始祖様1-鎖
アオとサクラは大神の力を得ました。
闇と神の力、これはコバルトと同じです。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
【お前ら……その……】
(始祖様、俺達は始祖様のアレコレを話すつもりはありませんから、コレも言わないでください)
サクラが睨む。
【オッサン、これは一体――】神だけの会話で。
【正真正銘、神の力だ】嬉しさ全開。
【って事は、爺婆を集めたのか?】
【本当に口の悪い奴だな。歴代最高神の総意だ】
【神にはしなかったんだな】
【時間がかかるからな。だが、いずれは――】
【俺の子孫で遊ぶなよ】睨む。
【私の子孫でもあるのだぞ】ニヤリ。
(あの~、俺達で遊ぶのは、おやめくださいね)
【聞こえてたのか!?】
(ふせていたんですかぁ?
普通に聞こえてましたけどぉ)
【だから神扱いの目印として付けたのか?】
【そこらの神より神だからな】絆神達を見る。
(あの……ゴルチル様。
お話し中で申し訳ございませんが、お手合わせお願い致します。
なんだか、力がムズムズするんですよぉ)
【アオ、口数が少ないが大丈夫なのか?】
(少し……頭痛がしますが、大丈夫です)
【ルリと二人だからな。
色々と普通ではない事も起こる。
今日は休んでおけ】
(そぉだよ~
馬車で寝るだけでもいいんだからね)
(うん……そうしようかな……)ふらりと曲空。
【アオが休むなどと……よっぽどなんだな。
オッサン、アイツ大丈夫なのか?】
【ふむ……確かにな。様子を見るか】消えた。
【よし! サクラ、手合わせしてやろう】
(ハク兄はいいの?)【嫌なのか?】
(そぉじゃなくて~)【なら、やるぞ】
(では、お願い致します!♪)【よしっ】
そして――
「何だっ!? あの光は!?」「凄いですね……」
【あの気はサクラだよ】【みたいよね~】
【昼より更に凄くなったな……】
【もう私達では敵いませんね】
【お相手は、アオ様ではないようですが……】
「あ……」物凄い速さで光が逃げて来た。
【お前ら! 全員! 全力でかかれっ!!】
「始祖様、アレはサクラですよね?」
【そうだよっ! サッサと行けよっ!!】
「操られているのですか?」
【手合わせだっ!!】ただし命懸けのなっ!
サクラが迫る。「始祖様~♪」【ゲッ!】
【任せたぞっ!!】消えた。
「あ~あ……行っちゃった~
バナジン様♪ お願ぃ――あれ? いない?
じゃ、絆神の皆様♪ なんで逃げるのぉ?
ねぇ、ヒスイってばぁ。俺の絆神でしょ」
「サクラ、お前……輪っか、も……」
「あ♪ クロ兄♪」
(クロ、逃げるのじゃ!)
(何でだよ?)
(ワラワは逃げるぞ!)曲空!
(えっ? 待てよ!)
「クロ兄♪ 手合わせしよ~♪」
「ん? おう」
♯♯ ハザマの森 ♯♯
【オッサン、アオは?】馬車に来た。
【二人共、眠らせた】アオに光を当てている。
【何が起こったんだ?】隣に座る。
【心配しているのか?】コバルトを見る。
【いや、別に……笛が聞きたかっただけだっ】
【素直でないのは分かっている】フフッ。
【アオの体には、ルリも入っている。だから普通ではない。
そこに神の力が加わった事で、拒絶反応のような状態になってしまった。
それだけだろう】
【『それだけ』で、なかったらどうすんだよ!】
【私の全てを懸けてでも、この二人を助ける】
【何でオッサンが、そこまで……】
【アオは――サクラもだが、呪に掛かる前のコバルトに似ている。
最高神として育てたかった神竜を、私は救えなかったからな……】
コバルトがクルッと背を向けた。
【滅されなかった事は感謝してるよ】
【そうか……】
二神は並んで外を見ながら話す形になった。
ゴルチルは後ろ手でアオに光を当てた。
【オッサンが、俺を神にして神界に戻す為と、神に成った後、何かやらかしても俺が滅されないように、最高神を続けてた事も知っている】
【カルサイが話したのだな?】
【まぁな。俺がシツコク聞いたからだ。
親父も……だから継いだんだろ?】
【そうかも知れん】
【理由、知らないのか?】
【聞いてはいない】
【皆、俺なんかの為に、そこまでしなくても……】
【そこまでしたくなる程の奴だったのだ】
二神は暫く黙って風に吹かれていたが、コバルトが俯き、口を開いた。
【俺自身、こんな俺なんか嫌なんだよ……だが、どうにもならん。
心の底で、どんなに抗おうが、馬鹿な言動しか出てこないんだよ……】
【そうだったのか……今まで何故、黙っていたのだ?】
【言いたくても言えなかったんだ。
何故かは知らんが、やっと言えたんだ】
背後からの光に気付いて、コバルトは振り返った。
同時に、ゴルチルも振り返っていた。
【この光……】【内からだな……】
二神はアオを凝視し、その気を探った。
【本当に眠らせたのか?】ゴルチルを見る。
【そのつもりだ、が……】コバルトを見――
【これは……まさか……】アオを見る。
【外に出ろ!】アオを抱えて出た。【サクラ!】
サクラが現れた。「なぁに? え……アオ兄?」
ゴルチルがアオを目覚めさせる。
【ここに立っているだけでいい】「……はい」
カルサイとドルマイが現れ、続いてルバイルとバナジンも現れた。
次々と先祖神達が現れる。
【アオ……まさか!】
サクラが よろけ、膝を突いた。「これ……何?」
【同調したな。アオと共に立っていろ】
カルサイが、二人の周りに魔法円を描く。
【キュルリ、馬車に入って!】【はい!】
神が周りを囲み、カルサイが構えたが、術を唱えるより早く二人から光が迸った!
追いかけるように術が流れる。
カルサイの杖から放たれた光が、二人から迸った光を捕らえ、二人の内に引き込んだ。
【間に合いましたね】一瞬だけ安堵し――
【続けます!】
支え合うアオとサクラが外周に立つように魔法円を描き直し、神達は移動した。
【コバルトを中央へ。
キュルリ、お手伝い願います】【はい♪】
苦し気に胸を押さえるコバルトを神々の光が支え、魔法円の中央へと導き、次の術が始まる。
コバルトの真後ろに立つアオとサクラが、カルサイから術を引き継ぎ、唱え、コバルトの背に光を当てると――
コバルトの鳩尾から、絡まった鎖のような闇黒色の塊が、光に押し出された。
キュルリが、その塊を捕まえ、掲げる。
神々が光で滅した。
【ありがとう……ございます】
コバルトが深く頭を下げた。
【長い間……ご迷惑をおかけしました。
申し訳ございません】
震える声と共に、土に涙の跡が増えていく。
【コバルト!】
ドルマイが駆け寄り、抱きしめた。
その母子を親族が囲み、抱きしめた。
アオとサクラは微笑み合い、笛を奏で始めた。
回復の曲、そして――
【この曲は……】コバルトが驚き、顔を上げる。
【懐かしいですね。
コバルトが、よく吹いていましたね】
【コバルトが作った曲なのよ】
【私にとっては子守唄でした】
(始祖様、別人だね)
(アオ兄みたいな色だよ~)
(なら、サクラも同じだね)
(そぉかなぁ)
(アオ兄、何があったの?)
(馬車に着いて横になった所までしか記憶は無いんだ。
どうやら夢を見ていたらしいね)
(どんな?)
(よく分からないけど……声が聞こえたんだ。
何だろう……心の声?
助けを求める、悲鳴のような……
だから、助けたくて足掻いていたんだ。
でも体は動かなくて……
そしたら起こされて、ああ、夢だったんだ……って思ったんだよ)
(その悲鳴って、もしかして……)
二人はコバルトを見た。
(そうなのかもしれないね)
(みんな穏やかな、とってもいい色♪)
(そうだね。幸せ色だね)
♯♯ 地下魔界 ♯♯
その頃――
「クロ! しっかりせよ!」
駆け寄っていく姫の先には、俯せで転がっているクロが居た。
その頭には薬袋が有り――
「これは……颯竜丸?」「姫……」「クロ!」
「だ、大丈夫だ……体力、が尽きた、だけ、だ」
「ならば、これをっ」食べさせる。
「助かった……ありがとな」座る。
「何があったのじゃ?」
「サクラの攻撃から逃げ回ってただけだ。
とにかく速ぇし、間髪無ぇし、容赦も無ぇ」
「その、サクラとアオの器を足したならば、クロの器になると、始祖様が言ぅておったぞ」
「まさか。んなワケ無ぇだろ」
「そぅ思うのがイチバン悪いのじゃ。
己で己に蓋をしてはならぬのじゃ」
ほんに、何度申せば覚えるのじゃ?
「そっか……なら、サクラに出来る事は、オレなら、倍 出来るって事か♪」
「そぅじゃ♪」
「よ~し! やるぞっ!」
「その意気じゃ♪ 鍛練致そぅぞ♪」
「おう!」
凜「ゴルチル様、アオは、どうなってたんです?」
ゴ【私が馬車に行った時、アオは己の内外に
相殺を掛けていた。
おそらくサクラが同調せぬよう
必死だったのであろう】
凜「それでサクラは、すぐには同調しなかった
んですね?」
ゴ【おそらくな。私にも解らぬ】
凜「で、コバルト様とお話ししていたら
アオが光ってたんですね?」
ゴ【そうだ。意識も無いくせに彼奴は
コバルトを浄化したのだ】
凜「元々のコバルト様って……」
ゴ【話した通りだ。
アオと、本来のサクラは、
若い頃のコバルトに、よく似ている】
凜「じゃあ、もしも……あの呪にアオが
掛かったら……」
ゴ【想像通りだろうな】
凜「う……コバルト様、可哀想すぎる……」
ゴ【大罪を犯さなかった事だけが救いだ】
凜「滅されたり、封じられたりは
しないんですね?」
ゴ【そうならないよう、カルサイは最高神に
成ったのであろうな】
凜「そうですか……でも……
あのコバルト様がいなくなっちゃった
のは、ちょっと残念です」
ゴ【コバルトが聞いたら泣くぞ】
凜「でしょうけど、ゴルチル様も
寂しくありませんか?」
ゴ【ふむ……確かにな。
すっかり、あのコバルトが定着して
しまっていたからな】
凜「でしょう?」
ゴ【だが、これで平和は一気に近付いた。
大神が ひとり――いや、アオとサクラも
だな。三人も増えたのだ。
それで許してくれ】
凜「そうですね~」




