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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
356/429

始祖様4-深魔界の西半分

 姫がクロを特訓しているのを見詰めながら、

コバルトとキンが話していると、アオとサクラが現れた。


♯♯ 地下魔界 ♯♯


「二人には休むように言った筈だが?」


「キン兄が流してくれたんでしょっ!」


「確かに、そうだが……」


「始祖様。

始祖様の心を縛っていた呪が、最高神様ですらも見えなかったように、クロにも何らかの呪が掛っていると、俺達は確信したんです」


「ここんとこずっと違和感はあったんです。

でも、神眼でも見えなくて……それに他の呪にもかかるから、確信に至れなかったんです」


「覚醒した為か、さっきクロを見て、やはり何か有ると確信して、サクラと話していたんです」


「そしたら話が流れてきて……だから来ちゃったんですよ」


【二人が確信したのなら、そうなのだろう。

クロ、静香、こちらへ】


クロが姫を乗せて飛んで来た。


【クロ、そこに立っていろ。

静香、クロの鳩尾に両掌を当てろ。


キンはクロの背中だ。


アオ、サクラ、姫を挟んで片掌を静香、もう一方をクロの肩に当て、四人共、神眼を極大発動するんだ】


コバルトは、その周りに魔法円を描き、術を唱えた。


【何か見えたか?】


(始祖様、確かにクロの心は呪に縛られています)


(カルサイ様を呼びますね)


大神達が次々と現れた。

【このまま続けましょう】

カルサイはクロの真後ろに立った。


【キュルリ、クロの頭上に】【はいっ♪】


【チルル、カルル。静香に手を添えて】

【はい!♪】姫の片手ずつに抱きついた。


大神達が魔法円を囲む。

【絆神方々、外を囲んでください】

【王子達も共にお願いします】


(兄貴達、夜中に ごめんね~)

(いいって)(そうですよ)(気にするな)


【では、クロの解呪を始めます】


カルサイとコバルトが唱える声が、穏やかな音色のように流れる。


アオとサクラの翼が光を帯び、光輪の輝きが増していく。


大神達が声を合わせる。


アオとサクラから輝きが迸り、拡がり、地下魔界を一瞬、純白の輝きに変えた。


二人の大翼が羽ばたく度に、クロから微かな闇の靄が立ち昇る。


キュルリを通して放たれた神の光が、その靄を捕らえ、小さな塊に変えた。


大神達が一斉に光を放ち、闇の塊は消滅した。


【解けたな……】ゴルチルが微笑んだ。


「始祖様、急に偉い神様になっちゃったね~♪」


【力は変わっていない筈だが……】


「そぉなの?」カルサイを見る。


カルサイが笑いだした。


【私が見込んだ男は、本来こういう奴だったのだ】

ゴルチルがニヤリとし、コバルトを小突いた。


「ふぅん……凄かったんだ~」


「クロ、大丈夫かい?」「しっかりせよ」


「あ……ああ、なんか……すっごく軽くなった!」

ぴょんぴょんし、腕をブンブン回した。


「もおっ、ビックリするでしょっ!」


「いや~、なんかスッキリしたっ♪

皆様、ありがとうございましたっ!!」


「急に元気じゃのぅ♪」


「姫♪ 心配かけたが、もう大丈夫だ♪」


「然様か♪」にこっ♪ 「おうっ♪」にこっ♪


【まだ二人の世界には行くな】「え?」


【王子達は常日頃、闇に触れまくっている。

おそらくクロ程ではないだろうが、何か残っている筈だ。

アオとサクラは自らの強い光で消してしまっただろうが、あとの四人、順に解呪するぞ】


ゴルチルの言葉で、夜明けまで解呪は続いた。



♯♯♯



「キン兄さん、進むのは明日にしますか?」


「いや、このまま行こう。

クロの力が戦ううちに開くかも知れない」


「そうですね。

紫苑殿、珊瑚殿、こちらをお願い致します」


「お任せください」にっこり。


「では、参りましょう。

神様方、アオとサクラにお入りください」




 ――と、


かなり身構えて踏み込んだが――


(留守ばっかりで拍子抜け~)むぅ。


(もう、こちらは放棄したのでしょうか?)


(完全に籠城かもなっ)


(あれっ? 誰かいる……)


(うん、気配が有るね)


気を消し、姿を消して慎重に近づき――


(神竜さんだ♪)(こっちにも)(いっぱい~♪)


「ね♪ こんな所で何してるの?」姿を現した。


「あぁ……神様、お救いくださるのですか?」


「ねぇ、神様ぁ、呼んでるよ~」「あの……」


【その神竜が言っている神は、お前だろ】


「俺、天竜だもん」【そうは見えぬからな】

「そぉしたのって」【私達だが、何か?】

「開きなおったぁ」【文句が有るのか?】


「えっと、放っておいて。

貴殿方は何故ここに?」


「私共は龍神帝王の影にされておりました」


「何方が元に……?」


「夜中から強い光を何度も浴び、解放されたのです」


「ですが、どうしたら出られるのか分からず、途方に暮れておりました」


「強い光?」「お前らのだろっ!」ペシッ!


「神様に……」「何て事を……」「畏れ多い……」

ざわざわざわ……


「いえ、兄ですから」あはは……。「え……?」


「それより、続きをお願いします」「はい……」


「各砦には、結界を維持する為に影や幹部が配置されておりました。

解放された後、仲間を求め、脱出する(すべ)を求めているうちに集まっていき、ここに隠れていたのです」


「魔王には滅されなかったんですね。

ご無事で何よりです」


「度々光が届いていた為でしょうか……

魔王が現れる事も、消される事もなく、こうしてここに……」


「魔界で神様にお会い出来るなんて……

私達は、なんと運が良いのでしょう」涙する。


「いや、そんな……」困り顔でカルサイを見る。


【とにかく、ここを出ましょう。

アオ、皆さんを連れて天界に参りましょう。

王子と絆神方々は、拠点の浄化をお願いします】


「通路から深蒼に出ますね。

神竜様方、結界魔宝は解除していますね?」


「はい。私共も困りますので」


「ありがとうございます。

では、参りましょう」

神竜と魔人に念網を掛け、曲空。



「アオは、すっかり神様じゃな」


「ま、前から、そんな雰囲気が漂ってる奴だったからな。

やっと姿が追いついたってトコじゃねぇか?」


「クロは悔しくはないのか?」


「ん~、なんつーか、オレはオレだからな。

アオやサクラとは違うんだから、比べても仕方ねぇだろ」


「うむ♪ それでこそワラワが大好きなクロじゃ♪」


「姫……」


『お~い、お前ら置いてくぞ~』


「およっ」「ん?」キョロキョロ。


外からのハクの声で、慌てて出た。


「クロ、何か見えたのか?

目の輝きが変わったぞ♪」


「うん、見たんだ。

前にアオに神眼の大きさを見せてもらった、その要領で、兄弟皆と比べてみたんだ。

皆が言ってる事、よく解ったよ。

オレは絶対、あの器を開いて、全て満たしてやる!」


「然様か♪ ワラワも負けぬからなっ!」


目の前に仁王立ちした姫を、クロは抱きしめた。


「ありがとう、静香」


(クロ……これは供与か?)


(いや、愛を込めている)


(ならばワラワも……)




「もおっ! ハク兄、行くよっ!」

「いや、もう少し……」

「ハクは、まだ解呪せねばならぬようだな」

「兄貴ィ、そんなぁ」

【コバルトと同じ呪のようだな】

「ゴルチル様までぇ」

「解呪したら始祖様みたくなるの?」

【そうだろうな】

「ソレおもしろくな~い」

【ならば、このままにしておくか】

「うんっ♪」

「俺……呪われてるのか?」

【自覚も無いようだな】

「本当なのか!?」

【何故、嘘などつかねばならぬのだ?】

「解呪してくれ~っ!」

「次、行こ~♪」

「おいっ!」



「おーいっ!!」





 ゴルチル、コバルト、サクラは、

最も真魔界側の拠点群を浄化していた。


桜「これ……竜骨だよね? いっぱいあるね」


始【また魔王モドキにしていたのだろうな】


桜「だ~か~ら~!

  始祖様、誰だかわかんな~い!」


始【いや、だから……】


ゴ【骨は浄化したぞ。

  サクラ、運べるようにしろ。

  コバルト、室内の浄化だ】


桜「ゴルチル様は、どぉしてその服なの?」


ゴ【何が言いたいのだ?】


桜「女神様ってより~魔女♪」


ゴ【覚えておけよ。サクラ……】


桜「こわぁいぃ~♪」


始【嬉しそうに言ってる場合か?

  ゴルチル様を怒らすなよ】


桜「始祖様でも恐いの?」


始【父のようには甘くないんだ。

 『容赦』なんぞ、辞書には無い御方だ】


桜「ふぅん……でもねぇ、

  始祖様が遊んでくれなくなって~

  ゴルチル様しか遊んでくれないんだもん」


始【だからってお前……】


ゴ【浄化完了か? さっさと次に行くぞ】


始【早くしろ! サクラ!】


桜「ふぁ~い」



♯♯♯



 その頃、魔王の城では――



 帰りたい……神界に帰りたい……

 そうだ……私が居るべき場所は……

 ここではない!



【あ……】


【気付いたか。ん? その目……

 神の力を与えた私に敵意を向けるとは……

 まさか、意識を取り戻したか】


 神竜の魂とも、神とも判別できない

その者は、眼前の闇に向かって身構えた。


【そうか……ならば再び眠れ!】


 一瞬で闇が迫り、立ち向かおうとした者が

声を発する隙も与えず包んだ。


【眠れ……そして再び我が(しもべ)として目覚めよ】


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