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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
321/429

対呪戦6-天藍前王妃

 コバルトはサクラが戦っていると察知して

ハザマの森に来たようですが、

バナジンはサクラに伝言が有って来たようです。


♯♯ ハザマの森 ♯♯


【サクラ、深蒼(シンソウ)のムーントから、天藍(ティンラン)が目覚めたと連絡が入りました。

会いますか?】バナジンが微笑む。


「はい! 明緑(ミンリー)様の水晶を持って参ります!」


【では、先に参りますね】「はいっ」曲空。


【父上様は如何なさいますか?】


【キンの所に行く。再会など、つまらん】


【涙を見られたくないのですね?】くすくす♪


【流すワケ無いだろっ!!】消えた。




♯♯ 天界 深蒼の祠 ♯♯


【天藍……】

【母上……生きておられたのですね!】


 サクラが扉を開くと、部屋の中では、微笑む神々と、半身を起こした婦人が話していた。

サクラが抱えていた水晶玉が驚きと喜びの光を帯び、明緑前王と紫紅(ズーホン)王子が声を発したのだった。


「その水晶は……竜魂の水晶……」


バナジンが経緯を説明した。

【残念ながら、御体に戻す事は叶いませんでしたが……】


「いえ、ありがとうございます。

剣に込める術は、死して初めて発動するもの。

生き返る事は叶いません。

いつか、天界との交流が再開しましたら竜魂の水晶へと願い、ジョンブリアンより代々施しておりましたので。

ただ……皆、亡くなってしまったのですね……」


【しかし、こうして話せる。

全て、天藍のおかげだ。ありがとう】


「あなた……紫紅、彩白(チャイバイ)翠星(スイシン)……」

天藍は涙流れるまま、四つの水晶を抱きしめた。


サクラが、そっと出て行こうとすると――


【サクラ、待ちなさい】明緑が引き止めた。


【天藍、魔竜王国の現王だ】


「光の竜……では、天竜なのですか?

絶えてしまった魔竜王族に代わって、治めてくださっているのですか?」


【いや。絶えぬよう、後妻を向かえたのだよ。

天藍が生きているとは思っていなくてね……

後妻との子と共に治めているのだ】


「絶えていない……良かった……」


「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。

サクラと申します」


【サクラは天竜の第七王子なのだよ。

これから、第三王子のアオが大臣と成り、両国の懸け橋となってくれるそうだ】


「安泰なのですね……本当に良かった……

サクラ様、ありがとうございます。

これから、どうぞ宜しくお願い致します」


「若輩者ですので、私の方こそ、どうか宜しくお願い致します」


「あなた、私、この素晴らしい輝きを放つ王をお支え出来ればと思うのですが」


【ありがとう、頼んだよ】


「あなたのお妃様にも、お会いしたいのですが……

御子は おひとりなのですか?」


【後妻も、王子も、亡くなったのだよ。

王女ただひとり生き残り、女王と成っている】


「おひとりで……さぞかし心細かったことでしょう。

サクラ様、幾重にも御礼申し上げます」


【サクラは、もうすぐ、その女王と結婚してくれるのだよ】


「まあっ、それは悦ばしい事!

では、お妃様も御覧になられたいでしょうね。

どの剣が発動したのか、探します!」


「ありがとうございます!」


「私の術ならば容易いのですが……

少しお時間くださいね」


「はい。婚儀は、その後に致しますので。

でも、御無理なさらないでくださいね」


「もう大丈夫ですよ。

サクラ様はお優しいのね。

その優しさにお応えしたい……今、出来るかしら……

あなた、お妃様は懐剣をお持ちでしたか?」


【宝物庫から宝小剣を渡していたから、持っていただろうが……】


「サクラ様、掌握をお持ちですね?」


「はい。一応程度ですが」


「でしたら、早いかもしれませんよ」にこっ。


天藍は目を閉じ、気を高めた。


サクラも神眼を合わせていく。


 あ……やっぱり神眼だ!

 凄く強い……クロ兄みたいな海だ!


 この風景……魔竜王族の墓地だ!


「やはり、棺の中でした。

王子――淡黄(ダンファン)様も、帯剣にいらっしゃいます」


安堵の微笑みの後ろに、極度の疲れを見て、サクラが慌てて光を当てる。


「発動したら、どこかに飛ぶのでは?」


「私は、飛ばぬよう術を変えましたから……

その分、強固に封じておりますけど」


「それで、明緑様と紫紅様は帯剣にいらっしゃったのですね。

では、すぐに行って参ります!」曲空。




 美しい装飾が施された懐剣と、爽やかな気を放つ長剣を持ってサクラが戻った。


「ありがとうございます、サクラ様」


「いえ、お教えくださり、ありがとうございます!

バナジン様、お願い致します」


【お任せくださいね】にっこり。



「あの……天藍様は、魔王に依って、鏡に封じ込められたのですか?」


「いえ……でも、そうなるかしら……

魔物に襲われて、鏡に逃げたのですが、その鏡ごと封じられてしまったのです」


「それで壁から鏡が出たのですね……」


「そうだったのですか……壁に……

私は天界への道を求めて、鏡を集めておりました。

竜宝達から、移動の為の鏡の話を聞きましたので。

あの鏡達は、どうなったのでしょう?」


【天藍の部屋には、姿見すら無かったよ。

不思議に思ってはいたのだが……】


「魔王も沢山の鏡を持っていました。

きっと天藍様の鏡から、鏡について知り、鏡を研究するようになったのだと思います。

今、鏡達は神様方が改良してくださっています。

私達も使わせて頂いております」


「そう……鏡達も、良かった……

サクラ様、何から何まで、本当にありがとうございます」深々と礼。


「いやっ、そんなっ、私なんて――」わたわたっ。


「竜宝の王様、竜宝を使い、広める事、私にもお手伝いさせてくださいね」


「え……華雅! また喋ったの!?」

【当然で御座います、我等が王】

「もおっ!」赤面。【何か?】「ぶぅ~」


「可愛らしい王ですね」にこにこ。「あ……」


【サクラは、普段は愛らしく、王としては、しっかりしている。

私よりも、ずっと王に相応しい男だ】


サクラが真っ赤になり、部屋があたたかい空気で満たされた時、バナジンが二つの水晶を手に戻った。


【すぐにお目覚めになられますよ】


天藍が差し伸べた手に渡した。


「あ……謁見が終わりましたので、女王をお連れ致します」また曲空。


「どうして分かったのかしら……?」


【複製が謁見していたのだろうね】


「複製? 不思議な事ばかりね」


【天藍でも不思議だと思うのだね。

竜宝と話し、見透(みとう)す力を持つ神子(みこ)様でも】


「私なんて……サクラ様こそ神子様ですよ」


【父上? それに……天藍様ですか?

兄上様も、姉上様方も……ここは死者の国ですか?】


【淡黄、ここは天界だよ。

天藍が我々の魂を剣に込めてくれたから、こうして話せるのだよ】


【では、天藍様は生きていらしたと――】


【あなた?】【母上……?】【淡黄?】


【あーっ! 説明してやるっ!】笛から声。

【サクラの奴、置いて行きやがって!】


【父上様、穏やかにお願いします】


【煩いっ!

バナジンが説明しないから、出てやったんだぞ!】


【あなた……】【始祖様だよ】【えっ?】


【シルバコバルトだ! よく聞け、子孫共!

神である俺の子孫は、その水晶に入れば、魂は永遠だし、話せるんだよ!

以上だっ!】


【父上様……そんな乱暴な説明――】


【バナジン、補足は任せたぞ。

サクラもだ! ちゃんと解らせろよ!】


扉が開き、サクラが顔を出した。

「はい、始祖様」


サクラの隣には虹藍が立っていた。


【虹藍……】【無事だったんだね】


サクラは、立ち尽くす虹藍の背を優しく押した。

「天藍様が見つけてくださったんだよ」


「お母様……淡黄お兄様……」一歩 踏み出す。


「虹藍様、こちらですよ」


「天藍様っ、ありがとうございます!」

虹藍は駆け寄り、抱きついた。




 虹藍の涙が、ようやく落ち着いた時、

「あ……」

天藍が小さく声を上げ、バナジンに視線を向けた。


【天藍、どうしたのだ?】

皆、天藍の視線を追う。


「神様は……もしや、二代王様……チェリーバナジン様ですか?」


【気付かれてしまいました。

父が失礼致しました】にこにこ。

【魔竜王国には肖像画も何も有りませんから、隠し通せると思ったのですが】

ふふふっ。


「始祖様を『父上様』って呼んでましたよ」

サクラの目が笑っている。


【ああ、それで……それは、うっかりしていました】ふふっ♪


「ご先祖様が本当に神様だったのですね……」


水晶玉からも次々と、複雑そうな想いが込められた小さな声が漏れ聞こえた。





姫「キュルリは馬車に来ておらなんだか?」


キ【いってた~♪】


姫「して、何故、留守番を?」


キ【ボクが『ヤミ!』って いったの。

  そしたらサクラが ここに おいてったの~】


姫「さよぅか……」


キ【あそぶ?】


姫「うむ♪ およ? クロは?」


キ【ディアナのうえ~】


姫「これっ! クロ! 失礼なっ!」


 そして鬼ごっこが始まった。




  天藍(ティンラン) = 明緑(ミンリー) = 朱麗(ツーリー)

┌───┬┴─┐ ┌┴──┐

紫紅(ズーホン) 彩白(チャイバイ) 翠星(スイシン) 淡黄(ダンファン) 虹藍(ホンラン)




凜「どうしてキュルリだけを祠に戻したの?」


桜「わっかんな~い」


凜「咄嗟だろうけど、今 考えても?」


桜「う~ん……なんとな~くね~

  キュルリに見せたくなかった、かなっ?」


始【フンッ、また何か拾ったんだろうよ】


凜「その『拾う』って何ですか?」


始【言えるかよっ!】


凜「知らないんだ~」


始【違っ! そんな手に乗るかっ!

  神でない奴には言えないんだよっ!】


凜「じゃあ、どうして出て来たんですか?」

桜「ね~」


始【うっせーっ!】


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