表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
354/429

始祖様2-本当の姿

 コバルトは、長く苦しめられていた呪から、

やっと解放されました。


♯♯ ハザマの森 ♯♯


【アオ……サクラ……】

親族の輪から出てきたコバルトが、笛を奏でる二人に歩み寄った。


【これまでの事……何と詫びたらいいのか、言葉も見つからない……】

深く頭を下げる。


【とにかく……申し訳――】(言いっこなし~)


(本意でない事くらいは分かっていましたから、そんな事なんて仰らないでください。

それに……そもそも俺達、謝罪なんかが必要な事なんて、何ひとつとして、されていませんから)


【いや、だが――】(もっと曲 教えてよ~)


【え……?】


(この曲 終わっちゃうよぉ、早くぅ)


【あ……ああ】顔を上げ、二人に掌を翳す。


(ありがと♪ 始祖様♪)(続けますね)


 曲が変わる。

穏やかで優しい音色が、煌めく せせらぎのように流れていく。


宵闇が訪れた鬱蒼とした森の中なのに、暖かな陽射しを浴びているかのような心地よさに包まれる。


(この曲も始祖様が作ったの?)【ああ】


(アオ兄、こゆ曲 大好きだよね~)(うん)


(って事は~)(次は、あの曲だね)(うん♪)


ひと呼吸し、新たな曲が流れる。


【これは……】(竜骨の祠で習った~♪)


(御先祖様方に求められたんです。

皆様、この曲がお好きだそうです)


【そうか……】


笛の音が重なる。

(あ♪ フジ兄♪)微笑み合う。


更に重なる。(兄貴達、みんな来た~♪)


七色の笛から紡がれる音色が、夜の森を鮮やかに彩る。


絆神達も集まり、心地よさげに聞いていた。


【アオもサクラも神に成っちゃたわ】


【ううん、天竜だよ】


【でも、神の力を得たのよ?

あの大きな翼……光輪の輝き……大神様よ】


【そうだね。凄く大きな力だね】


【さっき地下で見た時より、遥かに大きくなったわ】


【うん。覚醒したみたいだね】


【私達が苦労して神に成った意味って……】


【有るよ。二人は大神の力を得たけど神じゃない。天竜なんだ。

生身で その力を持ったんだから、身体が力に耐えられるように、私達が護らないといけないんだ】


【そっか……】


【二人に、これ以上 引き離されないように、私達も頑張らないとね、スミレ】


【そうね。もっと高めなきゃ護れないわね。頑張りましょ、ヒスイ】


カルサイとドルマイは、決意を新たにした若い神達を優しく見詰め、次なる一歩を相談し始めた。



♯♯♯



(えっ!?

コレ、神様みんなに見えてるの!?)


【はい。普通に見えていますが……】


(カルサイ様っ! 大神様にしか見えないって仰いましたよねっ!?)

絆神達に囲まれているアオとサクラが、同時にサッとカルサイを見た。


【あ……もうバレましたか】ふふっ♪


(最高神様がウソついていいんですかぁ?)

(そもそも騙して連れて行きましたよね?)


【『嘘も方便』と、人界では言うそうですね♪】


(天界では言いませんからっ!)


(でもまぁ……サクラ、結果的に悪い事ではないんだし、始祖様の呪も消えたし、もう怒らないで)

苦笑しながら、よしよし。


(でも……個紋 消えてないよ)


(あ……そうだね)


【まだ何か残っているのは確かです。

しかし、害は全く感じられません。

今の貴殿方なら見えるでしょう?


呪の強い生命力だけは感じます。

ですので、王族の皆さんの長寿と、魂の永遠の為に、残しておいてもよいのではないでしょうか】


他の兄弟に囲まれ、穏やかに嬉しそうに話しているコバルトを見る。


(あの表情なら、もう大丈夫ですね。

それなら、このままで……)

自分の個紋を見て微笑む。


(でも……あの話し方、調子狂うよね~)


カルサイが吹き出し、ドルマイが つられ、皆の明るい笑い声が森に広がった。




 すっかり暗くなっても笛を奏でたり、話したりは続いていた。

兄弟はコバルトが話しているのを妨げないよう、笛を吹いていなくても心で話し続けていた。


(アオ、サクラ……その羽、それと頭の輪……昼より力を増したよぅじゃが……

それに二人共、両方になったのじゃな)


(うん、神界に連れてってもらったから~)

(大勢の神様に――)


(手合わせして頂いたのか?)


(う、うん。そぉだよ~)


(それで、その力を……ならば、クロも頼めるのか?)


(ふえっ!?)


【光輪か翼が出る程に己で鍛えねば、入る事は出来ぬ】

始祖様(コバルト)が片目だけ瞬く。


(然様か……然らば、先ずは鍛練じゃな!)


(あ! 姫、これ神以鏡・(ヨウ)

神様の光が出るんだ。使ってねっ♪)チリン♪


(しかし、クロに渡した時には――)


(うん。まだ準備が出来ていなくてね)

(そ。だから、これ。

竜宝を組み合わせてもらったんだ♪)


(この腕輪に似ておるのじゃな)


(うん。ここのトコが具現環(グゲンカン)だよ♪

これを水鉄砲の口に着けて~、こっちのを鏡の裏に、こぉ着けると――鏡から水も出るからねっ)


(間が繋がっておらずともよいのじゃな♪)


(うん♪ 風や炎も絡められるからねっ♪)


(ほぅ……面白そぅじゃな♪)


(うん♪

時々オパルス様に、光を補充して頂いてねっ♪)


(うむ♪ あい解った♪)




(アオ兄、神以鏡・(ゲツ)はどぉするの?)


(慎玄殿に渡そうと思っているよ)


(補充は?)


(常に周りに神様がいらっしゃるからね。

大丈夫だろうと思っているよ)


(絆 結べたらいいのにね)


(そうだね……

護竜宝(ゴリュウホウ)達、竜綬(リュージュ)で絆は結べるかい?)


【我等が王、結ぶ事は可能で御座います】


【ただし、魂紐(たまひも)の組み方が異なります】


【複雑ですので、アカ様に直接お伝えする事は難しいのですが……】


(アカ、こっち来て)


(うむ)


(護竜槍、貸して)


アカが護竜槍を差し出した手ごと、アオは両手で包んだ。


(流すからね。護竜槍、お願いね)

【畏まりまして御座います、我等が王】


魂紐の色の合わせ方、組み方が、護竜槍からアオを通じてアカに流れる。


(ふむ、帰ったら直ぐに掛かる)


(ありがとう。お願いね)


(また芳小竜を迎えに来るのだろう?)


(また増えた?)(どんどん増える)(そう♪)


(嬉しそうだな)(アカも良い色だよ)(ん?)


(組紐だから、ワカナさんと協力してね)


(ん!?)

慌てて顔を背けた。が、耳まで赤い。


(アカ兄♪ か~わ~い~い~♪)(む……)


アカは二人に背を向けた。

(色々気を遣わせたな。

二人には感謝している……ありがとう)




 ドルマイが女神を連れて来た。


【あなた……】


コバルトが振り返り、目を見張る。

【フローラ……】


【私……また、お傍に……】


【戻ってくれるのか?】


【よろしいのですか?】


【あんな酷い事を言って突き放したのに……】


【あれは……あなたではないわ。呪よ。

あなたは呪に縛られながらも、私が その呪に滅されないよう、神界に帰したのでしょう?】


コバルトはフローラを抱きしめた。

【すまない……フローラ……】


【いいえ、ありがとうございます。あなた……】


【こんなにも長い間、待っていてくれたのか……】


【『いつか闇障を継いだ子孫が、必ずや平和を齎す』

産卵直後に、あなたが仰った、この言葉を信じていたから、待つ事なんて苦ではなかったわ】


【あの時は……束の間、正気だった。

おそらく新しい生命の力が――バナジンの無垢なる神の力が、呪を退けてくれたのだろう】


【バナジンは本当の あなたに触れたから、早く神に成る事を決めていたの。

闇障を継げなかったから、子孫を見守らなければならない、と……

あの言葉は、卵の中の あの子にも響いていたのよ】


【そうだったのか……

俺は、息子の想いを何も知らなかった……】


【バナジンは、ちゃんと解っているわ。

だから大丈夫よ。


やっと闇障を継いだ子孫が現れたのでしょう?

だから全ては、これからですよね?】


【ああ、そうだな。これからだな】にこっ。


【やっと笑って頂けたわ】


【フローラもな】見詰め合い、微笑み合う。



【ああ、そうだ。アオとサクラを紹介――ん?

誰も居ないな……】


【あら、本当に】


二神は声を上げて笑った。





 やっと登場、初代王妃様のフローラ様。

コバルト様と、これからお幸せに――


なって欲しいのはヤマヤマなんだけど……


コバルト様が、つまんない!


――と、思ってしまうのは私だけでしょうか?




凜「あ、みんな お疲れ~

  また女の子になったの?」


青「地下では、ならないとね」


桜「馬車は妖狐王様がお護りくださってるから

  だいじょぶなの~♪」


黒「『儂の庭だ。遠慮無用だ』って睨まれたよぉ」


凜「そっか~。あれ? アカは?」


青「工房に帰ったよ。

  いろいろ頼んでいるからね」


凜「これから、みんな警護?」


金「いや。ハクとクロは鍛練だ。

  始祖様の代わりは私がする」


白「え!? 兄貴がっ!?」


黒「でもキン兄も休まねぇと――」


金「始めるぞ」


白&黒「ゲッ……」




桜「アオ兄、だいじょぶ?」


青「大丈夫だよ。サクラは?」


桜「俺、ぜ~んぜん だいじょぶ~♪」


青「なら、いろいろ試そう」


桜「うんっ♪」手繋ぎ曲空♪




凜「フジは? 天界に帰るの?」


藤「いえ! 私も鍛練します!

  アメシス様、お願い致します!」


凜「あ~あ、みんな行っちゃった~」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ