神扱い5-神の力
なんだかまた平和ですよね。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
サクラが五神を相手に嬉々として手合わせしているのを眺めながら、アオが芳小竜達と遊んでいると――
「アオ兄様……」フジが現れた。
「どうしたんだい?」
「いえ、たいした事では……」
「また、いろいろ抱えているね?
アサギ様の婚儀を見て、リリスさんはどう思っているんだろう――まずは、これかな?」
「……はい」
「大丈夫だよ。リリスさんは王族として生きると覚悟しているからね。
前にも増して妃らしくなっているよ」
「そうですよね……」
「それで、フジ自身は並んでいられるのか――次は、その不安だね?」
「そちらの方が大きいです。
一度は克服できたと思っていたのですが……」
「考えているからね。
もう少し土台が出来たら、きちんと話すから待っていてね」
「私に何か出来るのでしょうか?」
「もちろんだよ。
薬師としてのフジの能力は、平和な世にこそ必要なものなんだよ」
「平和な世にこそ……」
「そうだよ。三界全てに、その力を発揮してもらうつもりだからね」
「その為に、兄様は大臣になるのですか?
私がご迷惑を――」
「迷惑なんかじゃないよ。
確かに、その事も有るけどね。
フジだけじゃない、クロにもアカにも、これから、その力を存分に発揮してもらうつもりなんだ。皆の力が必要だから。
今は魔王の事に専念したい所だけど、兄さん達は王太子になったし、サクラは魔竜王になった。だから支えたい。
俺自身、早く経験を積みたいし。
そんないろいろで、大臣になる事にしたんだ」
「アオ兄様は……やはり凄いですね。
それに強いです」
「そんな事は無いよ。
ルリの支えが有るから頑張れるんだ。
フジも支え合えばいいんだよ。
一緒には戦えないけど、会って言葉を交わす、それだけでも寂しさや心細さを埋められる。
フジは勇気を貰えて頑張れるだろ?」
「でも……この姿では……」
「やっぱり会っていないんだね。
だから元気が出ないんだね。
長老の山の結界は強化しているから、昨日の王都の結界よりも強固になっているんだ。
少しくらいは元に戻っても大丈夫だよ。
でも、もしもの為に、この鏡で戦えるように、今から鍛練しよう。
神以鏡・焔だよ」渡す。
「この鏡は……
兄様とサクラが光を放っている物では?
光でない私にも放てるのですか?」
「大丈夫。光の発生源は、この光臨鐘だよ。
アメシス様に神の光を込めて頂いたからね。
フジなら少し練習すれば、神聖光輝も一緒に放てるよ。さあ、やってみよう」
「はいっ♪」
アオが教えていると――
【アオ、少しよろしいですか?】
「カルサイ様、どうかしましたか?」
【そんな不安気な顔をしないでください。
一緒に来て頂けますか?】
「フジ、ここは任せていいかい?」
「兄様の代わりにはなれませんが……」
「俺には出来ない事が、フジには出来るんだよ。
だから自信を持ってね」肩をポンッ。
「では、参りますので」
カルサイは頷き、アオを連れて消えた。
――神殿内。
「カルサイ様……ここは?」
【下層神界です。
こちらならば、闇も大丈夫です】
【来たか】とっても嬉しそうなゴルチル。
【アオ、母の事、ありがとう】ディアナも。
そして続々と隠居神達が現れ、アオを囲んだ。
【ほう、この者が】【ふむ、確かにのぅ】
【認めざるを得ぬ】【ええ、そうですね】
【これならば――】【持てるじゃろうよ】
【この芳小竜――】【素晴らしい出来だ】
「こちらの方々は……?」
【歴代最高神の御方々だ】「え?」ぱちくり
【御納得頂けましたか?】前最高神、ニヤリ。
歴代最高神達が頷く。
【では、早速 始めましょう】
現最高神、にこにこと魔法円を出す。
【とぉさま♪ こっち~♪】
キュルリに引かれて中央へ。
【いいこにしててね~♪】なでなで♪
キュルリはディアナの掌に飛んで行った。
「一体 何を……?」御歴々が魔法円を囲む。
カルサイがアオの正面に立ち、真顔を向けた。
【アオ=メル=シャルディドラグーナ。
貴方は、戦う為に更なる力を欲していますね?】若干早口。
「はい。それは確かに――」
【同意を得ました】「えっ!?」
【それでは――】カルサイが唱え始めた。
あ……動けない……
アオが神眼で周りを見ると、先程の穏やかな御隠居様の雰囲気は何処へやら。
威厳と高貴さと清らかさを纏っている大神達が、真剣に詠唱していた。
神眼が合ったゴルチルがニヤリとする。
神々の合唱は続き――そして、アオは光に包まれた。
【歴代最高神の総意に依り、この者に神の力を与える!】
雷に背を貫かれた!!
――そう思えた。
ぶわさっ、バサッ――「まさか……」
自分の影を見る。
翼だ……しかも大翼って……
【その翼と光輪は、神の力を具現化したもの。
大神でなければ見えないでしょう。
貴方が天竜である事に、変わりはありません】
「クロには見えるのでは?」
【そうですね……あの神眼は大神に匹敵――いえ、越える強さですからね】
それは、ちょっとマズいかも……
でも、始祖様が上手く仰ってくれたし、
何とか誤魔化せるかな?
【これで、もう貴方には、神以鏡は必要ありません】
ああ、そうか。確かに……
闇障と神の力、この二つが有れば、
これからの戦いが、かなり有利にはなるよな。
「ありがとうございました。
神様の御力、存分に使わせて頂きます」深々と礼。
「それで、サクラには?」
【もちろん、これから】にっこり。
【連れて来て頂けますか?】「俺が!?」
【私が行けば警戒するでしょう】確かに……
「サクラにも見えますよね?」
【たたんで背を見せなければ大丈夫です】
たたむ? ……難しいなっ!
「あっ!」バサッ!!
【まだ力が溢れているからな】
前最高神は笑いながら光綱で縛った。
【行け】「……はい」
そして、サクラも――
「ったぁいっ!! 頭割れたっ!?」うるうる。
「割れていないよ。
俺も背中に穴が空いたかと思ったけどね」
「背中?」
ゴルチルが口の前に人差し指を立て、アオの背後に寄り、光綱を解いた。
バサバサッ!「うわっ!」よろける。
「アオ兄……俺を騙したのぉ?」
「俺も騙されたんだよ。でも……これからの戦いには必要だと思ったから、サクラを連れて来たんだ。
闇障と神の力、俺達は相反する二つの力で、これから戦うんだ」
「そっか……確かにコレ……必要だよね……
カルサイ様、ゴルチル様、ディアナ様、歴代最高神様御方々、ありがとうございました!」礼っ!
「大それた畏れ多い事とは解っていますが、俺達は魔王となってしまった神様も助けたいんです。
どうかこれからも、御力添えをよろしくお願い致します!」礼っ!
ディアナの瞳から光が零れ落ちた。
【その心、神よりも真の神ですね】
【我等に出来得る事ならば、何なりと申せ】
【いつでも力になろう】
【期待しておるぞ】
歴代最高神達は優しく言葉を掛け、姿を消した。
【ディアナ、またね~♪】ぴよぴよぴよ♪
【さて、地下に戻るか】上機嫌で消えた。
【アオ、サクラ……
強引に付けてしまって、すみません】
「いえ。本当に、ありがとうございました」
「こぉなった以上、使いまくりますからねっ」
【はい。それは御存分に】にこにこ♪
【ですが――】「はい?」
【まずは使えるようにならなければ。
こちらで練習しましょう】
「地下の警護が――」
【ハクとフジと、神が大勢 行っています。
制御出来なければ、戦うどころではありませんよ】
「確かに……」
まだ大きな力を持て余している二人に、カルサイの特訓が始まった。
ヒスイの翼と光輪をなんとかして返そうと
していたのに、とうとう本物の翼と光輪を
貰ってしまったアオとサクラ。
これから、どうなることやらです。
カ【まずまず落ち着きましたね。
アオ、一旦 休憩です。
サクラ、始めますよ】
桜「はい!♪」
バ【アオ? それは……】
青「あ、バナジン様。
頂いてしまって……」あはは……
バ【そうですか。
カルサイ様、アオをお借りしても
よろしいですか?】
カ【構いませんよ】
♯♯♯
青「バナジン様、何でしょう?」
バ【今のアオなら出来そうですので……】
青「はい?」
バ【私も妻を内に保っております。
ですので、もうひとつの協力の仕方を――】
青「凜! 大事な話なんだから
サクラの方に行ってくれっ!」
凜「チッ、見つかったかぁ」
バ【聞かないでくださいね】
凜「バナジン様に言われちゃあ
行くしかないよね~」
♯♯♯
凜「サクラは器用だよね~」
桜「あれ? アオ兄は?」
凜「バナジン様と大事な話だって~」
桜「ふぅん……
じゃあ、カルサイ様。
続けてお願いします!♪」
凜「ホンット修行大好きなんだから~」
バナジン様とアオは何を話しているのやら……
桜「あ♪ アオ兄♪
早く終わらせて地下に行こっ♪」
青「ん? ああ、そうだね」
桜「ゴルチル様さっきはフツーだったからぁ
見~た~い~♪」
青「それで? でも、とにかく早く慣れないとね。
頑張ろう」
桜「うん♪」




