芳小竜4-成長する竜宝
芳小竜を元竜の配偶者に会わせてみました。
♯♯竜骨の祠♯♯
アオとサクラは、グレイスモーブとグリッターローズが、配偶者の芳小竜と話しているのを静かに見ていた。
【とぉさま、ありがと~♪】【ありがと~♪】
リーフとアンバーが笑顔を向け、手を振る。
【リーフ、『父様』とは?】
リーフとアンバーがアオの胸に飛んだ。
【とぉさまなの~♪】【みんなのね~♪】
【アオ、王の次は、竜宝の父になったのか?】
「いえ、それは流石に烏滸がましいですよ。
芳小竜達の親になろうと思っているんです」
【芳小竜は沢山いるのか?】
「はい。隠れ住んでいるようです」
【探し出すつもりなのだな? その顔は】
【すると、アオは全ての芳小竜の親になるつもりなのか?】
「はい、妻も望んでおりますので。
それに、芳小竜には親が必要だと思うんです。
なんとなくですが……
芳小竜は愛情を糧にしていて、受けるだけでなく、与える事でも元気になるし、成長すると思うんです」
「そぉだね。キュルリはクロ兄のお世話して、かなり成長したよね」
【芳小竜が成長を……】
「確かに、呪で幼子に戻されたクロを弟と思い、世話をしているうちに、しっかりしました」
「一層アオ兄らしくなりましたよ」
「隠れていたサクラも出てきたよね」
【何故、サクラまで?】
「孵化を急いでいたので時短したんです。
それを吸収してしまったようで――」
【とぉさま♪ サクラ~♪】ふよよよ~ぴとっ♪
「どしたの?」なでなで。
【よんでるの~】きゃは♪ くすぐったぁい♪
【本当だな……それはアオではないな】
「えっと……俺も、それはフリだった筈……」
「キュルリ、何方が呼んでいるの?」
【むこ~に いるの~】飛び始める。
【行ってやれ。私達は眺めているから】
リーフとアンバーは、アオ達が話しているうちに水晶に戻り、抱いたまま、安らぎ微笑むような表情で眠っていた。
♯♯♯
アオとサクラがキュルリに付いて行くと、水晶の間で先祖達が待っていた。
【私達の芳小竜も生きているのでしょうか?】
「術で消滅しなければ生きている筈です。
今、竜宝の国の家に居るのかどうかは分かりませんが、必ずお探し致します!」
「アオ兄、水晶を運ぼうよ」
「御先祖様方、水晶をお示しください」
アオとサクラは光っている水晶を持ち、芳小竜が居る『森の家』に曲空した。
【あ……】きゅる? きゅ……
「大丈夫だよ。おいで」
きゅ~♪ きゅるるる♪
元竜の気を感じた芳小竜達が飛んで来た。
ルバイルが出した台座に水晶を並べると、芳小竜達は各々の元竜に寄り添った。
アオとサクラは遠巻きに見ている芳小竜達の方に行き、手招きした。
「死者の国までは探せないけど……出来るだけ探すからね」
【とぉさま……】きゅる~ ぴとぴとぴとっ。
【あのね……】「何だい?」【いいの】「ん?」
【んとね~、みんな あいたいけど、あえなくてもいいって~】
「ありがとう。皆の気持ちは解ったよ。
元竜と会えても、俺はずっと父親だからね」
元竜が神竜なら拒絶も有り得る。
それは死別で会えないよりも辛いよね……
「アオ兄、そろそろ交替 行かなきゃだよ」
「そうだね。
御先祖様、後程お迎えに参りますので、ごゆっくりなさってください。
皆、また後でね」
アオとサクラはルバイルに礼をし、曲空した。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
警護を交替して、真夜中――
「ん?」
「どしたの? アオ兄」
「竜骨の祠で、キュルリもリーフもアンバーも話していたよね?」
「あ……そぉだね……キュルリ♪」
【なぁに?】ぴょこっ♪ 「話してるね~♪」
「聞けるようになったのかな……
グレイスモーブ様とグリッターローズ様は、神の血が濃いから、聞けても不思議ではないんだけど……どうして俺達が……」
【とぉさま♪ あそぶの?】
「これ、外してね。はい」【うんっ♪】
「アオ兄、それなぁに?」「知恵の輪だよ」
キュルリは夢中で奮闘している。
「ルバイル様が俺達の何かを開いてくださったのかな……」
「わずかな神の血を目覚めさせた、とか?」
「ああ、そうかもね」
【またっ! お前ら、勝手に拾うなっ!】
「始祖様、当たっていたのですか?」
【やったのは爺様とオッサンだ!
親父とお袋には言うなよ!
いや、誰にも言うなっ!】
「お礼は言ってもよろしいでしょうか?」
【こっそりとな】
「お教えくださり、ありがとうございます」
二人は笛を吹き始めた。
【やれば出来るじゃないか♪】
静まり返った地下魔界に優しい音色が流れた。
そして夜が明け――
【魔王は何してるんだろうな】
「そうですね。不気味ですね」
【進まないのか?】
「絆神様をお待ちしているのですが、まだ掛かりますか?」
【ヒヨッコ軍団だからなぁ】
「一箇所、早く向かいたいのですが」
【なら、オッサンを呼んでやる。
交替したら行くぞ】
「ありがとうございます!」
【とぉさま♪ これも とれた~♪】
「頑張ったね、キュルリ」なでなで♪
【これ、おもしろ~い♪】えへへ~♪
「やっぱり『アオ兄』だね~」
「サクラも知恵の輪が好きだったよ」
「そなの?」「うん、ヒスイもね」「♪」
「あ……」
「サクラ、どうしたの?」
「アオ兄、俺 先に行きたいトコがあるんだ」
「うん、どこに行くの?」
「魔竜王国の東に五つの祠があるんだ。
そのひとつが璧の祠なんだよ」
「何か判るかもしれないね」「うん♪」
交替の為、キン、ハク、フジ、慎玄が来た。
「アオ、この後、執務 頼めるか?」
「ハク兄さん、またですか?
呪を跳ね返す璧を探しに行きますので、その後なら構いませんよ」
キンがハクをチラと睨み、ハクは外方向いた。
「執務は、どちらでも構わない。
王から話しが有るそうなので行って欲しい」
「解りました。
一箇所目はサクラと二人で行きます。
二箇所目はフジの力が必要なのですが、よろしいでしょうか?」
「うむ。三人で気を付けて行くようにな」
「はい、ありがとうございます」礼、曲空。
――魔竜王国、東の五祠。
璧の祠に入ると、何かが隠れたような気がした。
【あそぼ~♪】キュルリが飛んで行く。
(祠の周りにも居るみたいだね)(うん♪)
【我等が王、如何なさいましたか?】
「呪を跳ね返す璧を探しているんだ。
何か知らないかい?」
【その璧は、諳呪璧で御座います】
「ここにいるの?」
【いいえ。随分前に、闇色の者が持ち去りまして御座います】
「やっぱり~。ありがとね」
「術の対象を変える竜宝や魔宝は存在しないのかな?」
【留尊鐸を利用すれば、可能かも知れません。
留尊鐸は対なる物、共鳴致します。
その共鳴に依り、初期の対象を無にも出来るので御座います】
「ありがとう、厨子璧」
【私の名を……】
「話してくれたからね、判ったんだ」にこっ。
【感激至極にて……】言葉が続かない。
「もっと気を楽にしてね。
ただの竜の若造なんだから」
【そんな……畏れ多い事で御座います】
「いや、いいから――」
【とぉさま~♪】
芳小竜の手を引いてキュルリが戻った。
アオが二人を受け止める。
「もう隠れなくていいんだよ」なでなで。
【あったかい……】【あったかいね~】
「外の皆も、おいで」「恐がらないでね~」
璧達も口々に呼び、色とりどりの小さな竜達が、おずおずと祠に入って来た。
アオとサクラが両手を広げ、微笑むと、嬉しそうに、その胸元に飛び込んだ
「家には、たくさんの芳小竜達が居るんだよ。
皆、俺の子供なんだ。君達も来るかい?
俺の子供になってくれるかい?」
芳小竜達は小さく鳴いて、嬉しそうに頷いた。
「サクラ、留尊鐸を知っているかい?」
「うん。老竜の神殿にあるよ」
「じゃあ、頼んだよ。
俺は、この子達を連れて帰るからね。
フジの所で会おう」
「うん♪」
凜「アオ~、どこ行ったの~?」
青「竜骨の祠前で笛を吹いていただけだよ。
始祖様が寄りたいって仰るから」
凜「あれ? サクラも? フジまで?」
桜「呼ばれた~」
藤「はい。呼ばれました」
凜「前から気になってたんだけど、
その笛、色着いてるよね?
何か意味あるの?」
青「今まで表現してもらえなかったけど、
俺のは青、フジのは紫、サクラのは橙だね。
始祖様、この笛は?」
始【精霊の虹笛だ。赤から順に、活化・親和・
清福・治癒・沈静・破邪・浄化だ。
アオのは藍色だ】
桜「あれ? 竜綺や竜綬と おんなじ~」
青「そうだね。繋がりが有るのかな?」
桜「調べよ~♪」
青「うん、そうしよう。
始祖様、もしかして、笛色の効果と
曲の効果は、相乗効果を起こしますか?」
始【気付いたか。その通りだ】
青「それなら回復は、治癒の緑で奏でた方が
良くありませんか?」
始【そりゃそうだが、藍と紫の方が必要だし、
サクラには親和の方が合ってるだろうが】
青「確かに……」
桜「他の笛は? 他の兄貴達にあげないの?」
始【そうだな……ちょうど七人だな。
アオ、渡しとけ】
青「はい。全て、飾り付きですか。
ドルマイ様に叱られない程度に
呼び集めてくださいね」
始【う……】
次回から、またオマケを挟みます。m(_ _)m
 




