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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
359/429

卵と種1-足踏み

 王太子の婚儀が突然決まり、アオは地下警護の

調整をしなければならなくなりました。


♯♯ 地下魔界 ♯♯


「紫苑さ~ん、珊瑚さ~ん」

「遅くなって、すみません」二人、ぺこり。


「いえ、お気になさらず」二人、にっこり。


「お二人は、兄達の婚儀の件をご存知でしたか?」


「随分前に御招待頂きましたよ」

「こちらの調整が難しいのでしたら、お祖父様にお願いしますけど」


「いえ、御存知でしたら問題ありません。

竜の神様と閻魔様が警護してくださいます」


「そうですか」「それなら安心ですね」


「アオ♪ サクラ♪ ちょっと見てくれっ♪」


「クロ兄……それ……」

「何しているんだい? 恥ずかしくないの?」


「って! アオ兄がルリ姉をお姫さま抱っこして現れた時も、みんな恥ずかしかったんだからねっ!」


「あ……そんな事も有ったかな……」


「お姫さま……」「抱っこ……ですか?」


「それは訳有っての事だから。

それより、クロはそれ……どうしたんだい?」

「姫、だいじょぶ?」


抱き抱えるクロの腕に脇を支えられ、しがみついて俯いていた姫が、バッと後ろを向いた。

「じゃから言ぅたであろ!

やはり、こぅなるではないかっ!!」


「それは、これから工夫するから、なっ?

早く見せて意見を聞こうぜ」「うむぅ~」


「とにかく見ててくれよ」四人に背を向ける。

(これならいいだろ?)(まぁのぅ)(やるぞ!)


 一気に二人の気が高まり――


バウッ!!


――と、風と光が絡まった塊が、煌めきの尾を引いて彼方へと飛び去った。


四人、息を呑む。


「それ……何?」サクラが回り込んだ。


神以鏡(カムイキョウ) 重ねたんだ♪ 凄いねっ!♪

あ♪ そっか♪ 連結竜宝つけてるからだ~♪

こんな使い方もできるんだ~♪」


「なぁ、この光で戦えるか?

工夫や調整が必要なら教えてくれ」


「いや、何も言える事なんて無いよ。

凄いな……こんな短時間で……」


「じゃあ、これで魔王の城に乗り込めるのか?」


「行けるね」

(ホント!?)(きっと、行けば伸びるよ)

(そっか~♪)(――と言うか……)

(どしたの?)(止める方が難しいよ)

(そぉだね~)(クロだからね)


「いつ行くんだ? 明日か?」


「いや……早くても四日後だよ」


「何でだよ?」


「王太子の婚儀が明後日なんだ」


「ええっ!?

何で言ってくれなかったんだよ!!」


「俺達も、さっき聞いたトコなんだもん」


「王太子の婚儀を!?」


「父上が隠していたんだよ。悪戯心でね」


「ひっでぇなぁ。

じゃ、また足踏みかよぉ」「そうなるね」


「ならば、更に磨こぅぞ。

それに……やはりこれは恥ずかしぃぞ」


「そっかぁ?」「恥ずかしぃわっ!!」


「周りが恥ずかしいよね」「アオ兄が言う?」

(だから二度とするな!)(ルリの望みなのに?)

(私は何を言ったのだ?)(教えな~い♪)

(頼むから教えてくれ!)(叶えてあげるから~)


「なぁアオ、三日後は何が有るんだ?」


「婚儀の後、俺達の就任式が有るんだよ。

だから御披露目祝列は、その次の日になるんだ」

(よくそんなにコロコロ変えられるものだな)

(何か言ったかい?)(独り言だ)(ふぅん)


「そっか。

じゃ、ホントに詰めて四日後なんだな」


「だから、もっと練習しよ~♪

それとも勉強する?」


「ふむ、それもアリじゃな♪

乗り込んだ途端、呪に掛かっては何もならぬからのぅ」


「そうだよなぁ」


「じゃ、ここでやる?」


「サクラ、教えてくれるのか?」


「いいよ~」



 サクラがクロの勉強を見、紫苑と珊瑚は自分の城に帰り、アオは姫の修練の相手をしていた。


「そうだ。姫、クロの背から供与を利用して、クロの手に気を込めたら、どうだろう」


「ふむ。そぅじゃな♪

……しかし、今は試せぬな」クロを見ている。


「俺で試してみるかい?

俺の掌から、さっきのが出れば成功だよね」


「よいのか? ルリ殿……」


「修練なのだから気兼ねする必要は無い」

「ルリを主にすれば問題無いよね?」


「然様か。ならば」背に乗る。


「姫様、御存分に」「うむっ!」


ルリが前に出した両掌に、姫の気が込められる。


ルリも神の光と風を込めていく。


「参る! 風神竜牙!!」バシュッ!!


「飛んだのぅ~♪」「成功ですね」


「アオ! 姫! 何やってんだよ!!」

クロが目の前に曲空してきた。


「アオではない。私だ」「ルリさん!?」


「だから心配無用だ。

アオも、そのくらいの気は遣う」

(ルリ、その言い方は無いだろ)(何?)ふふっ♪


「で、さっきのは何だったんだ?」


「姫様には、私の背から、私の掌に気を込めて頂いたのだ」


「じゃからもぅ抱えられずとも放てるぞ♪」


「どうやったんだ?」


「供与を利用したのじゃ♪

アオが教えてくれたのじゃ♪」


「ふぅん。アオがか」「礼を言わぬのか?」

「いいよ、そんなの」「礼儀は大切じゃ!」

「まぁ、ありがとな」「困ったヤツじゃの」


「言ったのに何なんだよ~」


「言い方がなっておらぬ」


「礼を言うべき相手に怒鳴っておいて、よく言うよな」


「およ?」「いいよってアオが言ったんだぞ」


「然様か? アオ」「うん、言ったよ」


「アオが喋ってるって事は、今はアオなのか?」


「いや、話は出来るがアオではない」


「ややこしいヤツらだなっ」


「個紋で判別して頂きたい」


「あ……ホントだ。アオのじゃねぇな」


「俺の個紋、覚えているのか?」


「サスガにアオのは覚えてるよっ!

……描けねぇけどな」


「ご納得頂けましたら、勉強にお戻りください」


「あ、だな。

姫、アオに戻ったら降りろよ」ふんっ。


「クロ兄、サボったから問題 増やすね~♪」


「サクラ、そりゃねぇだろっ」


「ひと~つ、ふた~つ」「えっ!?」曲空!


「じゃ、二問 増し増し~♪」飛んで行った。



「呪が解けても、アレは変わらぬのじゃな」


「あれは呪ではなく、嫉妬ですよ」ふふっ♪


「食えぬ餅など、焼かずともよいのじゃがのぅ。

困ったものじゃ」


「クロが、こんなにも独占欲が強いとは思っていなかったよ。

姫の事となると、他の何も見えなくなるのは問題だね。負の感情だからね……」


「アオは、私が他の誰かの背に乗ったら怒るのか?」


「そんな事、考えた事も無かったよ。

う~ん……時と、場合と、状況に依るかな。

まぁ、戦や仕事には、私情は挟まないだろうけどね」


「ふむ、安心した。私も同感だ」


「その冷静さがクロにも有ればよいのじゃが……

ワラワは信用されておらぬのかのぅ……」


「それは大丈夫だよ。

矛先は、姫には向いていないからね」



♯♯♯



「――って言ってるんだけど~、姫の事、信じてないの?」


「信じてるよ。

ま、確かに一瞬、カッとなったけどな。

ルリさんだと判ったから、それは別に。

ムッとしてたのは、アオが、いつまでもオレに隠そうとしてるからだよ」


「何の事?」


「風だよ。アオも風属性 持ってるんだろ?」


(アオ兄、言ってもいい?)

(ありがとう、サクラ。自分で言うよ)(ん)


「今更、アオとサクラに何が有ろうが、もう驚きもしねぇし、怒りもしねぇよ。

ただ、隠されるのは――」(クロ)(アオか)


(隠し続けようとして、すまなかった。

今の俺には、風も雷も有るんだよ)


(そっか……だろうな。

ありがとな、話してくれて。


何で黙って――いや、それは……オレが呪に掛かってて、おかしかったせいだよな。

あのオレだったら、きっと怒りまくって大騒ぎだ。

アオは、いつも冷静だよな……)


(そんな事は無いよ。

俺が変に気を回してしまったから、誤解させたよね。

呪が解けたから、話そうかと、きっかけを探してはいたんだ。

話せて良かった……

聞いてくれて、ありがとう、クロ)


(なぁ、アオ。

もうひとつ聞いていいか?)


(うん。何?)


(お前、供与も持ってるのか?)


(凄く小さいのなら持っているよ。

それも気づいたのかい?

流石、大きな神眼だね)


(いや、神眼では見てねぇよ。

いつも二人が同じように技を出すから、供与し合ってるのかと思っただけだ)


(あれは融合だよ。

心の中に一緒に居るからこそ出来る技だよ。

俺がサクラの中に居た時は、サクラと融合したんだよ)


(体 取り返した時か?)


(そう。その前にもしてたかもしれないけど、はっきり融合したのは、その時だよ)


(ふぅん、いろいろ有るんだな。

ま、これからは隠すなよ)


(うん、そうするよ)


(で、その話し方なんだが――)


(ああ、これか。

サクラも言っていなかったかい?

長く続けていると癖になるんだよ。

今では、こっちが普通かな)


(そっか)


(うん。それも伝えたくてね)


(ん。わかった。

オレ、ムリさせてたんだな)


(そんな事はないよ。

記憶が無くても、クロには、こう話すんだって身に着いていたんだからね。

それに……あの時は、受け入れてもらえて嬉しかったからね。

ありがとう、クロ)


(恥ずいからヤメてくれよ。

とにかく! フツーにしろっ、フツーになっ)


(うん。そうするよ)くすくす♪





 アオとサクラは、カルサイに王太子の婚儀中の

地下警護を相談した後、魔神界を訪れ、

優鬼と飾鬼にも相談した。

いずれの神からも了解を得た後、二人は魔神界の

結界を確かめ、光を補充した。


桜「結界も だいじょぶだね~♪」


青「クロも、このくらい護れたらいいんだけど」


桜「そぉだね~、前に出ちゃうもんね~」


青「元気が取り柄だからね」


桜「元気で、あっかるいの~♪

  クロ兄って、怒りんぼさんにはなってた

  けどぉ、アレで負に傾いてたんだねぇ」


青「そうだね。分かりにくかったよね。

  きっと本来の明るさが強過ぎて

  負に傾いても自力で戻してしまって

  いたんだろうね」


桜「あるイミ厄介~」にゃはは~


青「キン兄さんやフジなら、すぐに判った

  だろうね」


桜「ハク兄、クロ兄と いっしょ~♪

  アカ兄、たぶん変わらな~い」きゃは♪


青「そうだね」くすくす♪


桜「あれれ?」


青「どうしたの?」


桜「なんか~、違和感?」


瑠(アオ、空間に歪みが在る)

青(うん。俺にも判ったよ)

瑠(襲撃などでは無さそうだな)

青(そうだね。異空間に繋がっている感じ?)

瑠(ふむ。納得だ)


桜「調べる?」


青「布石像(フセキゾウ)を埋めておこう。交替だからね」


桜「じゃ、後で来る~」埋めた。


青「紫苑殿と珊瑚殿の所に」

桜「うんっ♪ せ~のっ♪」曲空♪


 そして今回のお話へ――


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