深魔界2-東側侵攻
大勢で、ごちゃごちゃしています。
♯♯ 北側経路 拠点内 ♯♯
(あれっ?)(サクラ、どうしたのだ?)
先頭を進むサクラが立ち止まった。
(アオ兄が後退した……カルサイ様も……)
【サクラ~、やみ~】(ありがと)なでなで。
(サクラ、大丈夫だからね。
そっちも現れたから気をつけて)
(うん。気をつけてね、アオ兄)
(キン兄、魔王 来たよ)
(そのようだな……)
キンとサクラは身構え、気配を探った。
♯♯ 中央経路 拠点内 ♯♯
きゅるっ!【闇! ――と言っています】
バナジンがチモニーの通訳をする。
(どこに居るんだ?)
きゅるるる。【この下だそうです】きゅる♪
(この下ですか……)(地下って事か……)
最上階から下りて来、地上階にいたハク達は、戦い易い外に出た。
♯♯ 後方の拠点 ♯♯
(気配が消えたね……)
拠点の真ん中に曲空し、魔王の気を探した。
(アオ、すまなかった)(何が?)
(先程――)(何かあったっけ?)
(解かなくて……)
(謝るような事なんて、何も無いからね)にこっ。
(アオ……)
(全て愛情だって、ちゃんと解っているからね。
それに、俺の代わりに頑張ってたのも知っているからね)にこにこ♪
(起きていたのか?)
(うん、自分の天性だし、技だからね。
ルリなら大丈夫だから見ていたんだ)
ルリを引き寄せ、優しく抱きしめた。
(ありがとう、十分 休めたよ)髪を撫でる。
(でも、続きは後だね……来たぞ!)
二人、瞬時に戦闘に入る。
そこからは言葉は不要。
一人であるかのように攻撃を繰り出し、魔王の攻撃を躱し、曲空を繰り返す。
♯♯ 北側経路 拠点内 ♯♯
(キン兄、光は使えるからねっ)神以鏡を出す。
【気を消せ。姿もだ】
キンとサクラは頷き、ゴルチルの言に従った。
【そのまま魔王に向かえ】
二人と二神は、魔王に向かって進み始めた。
♯♯ 中央経路 拠点外 ♯♯
(出て来るかな……)
(ま、来なきゃ行くまでだ♪)
(そうですね……)
(あ……護竜甲殿、慎玄様に展開お願いします)
【はい、フジ様】
背の慎玄が気付き、微笑みで感謝を表した。
きゅる!
宙に歪みが生じ、闇の穴が開いた。
(すんなり出て来たなっ♪)
三竜と二神は散開し、身構えた。
♯♯ 南側経路 拠点内 ♯♯
(何も居らぬのぅ)
(こちら側、最後の拠点ですが……)
(あら♪ 籠が沢山♪)
(これも魔宝なのでしょうか……)
(気を感じないわ。ただの容れ物かしら?)
(この卵みたいな石、何なのかしら?)きゅる♪
(母様、触れない方がよろしいかと――)
(ただの石よ)お手玉ひょいひょい♪
(ワラワもっ♪)五つひょいひょい♪
(負けないわよ♪)だったら六つよ♪
(負けぬぞ♪)ならば七つ!
(母様……)(姫様……)遊んでいる場合では……
♯♯ 後方の拠点 ♯♯
アオの周りに、魔王が発した闇が立ち込め、迫り来る。
この闇……この感じ……呪かな?
(カルサイ様、お入りください)
アオとルリは、天に向かって何かを放った。
一拍置き――
落下の地響きを伴い、空間が水に変わった。
闇が溶け込み、消える。
魔王は水の外に出ようとしたが、穴も穿てず、次第に動きが封じられ、移動も出来なかった。
声無き絶叫……
♯♯ 北側経路 拠点内 ♯♯
サクラの目の前に魔王が現れた。
――が、背を向け、辺りを探っているようだ。
ホントに気づいて……ない? じゃあ――
至近距離で神以鏡から光を放った!
刹那、三方から光が飛んで来た。
魔王は不意討ちの光に包まれた。
♯♯ 中央経路 拠点外 ♯♯
紫炎が豪速で拡がり、辺りが明るくなる。
魔王の姿は消えていた。
きゅっ!
チモニーが宙の一点を指すと、空間に僅かな歪みが生じた。
神が光を放ち、ハクが続く。
クロが突風で紫炎を煽った。
現れた魔王が光と紫炎に包まれた。
慎玄の放った雷の輝きで視界が純白になる。
♯♯ 北側経路 拠点内 ♯♯
サクラが動きの鈍った魔王を掌握で掴む。
ゴルチルとコバルトとキンが姿を現し、絶叫を上げ続ける魔王に当てる光を強めた。
――静寂が訪れる。
【片付いたな】二神は浄化を始めた。
♯♯ 南側経路 最終拠点内 ♯♯
(この石の卵……何処かで……)
姫がお手玉を止めた。
(姫様、ご存知なのですか?)
(ふ~む……そぅじゃっ!
キュルリの卵じゃ!)
(この小さな竜ですか?)きゅる? きゅ♪
(この竜も卵から生まれるのですか?)
(然様じゃ。
アオが、こぅ掌に乗せて、サクラと二人で術を唱えたら孵化したのじゃ。
じゃが……あの時の卵は青かったのじゃ)
(これは、白い竜の卵なのでしょうか……?)
(魔王ならば黒じゃろうがのぅ……)う~む……
♯♯ 後方の拠点 ♯♯
アオは拠点の外から、他の気の有無を確かめていた。
闇も呪も、竜宝や魔宝の気も感じない。
あ、竜骨が見えるね。
背後から襲撃しようとしただけなのか?
(フジ、ありがとう。そっちは?)
(いえ、アオ兄様のお役に立てて嬉しいです。
こちらは終わった所です。
バナジン様とビスマス様が浄化しています)
(そう。無事で良かった)
【アオ、この牆壁は、ただの水ではありませんね?】
(はい。神聖光輝と聖輝煌水と色々です。
神以鏡を通じてフジに放って貰いました)
【では、もう浄化が終わった頃でしょうか……】
(そうですね。神モドキですから窒息はしないでしょうけど……
不十分なら光を浴びせるだけですね。
参りましょう)
アオは拠点を包む巨大な水の牆壁を解き、曲空で拠点に入った。
戦っていた場所では、神モドキが呆然と宙を漂っていた。
カルサイが浄化を始めた。
♯♯♯
その後は、追加攻撃有りと踏んで、更に慎重に進んだが、北側、中央経路共、難無く深魔界と魔界の境界まで到達した。
(この結界は、真魔界に行かないと解除できないんだね~)
サクラが地下魔界と深魔界を隔てる結界を探っている。
(まぁ、最初から、そう思っていたから問題無いよ)
(結界竜宝 埋めよ~)(そうだね)
サクラが地下魔界側に曲空し、二人は魔王の結界を挟んで、新たな結界を成すよう竜宝を埋めていった。
(アオ兄、ずっと起きてたでしょ)
(サクラには隠しようが無いよね。
でも、どうしてルリには言わなかったの?)
(何か考えがあるのかな~って思ってね~。
ケンカになったら どぉしよ~って心配もしたんだよぉ)
(そんな事で喧嘩なんかしないよ)あははっ。
(ルリ姉、静かに怒ってるんじゃないの?)
(謝りこそすれ、怒るなど――)
(謝る必要も無いからね)
(ホント、仲いいんだから~)
(うん。そうだけど、何?)(はいはい……)
(ねぇルリ、何でサクラは、そんな事を改めて言う――ルリ?
どうして黙るんだい?
ねぇ、ルリ? どうして睨んで――えっ……)
(アオ兄、手が止まってるよ~)
アオは返事をせず、俯いたまま作業を再開した。
(アオ兄? ……どしたの?)埋めるの速いし~
サクラはアオを追いかけ、結界を挟んで顔を覗き込もうとすると――
アオは、くるっと背を向け、
(……ルリ姉?)
無言のまま、どこかへ曲空してしまった。
一瞬しか見えなかったけど……
ルリ姉……かわいい……
アオがルリに ぞっこんな理由が、解ったような気がしたサクラであった。
(サクラ、アオは?)クロが現れた。
(またルリ姉に縛られちゃった~)あはっ。
(で、どこに居るんだ?)
(わかんな~い)
(大丈夫なのか? あの二人)
(それは だいじょぶ~)
(そっか。ならいいけど……コイツら、どーすんだ?)
クロが持って来た籠の中には、すやすや眠る芳小竜達が入っていた。
(この籠、どしたの?)
(桜華様が、どっかから持って来たんだ)
(ふぅん。
次、俺とアオ兄が警護だから預かるね)
(ん。じゃ、頼んだっ)言うより先に曲空。
クロ兄は、姫に まっしぐらだね~
俺……ランに いつ会えるの?
明後日の会議?
そんなのって……
これ早く終わらせて、
ちょこっと行ってこよ~♪
深魔界を東端の地下魔界との結界まで
制覇しました。
ほぼお留守で楽勝だったんですけどね。
東半分は既に放棄していたんでしょうか?
得たものの謎だらけです。
青(ねぇルリ、解いてよぉ)
瑠(自分で解けるのだろ?)
青(そんな事 言わないで、ね?
って言うか、どうしてまた縛られないと
いけないんだろ? 教えてよルリ~)
瑠(賢いのだから自分で考えればいいだろ)
青(もしかして……こういう嗜好が――)
瑠(違ぁうっ!!!!!!)眠りを重ねる!
青:…………
瑠(本当に眠ったのか?)ゆさゆさつんつん。
青:…………
瑠:ほっ……
青(だから、自分の天性には掛からないよ)
瑠(やはり自分で解けるのではないかっ!)
青(そうだけどね。
眠らせて何がしたいのかと――)
瑠(もう知らぬ!)
青「ねぇキュルリ。
母様は何を怒っているんだろうね」
複製はキュルリを奪って逃げた。
青(ルリ~、酷いよぉ)
♯♯♯
赤「時々とんでもなく馬鹿なのだな……」
心配になって様子を見たアカが呟いた。




