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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
355/429

始祖様3-拍子抜け

 コバルトは真面目で穏やかな神でした。


♯♯ 地下魔界 ♯♯


【アオ、サクラ。具合は、どうだ?】


 兄弟から離れ、光が漏れぬよう家賽(ヤサイ)の小屋でキュルリの浄化をしていると、ゴルチルが現れた。


「もうすっかり元気ですよ。

ありがとうございます、ゴルチル様」


「アオ兄に何があったんですか?」


【アオは、神の力を得た事で、拒絶反応のような状態になっていた。

私はアオを休ませる為に眠らせていた。

しかし、アオは意識が有るかのように、コバルトの背に光を当てていたのだ。

その光に依ってコバルトの呪縛は緩み、コバルトは呪縛に打ち勝つ事が出来たのだ。


アオの方は、私が眠らせている事に抗い、コバルトを救おうとする余り、得たばかりの大きな力の限界を超え、生身では起こる筈の無い『覚醒』を引き起こしてしまったのだ】


「覚醒?」


【神竜の魂は、覚醒に依って神に成るのだ】


「俺達は今、どういう状態なんですか?」


【外付けの力を取り込んでしまった状態だ】


「???」


【本来は、身体という器が無いからこそ、存分に発揮出来るのが神の力だ。

器に縛られているお前らが持つには、大き過ぎる力なのだ。

だから、神の力をその翼と光輪に込めて付けたのだ。

それなのに、自ら覚醒を引き起こし、神の力を己が力として、その生身の器に取り込んでしまったのだ。

覚醒など起こり得る筈は無いのに……】


「俺達……どうなるんですか?」


【さぁな】「そんなぁ」


【だが、お前らの事だ。

何とかなるだろう】「無責任だぁ~」


「それで、調整するために、わざわざ来てくださったんですね?」


【流石だな……拾う力も増したのか?】


「そうかもしれません。

確かに何をするのも楽になりましたから」


【神としては、そんな天竜は困るのだが……】


「って! ムリヤリくっつけたのはゴルチル様でしょ?」

【カルサイだ】「むぅ」


【兎に角だ。体を破壊しないように、余剰分は光輪と翼に移す。

移しはするが、既に取り込んだ力だ。

繋がりは切れない。

だから、使う分には何ら問題は無い筈だ】


「ハズって?」【お前らだけは予測不能だ】

「あんまりだぁ」【前代未聞が何を言うか】

「ひどぉいぃ」【調整しなくていいのか?】


「あの……始祖様の呪は、ゴルチル様に移ったのですか?」


【アオ、何が言いたいのだ?】怪訝。


「そういう やりとりを、前の始祖様とよくしていましたので」


【まぁ、色々と嬉しくて少々浮かれているのかも知れん】頬染まる。


【兎に角だ、始めるから外に出ろ】ぷいっ。



♯♯♯



【クロ、雑念を払い、気を澄ませて――】


「始祖様、なんか変なモノでも食べたんですか?」


【だから、呪が消えて、本来の自分が解放されたのだと話しただろう?】


「穏やか過ぎて、なんだかなぁ……」


「アオと話しておると思えばよいのじゃ」


「そっか、始祖様だと思うから調子が出ねぇのか」


【俺は、あの呪に縛られた自分が、嫌で嫌で仕方なかったのだが……

皆は、あの方が良かったのか?】


「ん~、なんつーか、いいとか悪いとかじゃなくて、それが始祖様だと思ってたからな~」


「慣れておったからのぅ。

じゃから、違和感は今だけじゃろ。

ワラワは話し易ぅて嬉しぃぞ♪」


【そう言って貰えると、俺も嬉しいぞ。


ハク、神の光ばかり出していたら、すぐに切れてしまうぞ。

治癒の光を混ぜて、雷を絡めるんだ】


「そっか……はいっ!」構え直して、放つ!


【フジは良い感じだな。

もう十分、実戦で使えるぞ】


「はい♪ 御指導ありがとうございます!」


【休憩するか。

絆神方々、補充お願いします】


【あ、はい】絆神達も調子が掴めない。




「始祖様、奥様は?」


【母に頼んで、星輝の祠に連れて行って貰った。

フローラは、戦には向かないからな。


フローラにも辛い思いをさせた……俺は多くの者を巻き込んでしまった。

王子達も、だな……本当に、すまない】


「オレ、バカだから上手く言えないけど、今 生きてる事、オレである事、兄弟がいて、姫がいて、皆がいて。全部ひっくるめて幸せなんです。

何ひとつ欠けてもダメだと思うんです。

その……元を辿れば始祖様だから……だから、感謝しかないです」


「そうだよな。

俺達は巻き込まれてなんかいませんし、もしそうだとしても、恨む要素なんて全然ありません」


「私は、始祖様の呪が消えたと聞いた時、すぐに個紋を確かめました。

個紋が消えていないのを見て、心底ホッとしたのです。

個紋は一族の絆の証ですから」


「ああ。ガキの頃、顔を合わす度に肩寄せて、光らせて喜んだよなっ」


「ですから、とても大切なものなんです」


「始祖様♪

負の感情とは縁を切ってくれなきゃ、俺がかかった呪に囚われちゃいますよ~」


「そうですよ。もう一度 言いますけど、俺達は始祖様から謝られるような事なんて、何ひとつ されていませんからね」


【アオ……サクラ……】いつからそこに?


「伝えたい事があって来たら、休憩だって集まったから、区切りいいトコで話そうって待ってたんですよぉ」


「何だよ、話って」


「明日、深魔界の西半分に行こうかと――」


「よしっ! ならば特訓じゃ!

クロ、しかと使い熟すまでやるのじゃっ!」


姫はクロを引っ張って行った。


「アオ、サクラ。今から、ではないのだな?」


「あ……キン兄さん。

こんな夜中に行きませんよ」


「では、交替する。

ハク、フジ、休むように。

朝の交替時を集合の時とする」「はい♪」


「アオとサクラも休むようにな」「はい」


 四人が曲空して行き、クロと姫を眺めながら――


「始祖様、アオとサクラは……」


【覚醒したんだ。

神竜が神に成るように……


そして俺を救ってくれたんだ。


長い間……王家よりも少し長い間、俺を縛り続けていた呪を……

最高神でも見つけられず、解けなかった忌々しいあの呪を、二人は解いてくれたんだ】


「二人は……神に成ったのですか?」


【いや、天竜は神には成れない。

ただ……王子達は時折、覚醒の如き爆発的な力を発揮したり、成長をする】


「これまでに何か有りましたか?

アオとサクラならば、しばしば急成長して驚かされましたが、今『王子達』と仰いましたよね?」


【最も大きかったのは、静香が境界で燃え尽きそうになった時、救おうとしたクロだな。

クロはあの時、神眼と供与の限界を超え、強い掌握を持つかのように、境界で静香の欠片を集めたんだ。

あれも一時的な覚醒だと思う。

あの時、俺はクロの隠れた器の大きさを知ったんだ。

アオとサクラの器を合わせても敵わない、とてつもなく大きな器をな】


「クロの力は大きいとは感じていましたが、そんなにも……」


【ただ、開けなければ、いくら大きくても意味が無い。

だから、その器が見えている者 全てが、なんとか開こうとしているんだ】


改めてクロと姫に目を向ける。


【クロが呪に掛り易いのも、器の大きさ故だろう。

器は自身を満たそうとする。

だから呪すらも引き寄せ易い。


勿論、魔王もクロを狙う。

アオが依代として使えないと知った瞬間から、標的はクロに変わったんだ。

配下として取り込もうとし、それが出来ないならば潰そうとする】


「クロは、その事に気付いていない……」


【あの神眼が有りながら、目を向けようとしないのは、一種 呪なのかとも思える程だ】苦笑。


「それだよ!! 始祖様っ!!」


【サクラ……アオも……】また、いつからそこに?





 繰り返しますが、ハザマの森以外では、

王子達も男神様も皆さん女性です。


 ハクも双璧できれば女性です。

クロだけは……困ったものです。



 前回あとコメの続きです。

つまり、今回のお話の前にあった事です。



桜「フジ兄♪ 休憩しよ~♪」


藤「始めたばかりですが……」


桜「ちょっとだけ♪ こっち~」手繋ぎ曲空♪



藤「え? 馬車……あ……リリス……」


桜「ハザマの森は だいじょぶだから~

  馬車に近寄る前に戻ってねっ♪

  じゃねっ♪」曲空♪


藤「あ……サクラ……私のために……

  あっ、緋月煌っ」


リ「あ♪ フジ♪」


 駆け寄ったリリスはフジの胸に飛び込んだ。



♯♯♯



始【キン、鍛練は俺が見るから休んでおけよ】


金「始祖様……いえ、二人は私が見ます。

  王妃様とごゆっくりなさってください」


始【俺達には、これから幾らでも時間が有る。

  心配するな】


金「そうですか……では、お願い致します。

  ですが、お話も伺いたいのですが」


始【では、休憩後に、な】


金「はい」礼、曲空。


 キンとコバルトは、そんな約束をしていたのでした。




 いつまで穏やか始祖様で我慢できるかな~私。


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