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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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王太子2-爆弾発言

 ハクって、王太子なのに困ったものです。

いったい、どこまでが振りなんだか……。


♯♯ 天竜王城 コハクの執務室 ♯♯


「ハク兄さん、弟達には堅苦しさを感じさせないように努めるのは構いません。

でも、俺には、その必要は有りませんから普通にしていてください」


「……やっぱ、何でもお見通しなんだな……」


「そのくらいは分かりますよ。

次の案件は真面目に考えてください」


「それなんだが……」「嫌なんですか?」


「嫌ではないんだが……。

俺は幼い頃から『次の王』って立場が大っ嫌いだったから、反抗して王学も政治学も何も勉強してなかったんだ」


「でも、試験には合格しましたよね?」


「ギリギリな。

おそらく……立場上、落とせなかったんだろうな。

今更だが、先生方にも悪かったと思うよ。

だから、本当にどう判断すればいいのかサッパリ分からねぇ。

王に成るとは覚悟キメたが……こんな状態じゃ……」


「なら、一から勉強しますか?」


「教えてくれるのか?」


「もちろんですよ」


「恩に着る! 本っ当に、すまないっ!」


「当面は、ハク兄さんの分の執務は、全て俺がやりますから、ハク兄さんは勉強してください」


「全部……本当にいいのか?」


「この国の将来の為ですから」

そう言って微笑み、曲空し、すぐに本を抱えて戻った。


「ハク兄さんの執務室も整ったそうです。

移動しましょう」


「いつの間に?」


「さっき出た時に、執事長に頼んだんです」




 二人は、コハク王の執務室に持ち込んだ物を抱えて移動した。


「ここ!? 父上の執務室の隣って……」


「はい。来客用の控室だった部屋です」


「声とか聞こえちまわねぇのか?」


「大声を出さなければ大丈夫ですよ。

ちなみに反対側は、キン兄さんの執務室です」


「静かに勉強するよ……」


「では、始めましょう」


「俺の執務は?」「終わりましたよ」「へ?」




♯♯ 地下魔界 ♯♯


「あとは~、ひとつひとつ練習してね~♪

二人で仲良く頑張ってね~♪」

サクラは にこにこと手を振り、曲空した。


「アイツ……わざわざ教えに来てくれたんだな」


「そのよぅじゃな」


「いいヤツだよな」


「クロの兄弟は、皆いいヤツじゃ♪」


「そうだなっ♪ じゃ、練習すっか!」


「おぅよ!」


「あ……鏡 重ねたら、もっと強くなるのかな?」


「ふむ……やってみよぅぞ♪」


「だなっ♪

姫、オレと鏡の間に入って――」「待て!」


「なんだよ?」


「皆と戦う時に、そのよぅな恥ずかしぃ……」


「強くなるなら構わねぇだろ。

とりあえず、重ねて強くなるのか確かめようぜ」


「うむ……せめて竜になってはくれぬか?」


「なんでだよぉ」


「人じゃと余計に恥ずかしゅうて……」


「ま、いいけどな」竜体になる。「入れよ」


姫はクロに すっぽり囲まれ――


「くっつかねぇと落ちるだろっ」


「落ち着かぬわっ!」


「あーっ! もおっ! 展開っ!」

淡い光の鎧が姫を包む。


「……忝ない」鏡を重ねる。


「姫、いくぞっ!」「お、おぅよ」

「気を込めてくれよぉ」「うむ……」

「おい、真剣にやれよ」「真剣じゃが……」


クロは人姿になり、姫をクルッと回して向かい合い、真剣な眼差しを向ける。


姫が恥ずかしさに耐えられず俯く。


「いいかげん慣れろよな。

もうすぐ夫婦になるんだぞ」


ぶっきらぼうな言葉を優しく囁き、姫の顎を掬った。


「クロ……しかし……」(共に戦うんだよな?)


(そぅじゃが……これは……気を込めぬから供与か?)


(違うって。儀式は まだだけど、気持ちだけでも夫婦になりたいんだよ)


(クロ……)


(もう、嫌とは言わせねぇぞ)


(言わぬ)


(なら、いいな? 一緒にだぞ)(うむ)


「よし! じゃ、やるぞっ!」「あいなっ」


「おい、まだ足りねぇのか?」「いや……」


姫はクルッと背を向け「試すのじゃっ!」

鏡の裏に掌を当て、背をクロに預けた。


「よし! 風神竜牙でいくぞっ!」「うむ!」


クロは姫の気を見ながら、合わせて気を高め――

「風神竜牙!!」


光を絡めた激しい気流の渦が、煌めく尾を引き、一瞬で彼方へと飛び去った。


「これは……真、凄まじぃのぅ……」「ああ……」


暫く彼方を見つめていたが、姫が振り返った。

「使えるな♪」「だろっ♪」


喜びが溢れる。


(これでオレも戦える。ありがとう、姫)


(ワラワは何もしておらぬ。

クロが頑張ったのじゃ)


(姫がいるから頑張れるんだよ)


(ワラワもクロが居るから……幸せじゃ♪)


(そっか……だけどな、幸せなら負けねぇぞ)


(ワラワも負けぬ!)(勝つのはオレだって!)

(いいやワラワじゃ)(オレだっつってるだろ)

(ワラワなのじゃっ)(あのなぁ、オレだよ!)


姫が笑いだした。「おい、なんだよぉ」


「一緒に幸せじゃ♪」「あ……そうだなっ♪」




♯♯ 天竜王城 ハクの執務室 ♯♯


「アオ兄、そろそろ交替しなきゃだよ~」


「あ……サクラ……」

「ハク兄さんは、そのまま続けてください」


「俺にも、あんなフリ要らないからね~」


「そういや、だいぶ前にバレてたよな」


「うん♪」


扉が叩かれ、開く。

「皆様、ギン王様が御呼びで御座います」


(俺も?)(一緒に行こう)(うん♪)




 ギンの執務室の扉を開くと――


「サクラも来ていたのか♪」満面の笑顔。


「いちいち喜ばないでよぉ」赤面の困り顔。


「娘が集まるのは、何とも言えず嬉しいな♪」

「息子です!!」五人。


「それで、御用とは?」


「王太子の婚儀をするぞ♪」


「いつですか?」


「明後日だ♪」「えーーーっ!?」一斉。


「驚いてくれたか?」「驚きますよっ!!」


「いくら何でも、そんな急に結婚だなんて……」

「そうですよ。王太子の婚儀ですよ!?」

「こちらの調整も有るんですからね」


「知らなかったのは、お前達だけだ♪

ちゃんと準備は進んでいるから安心しろ♪」


「本人が知らねぇって、どーだよ……」ムッ!


「アオ、地下の調整は頼んだぞ。

アカとクロにも伝えてくれ」返事は ため息。


「キン、ハク、そういう事だから、今から婚約者に会いに行け。

正装で迎えに行くんだぞ。

書面等々手続きは明日だからな」「……はい」


「サクラ、虹藍様には、とっくに、きちんと話して招待している」


「俺、なんにも聞いてな~い」ぶぅ。


「そりゃ当然、知っていると思っているだろうからな」


「ひどぉい~」ぶぅぶぅ!


「午前中、婚儀で、午後は虹紲(コウセツ)大臣の就任式だ」


「それも!?」


「就任式は魔竜王城だよねぇ?」それすら……


「そうだ。こちらには千里眼で映す。

来賓方々には、それを御覧頂くからな。

で、次の日に纏めて御披露目祝列だ♪」


「纏めて……まさか……」


「民にも新しい大臣を知って貰うんだ。

魔竜王国と共に栄える為にな。

盛大に やるぞ~♪」


「俺はルリの立場を確かなものにしてから、と申しましたよね?」


「だが、早く大臣に成りたいのだろう?」


「就任は早い方が嬉しいのですが、祝列は別です!

王太子の成婚祝列と同時など、以ての外です!!」


「しかしなぁ、決まってしまったからなぁ」


「ゴリ押ししたの?」


「いや……それは……」


「そんな纏め方は、目的も不明瞭になりますし、すぐに おやめください」


「む……」


「俺の婚儀と同時なら、費用も二重にはなりませんから、それでお願いします。

母上には、俺から そう伝えますので」





白「なぁ兄貴、俺達マジで結婚すんのかぁ?」


金「何か問題が――ふむ。ハクは有るな……」


白「な、何がだっ!? 問題って何がっ!?」


金「ミカン殿に愛想を尽かされぬよう、

  早急に勉強せねばならぬな」


白「まさかアオから聞いたのかっ!?」


金「何も聞いてはいない。

  聞かずとも明らかだが、アオから王学を

  学ぶのか?」


白「うっ……そうだよ」


金「執務はアオに頼るのだな?」


白「だからっ! 今は勉強するんだよっ!」


金「ふむ。覚悟したのなら、それでいい」


白「やるよ! やるけど……俺でいいのか?

  アオの方が絶対いい――」


金「ハクがいい。前にも言ったが、

  誰がいいとか悪いとかではないが、

  共に王をするのは、ハクがいい」


白「……ありがとう、兄貴。頑張るよ」


金「そうか」ふふっ。



 次回は、王太子の婚儀――にはなりません。

婚儀を描写するつもりも……ないなぁ。


凜「ど~しよ~かな~♪」


白「おいっ! 凜! 俺達の婚儀を――」


凜「アオ~、サボってるよ~」


白「ゲッ……」


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