神扱い1-見えないモノ
アサギ王の婚儀が始まりました。
地下魔界に戻ったアオとサクラは、複製を通じてアサギ王の婚儀を見ていた。
(襲撃も無く終わったね)
(うん、よかったね~)
(祝列前に、王都の結界を確かめておくよ)
(あ、紫苑さんと珊瑚さんだ~♪)
紫苑と珊瑚が近付いて来た。
(午後は? まだ終わっていないけど、どうするんだい?)
(晩餐会までは、こちらに居ようかと)
(戻って参りました)二人、にっこり。
(なら、安心だね。
王都の結界を確かめて来るよ。
サクラは、こっちに残ってね)曲空。
(サクラ様。竜の神様方は、どちらに?)
(深魔界近くに散らばってるよ~)
(最近、襲撃は有りませんね)
(うん……ちょっと不気味だけど……
アオ兄は、兵士不足で籠城したんじゃないかって言ってた~)
(さもありなんですね……)
検知竜宝が鳴り響いた。
(噂をしたからでしょうか)苦笑。
(参りましょう)(うんっ)
♯♯ 天竜王国 ♯♯
(クロ、供与を頼む)(アカ、結界か?)
(そうだ)(テッペンだな?)(ああ)
クロが姫を乗せて上空に曲空すると、アカだけでなく、アオも来ていた。
(アオ、地下は?)
(紫苑殿、珊瑚殿が来てくれたからな。
結界だけ補強したら戻るよ)
(そっか)(始めるぞ)(おう)供与!
王都周辺に建てている最中の祠から発している結界の外に、アカが堅固で結界を成し、二つの結界の間にアオが光の結界を成した。
(それじゃ、地下に戻るからな。
こっちは頼んだ)曲――
(アオ、後で深蒼の祠に行ってくれるか?)
(どうしたんだ?)
(あの岩山、何か気になるんだ)
(何か見えたのか?)
(いや……見えねぇから気になるんだ)
(解った。
夜、キン兄さん達と交替したら行くよ)
(ん。お前、ちゃんと食ってるか?)
(大丈夫だよ)あはは。(じゃ、後でな)曲空。
――地下魔界。
(サクラ! 遅くなって、すまない!)
神以鏡から光を放った。
(だいじょぶ~、神様いっぱいいるも~ん)
(大丈夫そうには見えないけど……)
(やっぱり そぉ思う~?)あはっ。
辺りには闇が立ち込め、女神達が魔王らしき塊に向かって雷光を放っていた。
紫と紅の光を纏った大きな白九尾が現れた。
(男神様方には退避して頂きました)
御札の紋様が、紅い稲光を引きながら闇の塊に向かって飛んだ。
アオも光に雷を加えて放った。
(アオ兄……その雷……
何かを変えてるんじゃないよね?)
(うん、属性竜宝を取り込んだんだ)
(ってサラッと言うけどっ!
簡単な事じゃないでしょっ!)
(子供達を回復させるのに必要だからね)
(それじゃ……風も?)
(なんとか入ったよ)
二つも……命を削ってまで……
(ぼんやりしてると危ないよ!)
サクラの眼前に迫っていた闇の波動を、アオが放つ雷光が打ち消した。
(ごめんっ)考えるの後だね。(ありがと!)
(捕らえました! お願いします!)
ルリが掌握で掴んだ位置は、闇の塊からは離れた宙だった。
(本体は、こちらです!)
雷光が集中する。
絶叫が宙を裂く。
静まると空かさず、まだ波動を放ち続けている闇の塊に雷光を放った。
闇が消えていき、小さな塊が落ちる。
女神達が放つ光の波紋が、辺りの闇も消した。
ドルマイが落ちた塊を光で包み、拾い上げた。
【竜骨です】
女神達は、魔王だった神竜の魂を浄化し始めた。
大女神がドルマイと言葉を交わし、竜骨を受け取ると、女神達を率い、神竜の魂と共に姿を消した。
(ドルマイ様、あの女神様方は……?)
【母と、母が指導している若い娘達よ。
ちょうど来ていたの】うふふ♪
白九尾が念網で包んだ塊を咥えて戻った。
(大神様方、大変失礼致しました)念網を解く。
男神達が出て来た。
【いえ、ありがとうございました】
【では、解呪を始めます】
カルサイが魔法円を出し、光に包まれ眠っているビスマスが中央に置かれた。
大神達が内を、絆神達が外を囲み――
【お前等、何度 言ったら覚えるのだ?】
ゴルチルの声で、アオとサクラも加わった。
(ヒスイも?)(うん、かかっちゃった~)
(さっきの大きな妖狐殿は?
紫苑殿と珊瑚殿の気を合わせたような感じだったけど)
(うん♪ すっごいよね~♪
融合みたいだよ♪)
♯♯ 天界 ♯♯
夜、アオとサクラが深蒼の祠に行くと、クロと姫、そして、ディアナが待っていた。
「呼び出して悪かったな。
何が入ってるのか判ったよ」
「そう。
ディアナ様、入っている何かは出せるのですか?」
【最高神様の御力でなければ出せません】
「でしたら、カルサイ様をお呼び致します」
「クロ兄、なんで この岩山 知ってんの?」
「今朝、コイツら貸してくれたお礼、言おうと思って来てみたんだ」
【サクラ~♪】【あそぼ~♪】
クロの頭の上で手を振っている。
「チルルとカルルじゃ」「変えたの?」
「良い名じゃろ?」「うん♪ かわいい~♪」
「で、何か違和感があるから見てみたら、ちっこい穴っつーか、見えねぇ点が有ってな。
気になっちまって――」
「怒って騒いでおったのじゃ」ふふん♪
「言うなよ~」
「ディアナ様は どぉして こちらに?」
【ルバイル様を訪ねて、芳小竜の家に参りまして、カロール様に会い、岩山の事と、クロの話を伺ったのです。
この岩山に込められているのは、おそらく私の母です】
「えっ!?」
カルサイと話していたアオも振り返った。
【遥か昔、私と母は、この通路の近くで初代魔王と戦っておりました。
魔王が母を異空間へと飛ばし、私は岩山に生えていた魂留樹へと、母を引き戻そうとしたのです。
それに気付いた魔王は、当然ながら魂留樹を消そうとしました。
私は抗いましたが、魂留樹は消され、やむなく私は落ちていた種を岩山の内に集め、術を掛けたのです。
同時に魔王は岩山に呪を掛け、時空の間に飛ばしてしまったのです】
「それが、どぉして嫗亀様の甲羅に?」
【それは私にも分かりません……】
【とにかく、エメルド様をお救い致しましょう】
大神達が現れた。
【クロ、よく見つけてくださいましたね】
「あ、いや……見つけたと言うか、見えなかったと言うか……」照れている。
【やはり、まだ呪が……】
【確かにな……】
【気配はあるのですが……】
大神達が岩山に掌を当て、探っている。
「あの……通路の下に何か……」
「小さな黒い塊が見えるのじゃが……」
【これですね……確かに呪です。
素晴らしい神眼ですね】
「オレ……役に立ててるのか……?」驚き呟く。
「だから何度も言ってるだろ?
クロの力は大きいんだ、って」
【お前等も何度も言っているだろう?】
「あ……」【早くしろ】「はいっ!」慌てて行く。
【おてつだい~♪】ふよよよ~♪
キュルリ、チルル、カルルが岩山に くっつく。
解呪が始まる。
「もはや、あの二人は神扱いじゃな……」
「だな……」アイツら、カッケー……
魂留樹と言えば、コバルト様は?
気にはなりますが、今はエメルド様を
救出しなければなりません。
その頃、アオの屋敷では――
屋敷に戻った爽蛇は、風蛇を抱いて自室に入った。
「まだ、遊び足りないんですか?
ご機嫌ですが……困りましたねぇ」
「とーちゃ♪ あっそぼ♪」
「少し待ってくださいね。片付けますから」
「は~い♪」
やはり風蛇は、確かに風蛇ですね。
聞き分けが良くて、優しくて……
爽蛇は作業卓を片付け、風蛇が眠くなるまで
遊び相手をしようと座った。
♯♯♯
あら? これは……?
託児所を片付けていた琉蛇は、
落ちていた紙片を拾い上げた。
この字は爽蛇さんだわ♪
それだけで嬉しくて、
爽蛇の部屋へと駆けて行った。
こちらのお話は、後書きにて、
少しずつ進めます。m(_ _)m




