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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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三代王3-モーブとローズ③

 このお話の主役は、モーブ達四人ではなく、

始祖様なんでしょうか?


 リーフ抜きで新たな技か術を会得しなければならなくなったモーブ、ローズ、アンバーは、とりあえず渡された本を読み始めた。


モーブは、パラパラと目を通し閉じた。

「防御系ばかりだ……」


ローズとアンバーも同じく。

「護りを固めろと?」「そのようですね」


「他も読もう」「そうね」「はい」




「こちらは補助系だな」


「攻撃系は皆無だわ」


「やはり、現状、その方向が弱いと仰っておられるのではありませんか?」


「そうか……で、どれが最適だと考える?」


「技ですが、各属性と記載されている牆壁(ショウヘキ)は如何でしょう?」


「どの属性でも出せるのか……それは良いな」


「防ぐ他には?

避けるとかもあるわよね?」


「おや? こちらの本には栞が挟んである」


「そうですね。三冊とも栞が有りますね」


アンバーが開いて並べた。


豪速(ゴウソク)……火技ですね。

こちらは浄化の術で、浄颯(ジョウソウ)

それと、光技で相殺(ソウサイ)

補助系ばかりですね」


「それを覚えろという事じゃないかしら?」


「という事は、まずは俺が相殺、ローズが豪速、アンバーが浄颯だな。

それを会得したら、牆壁に掛かろう」




 そして五日後――


「とりあえず出るようにはなったが……」


「兄上、気の精度を上げると、更に速くなるような気がするのですが」


「同じくです。天性の治癒が如く、回復を混ぜる事が出来ようになりました」


「そうだな。こちらも強度が増す気がしていた。

つまり、名が短いとは侮れない、奥の深い技や術なのだな」


「牆壁と並行してみませんか?

気を高める事は同じですし」


「そうね、アンバー。

また新たな事が見えるかもしれないわ」




 更に三日後――


「牆壁が出たぞ!

属性を意識した方が良いらしい」


「光と水が混ざっているのですか?」


「単体でも出せる」各々立てる。

「一度 掴めれば意外と容易だ」


「属性が混ざるのだったら、もしかして相殺も混ぜる事が出来るのかしら?」


「二技同時か……」目を閉じる。


アンバーも試そうと目を閉じた。



「いや、可能かもしれないが、今は無理だ」

「はい。両方に気を合わせるのは難しいです」


「同時ではなく、続けてならどうかしら?」

豪速で移動しつつ火技を次々と放つ。


「そうか。牆壁を立てて、技や術を込めるのか」


モーブとアンバーは頷き合い、再び目を閉じた。




 三人で模索を始めて十日目――


リーフがコバルトに連れられて現れた。


「お前ら、成果を見せろ。

リーフを戻すか否かは、それ次第だ」


王軍の兵士達が展開する。


「ひとりずつだ。アンバー」


牆壁で攻撃を防ぎつつ近寄り、雷技を発動。

全方位技を前方にだけ拡げた。


「ふむ。次だ。ローズ」


豪速で飛び込み、火技を放ち、豪速で後退。

炎の牆壁を立てた。


「ふぅん……モーブ」


斬り込み、一閃して一気に上昇、氷の牆壁で蓋をし、相殺を投じ、通過させ、兵士達の背後から覆った。


「考えたな。最後、リーフ」


リーフが兵士達から かなり離れて立った。


「消えた!?」


兵士達の中心に竜巻が起こった。


――のは一瞬で、すぐさま竜巻は中央に収縮し、兵士達は結界で覆われていた。


「リーフは!?」


「ここですよ」背後から声。


三人が振り返ると、リーフは いつものように、やわらかく微笑んでいた。


「リーフ、戻っていいぞ。

三人共、今回覚えたものは、まだまだ伸びる。

極めてみろ」


「はい!」


「ローズ、アンバー、治癒と回復してやれ」

王軍の方を指した。


ローズがアンバーの手を引いて飛んだ。


「モーブ、リーフは弱くなんぞ無い。

護る事ばかり考えるな。

リーフ、モーブは無謀な所が有る。

護ってやれ」


コバルトはニヤリとし、王軍の方に向かった。



「リーフ、さっきのは?」


「曲空よ。風技で瞬間移動って所かしら。

でも、雷と水も単発なら出来るそうよ。

豪速も火技だけど、雷と水なら瞬発力として、短時間なら出来るそうよ」


「そうか……よし!

四人で、それを極めていこう!」


「そうね。何かひとつ極めれば、他の技も会得し易くなるそうよ」


「リーフは本当に凄いのだな……」


「それぞれ得意な方向性が有る。それだけよ」


「そうか……先を見る力も、術や技に関する知識も、まだまだ敵わない。

俺の傍で導いてくれるか?」


「はい。喜んで……」頬を染め、俯く。


「生涯、共に……歩んでくれるか?」


「はい……もちろん……」


「続きは成人してからだ」睨んでいた。


ローズとアンバーも苦笑している。


「結婚したくば、すればいい。

しかし、生きられなければ意味が無いだろ。

俺も、いつまでも面倒は見ないぞ」

言いながら近付いた。


ローズとアンバーも後に続く。


青身神(アオミカミ)を知っているか?」


「神話なら……」


「青身神は存在する。

俺は予言を受けたのだ。

俺の子孫が闇の神を倒す、とな。

つまり、お前らは、その血を絶やしてはならぬ。

三界の未来の為、生きねばならぬのだ。


まだまだ教えねばならぬ事が山積している。

引き離したりはせぬ。

協力し、高め合い、未来に進め」


「はい!」



――――――



【やはり、お祖父様は厳しかったが、優しかったな】


【そうだな。善き理解者だったな】


【暇さえ有れば笛を吹いていたよな】


【神に成って以降、吹いている姿は――】


【そうだな。見た覚えが無い】


【何故、吹かないのだろう】


【笛は、アオ達に渡してしまったな】


【もう吹かないという事だろうか……】


【おい】【は?】【あっ……】


【やっと神に成ると言ってくれたからな。

だから教えてやる】


【はい……】


【死者の国には大神しか行けぬ。

しかも行ける『時』には限りが有る。

いつでも行ける場所でもないし、長さも累積で限りが有るのだ。


俺達、身内の神は全て、アンバーとリーフを探す為に、その限りを使い果たした。

それでも二人は見つからなかったのだ】


【では……諦めろ、と?】


【いや、その逆だ。

それだけ探しても見つからないのならば、三界に居るのではないかと、今も尚、探し続けている奴が居る】


【父上様、お呼びで――あ……】


コバルトがバナジンの首根っこを掴んだ。


【コイツだ】


【お離しください!】


【静かにしやがれ!

ま、本気で逃げる気は無いんだろ?

おとなしく聞いてろ】


コバルトが手を離すと、バナジンは隅に座って項垂れた。


【で、だ。モーブ、ローズ。

アンバーとリーフが死んだ時、消えた物が有るだろ?】


【あ……剣が……】【確かに、そうだった……】


【剣、特に高位の竜宝剣は、魂を込めるのに最適だ。二人の剣は何だ?】


透牙(トウガ)……】【黄牙(コウガ)です】


牙剣(ガケン)、つまり最高位だろ?】


【では、二人は剣に!?】


【可能性は高いと思わないか?】


【誰が!?】【何処に!?】


【身内神ではない。三界の何処か、だろうな。

が、まぁ、天と人界はコイツが隈無く探したからな。希望は魔界だな。


だから早く神に成れ。

修行を積んで大神に成れ。

今日の所は、俺からの話は以上だ】消えた。


【あっ!】【お祖父様っ!】


モーブとローズは顔を見合わせた。

そして頷き合う。


【あの……】【父上……】そっと近寄る。


【これまでの事、申し訳ございません】


【誤解ばかり重ねてしまって……】


【それと、ありがとうございます】


【私達の愚行……お許し頂けるとは思っておりませんが、反省し、感謝している事は伝えさせてください】


二人が深々と頭を下げた。


微かに聞こえていた笛の音が止んだ。


静寂が流れる。


【モーブ、ローズ……

許しを乞わなければならないのは私です。

私は全てを妻と子に押し付けてしまいました。


アンバーとリーフの事も……

見つけ出す事も出来ず、希望を持てとも言えませんでした……

二人が嫌がっているのを知りながら、魂を保ち――】


【あなた……それは私が願ったからでしょう?

勝手に全てを背負わないでね。

今が伝えるべき時でしょう?】


【まさか……】【母上……】


【モーブ、ローズ。

アンバーとリーフは見つかりますよ。

お姿こそ確かめてはおりませんが、青身神様が、そう仰いましたからね。


あなた方が神に成ったならば、二人は見つかるそうですよ。

だから私は、あなた方をこの世に残しておきたかったのです。

神ならば、このように他の者の魂を内に保つ事が出来るのですから】


【では……母上は、ずっと父上の内にいらしたのですか?】


【そうです。ずっと見守っておりました。

二人が神に成ると決心する時を待っていたのです。


バナジンは優し過ぎるから……かえって誤解を深めてしまったけれど、あなた方に対する愛情は誰にも負けないわ。

これから、しっかり神にしてくれるわよ】


【よろしくお願い致します! 父上様!】

二人は揃って、もう一度 頭を下げた。


【はい。もちろんですよ】


【やっと親子になれたわね】


 再び笛の音が流れてきた。

やわらかく、あたたかい音色が、四人の心に優しく染み渡った。





 竜骨の祠前で笛を吹いていた三人が、

曲が終わって、どうしようかと祠の方を見ると、

入ってすぐの拝聴の間で、コバルトと先祖達が

話しているのが見えた。

そしてコバルトが出て来た。


始【何で休んでるんだ? 続けろ】


青「またドルマイ様に叱られますよ?」


  出たり入ったり何をしているのやら。

  祠に入ったままでいいのに……


 などと思いつつ、再び笛を構えてしまう

アオ達だった。



 祠の奥では――


モ【あの笛の音は、アオ達ですよね?】


バ【はい。三人が吹いておりましたよ】


ロ【もう、お祖父様は吹かないのでしょうか?】


バ【吹かないのではなく――いえ、今は

  王子達にこそ必要ですので】


モ【あの笛も竜宝なのですか?】


バ【『精霊の虹笛』だそうです。

  色に依り、効果が異なるそうですよ】


モ【では、七色なのですか?】

ロ【お祖父様は、青と紫ばかり吹いていた

  ように思うのですが】


バ【私は、それぞれの効果は知りませんが、

  幼い頃の朧気な記憶では、父上様は

  私をあやす為にか、違う色の笛も吹いて

  おりましたよ。色とりどりにね。

  ですが確かに、私が神界から天界に戻って

  以降は、藍と紫ばかり吹いておりましたね】


ロ【あれは、青ではなく藍なのですか?】


バ【はい。もっと明るい青も有るのです】


モ【また、お祖父様の笛が聴きたいですね】


バ【そうですね】


ロ【私達が神に成れたなら、祝いに吹いて

  くださるかもですね】


モ【きっと……そうですよね】


 以前の、ほぼ無理矢理な和解とは違い、

初めて穏やかに話している父子の様子を見て、

プリムラは溢れる喜びで何も言えなかった。



 竜骨の祠の外ではアオ達が笛を奏で続け、

祠内の拝聴の間では先祖達が聴いています。

そして、本編前話の後書きに続きます。


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