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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
343/429

神の光2-嫗亀の岩山

 また、休みもせずに動いているような……


 絆神達の試験は、サクラが城に居たハクを連れて来た事で無事に終了した。


【ゴルチル様、あと、よろしくお願い致します】


【ふむ。絆神達を頼む】【お任せくださいね】


ドルマイは絆神達を連れて深蒼の祠に入った。


「いつまで立ってりゃいいんだ?」


【解呪する。 もう少し、そのまま立っていろ】


「え? 俺、呪に掛かってるのか!?」


【神の試験の為に、無害だが呪を掛けたのだ。

そのままでも問題は無いが解いておく】


ゴルチルが杖を振り、魔法円を出す。

【アオ、芳小竜を借りるぞ】


「キュルリ、お手伝いだよ」【は~い♪】


「ゴルチル様、その呪に掛かっていれば、他の呪には掛からなくなりますか?」


【残念だが、無害な呪は、それなりだ。

個紋の呪と同じく、重ねて掛かる。

キュルリをハクに持たせろ。二人は魔法円を囲め】


アオとサクラは、ゴルチルと正三角形を成すように立ち、神以鏡を掲げ、気を高めた。


 囲めの、ひと言だけで

 他に何も言わずとも、これだからな。

 この二人、天竜にしておくのは惜しいな……


そんな事を思いながら、ゴルチルは術を唱えた。



 解呪が終わり、ハクはサボれた事を喜びながら城に戻った。


「ゴルチル様、俺達、それ程の者ではありませんので」

二人、苦笑しつつ礼。


 また拾いおったのか……


「勝手に入って来るだけですよ」


「これ、兄貴達から始まったんですよ。

ずっと困ってるんですけど~」


【閉じる事が出来ぬのか……待っていろ】


ゴルチルが消え――カルサイを伴って戻った。


【最高神の力をこんな事に使うのも何だが、互いにとっても困るのでな。頼む】


【確かに困った状況ですね】魔法円を出す。

【調整出来るようにしますね。

アオ、中央に――】



 アオに続いて、サクラも調整出来るようにしてもらった。


「静かだ~♪」「うん、スッキリしたね♪」

二人、大喜び。

絡み合うように、じゃれ合いながら昇り――


【アオが、あんなにも喜ぶとはな……】


【サクラも、いつもの『振り』ではなく喜んでいますよ】


――満面の笑顔で戻って来た。


「カルサイ様、ゴルチル様。

ありがとうございました!」揃って礼!



「アオ兄、これから何するの?♪」


「外周の祠を整えようかな」


【それはルバイルがやっていたぞ】


【はい。全祠、使わせて頂いていますよ】


「あらら~」「なら、お礼を言わないとね」

「竜宝の国の祠かなぁ?」「行ってみよう」


二人が籠の方を向くと――


「オパルス様?」「どうかしましたか?」


オパルスが芳小竜達を見詰めていた。


【この子達……】

眠っている芳小竜をそっと掌に掬った。


「チモニーとカロールが何か?」


【その名……なぜ御存知なのですか?】


「ルバイル様が、芳小竜達を元竜の名で呼んでいるのです。

元竜――神竜様をご存知なのですか?」


オパルスが頷いた時、

【その名は、オパルスの御両親なのです】

「両親共に、若い頃、呪を受けた事が有ると聞いております」


背後からの声にアオとサクラが振り返ると、オニキスとスピネルが祠の前に立っていた。


「では、あの子達は……」


【両親の気を感じます。

間違いなく両親の芳小竜です】涙が落ちた。


きゅ? 【あ……】チモニーとカロールが固まる。


そして逃げようとした。【待って!】


「チモニー、カロール。

そのままでいいんだよ」【とぉさま……】


「その方は元竜様の――」【オパルス?】


【えっ……】【いっしょに あそんだもの】


【スピネルも あそんだよ】【ね~♪】


「ちゃんと覚えているんだね……」


「この子達は幼子のようでいて、しっかり理解しているし、思いやれるし、記憶も消えないんです」


「オニキス、オパルスを頼んだよ。

アオ様、サクラ様、こちらにお願いします」


二人はスピネルに付いて祠に入った。




「祖父母から聞いた事を話します。


私達の両親は、神竜であった頃から魔王との戦に参じていたそうです。

私達が、まだ孵化していなかった頃に、その戦の中で呪を受け、芳小竜を使って解呪したそうです。


解呪後すぐに両親は神に成る事を決め、家を出、神には成ったそうですが……

家に帰る事も無く、行方知れずとなってしまったのです。


祖父母は芳小竜達を、家を出た我が子の代わりと手元に置き、可愛がっていたそうです。

しかし、両親が行方知れずとなった事で、親族が、禍の元というのは本当だったと持ち去り……それっきりに……」


「では、お二人は、御両親とは――」


「はい。会った事がありません。

この、角の欠片だけが、私達の両親なのです」

二つの飾りが揺れる腕輪を示した。


【欠片が有るのでしたら……確かめますか?】


カルサイとドルマイが微笑んでいた。


【どこまで判るなどとは申せませんが、存在の有無ならば判る筈ですよ】


「お願いしても……よろしいのでしょうか……」


【救えるのならば、お救いしたい。

アオとサクラの顔に、そう書いています】


「ほえ?」「あ……」顔を見合わす。


【お呼びでございますか? カルサイ様】

オニキスとオパルスが来た。


【スピネル、オパルス、芳小竜と腕輪をお借りしますね】


魔法円の中央にチモニーとカロールを座らせ、腕輪を持たせた。


【術のお手伝い、お願いしますね】


【は~い♪】揃って片手を挙げる。


カルサイが術を唱える。


アオとサクラは気を高め、持てる力を全開にした。


芳小竜達の上に、二神の姿が見えた。


 滅されては……いない。しかし……

 闇に閉ざされ、動けないでいる……?


 何処に込められているのか……

 異空間である事だけは確からしい。


 異空間に繋がる物は?


 何かに阻まれている……強い呪……

 魔王の闇……複数の? 混ざっているのか?

 その中に、異空間に繋がる何かが在る。


 闇と呪の更に外にも、硬い何か……殻?

 ……違う。岩だ!


 その岩は何処に在る?

 知っている……この感じ……そうか!


アオとサクラは目を合わせ、頷き合った。


【見えたのですね?】「はい!」


「生きているのですか?」


「封じ込められています。

強い呪の中に……でも、滅されてはいません」


【場所は?】「長老の山の中庭です」


【では、参りましょう】



――長老の山、中庭の大池。


嫗亀(ウキ)様、呪を解かせて頂きます」にこっ。


「おやおやまあまあ……

これは一体、何事でございましょう?」


「アオ、サクラ、大神様方をこのよぅな所にお連れするとは……」


【その岩山には、神が封じ込められているのです。

ご協力、よろしくお願い致します】


「じゃが……この通路は……」


【それも移させて頂きますので、ご心配には及びません】


「そうですか……それでは、お任せ致します」


嫗亀は岸に上がり、身を低くした。



 カルサイが嫗亀の周りに魔法円を描き、大神達がそれを囲んだ。


【アオ、サクラ、何をしている。囲め】


「ゴルチル様……俺達は、ただの竜ですよ?」


【いい加減、認めろ。神をも凌ぐ竜よ】


立たなければ始まりそうもないので、二人は空けられている場所に立ち、神以鏡を掲げた。


【では、解呪を始め――】【お待ちください】


 ルバイルが沢山の芳小竜を連れて現れた。

芳小竜達は岩山に向かって飛び、その頂付近に抱きついた。


【チモニーとカロールに同調し、騒ぎ始めた子達を連れて参りました。

この状況……納得です。

あの子達の元竜は、あの内に居ます。

解呪の助けとなるでしょう】


【オパルス、だいじょ~ぶよ♪】

【スピネル、いってきま~す♪】

チモニーとカロールも岩山に くっついた。


それを見たドルマイが消え、絆神達を集めて戻った。


【ヒヨッコ共、何をボーッとしている。

更に外を囲んで護れ。

呪が飛んだら、どうする気だ】


「始祖様、俺達が内って――」


【オッサンも言ったろ。四の五の言うな】



 カルサイが術を唱え始め、岩山の頂に光を当てた。

大神達が順に声を重ね、光を重ねていく。

アオもサクラも伝わった詞を声にして重ね、神以鏡の光を重ねた。


岩山が光を帯び、その内に、光の球が浮かび上がった。


亀裂が走る。


闇黒の靄が溢れ出、神の光に吸い込まれていった。



内に蓄えた光が迸り――


岩山の上半分が弾け、煌めきとなって消えた。


宙に浮いた光の球が、周りを囲む者達に向かって飛んだ。


アオとサクラは慌てて神以鏡を仕舞って飛び、光の球を受け止め、集めた。


「水晶?」


【各々、複数の神が封じ込められている。

お前ら、落として割るなよ】



【岩山は、深蒼の祠の庭に移しましょう】


 大神達は嫗亀の甲羅から、半分になった岩山を離し、宙に浮かせると、岩山ごと消えた。

絆神達が慌てて追って消える。


「水晶……俺達が、ぜ~んぶ運ぶのぉ?」


「そうみたいだね」あはは……





 姫の絆神オパルスと、その兄スピネル。

この二人の両親も行方不明でした。

つまりオパルスは、両親も兄も行方不明だった

為に、若くして神に成ろうと決心したのでした。



 さて、静かにしている深魔界西部では――


魔【近いうちに彼奴等は西半分に入る筈だ】


影「何か策がお有りなのですね」


魔【当然だ。時を稼がねばならぬ事に

  変わりは無い。故に――】掌を翳す。


影「ははっ。では、そのように――」


魔【静かに進めるのだ。ひたすらに静かにだ。

  事が成れば攻め込む。兵だけは集めよ】


影「ははっ!」


魔:もうすぐだ。やっと機が熟す。

  あとは、あの老い耄れさえ現れなければ――


前【おい】


魔:ゲッ……無視しよう。


前【聞こえないのか?】


魔:目を開けてはならない……無視だ。

  私は眠っているのだ。


前【暢気に寝ているのか。愚か者が】


魔:行ったか? 消えたのか?

  気は感じない……か――【ごわっ!?!】


前【やっと起きたか。馬鹿者めが】


魔【光!? ヤメッ!! 滅する気か!?!】


前【ふはははは♪ ほれほれ♪】


 魔王は必死で逃げ、牆壁を立てた。


魔【な、何をなさるのかっ!? その光は!?】


前【お前が採取した因子(アオ)の光だ】


魔【何故そんなモノがっ!?】


前【ひとつだけ残っていたのでな。

  光を封じる器に入れておいたのだ】


魔【でっ! 何故そんなに強い光がっ!?】


前【アオが強くなったのでは?】


魔【そんな暢気に……それよりっ!

  早く蓋を!】


前【閉めよ】


魔【はあっ!?!?

  開けたのは貴方様でしょーがっ!!】


前【開けたはよいが、近寄れぬ。閉めよ】


魔【出来るかっ!!!! 死ぬわっ!!!!】


前【では、な】消えた。


魔【逃げやがった!?! あのジジイッ!!

  どーすりゃいいんだよぉ……】


影『龍神帝王様っ!? 何が――』


魔【開けるなっ!! 入るなっ!!

  お前らは瞬殺されるっ!!!!】


影『では、お逃げください!!』


魔【そうするより他に無しだな……】室外へ。



影「何があったのですか? 襲撃ですか?」


魔【アオの光が……】


影「襲われたのですねっ!?

  では、この部屋を封印しましょう!」


魔【そうだな……】私の部屋が……はぁ……



 自室を封じた魔王は、意気消沈が甚だしく、

新たな部屋に閉じ籠った。


影「ご指示通り進めておりますので、

  ご案じ無く、お休みくださいね」


魔【お前……いいヤツだな……】


影「配下として当然の事をしている迄です」


魔【そうか……】フフッ……


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