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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
334/429

三代王1-モーブとローズ①

 そしてまたオマケです。


 グレイスモーブとグリッターローズは、水晶を抱いて眠る芳小竜達(リーフとアンバー)を見つつ、過ぎた時に思いを馳せていた。



――――――



「グレイスモーブ様、グリッターローズ様。

本日より、こちらがお住まいとなります。

私の娘夫婦と息子夫婦が住み込み致しますので、何なりとお申し付けくださいませ」


「サンダービート、もうお城には住めないの?」


「いずれ王、女王と成られるので御座います。

自立し、学び、鍛える為、こちらでお過ごしくださいませ」


「あれ? 子供がいる……」


「ああ、私の孫達で御座います。

ブロンズアンバー、グレイスモーブ様をご案内しなさい。

ウインディリーフ、グリッターローズ様を頼みますよ」


「はい。お祖父さま」二人、揃って礼。


「この二人が年長者で御座います。

あとの子供達も躾けてはおりますが、何分、幼子ですので、至らぬ事も多いかと存じます。

何か御座いましたなら、この二人にお願い致します」


「殿下、こちらでございます」


モーブとローズは、広大な庭園を挟んで建つ各々の屋敷に連れて行かれた。




「シルバコバルト様、本当に、これでよろしいのですね?

私の孫なんぞよりも、もう少し学を積んだ者の方が相応しくは御座いませんか?」


「いいや、これでいい。

いずれ、お前のように良い補佐となるであろう。

城からは離すが、四人、共に居る事は禁じはせぬ。

他の孫達も同様だ。

子供の事は子供に任せ、お前は、王として必要となる学問を早く纏めよ」


「畏まりまして御座います」




―― 半年前 ――


 グレイスモーブ王子、七十五歳(七人歳半)、グリッターローズ王女、七十歳(七人歳)の誕生祝賀会が華やかに開かれていた。


 主役の兄妹が嫌になる程の祝辞から、やっと解放されたと安堵した時、

政をピーチプリムラ女王に任せ、城を出ていたシルバコバルト前王が珍しく現れ、威風を放ち、濃紺の外套を翻して壇上に進み出た。


前王は、王国の繁栄と、孫達の成長に対する祝辞に続けて――


「孫達は、もう一人立ち出来る歳となった。

将来この国を担う為、城を離れ、勉学と鍛練に励め。

大臣、すぐに各々の屋敷を設けろ」


誰もが寝耳に水の爆弾発言を投じたのだった。


「御義父上様っ! まだ年端もゆかぬ子供達に、そのようなご無体なっ――」


「女王よ、我が愚息(チェリーバナジン)から国を託された其方ならば解るであろう?

いずれ国を担うならば、厳しく育てるより他に道は無いのだ。

俺も見守る。それでどうだ?」


母としては言いたい事は止めどなく有ったが、女王としては何も言えなかった。


「次代の王と女王を……よろしくお願い致します」


涙を堪え、それだけを言った。



♯♯♯



 祝賀会の後――


「サンダービート、お前の孫に、俺の孫の面倒を見させろ。

いずれ大臣を継がせればいい。

そうだな。名も長くしろ。

その方が、より相応しくなるんだろ?

天竜にとっては」


「よろしいので御座いますか?」


「何て名だ? 年長二人は」


「アンバーとリーフで御座います」


「ふむ」大臣をじっと見る。

「ブロンズアンバーとウインディリーフ。

今日から、その名だ。


屋敷の事は、お前の息子と娘に任せておけ。

近くに建てても構わない。


お前は、さっさと『王学』を纏めてくれ。

長く続く王朝にせねばならぬからな」


「教師は、何方をご指名致しますか?」


「息子と娘にさせればいい。

鍛練は俺がやる。全て四人共にだ」


「では、シルバコバルト様のお屋敷も近くに設けるので御座いますか?」


「俺は、城の離れに住む。

が、政には口は挟まぬ。安心しろ」



――――――



「グレイスモーブ様、こちらが――」


「モーブでいい。長ったらしいからな。

お前もアンバーでいいか?」


「はい♪」


「何だ? 略されて喜んでいるのか?」


「殿下にお仕えする為に長くなっただけでございますので、もともとの名の方が嬉しいのでございます」


「その『ござござ』も好きじゃないんだ。

そうだ! 初めての同世代なんだよ。

周りは大人ばかりだったからな。

『友達』ってものになってくれないか?」


「しかし……殿下に対して……」


「『殿下』も やめろって! 俺はモーブだっ!」


「かしこまり――」「おいっ!」「うっ……」


「友達って普通そうなのか?」真剣!


「……いえ……」


「なら、普通にしてくれ」


「はい」とっても、とっても困り顔。


「そんな顔するなよぉ」


「で、では……モーブ様……」


「『様』も嫌いだっ!」←遺伝?


「それは、さすがに困ります」


「なら、俺に慣れるまでは我慢する」


「では、モーブ様こそ、王子様なのですから、そういう扱いに慣れてください」


「お♪ 言ったな~♪」ぐりぐり♪


「ちょっ! おやめくだっ、うわっ!」


「こういうの初めてだ! 楽しいなっ!」


「えっ!? 楽しい、って……」


「ああ。楽しいぞ♪」


 この半年の厳しい勉強や躾は

 いったい何だったんだろう……


芝生まみれ泥だらけで、そんな事を思ってしまうアンバーだった。



♯♯♯



「姫様のお部屋は、こちらでございます」


「あら? 人形だらけ……」


「お気に召しませんか?」


「別に構わないけど……どちらかと言うと、剣の方が かわいいのよね」


「剣……で、ございますか……?」


「剣達、連れて来ようかしら」


「お城のお部屋の物は、只今、運んでおります」


「そう♪ 良かったわ♪

あなたにも、ひとり授けるわね♪」


「『ひとり』……でございますか?

『ひと振り』ではなく……」


「剣は話すのよ。知らないの?

あなたも……えっと……」


「ウインディリーフでございます」


「長いのね……リーフでいいかしら?

私はローズでいいから」


「はい。仰せのままに」


「ねぇ、リーフは私より歳上よね?

どうして、そんな話し方なの?」


「身分が違いますので」


「身分……ねぇ……

私、お城を追い出されたんだから、もう姫でも何でもないわ♪

だから……そうだわ!

『普通』って、どういうものなのか教えてよ♪」


「グリッターローズ様は――」「ローズ!」


「……では、ローズ様は――」「だからローズ!」


「いえ! ローズ様は!

追い出されなど致しておりません!」


「やっと目を見てくれた♪

ずっと床ばかり見ているんですもの。

それでは つまらないわ」


「ローズ様……」


「もうっ! 仕方ないわね。

『様』だけは許してあげるわ。

でも、普通に話してよ」


リーフが ため息をついた。


「あきれちゃった?」


「いえ、なんだかホッとしました」


「そう♪ では、仲良くしてねっ♪

あ♪ 荷物が届いたわ♪ 手伝ってね♪」


「もちろんです♪」



 二人は梱包を解き始めた。


「リーフには、どの剣がいいかしら♪

属性は? ……風かしら?」


「まだ知らないのです」


「でも、これから鍛練も一緒でしょ?」


「そう、聞いておりますが……」


「あ、剣を切る物だと思ってるんでしょ?」


「そうではないのですか?」


「気の力を込めて放つ物なのよ。

だから遠くからでも攻撃できるの。

それに盾にもできるのよ」


「盾……剣が盾に?」


「そう」一本抜く。「気を溜めて……拡げる!」


剣から拡がった光が、ローズの前で楕円形に纏まった。


「こっちに来て♪

ほらね、向こうが見えるでしょ♪

すぐに解除もできるから、出したり消したりしながら戦うのよ。

リーフは接近戦なんてムリでしょ?

遠くから技を放って、何か飛んで来たら防ぐ。

それでいいと思うの♪」


「技……」


「ちゃんと教えるわ♪

ねぇ、剣達、リーフを助けてよ。

いちばん合いそうなの、誰?」


ひと振り光った。


「ありがとう、透牙(トウガ)♪ やっぱり風なのね♪」


戸惑いつつ、剣を受け取ったリーフだった。



――――――



【兄上、何を思うておるのです?】


【初めて屋敷に連れて行かれた日の事を思い出していた】


【同じくです。

もっともっと幼き頃のリーフとアンバーは、こうであったのでしょうね……】


【芳小竜とは、どこまで成長するのであろうな……】


【愛情で育つ、か……】





 何度か登場していました三代目。

偉大なる古の薬師グレイスモーブ王と、

偉大なる古の医師グリッターローズ女王の

即位以前のお話です。


 なんだか、ちゃんと前王だったらしい

シルバコバルト様も出てきます。


 まだ蛟達は屋敷には居ませんので、

執事長はサンダービート大臣の息子と娘婿です。

つまり、アンバーとリーフの父親です。


 モーブ、ローズ、アンバー、リーフ。

この四人のお話を、今回から三話

挟ませて頂きます。m(_ _)m



桜「グレイスモーブ様って、父上に

  似てるよねっ♪」


青「いや、父上が似たんだよ」


桜「そっか~♪

  でも、威厳とか、ぜんぜん違うよね~」


青「そうだね」くすくす♪


桜「最近、会うたびに、なんだか

  へらへら~なんだもん」


青「本当に娘が欲しかったんだろうね」


桜「そっか~。

  あ、グリッターローズ様はルリ姉に

  似てるよねっ♪」


青「だから、逆だよ。ルリが怒るよ」


桜「怒る? なんで?

  どっちも美人さんだよ?」


青「そこじゃなくて、ルリの方が子孫

  なんだからね。ルリが似たんだよ」


桜「よくわかんないけど~、怒るんだ~」


青「俺も、よく地雷を踏んでいるよ」


桜「???」


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