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三界奇譚  作者: みや凜
第一章 竜ヶ島編
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砂漠編20-カリヤ

 皆で話し合った事は、無駄にはなりません。

これからの力になるんです。

仲間って、協力って、大事ですから。


 夜明け前、アオ達は――


「サクラ、気をつけて帰れよっ」ぽふっ

「洞窟で待っていてくださいね」にこっ


「うん……じゃあ……後でね」飛んで行った。


アオ達は、聳え立つ岩山に向かって進み始めた。



♯♯♯♯♯♯



 サクラは、アオ達が目指す岩山の遥か上空に戻った。

目を閉じ、地上の様子を見る(・・)


「サクラ、アオの事、真実を教えよ」


威厳ある低い声に驚いて目を開けると、(あお)の煌めきを(まと)った大きな白い妖狐が、真正面に居た。


 飛んで……る?


「この程度、造作も無い事。

儂は、アオの事が知りたいのだ。

何故、あのような事になっておるのか教えよ」


「もしや……妖狐王様で御座いますか?」


「そうだ――と言えば、信じるのか?」


「……並みの神より、遥かに大きな強い気をお持ちの貴方様が、何方であるのかなど、問題ではありませんね」

緊張を解く。


「ふむ。流石、アオの弟だ。

いや、分身――とでも言った方が、よいのか?」


「そこまで御存知なのですね……

では、お話し致します」


サクラは、天界の門から人界へと、初めて飛び立った日の事を、全て話した。



♯♯♯



「ならば、サクラの封印も、アオの為なのだな?

そういう事情であれば、まだ、解く事は出来ぬのだな?」


「その通りで御座います」


「護りきれるのか?」


「分かりません……護りたいのですが……」


「アオ自身の力が使えぬのならば、サクラ同様、竜宝の力を借りよ」


「しかし、兄の場合は、内なる力、全てを封じておりますので――」


「身に着けるだけでも、アオならば力を得られよう。

三眼(サンガン)の玉を早く集めよ。

四眼(シガン)を見つけよ」


「それも……御存知なのですか……」


「ガ剣――特に雅剣(ミヤビ)牙剣(キバ)は、竜宝剣の中でも最高位だ。

アオの力として申し分無い。

三剣 有れば、竜も喚べる。

それに、封印を解く際にも、力は必要だ」


「三剣……あと、ひと振り……」


「心配は要らぬ。

キンが蒼牙(ソウガ)の欠片を持っておる。

それを元にし、アカに復元させる」


「蒼牙……アオ兄の剣……

その欠片が洞窟に……!!」

サクラは、洞窟の方を向いた。


「何処へ行く? そちらは任せよ。

サクラは、この砂漠に残る三眼の玉を集めよ。

これだけ有れば、三眼は目覚める」


サクラは下を見た。


「孫達の事は、心配無用だ。

三眼の方、頼んだぞ」


妖狐王は、サクラの額に掌を当てた。

光が迸り、サクラは意識を失った。


「サクラの内なる、華雅(カガ)の三眼の魂よ。

己が宝玉を呼び集めよ」


サクラは、全身から光を放ち、人姿になった。

その背には、輝く翼が現れ、大きく羽ばたいた。


「強い封印であるな……少し力を貸そう」

もう一度、光を当てる。


碧光を帯びたサクラは、ゆっくりと降下した。



♯♯♯♯♯♯



 珊瑚は手を振りながら、袴の裾が引っ張られているような違和感を覚えていた。

振り返り、足元を見ると、兎が袴の裾をツイツイと引いている。


「あら?」

珊瑚は、しゃがみこんで目線を兎に合わせた。


「失礼致しました。

今は力を使いきっておりまして、このような姿で、申し訳ございません」

兎は片手を胸に当て、丁寧なお辞儀をした。


「先程、母の足元にいらっしゃいましたね」

「何故、一緒に行かなかったのですか?」


紫苑は、兎を卓の上に載せた。


兎は咳払いすると、

「ワタクシ、天界の天兎(あまうさぎ)王にお仕えしております、カリヤと申します。

こちらの砂兎達が、魔物に操られ、人界でご迷惑をお掛けしていると聞き、偵察に参ったのですが、

姫様と若様が、魔物に操られ、拐われたのを拝見致しまして、妖狐王様の三の姫様が拐われたと思ってしまいまして――」


カリヤは言葉を切り、二人を見た。

珊瑚が微笑んだのを見て、話を続けた。


「急ぎ、ハザマの森に向かい、狐の社守(やしろもり)殿に伝えましたら、

三の姫様は、社にいらっしゃってまして……

見たままをお話し致しましたら、姫様は血相を変えられまして、こちらに――」


「カリヤ殿、ありがとうございます」

二人は深々と頭を下げた。


「いえっ! いえ、そんなっ!

若様、姫様、お顔を上げてくださいませっ!」


焦りまくりでピョコピョコ跳ねるカリヤに、

「『若様』をやめて下さるなら……」

「『姫様』をやめて頂けるなら……」

二人は、頭を下げたまま同時に言った。


「あっ、はい!

ご命令とあらば従いますっ! はいっ!!」


 その時、頭上から何かがパラパラと降ってきた。

カリヤが上を見ると、天井に大きな亀裂が走って来ていた。


「姫様! 若様!

ワタクシの耳にお掴まりくださいっ!」


 二人が掴むやいなや、カリヤは耳を大きく広げ、壁の穴から飛び降りた。


ふわりふわりと砂に降り立つ。


着地と同時に、紫苑はカリヤを抱え、二人は全力で走った。


背後で、岩山が地響きを立てて崩れていった。



「しおぉ~ん! さんごぉぉ~!」

姫が息を弾ませて駆けて来る。


「会いたかったぞっ♪」

勢いよく珊瑚に抱きついた。


「何ともないのか? ケガはしておらぬか?」


珊瑚が笑いながら頷く。


「魔物は退治したのか?」紫苑の方を向く。


紫苑も笑いながら頷く。


「兎がケガをしたのか?」

ぐったりしているカリヤを見て言った。



「ったく~

乗せて飛ぶから待て、つってんのに~」


「聞こえなかったぞ、クロ。

それより、フジ、兎の薬は作れるのか?」


フジは紫苑からカリヤを受け取り、

「砂兎ではなく、天兎ですね……

これは……眠っているようですが?」


「力を使いきってしまったのだと思います」


「私達の恩人ですので、

ゆっくりお休み頂きたいのですが……」


「蛟殿、小屋と水をお願いします」


フジは振り返ったが、蛟がいない。


小屋と池は、既に整っていた。





凜「紫苑、珊瑚、大丈夫?」


紫「ええ、身体の方は何ともありませんよ」

珊「色々ございましたので、落ち着きたくは

  ございますけど、大丈夫ですよ」


凜「お母様とも会えて良かったですね」


二「はい♪」


紫「母が、あまりに珊瑚そっくりで驚きました」

珊「鏡かと思いましたよ」くすくす♪


凜「アオもキン様を見た時、そう思ってたよね」


二「あの時は私共も、そう思いましたよ」


凜「これから、どうやって修行を?」


紫「静かな所で瞑想し、互いの気を見て、

  自在に操れる域まで達したいと

  思っています」


凜「互いの……

  竜王子達も仲がいいけど、二人もホント

  仲がいいよね~」


珊「互いしか居りませんでしたので……

  でも、二人だから生きてこれたのです」


凜「そっか。

  これから、それぞれに恋人ができたら

  どうするの?」


二「え………………」顔を見合わせる。


紫「考えたことも……」

珊「ございませんでしたので……」


凜「いや、考えようね」


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