芳小竜7-チモニーとカロール
芳小竜は、よく遊び、よく眠ります。
♯♯ 竜宝の国 ♯♯
アオとサクラは、馬車から森の家に戻った。
【おや、また見つけましたか】にこにこ♪
「ルバイル様、どうして今まで姿を見る事が無かった芳小竜達が、こんなにも現れるようになったのでしょうか?」
【芳小竜は、常に誰かに寄り添っていたい、寂しがりな性格なのです。
ですが、身を隠している……
それに、とても敏感ですので、アオとサクラの気持ちを察知して、痕跡の有る場所に現れるようになったのではないでしょうか】
クロが個紋が見えると言った、緑と黄色の芳小竜が水晶の方へ飛んで行った。
「敏感……確かに……」
「そぉいえば、キュルリは闇の穴が開く前に気づくよね~」
「そうだね。神竜様の芳小竜なら、もっと魔王の闇に敏感なのでしょうか?」
【可能性は大いに有りますね】
「芳小竜も竜宝だから、お手伝いは好きなのでしょうか?」
【そうですね。
役に立つ事は喜びだと思いますよ】
「地下魔界に連れて行ってみようかな……」
「感知できるなら、検知竜宝が鳴るのわからないハク兄とフジ兄のお手伝いできるよね~」
「アカの工房でも、お手伝い出来るよね。
ルバイル様、どの子が適しているか、お分かりになりますか?」
【元竜が神竜で、話せるくらい力のある子……】
ルバイルが見渡したのに気付いた芳小竜達が動きを止め、不思議そうに首を傾げ、じっと見つめ返す。
【チモニー、カロール。
アオとサクラのお手伝いは出来ますか?】
【うんっ♪】【おてつだい するの~♪】
【キュルリと一緒に頑張ってくださいね】
【は~い♪】大喜びで、アオに くっついた。
「じゃあ、行こうか」なでなでにこにこ♪
――ルリとアンズの部屋。
「あれっ? 城?」
「呼ばれていたからね」
「そっか~」
「サクラは、ここで待っていてね」
「大臣の話でしょ? 俺も行くよ」
「サクラ王も、その姿で?」
「ん~まぁ、仕方ないよね~」あはっ。
千里眼に。「お呼びと伺い、参りましたが」
『そうか、執務室に来てくれ』「はい」曲空。
――ギンの執務室。
「お話とは?」
「サクラも一緒か。丁度いい。
アサギ様の婚儀と虹紲大臣就任の件だ」
ギンから渡された日程表に目を通す。
「婚儀は、二人は複製で出席するんだろ?」
「そうですね。
立っているだけですから、地下に行っていても大丈夫だと思います」
「ふむ。まぁいいだろう。
王都の周りに建てているのは祠なのか?」
「はい。
長老会から議会に掛けて頂いた筈ですが?」
「天界に住む神竜が増えたからだとは聞いたが、本当の理由は何だ?」
「そのままですが、何か?」
「アオが、それだけの事では動かないだろ?」
「前にも申しましたが、父上は俺を何だと思っているのですか?」
「ただ者ではないと思っているさ。
サクラと合わせれば神かも知れぬ、とな」
「ただの竜ですので。
甚だしい買い被りは、おやめください。
話を戻します。
他に意図などありません。
ただ、神竜様にお住まい頂ければ、竜宝の復元や開発は進むと思います。
当面は、祠を起点とした結界も成せますし、将来的には、病院としても機能すると考えています」
「ほら、それだよ。
ただの祓いの場ではないだろうと思っていたんだ」
謁見が終わったアサギが顔を覗かせた。
「またギンに苛められているのか?」笑う。
「アサギ様ぁ」
「いえ、王都周辺に新設している祠について話していただけですよ」にこっ。
「病院にするらしいのです」
「既に長老の山の祠は病院だからな。
神竜様を医師にするのか?」
「はい。医師についても考えています。
現状では、天性・治癒を持つ天竜に限られていますが、
神の光を持つ神竜方々は勿論、治癒を持たない者でも、病や薬に関する知識が高ければ医師と成れるよう、変えたいのです」
「ほう。そうなると、今の薬師達からも医師が生まれるのか?」
「はい。医師としてフジと組んでいて、そうすべきだと思ったのです。
竜宝薬も、たくさん復元出来ました。
医師を天性に縛らない事で、救える命が増えると思うのです」
「そうか。その長をフジに任せようと考えているのだな?」
「はい」にっこり。
「その顔だと、クロとアカの将来も考えているのだな?」
「勿論です。
存分に力を発揮して貰えば、この国の未来は明るいと思いますので」
「そうだな。
婚儀の後、すぐに退位しようと思っていたが……後押しするぞ。
暫く、このままな」
「ありがとうございます! アサギ様!」礼!
「なんか俺とは態度が違うんだが……」
「父上~、拗ねないで~」
「アオにとって俺は何なんだ?」
「父上は父上でしょ」
「アイツ、俺を馬鹿にしてないか?」
「そんな事ないから~」
「父上、いろいろ ありがとうございます」
「ん?」
「後押ししてくださっている事、母上の事、ルリの事……いろいろですよ」
「ん……」照れた。
「それで、俺とルリの就任式は、場所も日程も未定ですが?」
「出来れば魔竜王国で、と考えている」
「いいの? 父上」
「合同会議を申し込んだ所だ。
まさかサクラが来るとは思っていなくてな」
「そんな大きな事にはしたくないのですが……」
「両国の未来に向けての懸け橋なのだ。
国を挙げての祭にするぞ」
「王太子の婚儀前に、そのような騒ぎは――」
「慶事が多くて悩むのは、大臣だけでいいだろ。アオは悩むな」わはははは♪
【とぉさま、かぁさま おこってるよ~】
「そうだろうね」あはは……
「お前……そいつとも話せるのか?」
「俺の子ですよ。当然 話せますよ」ぴょこ♪
「ん?」
「どうかしましたか?」ぴょこ♪ 「あ……」
「……増えたのか?」
「竜宝の国の家に、いっぱい いるよ♪」
「親子が共に暮らす事は、始祖様からも御許可頂きましたので、あの『しきたり』は、すぐに撤廃させて頂きます。
今のところは、役立つ竜宝なので連れている、という御認識のままでお願い致します」
「まぁ、見た目その通りだからな」
「良かったね、皆。
お爺様からも認めて頂けたよ」「爺……」
キュルリがチモニーとカロールの手を引き、ギンの前に飛んで行った。
【おじぃさま♪ ありがと~♪】ぺこり♪
「何 言ってるんだ?」
指した手にキュルリが止まった。
チモニーとカロールが腕に座る。
【おじぃさま♪】【あそぶ?】【あそぼ♪】
「お爺様はお忙しいんだよ。
それに、これから俺の手伝いをしてくれるんだよね?」
【うん♪】【おてつだい♪】【する~♪】
手を繋いでアオの頭に戻った。
「子供なので誰とでも遊びたがるんですよ」
【かぁさま おこってるの いいの?】
「うん。それは後でね。
虹紲大臣としての仕事は、すぐにかかりますが、儀式や――その御顔ですと、祝列もお考えですね?
そういう事は、ルリの立場が確かなものに成ってからにして頂きます」
「お前らの婚儀の後という事か?」
「はい。
その方が全てスッキリすると思います。
それまでは試用期間とでもお考えください」
「私は、それに賛成だな」アサギが頷く。
「私も、それが良いと思うよ」
「コハク……いつの間に……」
「扉を叩いても返事が無くてな」座る。
「では、両件、他に何か有りますか?」
「合同会議は、明後日の午後で御都合は如何ですか?
と、ランが申しておりますが」
王達、打ち合わせる。
「俺と大臣が行く。アオは?」
「サクラは? 複製?」
「アオ兄と いっしょ~♪」
「でしたら、出席します」
「では、そう伝えてくれ」「うん♪」
「アオ、最近スミレは?」
「神界で修行中です」
「そうか、神様も大変なのだな……」
「そうですね。
戻りましたら、地下の方、進行します」
「父上、母上は?」
「準備に奔走しているよ。活き活きとな」
「そうですか。良かった……
それでは失礼致します」
アオとサクラは、王達に礼をして曲空した。
銀「『お爺様』……か……」
凜「ギン王様? どうかなさいましたか?」
銀「あ……いや……なんでも……」
凜「なんだか急に縮まれたような……」
銀「気のせいさ」フッ……
桜「父上~♪」
銀「あ、サクラ……どうした?」
桜「明後日の――父上、どしたの?」
凜「ね。なんか、おかしいよね?」
桜「うん……父上、変なモノ食べたの?」
銀「どうしてそうなるんだ?」
桜「だって~、元気ないよ」
凜「あ! 急に『孫』ができちゃったのが
ショックなんじゃ――」
銀「違ーーう!!」
桜「そぉなんだ~
でも、もぉすぐ王太子 結婚するでしょ?
そしたら本物すぐに生まれちゃうよ?」
銀「う……」
凜「やっぱり孫ショックだ~」
銀「サクラに言われるのは、まだいい!
凜に言われるとキツいんだよ!!」
凜「じゃあ、サクラ♪」
桜「ほえ?」
凜「サクラも、すぐに結婚するんでしょ?」
桜「たぶんね~♪」えへっ♪
凜「ほら、そうなると、ここにも――」
銀「だから! 言うなって!」
凜「王子達みんな婚約してるから、
すぐに孫沢山になるよね~」
銀「ぐ……」
桜「もぉやめてあげて~」
凜「うん。かわいそうになってきたね……」
桜「喜んでほしいんだけどね~」
凜「そうだよね。私は羨ましいよ」
桜「凜、孫は?」
凜「そんな年じゃなーい!
それに、残念ながらアオと同じだよ」
桜「ほえ? 凜って複製なの?」
凜「どーして、そーなるかなぁ?
ま、そこは掘り下げないでよね」
桜「う……ん……下げないないないっ」




