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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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仏陀族6-釈迦と弥勒

 禍山を浄化し、自らを封じた人神を救出すべく、

アオ達は魔法円を禍山に運ぼうとしています。


(フジ兄、山の内側 浄化したいんだ。

魔法円を運ぶ道を作らなきゃならないから。

クロ兄の神以鏡に掌を当てて、水薬 放ってね。


クロ兄、神眼で狙うトコ示してね。


アオ兄、ルリ姉、掌握で水薬 持ってくよ。

クロ兄の神眼に合わせてね。


具現環(グゲンカン)が要だからね、お願いね。

じゃ、せ~のっ!)


兄弟は山の麓に降り立っていた。


大神達が、宙で無の牆壁を支え、薬を混ぜた神聖光輝の放水が始まった。


中のものが静かになっていく。


金虎に連れられ、アカが来た。


(アカ兄、掌握で助けて~)


(ふむ……こうか?)


(楽になった~♪)


(……そうか)


ロサイトが少し離れた場所に魔法円を描いた。


(次は、あの魔法円を運んで、山の中心に合わせて置くよ。


アカ、サクラ、クロに触れたままでね。


クロ、神眼で山の中心と、水平を示してね。


始めるよ。

外周の外に四点 示してくださっているから、そこを掌握で掴んでね。

サクラ、ルリ、遠い側だよ。


持ち上げて……そのまま進んで……水平にね。

あとは中心を――)


突然、中のものが激しく暴れ、掌握も魔法円も弾かれ消えた。


(あと少しだったのに~)


(もう一度、浄化から――)


更に激しく暴れ、囲んでいた大神達をも弾き飛ばした。


(強いね……)


(でも、魔法円を置かないと――)


【アオ、サクラ、ちょっと来い】

二人はコバルトに連れられ、少し離れた。


【さっきの聖霊王に会おう。

『見せたいもの』とやら、先に見るべきだと、俺の勘が言っている】


(そうですね。そうすべき、と)

(うん。俺のカンも言ってる~)


(では、この鏡から――)(そのコだぁれ?)


(魔王作の通路鏡だよ。異空間経由だからね)


(名前は?)(まだだけど……何?)

(あとで付けていい?)(お願いね)(うんっ♪)


 アオは音の国のクレフ王を呼んだ。


『では、その鏡に手を差し込んでください』


言われた通りにすると、アオは鏡に引き込まれた。


サクラとコバルトも鏡の内に引き込まれ、三人は光に引かれ、異空間を導かれて行った。


【ようこそ、おいでくださいました】

クレフが微笑んだ。


【先程の闇のものと繋がりが有るのですね?

早速ですが移動します】



 一瞬で景色が変わった。


【あちらです】上方を指す。


 岩肌のような、牆壁のような――表現し難く、そこに在るのか否かすら定かでない不思議な『壁』が、遥か上方へと続いていた。

横方向にも、何処まで続いているのか、果ては見えなかった。


【壁のように見えるのは、時空の歪みです。

動かすどころか、触れる事も出来ません】


上に導かれる。


【こちらに……御覧頂けますか?】


目を凝らすと、壁の内側に仏の顔が見えた。


【この壁の内に、実際にいらっしゃるのか、他の場所にいらっしゃるのが、こちらに見えているのか……それすら分かりません。

私共の力では、お目覚め頂く事も出来ないのです】


コバルトは仏の顔を見詰め、暫く考えていたが、


不意にアオとサクラに掌を翳し、

【この曲を奏でてみてくれ】

そう言って、仏に光を当て、唱術を始めた。


アオとサクラは笛を奏で始めた。


(俺、この曲……知ってる……)


(サクラも? 俺も……指が覚えているよ)


(あ……そっか……子守唄だよ。

アオ兄がよく吹いてくれてた!)


(俺が?)


(うん♪ ヒスイとスミレと……小さい頃、三人でよく聞いてた曲だよ♪)


(そ……う……)


(……覚えてないの?)


(その頃は抜殻だったからね……)


(覚えて、ないんだ……)


話しているうちに、仏は顔だけでなく、上半身が見えるようになっていた。


【そのまま繰り返し、奏で続けてくれ】(はい)


次第に、仏の姿が明瞭になり――


瞼が微かに動いた。


【人神様、聞こえますか?】


開眼する。


【人神様、俺が見えますか?】


【はい。竜の神様】穏やかに微笑んだ。


ゆっくり見回し、

【目覚めさせてくださったのですね。

ありがとうございます。

どうやら動く力も頂けたようですね。

では――】


座して合掌し、目を閉じると――


射した後光に押し出されるように、アオ達の方へと移動した。


大きく息をつき、目を開ける。

【私は釈迦(シャカ)

闇の神に、この身の自由を奪われ、閉ざされておりました。


貴殿方に残る、この気は弥勒(ミロク)ですね。

ご迷惑をお掛けしている様子。

早速、参りましょう】


「クレフ様、ありがとうございました。

また機を改めまして、今度は奏でる為に参ります」


【聖霊王クレフ様。

お導き、ありがとうございました】合掌。


【いえ、私は大したことなど何も……。

では、神様方、お急ぎください】


クレフは光の窓を開いた。

【この向こうは、入られました鏡です】


四人は次々とくぐった。

『また来させてくださいねっ♪』

振った手が窓の向こうに引っ込んだ。




【これが……弥勒……】


 宙に漂ったままの鏡から出た二人と二神は、牆壁の内で暴れる凶暴な気を、必死で光を放ち、押さえ込もうとしている竜の神々を見た。


「闇の呪に囚われているのです。

弥勒様は仏陀族の方々をお護りする為に、あの牆壁で、闇と共に自らを閉ざしたんです」


「長い間めーいっぱい抵抗してるんです。

早く出してあげたいんです!」


【はい。有り難き御言葉……。

私も力を尽くします】


「あの闇に囚われていた聖霊の記憶です。

この中に、呪の弱点が有ると思うんです」


アオは釈迦の掌に、己が掌を合わせた。


【弥勒ならば……そうですね……】目を閉じる。


「闇の呪を浄化したいのです。

弥勒様の動きを封じる事は出来ますか?」


【見えました】目を開く。【お任せください】


釈迦は座し、受ける掌に光を集め、もう一方の掌から山に向けて放った。


【無属性の……光、か……】


牆壁の内が静かになっていく。


(寝ちまった……)


(人神様って凄いね~)


(なら、今度こそだね)


(兄貴達、もっかい魔法円 持ってくよ!)


(放水は続けていましたので、すぐ運べますよ)


(ありがと♪ フジ兄♪ アカ兄♪)


(オレは?)(うん♪ クロ兄も♪)



 ロサイトが描き直した魔法円を、四人の掌握で山の中心に配し、大神達は解呪を唱え始めた。


【アオ、サクラ、コバルトまで何をボサッとしているのだ?】


慌てて加わる。


大神達が放つ光で無の牆壁の内が満ち、闇が掻き消え――


唱術が終わった時、山の内側から迸った輝きで、呪の気配も無となった。


(闇も呪も消えたぞ。

中にいるのは人神様だけだっ♪)


クロの声で、大神達は光の放出を止めた。


【弥勒……無事ですか?】


【……はい……しかし、私は――】


(湖にお逃げになられた仏陀族の方々を護り抜いたんです。

皆様がお待ちです。

その牆壁を解除してください)


【しかし――】


(真上の島も浄化しなければなりません。

共に……お願いしてもよろしいでしょうか?)


【貴殿方は……私をそこまで……私は、とても許される身では――】


(戦い終えてお疲れの所、誠に申し訳ございません。

ですが、弥勒様の強き御力でなければ浄化が叶いませんので、どうか宜しくお願い致します)


【弥勒……竜の神々は、貴方の力を必要としております。

私と共に参りましょう】


釈迦は牆壁に歩み寄り、掌を当てた。


牆壁に込めた神の光が輝きを増す。


【優しい光……竜の神様は、どこまでもお優しいのですね】


【その優しさに応えましょう。

さあ、弥勒、解いてください】


【……はい……釈迦様……】


牆壁が消え、神の光が煌めき昇った。


光の中から、弥勒が姿を現した。


【無事で良かった……では、参りましょう】

釈迦が弥勒の手を取り、人界へと昇った。





 蓮蛇は琉蛇の様子が気になり、爽蛇を訪ねる事を

愛蛇に伝えておこうと帰宅した。


「愛、琉蛇さんと話したのですか?」

来客が有ったらしい居間を見て尋ねた。


「うん……勝手に、ごめんなさい。

 あまりにも落ち込んでたから……」


「私が言い過ぎたのですね……」


「何を言ったのか、想像できるけど……

 たぶん、蓮さんじゃないわ。

 爽蛇兄さんにも聞いてしまったみたいなの。

 それで……」


「そうですか……」


「爽蛇兄さんは、どうして琉ちゃんの気持ちを

 見ないフリするのかしら……?」


「もしも、風蛇が元に戻れたなら……

 身を挺した風蛇の気持ちを確かめるまでは……

 そう思っているのかもしれませんね。

 年齢的にも風蛇の方が近いのですから」


「そんな……琉ちゃんの気持ちは?」


「風蛇が戻れたなら、どちらを向くのか……

 それは誰にも分かりませんからね」


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