神扱い4-鍛練中毒
当面、皆揃って蒼月煌です。クロを除いて。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
【クロ。お前、アオに風の力を拡げて貰ったんだってな。
鍛えてやるから見せてみろ】
「ここで? いいんですか?」
【お前らが地下をウロチョロしてる事など、魔王は、とっくに知っているんだからな。
別に構わんだろ】
――と、始祖様の御指導が、また始まった。
【静香、供与するなよ。
ま、解ってそうだがな】
クロが放つ風の波動を見ながら、気の高め方がなってない、とか、細く鋭くしろ、だとか怒鳴りつつ――
【で、アイツは戦い方が解ったのか?】
「それが……まだ定まらぬよぅで困っておりまする」
【ふむ、己に何が出来るのか見えていないんだな】
【あれだけの神眼を持っておりながら残念なヤツだな】
【風の力も強いんだが、あれもこれも発展途上とは……】
【さて、どこから伸ばすかな……】
さんざん独り言ち、
【で、何でアイツは女になれないんだ?】
「サクラが申すには、勉強が足りぬと……
それ故、器を取り込む事、能わぬよぅなのでございまする」
【という事は、他の王子は、あの技を小器に取り込んでるのか。
俺は勉強の面倒までは見んからな。
ま、アオは、それも考えてるから神以鏡を渡したんだろうがな】
「始祖様、ワラワにはアオの頭に光る輪、サクラの背に羽が見えるのじゃが、気のせいでございましょうか?」
【有るぞ。それがどうした?】
「神様と同じものと存じまするが、あの二人は神様なのでございまするか?」
【俺の子孫だが、神の血は薄い。
既に、ただの天竜だ。
あの翼と光輪は、サクラの絆神・ヒスイのものらしい。ま、飾りだな。
だが、ずっと出ている程に、アイツらは己を鍛え、磨き続けているんだ】
「然様でございまするか……」
【クロが、あの二人くらい鍛練すれば、容易に超えられるんだがな】
「まさか、そのよぅな――」
【器だけなら、アオとサクラを合わせたら、ちょうど同じくらいだろうな】
「足りぬ事の大きさが甚だしぃのでございますね……」ため息。
【そうだな。だから鍛えてやる。
有り難く思えよ】
「誠に忝のぅございまする」
【クロ、休憩だ。
静香、クロに言った事を踏まえて風のみで、やってみろ】
クロと姫が入れ替わる。
【よく見ておけ。元は、お前の力だ】
「はい!」【返事だけは極上だな】「ん?」
【あの鋭さだ。解ったか?】「スッゲー」
【感心してないで気を見ろ】「はいっ!」
【同じように気を高めろ】「はいっ!!」
「あ、始祖様……」アオとサクラが現れた。
【クロの指導をする事にした。
お前らへの指導は終わりだ】
アオとサクラ、顔を見合わす。
(指導?)(って?)
(何かして頂いた?)(う~ん……)
(覚えが無いよね)(そぉだよね~)
【クロ、コイツらを神眼で見た事が有るか?】
「いえ……兄弟を見るなんて考えた事も――」
【見てみろ】
「はい……って! えっ!?」固まった。
「クロ兄、どぉしたの?」つんっ。
「お前ら! 今度は神になっちまったのか!?」
「どうしたんだ? クロ」「ねぇ」
「輪っか! 羽っ!」それぞれを指す。
「ああ、また……」「そっか~」あはは……
【コイツらの翼と光輪は、ヒスイが生まれ直す為に込められた欠片だ。
だが、ここまでハッキリと見える程に、コイツらは鍛練したんだよ。
神だと名乗れる程に己を鍛え、高めた、その証なんだよ。
クロにもヒスイの欠片が込められている。
コイツらに負けない程、鍛練すれば、何か出てくるかもしれん】
(そぉなの?)(発破かけているんだよ)
(ウソなの?)(全部じゃないと思うけどね)
(ほぼウソ?)(そんな所かな)
【お前ら! 俺にも伏せて何 喋ってんだよ!】
(ちゃんと聞こえなくできたね~)(そうだね)
【ちょっと来い!】二人の肩を掴み、飛んだ。
「御指導、終わったんですよね?」
「始祖様ぁ、引っぱらないで~っ」
クロから離れて――
【お前ら、あれこれ喋ったら……解ってるよな?】睨む。
「アレコレが多すぎて、どれの事やら~」
【全部だっ!
俺の事は何も喋るなっ!!】
「臨機応変に対処させて頂きます」恭しく礼。
【サクラ! お前、生意気だぞ!】「や~ん」
「始祖様に恥をかかせようなどとは思っていません。
ただ、サクラが言うように臨機応変に対処させて頂きますので。
交替しなければなりませんので、これで」
アオはサクラの手を取って曲空した。
【まだ話の途中だ! 待てコラッ!】
(クロの事、よろしくお願い致します)
【アオの方が、ずっと大人ですね】【ゲッ……】
【コバルト、私も共に指導しますからね】
【何をしているの? 行きますよ】【はい……】
♯♯♯
アオが警護しながら風の技を試し、サクラが同じ技を、光を変えた風で真似ている。
それをスミレとヒスイが眺めていると――
【あら、オパルス……オニキスも、どうしたの?】
【なんだかお邪魔みたいだから……】
【こちらをお手伝い出来ればと思いまして】
苦笑いを浮かべる二神は、チルルとカルルも連れていた。
【始祖様、張り切ってらっしゃるものね~】
【ドルマイ様もいらしてて、物凄い気迫なの】
【それだけクロの器は大きいのね】
【そうらしいです】アオとサクラを見る。
【アオ様は、既に風を使い熟していらっしゃるのですね】
【サクラ様も器用ですね。
まるで本物の風だわ】
【あの三人は鍛練中毒だから~】
【三人? ……ああ、ルリ様もですか】
【雷に変わったわ】【雷も凄いですね】
【えっ!? あれは……?】【全て……ですか?】
【流石に……あれは物凄いわね……】
【私の光輪と翼なのに、私より輝いて……】
【ヒスイ、落ち込まないで~】
【アオ、コイツの神以鏡は?】始祖様登場。
「ハク兄さん、まだ執務中なのでは?」
「兄貴が行けって……」【俺が指導する!】
「では、これを。神以鏡・星です」チリリン♪
【よし! アオ、見本だ。やれ】「はい……」
アオは神以鏡を出し、光に雷を絡めて放った。
【極大にしろ!】言われるがまま――
【お前もアレをやるんだ】「へ?」
【何を呆けてるんだ? 行くぞ!】「はいっ」
始祖様はハクを掴んで消えた。
「ドルマイ様 来ちゃったから、ハク兄にしたんだね~」きゃははっ♪
【予定通りなんだよっ!!】「あ……」
暫くするとビスマスも来た。
【ハクに付いていても手持無沙汰だ。
アオ、サクラ、手合わせ願おう!
思いっきり来い!】「はいっ!♪」
そして――
【待った! ひとりずつだ!
なんて奴等だ……ったく!】
アオとサクラ、顔を見合わす。
「思いっきりでいいんですよね?」
アオが進み出た。
【勿論だ! 手加減無用ぞ!】虚勢全開っ!
「では、胸をお借り致します!」マジ全開!
全属性を全力全開で絡めた、ぶっとい光が物凄い勢いでブッ飛んだ!
【滅する気かっ!?!】ゼーハーゼーハー!
「いえ、まさか」手加減無用ですよね?
皆さん、声も口調は変わっていませんが、
姿は女性です。
あ、ハクとクロは、まんまですがね。
始祖様と絡むアオとサクラは、なんだかんだ
って楽しそうです。
桜「ゴルチル様、まだかな~♪」
青「キン兄さんが天界にいるから、
まだ、いらっしゃらないと思うよ」
桜「金虎様って、どぉなるんだろね♪
工房 行こっ♪」アオを掴んで曲空。
――赤虎工房前。
桜「あの女神様だぁれ?」
青「初めて見るね……でも……」
金【おお、アオ、サクラ。もう来たのか。
まだ出来ておらぬぞ】
桜「ほえっ!?」
青「そのお姿で、そのお声は……」
桜「やめてよぉ~」にゃはは~
青「どうして若い美人さんなんですか?」
金【ババァが見たいのか?】
青「そうではありませんが……」
金【動き辛いんじゃよ】
桜「って、体ないのにぃ?」
金【不思議とのぅ、有るかの如く
動き辛いんじゃよ】
青「それで若返ったら美女だった、と?」
金【その通りじゃよ。
銀虎にもツッコまれたわぃ。
冗談は程々にせよ、となぁ】
青「でしょうね……」




