深魔界1-楔を打ち込む
進みます!
「アオ兄、これから どぉするの?」ポリポリ♪
「この子達に、魔王の闇の気配を覚えて貰うつもりだよ」
これは、こっちかな……
アオとサクラは、洞窟のアオの部屋で休憩していた。
芳小竜達は くっついて丸くなり、お昼寝している。
「それって……」
「うん。璧を貰った拠点の、すぐ南の拠点に行こうかと思っているんだけど」
「そんなサラッと自分家に帰るみたく~」
「深魔界は手薄だからね」パラパラパラ……
「言い切っちゃった……」ポリッ。
「魔王達は、真魔界で籠城したから攻めて来ないんだと思うよ」
こっちに入れて――
「ふぅん……
でも、拠点に魔王いたよね?」カリカリポリ。
「最後の御老体の他は欠片じゃないかなぁ。
いやにアッサリ終わったからね」う~ん……
「留守だってバレないよ~に偽装?」
「だと思うよ」やっぱり入りきらないな……
「ねぇ、本より食べよ~よぉ」袖 掴む。
「あ……そうだね」本を持ったまま座る。
(アオ、こちらは皆 揃ったぞ)
(キン兄さん、すぐ行きます)
「アオ兄! 食べてからっ!」(そうだぞアオ)
【とぉさま~】きゅる…… きゅ~
「あ、起きたの? じゃ、行こうね」なでなで。
「無視しな~い!
もおっ! 食べるまで移動させないよっ」睨む。
「仕方な――あっ!」動き止まる。
「ったく! 世話の焼ける」食べ始める。
「ルリ姉、何したの?」
「念綱で縛った」(ルリ、解いてよ)(後でな)
「やるね~」あはは……
(ルリ~、解いてよぉ)(少しは休め)
♯♯ 地下魔界 ♯♯
そして地下魔界に集合し、地下警護を魔人の軍に引き継いだ。
ルリが深魔界の地図を広げた。
(以前に得た拠点が、南端中央付近の、こちらです。
今朝の拠点が、その北東、こちらです。
二拠点間で今朝の拠点の南、この拠点を押さえれば、この三拠点で、深魔界に楔を打ち込んだ形に出来ます。
その西側に結界を成した後、東の地下魔界との境界に向かって、進攻するつもりです)
(なぁルリさん。アオは、どうかしたのか?)
(戦闘開始まで休ませます。それだけです)
(サクラ、夫婦喧嘩か?)
(違うよ~、食べないし休まないから~)
(強制休養ですか?)
(うん、それっ♪)
(あのアオに……凄ぇな……)
(念綱で縛って、治癒で眠らせたって~)
(お……おとなしく聞こう)
(ですね)(だな……)(うむ)
(これまでの拠点と同様、光に対する結界が成されている筈ですので、
アカ様、姫様、先行して神眼と掌握で結界魔宝を回収してください。
その後――)
(オレは?)
(神眼は姫様が最強であり、掌握が必要ですので、クロ様は後方より監視と供与をお願い致します)
(遊びではないのじゃ。我慢致せ)
(ありがとうございます、姫様。
アオは、深魔界は手薄だと考えております。
その通りであれば、この経路で進攻します。
後は状況次第となります)
地図に示しながら、話を進めた。
(で、子連れで行くのか?)
(この子達は闇に対しても、とても敏感ですので、魔王の闇を検知する為、お供させます)
【神は、俺と親父とオッサン、あと愚息。
それと、鍛冶屋と筋肉だ。
ヒヨッコ達は次回からだ】
コバルトの声が聞こえた。
(えっと……)
(始祖様、カルサイ様、ゴルチル様、バナジン様、金虎様、ビスマス様ですね。
絆神様方は、次回から参ずると仰っております)
(よく分かるよな)
(始祖様には、よく絡まれるから~)
(慣れ、ですか?)
(うん♪ 始祖様語にも慣れちゃった~)
神達がサクラから出た。
(神様と言えども男性ですので、十二分にお気をつけください。
では、参ります!)一斉に曲空。
♯♯ 深魔界 ♯♯
得ていた二拠点を繋いで囲む結界を東側に拡げ、ルリとサクラが成した闇と光の牆壁を盾にして南へと進み、若干の抵抗を蹴散らすと、欠片らしき魔王が退却し、三つ目の拠点は静かになった。
アカが結界を張り直す。
(アオ兄が言った通りだね~)
(そうだな。だが、慎重に行くぞ)(うんっ)
(チモニー、カロール、魔王の闇は覚えたか?)
【はい♪ かぁさま♪】【おぼえた~♪】
(似たような気を感じたら教えるのだぞ)
【は~い♪】三人、嬉々として片手を挙げた。
(これから一気に東部を制圧します。
光を持つ方は、後方で待機願います。
アカ様、姫様、結界魔宝を我々の近くに置いてください。
鍵の呪は触れても大丈夫ですが、他の呪には、くれぐれもお気をつけください)
アカと姫が頷き、曲空した。
ルリは勝闇の壺を置き、サクラと二人、壺の口に手を当てた。
(頼んだぞ、勝闇)
【お任せくださいませ、ルリ王妃様】
すぐに結界魔宝が現れた。
【かぁさま、やみ つよいよぉ】
【おめめ いた~い】【ちくちく~】
(隠れていろ)よしよし。
(サクラ、呪を確かめてから触れろよ)
(うん……だいじょぶ)
サクラは、闇を纏った掌握で掴み、その指先から一瞬だけ光を放った。
(やっぱり、すぐ消されちゃう~)
結界魔宝を闇で包み、
(壊れないよぉにするからね。
だいじょぶだからね~)なでなで。
光臨鐘で囲んだ場所に置くと、空かさず神が光を当てた。
【解呪完了だ】
(ありがとうございます)解除。
次々と現れる結界魔宝の呪を解き、解除していく。
(クロ様、拠点結界の境界は?)
(遠ざかってる。進んでいいのか?)
(限界点までお願い致します)
クロの先導で、次の拠点の近くまで進んだ。
(クロ様、あの拠点に供与は届きますか?)
(任せろ♪)
(では、ハク様、フジ様、慎玄様。
この子を連れて、中央経路を進んでください。
闇を感じたら知らせてくれますので。
チモニー、頼んだぞ)【は~い♪】
地図を示し、ハクにチモニーを渡す。
アカと姫が戻った。
(まだ残っておるのじゃが、あとは、その場に行かねばならぬよぅじゃ)
(ありがとうございます。
目の前の拠点では、どちらに御座いますか?)
(一番上の部屋じゃ)
(よし! フジ、頼んだぞ!)掴む。
(ではっ)慎玄の手を取り、曲空。
(姫様、この南の拠点は如何ですか?)
(そちらは中程の階の真ん中じゃ)
(では、桜華様、紫苑様、珊瑚様。
南側経路をお願い致します)
三人頷き、姿を消した。
碧の光が追って動き、消えるのが、神眼にだけ見えた。
妖狐王様だ~♪
だったら南側は安心だね~♪
フジが少し離れた場所に現れた。
(これですか?)(それじゃ♪)
(勝輝、あの闇は吸えるか?)もうひとつ壺。
【お任せくださいませ、ルリ王妃様】
(サクラ、私が掴む)
複製を出し、そこから掌握を伸ばした。
フジから結界魔宝を受け取り、光臨鐘の内に置く。
神が光を当て、解除。
ルリは拠点内部を掌握と神眼で確かめた。
(神様、お願い致します)
バナジンとビスマスがフジと共に、ハク達を追った。
白九尾が戻った。
(私共は、結界魔宝探しを致しつつ進みます。
拠点の浄化はお願い致します)
(ならばワラワも参るぞ♪)紫苑に乗る。
姫の頭にキュルリが乗った。
(では、参りましょう)消えた。
紫苑が置いた結界魔宝を解除し、
(キン様、サクラ様、北側経路をお願い致します)
苦笑を浮かべた。
(えっ? 俺も?)
(アオが起きてしまった。
ここは私達だけで大丈夫だ)
(じゃ、行くけど……気をつけてね)
(サクラこそな)カロールを渡す。
キンとサクラに、ゴルチルとコバルトが付いて行った。
(クロ様、ハク様と合流してください)
(キン兄の方の供与は?)
(お二方共、昇華をお持ちですので、ハク様の方をお願い致します。
そちらは、供与も神眼もクロ様のみ。
よろしくお願い致します)
(ん、解った。任せろ♪)曲空。
結界を成すアカと金虎の進行に合わせて、結界魔宝の解除場所を動かしつつ、ルリとカルサイは解除をした。
(ねぇルリ、そろそろ解いてよ)
(私がそう言って、すんなり解いてくれた事があるのか?)
(忘れた~)
(しっかり休め)ふんっ。
(お~い)
これは、やけに頑丈だな……ん?
……まさか……!!
(ルリ! さっきの拠点だ!)解いて曲空!
【金虎様、こちらをお願いします!】
カルサイはアオを追った。
これまでに得た拠点を起点にして、
北、中、南の3経路で東へ東へ――
〈北側〉キン、サクラ、カロール、
ゴルチル、コバルト。
〈中央〉ハク、クロ、フジ、慎玄、チモニー、
バナジン、ビスマス。
〈南側〉紫苑、珊瑚、桜華、姫、キュルリ。
〈浄化〉アカ、金虎。
〈後退〉アオ、ルリ、カルサイ。
前日――
影「龍神帝王様、御呼びで御座いますか」
魔【彼奴等が、ここを攻めるようだ】示す。
影「では、守りを――」
魔【ここには罠を仕掛ける。
おそらく彼奴等は、ここから東の結界へと
侵攻しようとする筈だ。その動き有らば、
東半分の者は、この策に従え】掌を翳す。
影「ははっ!」
魔【あの老い耄れが邪魔をせぬよう、
素早く行動せよ】
影「ははっ!」
いや、邪魔を阻止するのは
貴方様にしか出来ないかと……
魔【早く行けっ!】
影「ははっ!!」
暫くして――
影「あの、龍神帝王様――」
魔【今度は何だ?】
影「これは如何致しましょう?」
魔【捨て置け】
影「は? 熱心に研究なされていたと
存じますが……」
魔【それは試作だ。
成功した物は、既に植え付けておる。
最高神ですら見つけられぬよう
隠す事にも成功しておるのだ。
それは、最早、用無しとなった物だが、
今は時を稼ぐべきだ。その為に利用する】
影「時を稼ぐ……で御座いますか……」
魔【置いておけば不気味であろうし、
彼奴等は調べようとするであろう。
今暫し、時を要するのだ。今暫しな】
魔王はニヤリとし、姿を消した。




