サクラ王もだけど、別人ハンパねぇよな」


「だって~、大変なんだも~ん。

アレ、めーーーーいっぱいなんだからねっ」


「ですから、婚儀を早めたのですね?」


「うん♪ ちゃんと支えたいからねっ♪

あ♪ ランに呼ばれた~♪」


「次はサクラの婚儀なのですね……」


「中身はシッカリ大人だと、護竜杖に言われたよ」


「私も護竜甲殿に……ハク兄様からも」


「フジも早く結婚したいんじゃねぇのか?」


「確かに……ですが、平和にする方が先だと思っています」


「そっか……だよなっ。

あと少しだ。頑張ろうなっ!」「はいっ!」



「あ……サクラ王が、お茶淹れてる……」





桜「アオ兄♪ 俺も『偽装』使いたい~♪」


青「うん、いいよ」掌を翳し、光を放つ。


桜「あ♪ ここがチョイ違ってたんだ~♪」


青「サクラ、偽装を知っていたの?」


桜「うん。でも間違いあった~」


青「その本、訂正しないとね」


桜「そぉだね~。

  俺ね、大学と修練、アンズだったんだ。

  偽装したかったのに、できなくて~、

  仕方なく蒼月煌してたんだ」


青「苦労させてしまったね……」


桜「でもね♪ 今と~っても役に立ってるから

  とってもと~~っても嬉し~の♪」


青「やっぱりサクラには感謝しかないな。

  ずっと支えてくれて、先導してくれて

  ありがとう」


桜「いっしょにいたいだけだからぁ」やぁん。


青「うん。これからも一緒に、ね」


桜「うんっ♪♪ アオ兄だぁい好きっ♪♪」


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