神扱い3-初代銀虎
そして朝です。
「アオ兄、ルリ姉、おっはよ~♪」
翌朝、サクラが芳小竜の家に曲空すると、アオとルリは子供達と遊んでいた。
「交替、昼でしょ? これから どぉするの?」
「アカの工房に行くよ」「俺も行く~♪」
子供達を魂主に託し、赤虎工房に曲空すると、金虎と見知らぬ男神が話していた。
(あの神様、誰だろね~)
(初めてお会いする方だね)
【アオ、サクラ、如何した?
鎚ならば、夕刻には幾つか完成するじゃろ】
「ありがとうございます、金虎様。
では、紲輝鎚は後程また参ります」
【ああ、チビ達か?
女房殿が世話をしておる】
「届けて頂けているのですね?」
【神竜も来るし、勝手にも現れよる。
あれは沢山おるのじゃな】
「神界からも、子供達の家の方にお連れ頂いているので、昨日あれだけ減ったのに、また同じくらいに戻っていましたよ」にこにこ♪
【互いに幸せならば、それで良い。
ほれ、また来ておるぞ】
壁の角から覗いていた芳小竜が引っ込んだ。
「おいで。一緒に遊ぼう」にこっ。
キュルリが飛んで行き、手を繋いで戻った。
「あの……金虎様、そちらの神様は?」
サクラが、おずおずと尋ねた。
【ああ、気になっておろうな。
此奴は初代の銀虎じゃ】【はじめまして】
「初代銀虎様も神様に!?」
【元々、神竜じゃったそうじゃよ】
「天竜だったって聞いてたけど……」
【翼も光輪も無かったからのぅ】
「そんな方がいらっしゃるのですか?」
【稀に、どちらかを持たずに生まれるのです。
私のように両方というのは、なかなかに珍しいのですが……】
【神竜の中にも馬鹿者は居っての。
本人には何の罪も無いと言うのに、やれ先祖返りじゃ、不具じゃと揶揄する者が居るのじゃよ。
お前さんらのように片方でも有れば、神界でも暮らし易かったのじゃろうがの】
「へ? 俺達???」
【サクラには翼、アオには光輪が有るではないか】
「見えてるの?」
【当然じゃ。隠しておるのか?】
「これ、ヒスイのだから……」
「ヒスイに返す事は出来るのでしょうか?」
【さぁのぅ……カルサイ様に相談しては如何かな?】
「はい。そうします」
【では、また後でな。
銀虎、説明するからの】【はい、御師匠様】
「銀虎様も、こちらで?」
【誰かさんらが続々と依頼を寄越すからの】
金虎は笑いながら鍛冶工房に入って行った。
【これから宜しくお願いします】
銀虎も続いて行った。
「あっ! よろしくお願い致します!!」礼っ。
(アオ、早く来てやってくれ)
アカの声で、アオとサクラは、慌てて赤虎工房に入った。
「あ♪ アオ様、サクラ様♪
すぐに連れて来ますねっ」
ワカナが運んで来た籠から芳小竜達が見上げ、小さく鳴いている。
「心配しなくていいからね~」なでなで♪
「アカは、まだ閉じ籠っているの?」
「ええ……ずっと暗室に……。
あの……アオ様とサクラ様は、なぜずっとその御姿なんですか?」
「魔王の呪が、女性には無効なんです」
「だからアカ兄も――」(サクラ!!)
「そうしていて欲しいんだけど、嫌だって……
恍恒大鏡で護っているようですね」あはは……
「そうだったの……私は姿なんて、どうでもいいのに……」
(ワカナさん、こんなに会いたがってるのに、なんで出てあげないのぉ?)
(俺達で十分、見慣れたと思うよ。
アカだって寂しいんだろ?)
「昨日 会えた分、なんだか余計に――」
扉が少し開いた。「ワカナ、入れ」
「え? ええ……」入るとすぐに扉が閉まった。
(行こう、サクラ)(うん♪)
二人は芳小竜達を連れて曲空した。
――深蒼の祠。
「カルサイ様、エメルド様は大丈夫ですか?」
【はい。もう大丈夫ですよ。
アオ、サクラ、ありがとうございます】
「それは、クロにお願いします」
【クロにも、もちろん会いましたよ。
アオ、クロの風の力を拡げたのですか?】
「意外と思い悩み易いので」苦笑。
【昨日、アオから感じた風と雷は、気のせいではなかったのですね……】
「俺にもナイショで、属性竜宝 取り込んじゃってたんですよぉ」ぶぅ~
【それはまた、思いきった事を】クスクス♪
「笑い事じゃありませんからぁ」むぅっ。
【すみません。大変な事なのに、何故か ほのぼのとしているから】ふふふっ♪
「もう許してよ、サクラ」ぽふぽふ。
「それより、ご相談が有って参ったのですが」
【はい】にっこり。
「俺達に付いてしまっているヒスイの翼と光輪を返す事は出来ますか?」
【ああ、それですか。
返す必要などありませんよ】
「でも、それではヒスイの力が――」
【ヒスイは、生まれ直した時、新たな翼と光輪を得ています。
ですから、それは貴殿方のものですよ】
「でもねぇ……」「うん……」顔を見合わす。
「紛らわしくはありませんか?
ただの竜に、こんな――」
【だから何度も言っている。
お前等は神と名乗っても十分だ】
「ゴルチル様……」「またぁ……」
【カルサイ。アオに翼、サクラに光輪を与えてやったらどうだ?】笑う。
【ああ、そうですね】魔法円を出す。
「失礼致しますっ!」二人は曲空して逃げた。
【そんなに神とは嫌われているのか?】
【遠慮しているだけですよ】ふふふっ♪
【まぁいい。いずれ――】【はい?】
【いや、さておきだ。
キンから、あの技を聞いた。
少し変えて神にも有効にした】掌を翳す。
【試してみます】唱える。【確かに……】
【親族の方、頼んだぞ。
私は絆神達に伝えるからな】姿を消した。
【え……あなた?】
【ああ、ドルマイ】にこっ。
【その姿は……?】
【王子達が使っている技ですよ。
昨日、あのような事になりましたからね】
【では、これからは、その姿で戦うのですか?】
【そうなりますね】ふふっ♪
【それで、コバルトは?】
【もう、あのままにしておきたいわ……】
【あの性格は、呪に因るものですからね。
直るとは思わない方がよいでしょうね。
しかし、根底には本来の性格が残っていますから大丈夫ですよ】
【相変わらず甘いのね】苦笑。
優し過ぎる所が、最高神としては
玉に瑕だとお祖父様も仰っていたけど……
【コバルトなりに、王子達を気にかけているのは、可愛いではありませんか】
にこにこ♪
【ああ、そうですね。
呪の性格が強く出ているハクとクロの指導など、させてみましょうか】
にこにこ♪
【自分の性格を客観的に見れば、少しは変わるかも知れませんね】
うん♪
【少し話して参ります】
カルサイは独り言ち、楽しそうに移動した。
【姿を戻さないで行ってしまったわ……】
――下層神界の草原。
カルサイは魂留樹の前に現れた。
【コバルト、少しは反省しましたか?】
【何だよ、今度は親父が説教か?】顔が出――
【何だよっ! その姿は!?】
【魔王の呪に対する策です。
戦うならば、この姿でなければなりません。
受け入れますか?】
【何なんだよぉ】ため息……【嫌がらせかよ……】
【違います。
男神は皆、この技を用いねば戦わせません】
【オッサンもか?】
【ゴルチル様から頂きました】
【そうか……ならば、俺も やるぞ!】
【それと――】【まだあるのかよ~】
【アオとサクラには構わず、ハクとクロの指導をしてください】
【ふん……ま、いいか。やってやる】
【笛の指導ではありませんからね】
【う……】【いいですか?】【解ったよ!】
【ハクとクロは、この技が使えません。
闇や呪には、くれぐれも気をつけてください】
【困った奴等だな】
【コバルト程ではありませんよ】【親父ぃ】
【では――】
カルサイは術を唱え、コバルトを魂留樹から解放した。
カ【コバルト、地下に行くのなら
女性でなければなりません。
発動しなさい】
始【ったく~、まだ神界じゃないかよっ!】
カ【発動できないのですか?】
始【んな事あるかよっ! ふんっ!
ほらよ。このくらい朝飯前だ】
カ【なかなかに可愛いですね】
始【笑うなっ!
やっぱ揶揄いに来たのかよ!】
カ【そうではありませんよ。
では、その姿で行ってください。
今はクロが警護しております】
始【行ってやるよ。
あ、オッサンは?】
カ【絆神達に、この技を伝えています】
始【ふぅん……マジで皆やるんだな……】
カ【そうですよ】
――地下魔界。
凜「あ♪ 女神様なコバルト様~♪」
始【凜! お前だけは許さん!
こんな設定にしやがって!】
凜「『設定』って何でしょう?
文句なら魔王に言ってよね~♪」
桜「あ♪ その気は始祖様♪」
始【来るなっ! サクラ! 見るなっ!】
桜「俺達と いっしょ~♪ ヒスイは?
ヒスイどこ?♪」
翡【サクラ、何が――あ……】
桜「スミレと並んでみてみて~♪」
菫【サクラ、どうしたの? えっ? ……鏡?】
翡【落ち着いて、スミレ】
菫【ヒスイ!?♪
えっ……じゃあ、こちらは……
まさか……始祖様?】
始【何だよ?】
菫【え……美人……】
始【うっせーっ!!】
黒「何 騒いでんだ? サクラ」
桜「あ♪ クロ兄♪ オニキス様も呼んで~♪」
黒「ああ。
――すみません、呼び出しちまって」
桜「あれれ? 変わってない?」
ニ【いえ、蒼月煌しましたけど?】
桜「オパルス様、どぉなってるの?」
パ【女神にはなってるのよ。
ほら、体型で判るでしょう?】
桜「ホントだ~、スタイルいい~♪」
ニ【あの……恥ずかしいのですが……】
パ【元々中性的だったから
変化が少ないのかしら……?】
桜「そぉかも~♪ あ♪ あれ――」
始【親父だ】
桜「と、アメシス様? なんか そっくり~♪
ゴルチル様どこ?」
カ【歴代最高神会議に行かれましたよ】
桜「そっか~、た~の~し~み~♪」
とっても賑やかです。はい。




