芳小竜6-やっぱり弟
前話では、あまり芳小竜が登場しませんでしたが、今回は出ます。
♯♯ 天界 深蒼の祠 ♯♯
アオとサクラは、深魔界の拠点から回収した璧達と話していた。
「諳呪璧、一枚しかないねぇ」
「アカに増やして貰おう。行こう」曲空。
――赤虎工房。
工房に出ると、アカもちょうど帰って来た。
「結界 終わったの?」「ああ」
「これ、諳呪璧。呪を跳ね返すんだ」
「皆に配りたいのだな?」「うんっ♪」
「材料はここに置くね。作り方は――」
アカが差し出した手に諳呪璧を乗せた。
「解った」返す。「お願いね」「うむ」
アカは奥に入り、アオは諳呪璧を壺美善に入れた。
「アオ、迷子だ」芳小竜を連れて来た。
「ありがとう、アカ」受け取り、撫でる。
【あそぶ?】キュルリが出てきた。
【……いいの?】【うん♪ あそぼ~♪】
キュルリは手を取り、飛んだ。
「こっちだよ~」サクラが折り紙を出した。
【それ なぁに?】並んで、ちょこんと座る。
「見ててね~♪」折り始める。ぺたぱたぺた――
アオはアカと話していたが、アカの背後の窓に微かな気配を感じた。
何か隠れたよね……
「カブトだよ~♪」ぽこっ♪ ぽこっ♪
【わぁ♪】【あ……♪】
【とぉさま♪ 見て~♪】手繋ぎふよふよ~♪
【かぶ~♪】「カブトだよぉ」【かぶ♪】
「二人お揃いで可愛いね」にこにこ♪
【あれ?】【あ……】二人揃って振り返った。
【あそぼ~♪】窓に向かう。
アオも窓に向かい、開けた。
「隠れないで。一緒に遊ぼう」見回す。
窓際の壁に芳小竜が くっついていた。
「キュルリ、これ♪」【かぶ♪】持って飛ぶ。
【はい♪】二人で被せた。【いっしょ~♪】
「あちこち たっくさん隠れてるんだね~」
【サクラ~♪ もっと~♪】「うん♪」
「アオ、璧が光ったぞ」「あ、ありがとう」
「まだまだ見つかると思うが、本当に親になる気なのか?」
「そのつもりだよ」にこっ。
(実子が望めないから、なのか?)
(それも確かにあるね。
でも……それだけじゃないんだ。
心配してくれて、ありがとう)
(うむ……)
「サクラ、璧をクロに渡しに行こう」
「みんな、行くよ~♪」【は~い♪】
【とぉさま♪ みて~♪】手に手に竜。
「サクラ、凄いね」【すごいね~♪】
「フジ兄は、もっと凄いんだよ♪」
「ああ、そうだったね」病室で見たよ。
アカが暗室に向かった。
「ワカナが戻る。早く行け」扉が閉まる。
ほぼ同時に入口扉が開いた。
(ずっと隠れてるのかなぁ?)
(そうみたいだね)肩を竦める。
二人は芳小竜達を連れて曲空した。
――ハザマの森、馬車。
「クロ、これ――どうしたんだ? この子達」
【サクラ~♪ かぶ~♪】【ね~サクラ~♪】
「カリヤが見つけて来たらしいんだよ。な?」
【みんなの~♪ つくって~♪】【かぶ~♪】
「カリヤ、皆、森に居たのかい?」「はい♪」
【りゅうも~♪ つくって~♪】【これ~♪】
「皆様、寂しそうにしておりましたので……」
「みんな、お外で遊ぼうね」【うん♪】きゅ♪
「最初は皆様お静かでしたが――」
「ワラワと遊んでおるうちに、元気になってしもぅてのぅ」
「まさか、姫があんなにチビッ子竜の扱いが上手いなんて、ホント驚いたよ~」
「そりゃ~」「十分、練習したよね」「うむ」
「練習? いつ?」「昔の事じゃ」「ふぅん」
「姫~♪ ソレなぁに?」「独楽じゃ♪」
「どぉするの?」 「こぅするのじゃ♪」
紐を巻き巻き、ヒュッ! くるるるる~
きゅるるっ♪【わあっ♪】【あそぶ~♪】
「此方ならば手で回せるのじゃ♪」
持たせて、手を添え「こぅじゃ♪」くるる~
きゃっきゃしている芳小竜達を眺めていたが、
「あ……これを渡しに来たんだった……」
来た目的を思い出した。
「これは諳呪璧。呪を跳ね返すんだ。
クロは女性になれないから持っていて」
「ふぅん……ありがとな。
なぁアオ、オレに何かあったのか?」
「いや。ただ、女性には無効な呪に、クロはかかってしまうからだよ。
術も何とか出来ないか探しているから、もう少しだけ待ってくれ」
「悪ぃな。皆に迷惑かけちまって……」
「考えたり探したりは、全然 迷惑じゃないから。
もしもクロが魔王に操られたら、本当に困るんだからな」
「本当なのか?」「当然だろ」
「大臣も?」「そうだけど?」「マジかよ」
「ずっと前から考えていたと言っただろ?」
「小器も入れられねぇオレなんかに、国を任せていいと本当に思ってんのか?」
「中の国では殿なんだよ?
その方がもっと重責だろ?」「う……」
「だから不安なんて無いよ」「でもなぁ」
「何もクロひとりに全てを担わせようと言ってるんじゃないんだ。
兄弟皆で担うんだから、そんなに重く考えないで欲しいな。
それに、まだまだ先の話なんだからな」
「そっか……」
「今は魔王を倒す事だけを考えろよ」
「そうだなっ」
【とぉさま♪ あそぼ~♪】ぴよぴよぴよ♪
「クロ、あの子達を見て、元竜が誰だか判るか?」
「ん? 元竜?
あの緑と黄色なら、個紋が見えるけど――」
「何方の個紋!?」
「オレが覚えてると思うのか?」「あ……」
「クロ兄、それエラそ~に言える事じゃないでしょ」
「だなっ」あははっ。
「アオ兄、玩具もらったから、家に連れてかない?」
「家って」「アオ兄の子供達の家だよ~♪」
「アオの……子供!?」「芳小竜だよ~♪」
「なんだキュルリかぁ」「みんなだよ~♪」
「それって」「うん♪ いっぱいいるよ♪」
「アオ、大丈夫なのか?」 「何が問題?」
「ただでさえ忙しいのに……」「そうか?」
「少しは自覚しろっ!」「別に大した――」
「ちゃんと食って寝ろ!」「そうするから」
「皆様ぁ、お食事は如何ですか?」
「カリヤ、ありがとな。アオ、食うぞ!」
「そんなに引っ張らなくても――」
【とぉさま~♪】【あそぶの?】きゅる?
芳小竜達がアオに くっつく。
「アオ、先に食えよ」睨む。
【クロ、どぉしたのぉ?】よしよし。
サクラと姫、大笑い。
【おこっちゃダメでしょ】いいこいいこ。
「キュルリ……オレは悪くないと思っ――
アオ! 笑ってねぇで食えって!」
【とぉさまぁ、クロ、おねむみたい~】
【みんな、こわがらないでねぇ】
【おこりんぼむしさん、とんでけ~】
キュルリが忙しなく飛び回る。
「クロ……キュルリに気を遣わせてしまうとは……
情けないであろ? 落ち着くのじゃ」よしよし。
「そりゃねぇよ姫ぇ……」ガックシ。
(姫、キュルリが言っているコト解るの?)
(いいや。じゃが、何とのぅ解るのじゃ)
(凄いね)(うん♪ スゴい~♪)
(クロの姿が変わろぅとも、キュルリにとっては、クロは弟なのじゃろ?)
(そぉみたい~)
(真、健気で愛らしいのぅ)
三人、キュルリとクロを見て微笑む。
(キュルリは歌ぅておるのか?)
(うん、懐かしいな……子守唄だよ。
小さい頃、爽蛇がよく歌ってくれたんだ)
(俺、アオ兄に歌ってもらった~)
(さよぅか……)
皆、母からではないのじゃな……
姫、ありがとう。だから――
(変えるからね)
(ん? ……あ……うむ)
(心配しないでね)にこっ。
伝わってしもぅたのか……
姫が頬を染めて俯いた。
「そこっ! おい、アオ!
オレの姫を口説くんじゃねえっ!」「あ……」
【あああ~、クロ、おこらないでぇ】
「ほんに、おねむやもしれぬ……」ため息。
芳小竜達がクロに集まり、一斉に よしよし。
「困った奴じゃのぅ」
(姫、穏やかにね)(任せおけ♪)
「クロ、交替まで中で休もぅぞ」にこっ。
「おう(♪)」連れられて馬車に入る。
「クロ兄が、あんななっちゃうなんてね~」
「うん。あんなに ぐずぐずしていたのは何だったんだろうね……」
クロに くっついて行っていたキュルリが飛んで来た。
【クロ、おおきくなっても おんなじねぇ】
「ん?」
【おねむ、ぐずぐず、おんなじ~】
ぷっ♪ 「そうだね」くすくす♪
「お兄ちゃん、大変だね~」きゃははっ♪
どんどん増えます芳小竜。
とっても子沢山になってしまったアオとルリです。
凜「ホントに大丈夫なの?」
青「特にお世話の必要も無いし、あの子達は
ちゃんと理解しているんだからね。
子供をひとり育てるよりもずっと楽だよ」
凜「そっか。食費も要らないもんね」
青「遊んで満足したら眠るんだ。
ぐずる事も無いから、楽なものだよ」
桜「クロ兄より、ず~~っと育てやすいかも~」
凜「キュルリにまで、あんなふうに
言われてしまうなんてね……
ホント、困ったものだわ」
桜「天性なかなか伸びないし~」
凜「そういえば、クロの首飾りにも
神眼鏡の小さいの付いてるよね?」
桜「うん♪ なかなか開かないから補助♪
姫の簪もねっ♪」
凜「あ~、クロが求婚した簪ね♪」
桜「そぉそぉ♪」
青「姫はもう必要無いくらいに、クロの天性を
使い熟しているよ」
桜「自分の天性も自然と開いちゃったもんね」
凜「えっ!? いつ!? 姫の天性って!?」
青「竜人に成った時に得たんだよ。
で、すぐに開いていてね。
俺が真神界に飛ばされた時には、
すっかり使い熟していたよ」
桜「だよね~。供与、いっちばん凄かったもん」
凜「えっ? 姫も供与なの?」
桜「違うよ~、昇華だよ♪」
凜「一時的パワーアップね。
そういうの! ちゃんと教えてよねっ!
書かないまま進んじゃったじゃないの!」
桜「ふええっ!?」
青「俺達のせいじゃないだろ」
凜「教えてくれなきゃ書けないのぉ」
青「仕方ないな……次からは気をつけるよ」
凜「ありがとぉ、頼りにするよぉ」
桜(いっちば~ん仕方ないヒト~♪)
青(駄目だよ。聞こえるんだからね)
凜「何よぉ」
青(ほらね。聞こえるんだから)
桜(うん……あっち行こ~)
青(そうだね。行こう)曲空。
凜「え? 逃げないでよぉ~」




