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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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対呪戦1-古狸族の特技

 のんびりしていたら、また魔王が動き始めたようです。


♯♯ 地下魔界 深魔界付近 ♯♯


 キン、紫苑、珊瑚が曲空した先では、二枚の鏡の間に魔物が立ち、別の魔物が、うち一枚の鏡をくぐり去ろうとしている所だった。


その二枚の鏡面に御札が貼り付き、各々から絶叫が響いた。


間に立っていた魔物が向かって来た!


キンが神以鏡から光を放つ!


光に包まれた魔物は静止し、闇黒色の被膜が剥がれるように、闇が後方に散り、消え去った。


紫苑と珊瑚が、呆然としている魔人に近寄り、浄化した。


キンは鏡を浄化し、掌を当て、どこに繋がっているのかを探り始めた。


『その御札は……そちらは王太子様ですか?』


「王太子ではありますが……貴方様は?」


「あっ」紫苑が鏡に寄り「狸玖(リキュウ)様ですか?」


『はい。失礼を致しました。

こちらに魔人が倒れておりまし――』


「如何なさいましたか?」


『不穏な気配を感じまして――あれは!』


「参りましょう」紫苑は鏡面の御札を消した。


珊瑚が魔人を伴い鏡をくぐった。紫苑が続く。


【キン、向こうに行け】ゴルチルが現れた。

【鏡は任せろ】


「お願い致します」キンも鏡を抜けた。




♯♯ 人界 東の国 ♯♯


 アオとサクラは、岩山から森を見下ろしていた。


(向こうの街に行くつもりっぽいね~)


(挟もうか)(俺あっち~)曲空。


アオは、サクラと魔物達の気の位置を確かめ、低空飛行で岩山を下った。



♯♯♯



 サクラは先頭の魔物を見つけ、光を放った。

魔物達の後方からも、アオが放つ光が拡がる。


 周りにもいるね……


周囲の魔物に向かって、次々と光を放つ。

アオからの光も魔物を包み、はたまた飛び去っていき、離れた所から魔物の絶叫が響く。


 もぉいない?


サクラは辺りの気を探り、念のため神眼と掌握でも探った。



(サクラ、魔人を浄化しよう)


(うん……アオ兄、疲れてる?)


(そんな事ないよ。どうしたの?)


(放つ間隔が、いつもより空いてたから……)


(ああ、ルリを眠らせてるからね。

俺だけだと、あんなものだよ)


(普段はルリ姉も放ってるの?)


(交互に放っているよ)


(すご~い♪

強さも間隔もピッタリなんだねっ♪)


(そりゃあ、双青輝だからね)照れる。


アオが最初の一団を光で包んだ時、魔人を抱えたサクラが飛んで来た。


光の中に魔人達を降ろす。


(あっちの人達 連れて来る~)


飛び始めたサクラが止まった。


(追加だよ!)(行こう!)二人は曲空した。




♯♯ 地下魔界 古狸(コリ)帝国 ♯♯


 紫苑と珊瑚が放つ御札が、次々と稲光を引きながら飛び、触れた魔物達が光に包まれる。


キンが光を放つと、狸玖も光を放った。

狸玖の配下達も次々と光を放つ。



 魔物は大した数ではなかったので、戦闘はすぐに終わった。


 各々、魔物にされていた魔人達を浄化しながら――


「天竜王太子様、先程は大変な失礼を致しまして、申し訳ございません」


「御札しか見えなければ、妖狐王太子様と思うのが当然です。

そのように畏まらず、お気を楽になさってください」


「有り難き御言葉にて……」深く礼。


「魔人の皆様は、基本属性が闇だと思っておりましたが、古狸の皆様は、光を放つ事が出来るのですね」


「あれは真似ただけでございます。

私共は、自らの技は少ないのですが、真似る事は得意ですので」


「直前のものを真似るのですか?」


「はい。竜の皆様も出来るのですか?」


双璧(ソウヘキ)という天性を持つ弟が、同様の事をします」


「然様ですか。

私は若い頃、真似しか出来ない事を卑下しておりました」


「属性も何も無関係に、敵の技すらも放つ事が出来る強い力ですので、誇るべきだと思います。

私は、双璧を持つ弟を羨ましく思っています」


「ありがとうございます。

救われます御言葉にございます」


周囲を確かめに行っていた紫苑と珊瑚が、コギ達を連れて戻って来た。

「後の浄化は、コギ殿にお任せください」


「妖狐王太子様、ありがとうございます」


「キン様、人界の方に参りましょう」


「そうですね。

あの二人ならば、大丈夫だとは思いますが」




♯♯ 人界 東の国 ♯♯


 キン達がアオ達の気を辿って合流した時、二人は魔人を運んでおり、カルサイが魔人達を浄化していた。


「終わったのだな?」「はい。ただ――」

「どうした?」「鏡が有るような気が……」


アオは目を閉じ、探っているようだったが、何かに阻まれているらしく、断念し、笛を取り出した。


「どうするのだ?」


「昨日の拠点の鏡に、この魔笛が反応していたので、吹いてみようかと思ったんです」


「魔笛、それだけなの?」


「サクラも吹くかい?」「うん♪」

「紫苑殿、珊瑚殿、妖笛お願い出来るかい?」


四人で吹き始めると、すぐに森の中に仄かに紅い光が明滅した。


キンが光に向かうと、地面が光っていた。

(アオ、サクラ。地中だ)(はい)(うん)


アオは鏡を掌握で取り出し、浄化の光で包んだ。

鏡面に掌を当て、確かめる。


「運び出し用だよね?」サクラも当てる。


「そうだね。向こうは深魔界の拠点だね。

キン兄さん、行きますか?」


「もうすぐ朝の交替時間だ。

ハクとフジも連れて行こう」


【鏡の道は、私が保ちましょう。

地下にも同じ鏡が有るのでは?】


「そうですね。古狸帝国に戻ろう」「はい」



――古狸帝国。


 カルサイが言ったように、ここにも地中に同様の鏡が有った。

鏡は浄化の為に、全てカルサイとゴルチルに預け、各々持ち場に戻った。



♯♯♯



(アオ、そろそろ起き上がってもいいか?)


(ルリ、また治癒の眠りを解いたのかい?)


(もうとっくに何ともない。

いい加減、自由にさせてくれないか?)


(本当にルリは強いね)

恨めしそうに見上げるルリの髪を撫でた。


(相殺を解除してくれ。これでは戦えぬ)


(意地悪しているんじゃないんだよ。

休むべきだと思ったから、こうしているんだ)


(そうは言うが、ここまでしなくても――んっ……

だから、口を塞いでも話せると――やめっ――)


(ずっと一緒に生きていくんだから、無理はさせないよ。休んでいてね)


(念綱を解けっ!)(おとなしくする?)

(うっ……分かったから!)(約束だよ)

(ああ、約束する)(なら、解くからね)


(相殺は、このままなのか?)


(解いたら暴れるよね?)


(場合に依っては、そうなるかも――)


(もう少し信用して、頼って欲しいな)


(いや、そうでは――)(あ、そうだ♪)


(何だ? 何を浮かれているのだ?)


(勉強していてね♪ 大臣になるんだからね♪

相殺も解くし、融合もするから。ねっ♪)


(本当に、私なんぞが大臣になってもよいのか?)


(もう決まったんだし、やるしかないよ。

この戦が終わったら、もう戦う必要は無い。

新たな道で双青輝(ソウセイキ)するんだからね)にこっ♪


(それって……私は、そんな事も言ったのか!?)


(その場しのぎでは全て叶えたよ。

でも……俺にとって、ルリの望みは全て大切だから。

一生懸けて叶え続けるからね)


(アオ……)だから、その笑顔は――


(俺がルリを選んだのは、戦う為だけじゃない。

修練の相棒に選んだ時から、そうなんだ)


アオは相殺も解除した。

そしてルリを抱きしめ――


(俺には、ルリの代わりなんて居ないんだよ)



――――――



(私……戦う事しか出来ない……

でも、アオと、ずっと一緒に居たいの。

ずっと双青輝であり続けたいの……)


(ありがとう、ルリ。

俺の方こそ、ずっと一緒に居たいんだ。

だから、ちゃんと考えているよ。


俺は政に携わる身として、これからも様々な事象と闘わなければならない。

だから、その相棒になって欲しいんだ)


(私に……出来る?)


(ルリだから出来るんだよ。

何に於いても、俺の相棒はルリだけなんだ。


俺の心の中に一緒に居るんだからね。

俺はルリに嘘なんてつけない。解るよね?)


(うん……でも、私……)


(おとなしく奥さんしていてって言っても、満足出来ない性格なのは、十分 知っているよ。

それに、家の事は蛟達が全部してしまうからね。

だから、ちゃんと考えているよ。安心してね)


ルリの顔から不安が消え、笑顔が咲いた。



――――――



 これがルリの望みの ひとつだった。


 父上は、俺の気持ちを察していたのか……

 補佐にと言われて、俺は両手(もろて)を挙げて

 喜びたい気持ちだった。



(なぁ、アオ……伝わってしまっているのだが……)

ルリが恥ずかしそうにアオを見上げている。


(それとも、わざと伝えているのか?)睨む。


(あ……伝わってしまったかい?

次から、思い出す時は気をつけるよ)


(いや……いっそ全て教えてくれないか?)


(気にしないでよ。ちゃんと叶えるから)


(気になる! 小出しにするなっ!)


(さっきのは、うっかりしていたんだ。

もう伝わるなんて無いからね)


(それはそれで……やっぱり嫌だ!)


(そんなに知りたいの? 困ったな……

ルリ自身、心に秘めて望んでいる事は、ひとつひとつ分かっているよね?

全部 言ってしまったと思ってよ)


ルリは真っ赤になって黙り込んだ。


(で、俺は、そう望んでくれている事が、心底 嬉しくて、生涯 叶え続けていこうと思っているんだ)


 もう一度ルリが見上げると、アオの眼差しは真剣で……

しかし、目が合うと幸せそうに微笑んだ。





凜「爽蛇♪ 捕まえた♪」


爽「凜様……」


凜「ずっと魔界に行ってたでしょ?

  で、屋敷に戻って ちょっと経ったから

  進展したかな~と♪」


爽「何が、で御座いますかぁ?」


凜「も・ち・ろ・ん♪」


爽「はい?」


凜「とぼけないでよね~

  琉蛇さんとは、その後どうなったのよ?」


爽「は? 元々何も御座いませんからぁ」


凜「またまたぁ~♪

  風ちゃんが『とーちゃ』『かーちゃ』

  って呼ぶくらいの仲なんでしょ♪」


爽「そ、それはっ、

  風蛇が勘違いしているだけでっ!

  琉蛇さんは、お屋敷の保母さんなだけでっ!

  あのっ、私よりも ずっとずーーっと!

  お若いんですからっ!」


凜「蛟の皆さん、歳の差なんて

  気にしてないでしょ♪」


爽「わ、私は気にしますからっ!」


凜「ふぅん。

  でも、好きなんでしょ?」


爽「そ……れ、は……」


凜「なんでしょ?♪」


爽「いえっ! 何でも御座いませんのでっ!」


凜「頑固だなぁ。

  認めちゃいなさいよ~」


爽「失礼致しますっ!」逃げっ!


凜「認めたに等しいよね~♪」


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