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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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王太子1-執務って

 深魔界は奪還完了しました。


 真魔界の結界前にアカが新たな結界を成し、その結界に神とアオとサクラが光を込めた。


【これで、あとは鏡を奪えば、魔王は真魔界から出られない】


「あとはクロ兄だね~」


「先行してもらわないと光が使えないからね」


「いつ行くんだ?」


「だからぁ、クロ兄待ちだよぉ」


「魔王が何か画策する暇を与えちまうんじゃねぇのか?」


「でも、今 行っても、光なしでは太刀打ち出来ないんですからね」


「ハク兄は、そんな事より勉強してよぉ」


「頭に入らねぇのも呪のせいなのか?」


「始祖様、如何ですか?」


【そんな事は無い。

何でもかんでも呪のせいにするな。

俺は言動は縛られては いたが、覚える事などには何の支障も無かったぞ】


「そこは元々なんだね~」


「残念そうに見るなよっ!」


「残念そうではなく、残念なんですよ。

ハク兄さん、執務室に行きましょう。

勉強は何も教科書からだけではないんですから」


「フジ! 助けてくれっ!」


「フジに甘えないでください。行きますよ」

アオはハクを掴み、曲空した。



「あの目は容赦なく叩き込むつもりだな」


「そのくらいしなきゃダメでしょ。

俺も帰って執務しよ~♪」曲空。


「帰る。竜綬(リュウジュ)が途中だ」曲空。


「クロの事は神様方と静香殿に任せ、フジは休むように」


「はい……あの、私も城に行ってもよろしいでしょうか?」


「どうした? フジ」


「執務というのを見てみたいのです」


「ふむ。ならば行こう」「はいっ♪」




♯♯ 天竜王城 ギンの執務室 ♯♯


「こちらは父上だけですか。

アオとハクは、どちらに?」


「珍しいな、フジも来たのか(♪)。

今日はコハクが出ているから、二人にはそっちに行って貰った」騒がしくてな。


「そうですか。

でしたら、こちらは静かですね。

フジ、そこに座って、これを読み、思うところをここに書いて欲しい」


「はい。この書き込みはアオ兄様ですね?」


「そうだ。書き込みも全て読んで欲しい」


フジは頷き、静かに読み始めた。




♯♯ コハクの執務室 ♯♯


「アオ~、もっと解り易い案件は無ぇのかよ」


「それが練習には程よい案件です。

ゆっくり読んでください」

淡々と目を通し、書き込んでいく。


「なぁ、アオ」「はい」

「ここを教えて欲しいんだが――」


「どこですか?」


「これ、よ――」「予算ですか?」

「いや、そ――」「総工期でしたら、こちらに」

ササッと紙を捲っていく。


「先に読んでたのか?」


「そうでなければ、程度を判別なんて出来ませんから。あ、ここですよ」


「いや、そうじゃなくて、この言葉が読めなくてな」


「辞書なら引き出しに入っています」ため息。


「何でも、よく知ってんな~♪」睨まれた。


アオは、また机に戻り、静かに作業を続けた。


「で、これの、どこがマズいんだ?」


「何も無ければ練習用になんてしませんよ。

もう一度よく読んでください」




 そして――


「わっかんねーっ!」


「矛盾する箇所が有るんですよ。

そのまま通したら大変な事になりますよ。

けっこう大きな事業なんですから」


「矛盾?」


「まずは項目毎に試算してください」


「どこ行くんだ?」


「この分は、父上とアサギ様に確かめなければなりませんので」出て行った。




♯♯ ギンの執務室 ♯♯


「フジ、どうだ?

その草稿は、アオがこれから提案しようと、私に意見を求めてきたものだ。

先程の議案と合わせて、どう思う?」


キンは、嬉しそうに瞳を輝かせ顔を上げたフジに微笑み、問うた。


「はい。とても嬉しいです!

私も計画段階から参じたいです!」


「父上、如何ですか?」


「フジも加わるなら、より良いものになるだろうな。

お、アオ、丁度いい所に来たな。

この前の件、就任後すぐに議会に掛ける。

フジも参じたいそうだ」にこにこ♪


「フジ、来ていたんだね。

ありがとう。よろしく頼むね」「はい♪」


「アオ、ハクは どうだ?」


「手強いですね」あはは……


「アオ、いっそのこと王太子に――」

「なりませんからっ!」


「なんだか……執務って楽しそうですね♪」


「いや、これは雑談――」

「楽しいか。なら、フジも来い」にっこにこ♪


「はいっ♪」


「父上……俺達、いつまでも この姿ではありませんからね」睨む。


「いいじゃないか。ずっとそのままで――」

「良くありません!!」三人。




♯♯ コハクの執務室 ♯♯


「計算、終わりましたか?」戻った。


「ん、これでいいのか?」「間違ってます」


「どこっ!?」「三箇所」「そんなに!?」



 やりとり数回――


「その結果と書面を比べてください」


「ん~、ここ――」「やっと分かりましたか」

「なんで、こんなの必要なんだ?」「はぁ?」


「それは、また別の問題ですが……場合によっては良い質問ですね。

それで、どうして不要だと思ったんですか?」


「ただ聞いてみただけだ」キッパリ。


「なら、それは後回しで。

計算し直して何か気づきませんでしたか?」


紙と にらめっこ。


「桁をよく見てください」


「あ……」静かに待つ。「高っけ~なコレ」


「桁を間違えている箇所が有るんです!

ここ! それと、ここは工期の日数と合わない!

このまま通せば資金不足で頓挫しますよ。

ですから、この部分を削減するか――」


「そういうのをすぐに見つけるコツって有るのか?」


「まず、鵜呑みにしない事。

計算間違いや見落とし、誤解や知識不足。

提案自体は良い事でも、そういうのが含まれると成功しません」


「だが、専門的に やってる奴が提案するんだろ?

その知識不足を見つけるって……」


「こちらも勉強すれば見つかります。

提案された一件一件を成功に導く為には、判断を下す側も真剣に学ばなければなりません。


否決するなら、相手を納得させなければ遺恨となり、将来への不安を生みます。

ですから、より良い提案で納得させるにしろ、否決理由で納得させるにしろ、それ相応の深い知識が必要となるんです」


ハクが椅子から ずり落ちた。

「ハク兄さん!?」


「脳ミソ沸騰した~~もうダメだぁ~~」


「まだ続きはあります。

ちゃんと座ってください」キッ!




♯♯ 地下魔界 ♯♯


「おおっ♪ 凄いのが出たのぅ♪

クロ、もう一度じゃ!」


「よーし! 見てろよっ♪」


竜巻によって速さと威力を増した光が、神以鏡から煌めきを纏い迸った!


「格好良いぞ♪ クロ♪」


「そっか♪

で、この風技、なんて名だろうな」


「それ、風神竜牙だよ。

クロ兄、自分で見つけたの?」


「お♪ サクラ♪

そうだよ。見つけたんだ♪

なぁ、もっと風技 知らねぇか?」


「知ってるよ。トーゼンでしょ」


「って、サクラは光だろっ」


「でも、光を風に変えたら使えるでしょ。

じゃ、見て覚えてね~♪」


サクラは少し離れて、次々と風技を出した。

「どれがいい?」


「全部 覚えたい!」


「うんっ♪ じゃ、いくよっ! 暴風激放!」

強い風の波動が、物凄い速さで波紋のように拡がった。


「俺の気 見えた?」「見えた!」「うむ!」


「んじゃ、やってみよ~♪」「おうっ!」





青「兄さん、真面目にやる気が無いのなら――」


白「いやっ! やる! やるからっ!」


青「まだ何も言っていませんが?」


白「ロクでもねぇ事になるってだけは

  確定なんだろっ!?」


青「そうでもないと思いますけど。

  そう思うのなら、そうします」


白「え??? いい事なのか?」


青「ロクでもない方向に転換しましたので、

  無駄口叩いてないで早く片付けてください」


白「ゲ……で、何してるんだ?」


青「その案件が終わったら試験します。

  合格するまで何度でもね」


白「鬼だ……」


青「何か? ご質問ですか?」


白「いえ……何も……」


 頑張れアオ、頑張れハク!(笑)


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