島の夜13-クロとアオ②
クロが勉強しながら、子供の頃の
アオとの事を、島で思い出していたのを
思い出しているお話です。
はい。ややこしいです。m(_ _)m
クロは勉強を再開しようとして止まった。
「あ、箜蛇は?」
「昼餉の支度をすると言ぅておったではないか」
「オレが居るのにか?」
「クロは勉強に集中せよ」
「う……ん」
島では初々しくて可愛かったんだけどな……
強くなっちまったよなぁ。
あ、でも……
あの頃も強いっちゃあ強かったよなっ。
アオも……
あんな状態でも強かったよな……
どうあっても強くて優しくて……
感謝しか出来ねぇよ……
――――――
クロは重ねに重ねた重箱を、倒れないよう壁際に置いた。
「なんか……思ったよりイッパイ出来ちまったなぁ。
考え事なんて慣れねぇ事してたからかな。
ま、大人数だし、食いきるだろ♪」
それでも残った餡を保冷箱に入れ、独り言ちていると、扉を叩く音が聞こえた。
「ん? 入れよ。
なんだアオか。どうしたんだ?」
「いや、姿が無かったから来てみたんだ。
いつも、こんなに早くから作ってくれているんだな。ありがとう」
「いいってぇ。
これがオレの天職なんだからな♪
お前が後押ししてくれたんじゃねぇかよ」
「そうか……」
「今は、思い出せなくてもいいって。
感謝してるってだけだからな」
「そう……」
「オレは楽しくやってる。アオのおかげでな。
んな顔してねぇで、出来上がったら呼ぶから、まだ寝てろって」
「うん……」
「『ありがとう』はこっちの台詞だ。
マジで感謝してるんだからなっ!
ジャマだから行った行った!」
アオはクスッと笑って出て行った。
ホントに感謝してるよ……アオ……
――――――
アオは普通に教える事を止め、クロがまだ気付いていない天性を利用して大学入試に合格出来るよう、それだけを目指して教えていった。
「なぁ、ホントに こんな勉強でいいのか?
今までと大違いに楽だぞ」
「それはクロが凄いからだよ」
「いや、それをアオから言われると、バカにされてるみてぇだよ……」
「そう? 本当にクロは凄いのに……
俺なんかクロを越えられるものなんて何ひとつ持っていないよ」
「あのなぁ……」
「クロは気づいていないけど、クロには、とても大きな力が有るんだよ。
それが開けば、クロが一番――」
「なぁ、アオ。
その話し方、なんとかなんねぇか?
なんか……それが、バカにされてるって気になるんだよ」
「そうかい?」
「本当にオレなんかを認めてくれてるんなら、もっと――なんて言やぁいいんだ?
なんか……もっと近く? 親しく? なんだろ?
とにかく、オレが信じられる話し方してくんねぇか?」
「クロみたいには話せないけど……そうだな……もっと近く……解ったよ。
もう少し普通に話すよ」
「『普通』? もしかして、アオ……お前『氷王子』って呼ばれてんの気にしてるのか?」
「……いや、そんな事――」
「気にしてるんだなっ♪」
「してないっ!!」
クロがアオの肩をポンポンする。
「ムリすんなよ。
オレはアオが優しいヤツだって認めてる。
だからオレには普通でいいからな。
互いを認めるって事で、それでいいだろ?」
「……ありがとう、クロ」顔を背けた。
「もしかして泣いてるのか?
感激したのか?♪」
「クロ……ふざけてないで少しは覚えろ!
その力、開くまで厳しくやるからな!」
「ゲッ……」やっぱ『氷王子』だ……
♯♯♯
そんなこんなで、クロは大学に進んだ。
と言うか、アオに放り込まれた。
「シロ爺♪ 見てくれっ! 合格したぞ!♪
これで調理師に進んでもいいよなっ♪」
「クロが大学に……いや、見くびっておったわ。
モモさん、祝ぅてやらねばのぅ」
「はいはい♪ しっかりお祝いしましょうね」
祖父母は勿論、大婆様も大喜びだった。
長老会からも、調理師への道も職能として認められた。
「シロ爺、アオは今どこに居るんだ?
入試ちょい前から会ってねぇんだが」
「いや……どこだかのぅ……」
「シロ爺も知らねぇのか?
アオのヤツ、何してるんだ?」
「また、会えた時でよいじゃろ?
アオにはアオの、したい事が有るじゃろぅからの」
「ん……だな……
オレ、アオを足止めしてたのかなぁ……?」
「そんな事は無いじゃろぅが、まぁ、待ってやれ。
アオが戻るまでに、しっかり勉強して、立派な調理師になるんじゃよ」
「そんなに……戻って来ねぇのか?」
「いやいや、そのくらい頑張れ、といぅ事じゃ」
「そっか……
ん! オレ、めーいっぱい頑張るからなっ!」
♯♯♯
アオが言った通り、クロは大学では首席となり、大学院にも すんなり進む事になる。
そして、調理師としての修行にも励み、様々な料理分野での大会の優勝を総嘗めにしていくのだった。
♯♯♯
「大婆様、アオからの手紙をお渡しくださるという事は、アオの居場所をご存知なんですか?」
「話せはせぬがのぅ」困り顔で頷いた。
「いえ、お教え頂きたいのではなく、アオに手紙をお渡し頂きたいんです」
「それならば、喜んで」にこにこにこ♪
――――――
あの手紙……ちゃんと届いたのかなぁ……
鍋を見詰めていると、また扉が開いた。
「クロ、また早いのぅ」
「どうしたんだよ?」
「良い匂いが漂ってきたのじゃ♪」
「あ、それ。食っていいぞ」
パカッ。「牡丹餅じゃ♪」
「たくさん出来ちまったんだ」
「案ずるでないぞ♪ 片付けてしんぜよぅぞ♪」
ん♪ やっぱ食ってる顔がイチバンだ♪
幸せそうで可愛いよなっ♪
こんなに喜んでくれるなんてな……
こっちまで嬉しくなっちまうよ。
これからは兄弟だけじゃなくて
姫の笑顔も護らねぇとな。
美味いモン、イッパイ作ってやっからなっ!
――――――
そうそう。姫の食ってる顔は可愛いんだよな♪
「何を呆けておるのじゃ?
しかと解けたのか?」
目を開けると、至近距離に姫の顔が有った。
「うっ……」
「また答えしか埋まっておらぬではないか!」
「いやぁ……うん、怒った顔も可愛いな♪」
「何を言ぅておるのじゃ?
まだ夢の中なのか?」ぽこっ。
「てっ!
これ以上 悪くなったらどーすんだよっ!」
「これ以上など、悪くなりよぅも無いわ」
「ひでぇなぁ、ったく~」
「ぶつぶつ言ぅておったら、すぐに夕刻になってしまうぞ。
ささ、解くのじゃ」
「わかったよぉ」
♯♯♯
やっぱりクロはクロだな。
良かった。変わっていなくて……
爽蛇を屋敷に連れて来たアオは、クロの様子が流れてきて安堵していた。
あの手紙は、ちゃんと受け取ったよ。
――――――
「アオ兄さん、クロ兄さんから手紙です」
笛の音が止まる。
「ありがとう、サクラ」ふわりと微笑む。
その手紙には、
『天界一の調理師の称号はオレのものだ!』
と、書いてあった。
――――――
そうだな。そろそろ言ってもいいかな……
それにしても、あの島でまで
俺の事なんか考えていたなんて……
アオはクスッと笑って、爽蛇の方を向いた。
「爽蛇、あと少しだけ付き合ってくれる?」
「はい♪ アオ様っ♪」
「あ、何か甘味を持って行こうかな……」
「でしたら、すぐ作りますので♪」
「うん、お願いね」「はい♪」
「いつもありがとう」「え……」
「俺が言うのは変かな?」
「いえいえっ! そうでは御座いませんよぉ。
あまりに嬉しくて……嬉し過ぎて言葉を失ったので御座いますよぉ」
「そう? なら良かった」
「では、すぐに作りますので♪」
桜「アオ兄♪ 俺にもフツーで話して~♪」
青「いや……それは何だか……」
桜「じゃあ、クロ兄みたく話して~♪」
青「もっと嫌だよ。サクラは出来るの?」
桜「ん~とね~♪
オレがアオ兄を支えてやっからなっ」
青「そういえば、前は皆に中継していたね。
声色まで真似て」
桜「うん♪ アレとっても楽しかった~♪」
青「サクラは本当に器用だよね」
桜「えへ~」照れ照れ~
青「そうか。兄弟誰の代わりでも出来るんだね」
桜「できるよ~♪」髪色を金に戻す。
青「キン兄さんの真似かい?」
桜「ううん。アオ兄~♪」
青「やめてね」
桜「なんでぇ? どぉしてぇ?」
青「サクラに戻ってね」
桜「俺……アオ兄になりたいのに……」
青「サクラはサクラだからね」ぽふっ。
桜「ん……♪
でもねっ♪ 目標はアオ兄♪」
青「もっといい目標を見つけてね」くすっ♪
桜「アオ兄がいいんだも~ん♪」ぴとっ♪
クロの話は?
 




