対呪戦10-ただいま
解呪の真っ最中なのに、クロが消えました。
「クロ!!」(いない!?)(どこっ!?)
クロが消えた瞬間、別の掌握がクロを掴み、魔法円に戻した。
その掌握が消えると同時に、クロから呪の闇が流れ出始める。
(間に合った……のか?)
神々が頷き、微笑む。
アオとサクラ、ホッと ため息。
(キュルリを追っちゃったかなぁ?)
(うん、クロは遊んでいるつもりだからね)
(ルリ、ありがとう)
(子供だからな。動く前提で見ていた。
この解呪、最大の難点は、芳小竜と器の出来でも、その置き換えでも無く、対象者がおとなしく解呪を受けられるか、だろうと思っていた)
(流石、母だね)(揶揄うなっ)
(本当に感心しているんだよ)
(いや、だからそんな――)
(ありがとう)(……うむ)
サクラがキュルリをアオに渡した。
疲れたらしく、キュルリはアオの掌で丸くなって眠った。
(キュルリ、ありがとう)アオとルリが囁いた。
呪の放出が終わるまで、クロは驚いた表情のまま静止していた。
(これってカナシバリ?)(そうかもね)
(後半は固めてもいいんだね~)(うん)
(ルリ姉とキュルリ凄いね)(そうだね)
(クロ兄の事)(俺達より解っていたね)
放出が終わり――唱術が終わった時、クロは光に包まれた。
そして――
光の中から『姫、ただいま』クロの声がし、
光がクロに吸い込まれた。
「クロ♪」「おう」
神々が頷く。姫がクロの胸に飛び込んだ。
芳小竜の形の器が、光の粒となって天に昇る。
神々が微笑み、神界へと帰って行った。
「ありがとうございました!」
アオとサクラが深々と頭を下げる。
クロと姫も、続いて頭を下げた。
(アオ兄、あっち行こ)(そうだね)
二人は奥の部屋に行った。
(俺、キン兄とこ行くね)曲空。
(また、気を遣いおって……)
(そうだね)くすっ。
(アオ、さっきは眠っていなかっただろ)
(そうだね)あはは……
(笑ってないで早く寝ろ)
(うん。ルリも、ね?)(私は別に……)
(そう言わず休んでね)(……うむ……)
♯♯ 深蒼の祠 ♯♯
サクラは、バナジンの気に曲空していた。
「バナジン様、ランと水晶は――」
【水晶は暫くの間、天藍と共に。
いつでもお話し出来るよう置きます。
虹藍は魔竜王城に送りましたよ】
「ありがとうございます!」
【クロは無事に、元の姿に戻ったのですね】
「はい!」にこにこ。
【良かったですね。
では、早く魔竜王城にお帰りなさい】
「はい、失礼します」曲空。
――地下魔界。
「キン兄~♪」ぱふっ♪
「皆、無事で何よりだ」
「まだ何も言ってないよぉ」
「その顔と声で十分だ」にこり。
「そぉ? じゃ、朝、交替するねっ」曲空♪
――魔竜王城。
「ラン~、ごめんよぉ」
「お帰りなさい、サクラ。
神様から聞いたわ。何事も無くて良かった……
お疲れさま」ぎゅっ。
「心配かけちゃったね……
でも俺、絶対だいじょぶだから。
何があっても、絶っっ対ランの所に帰るから」
「うん……」瞳が潤む。
「俺、孵化した瞬間から『神の子』って言われてたんだ。
だから絶対! だいじょぶなんだよ♪」
「うん……」「ラン……」(ありがと)(うん)
(それと、ごめんね)(うん……)
(大好きだよ、ラン)(私も……)
♯♯ 竜宝の国 祠 ♯♯
(にしても、ここ、どこなんだ?)
(竜宝の国じゃ)
(何で、んなトコに居るんだ?)
(何でも、よかろ)
(いや、よくないだろ)
(気にせずともよいのじゃ)
(ふ~ん……)
(クロは……何も覚えておらぬのか?)
(いや……変な夢を見ていたような気分だ)
(ワラワも前に、そのよぅな気分になったぞ)
(いつ?)
(東の国に行った時じゃ)
(ああ、あれか……気にすんな)
(ならば、クロも気にするでない)
(ん~……ま、いっか。姫がここにいる。
それだけでオレは満足だからな)
(さよぅか……ワラワも同じじゃ。
のぅ……竜人になって以降、ずっと思ぅておったのじゃが……
竜の一生は長い。
人に比べれば、とてつもなく長い。
永遠とも思える程に長いのじゃ。
それでも……クロは、ずっとワラワと共に居ってくれるのか?)
(竜にとっては当たり前の長さだからな。
ずっと一緒だ。絶対にだ!)
(さよぅか……)
(それにな、王族の魂は永遠なんだ。
だから、ずーっと、ずーーーっと一緒だ)
(ワラワも永遠なのか?)
(ああ。個紋があれば永遠なんだ。
爺さんが、そう言ってた。
姫もほら、光ってる)
(真、クロのも光っておるのぅ)
(個紋と個紋を近づけると光るんだ。
子供の頃、兄弟バラバラだったから、会うと、こうやって光らせて喜んでたんだ。
絆を確かめてたんだな……きっと)
(では、クロとアオが じゃれあうなど無かったのか?)
(記憶に無ぇなぁ……聞いた事も無ぇ。
長老の山に修行に入ってからでも、兄弟だけで会う事なんて滅多に無かったからな……)
あ……アオには暫くの間、
毎日シゴかれたよな……
『ジャレあう』には程遠いけどな。
(クロとワラワの子には、そのよぅな思いは決してさせぬぞ!
中の国には、そのよぅな理不尽なシキタリなど無いからの!)
(アオ大臣も、変えてくれるって言ってただろ。
これからは大丈夫だよ)
(さよぅか……安堵致したぞ。
真にアオは凄いのぅ。サクラも、じゃが……)
(おいっ、また乗り換えるとか言うなよ)
(そのよぅな意味では無い。
クロは助けて貰ぅても、そのよぅに――)
(助けて……貰った?
……ま、いつもの事だけどな……)
(もしや……先程、『ただいま』と言ぅたのも覚えておらぬのか?)
(何だ? それ???
姫に呼ばれて目が覚めたんだ。
で、あぁ……寝てたんだな、って思ったんだ)
(では、あれは寝言か……)
(寝言は、サクラが得意なんだがなっ)あはは♪
(響くのぅ……それに、広すぎて落ち着かぬ)
(確かにな……ここは曲空してもいいのかな)
(入った時は、神様に光で包んで貰ぅたぞ)
(聞いてみる)(アオ、サクラ)
(クロ、何だ?)
(なぁ、ここは、曲空して出てもいいのか?)
(出る方は大丈夫だ)
(そっか。ありがとな)
(クロ達は明日の夕方まで休みだよ)
(そんなにいいのか?)
(姫と、ゆっくりしていて)
(ん~じゃ、屋敷に居るから、何かあったら絶対 呼べよ)
(うん、ありがとう)
(アオ……ありがとな)
(ん?)
(オレ、また世話になったんだろ?)
(俺は何もしていないよ)
(んな事 無ぇだろ)
(助けたのは、神様とキュルリだよ)
(キュルリが?)
(あとはルリかな)
(サクラは?)
(うん、サクラも頑張ったね)
(じゃ、アオも、だろうがっ)
(俺は別に……)
(とにかく! ありがとなっ!)
(いや……私は――)
(ルリさん!?)
(アオが引っ込んでしまった)
(アオもルリさんもキュルリも、親子で助けてくれて、ありがとな)
(私はともかく、伝えておく。
私なんぞと話すより、姫様と話せ。では、な)
(お~い)(…………)(しょ~がねぇなぁ)
(姫、出ていいって。屋敷に行こう)(うむ♪)
クロは姫の手を取って曲空した。
――室内。
(クロ……ここはアオの屋敷じゃろ?)
(あ……つい……でも、落ち着くだろ?)
(確かにのぅ……)苦笑。
読まなくてもクロが戻れるの決定!
――なサブタイトルでしたが、
とにもかくにも一件落着です。
キュルリも寂しくなるとは思いますが……
その点も大丈夫です。
凜「バナジン様は深蒼に残られたんですね?」
バ【はい。こちらも放置できませんので。
代わりに父上様が】にこっ。
凜「あ~、それで~」
バ【何かありましたか?】
凜「ちょっと絡まれただけで~す」
バ【それは、すみま――】
始【お前が絡んで来たんだろーがっ!】
バ【父上様……】
始【バナジン! コイツの機嫌なんか
とらなくていいからなっ!】
凜「言うだけ言って消えちゃった……」
バ【すみません。騒がしくて】
凜「何がどうなったら、あの親から
こんな素敵な神様が生まれるのやら……
まさしく奇跡ってヤツ?」
バ【私は神界で育ちましたので】
凜「あ……つまり育児放棄?」←納得!
バ【いえ、ゴルチル様が拐ったとか……】
凜「やるなぁ♪」ゴルチル様、グッジョブ!
バ【しかし天竜王家存続の為、
天界に戻されたのです】
凜「どうして、そこまで?」
バ【それは……祖父母も知らない事ですので、
オフレコでお願い致します】
凜「は~い♪」オフ♪




