静けさ5-人神器
アオとサクラは、深魔界を探ったり、
何やら試したりしているようです。
♯♯ 深魔界 ♯♯
『アオ、話したいのだが――』
珍しく、キンから、そう持ち掛けられたので、夕刻の交替で組む事にした。
「俺も いっしょ~♪」きゅるきゅるる~♪
はしゃぐサクラの頭の上で、キュルリもはしゃいでいる。
「サクラ、あとひとつ試すんだからね」
「そいえば、ルリ姉は?
気配が消えたみたいだけど……」
「疲れているみたいだから眠らせたんだ。
必死で呪に抗っていたんだろうね」
「そっか……」「始めるよ」「うんっ」
アオとサクラは向かい合い、掌を合わせ、光を纏い、神眼と掌握を発動した。
二人から発せられる光が拡がっていく。
(アオ兄、神眼と掌握、両方 使って探る方法、いつ見つけたの?)
(ルリが、よくやっているんだよ)
(ルリ姉すごいね~)
(たぶん俺より使い熟しているよ)
(クロ兄と姫みたい~)きゃははっ♪
(あっ……)(サクラ、どうしたの?)
(何かある? いる? なんだろ?)
拡大を止め、探り直す。
アオもサクラの掌握の位置を見つけ、探った。
(これかな?)(うん、何か埋まっているね)
(出してみるね)(気をつけて)(うん……)
サクラの掌に現れた。
(鈴? 鐘なのかなぁ?)(変わった形だね)
(竜宝でも魔宝でもないね)(該当しないね)
(なんだろね~)(人神様ならご存知かもね)
(人神様?)(昔この地は人界だったからね)
神眼と掌握の拡大を再開する。
(俺そろそろ限界~)(うん。俺も無理かな)
(縮める? 解除?)(縮めてみよう)(ん)
(ゆっくり慎重に、探りながらね)(うん♪)
掌握を手繰り寄せるように縮小する。
(あれ? また埋まってる)(こっちにも有るよ)
(拡げる時は見えなかったよねぇ?)(そうだね)
まだ有る筈と思いつつ縮めていった。
(うん。縮める時の方が見易いね)(そぉだね~)
(また有るね)(あ♪ 掴む時、よく見えるよ♪)
(掌握が強めの方が探し易いんだね)(だね~♪)
そうして、すぐ近くまで縮小し、解除した。
「十五個……同じ物みたいだね」浄化。
「魂、確かめるね」掌を翳す。「入ってるよ」
サクラは謎のそれをひとつ掌に乗せ、
「目覚めてね……」
光で包み、術を唱え始めた。
地面に置いたままの物も、同調しているのか、光を帯びたので、アオはサクラを囲む形に、それらを置き直した。
一瞬の輝きがサクラを包み――
【貴殿方は……?】
「天竜のアオとサクラです」
【天竜……地下人界に……そうですか……】
「貴方は、こちらが人界だった頃に作られたのですね?
今、こちらは魔界なのです」
【ああ……何か暗き者が、暴虐の限りを尽くし、人神様方が私達を地中に込めた事迄は思い出しました。
では、その後この地は魔界となったと……
人神様は今どちらにお住まいですか?】
「人神様方は、天の神界にお住まいです。
お連れ致しますね」
【ありがとうございます】
「貴殿方のお仲間は、他にもいらっしゃるのでしょうか?」
【人神器の仲間、という事ですか?】
「人神器と仰るのですね。
そうです。いらっしゃいますか?」
【おそらく、皆、私達と同様に、地中で眠りに就いていると思います】
「探しまして、皆様、人神様の元にお連れ致しますね」
【ありがとうござ――ああ、失礼致しました。
貴殿方は竜宝の王様なのですか……
存ぜぬ事とは申せ、甚だしい御無礼を――】
「そんなふうに言わないでぇ。
俺達、ただの竜なんだからぁ」
【そうは仰られましても――】「いいのっ!」
「本当に畏まらないでください。
竜宝達と友達になる為だけに、王を引き受けただけなんですから」
「そぉなんだよ~、みんな友達なんだ♪
だから人神器の みんなとも、友達になりたいんだ♪」
【勿体無き御言葉にて――】「だ~か~ら~」
【……ありがとうございます】「友達ねっ♪」
二人は人神器を掌に盛り、曲空した。
――星輝の祠。
「カルサイ様、深魔界の地中で見つけました人神器なのですが――あ……」
近寄りながら話していると、人神の姿が見えた。
「蓮仏様、お越しくださり、ありがとうございます。
こちらの人神器達をお持ち致しました」
【それは、古の光臨鐘……
貴殿方は龍神帝王の直ぐ近くまで進行しているのですか?】
「少しだけ深魔界――地下人界に入りました所です。
その光臨鐘とは、どのような人神器なのでしょうか?」
【光を導き、無から光を成す物です。
人は多くが火も雷も持たぬ無属性ですので】
「無から光……無属性から光が……そうか!
蓮仏様、光臨鐘を使わせて頂けませんか?」
【はい。では、調整致しましょう】
「アオ兄、武器にするの?」
「うん。それもあるけど、光属性の為の道を作りたいんだ。
真魔界の結界を解除する時のね。
昨日の、光を封じる結界魔宝にも、光でなければ解呪出来なくしていたからね。
きっと光排除の結界魔宝にも、光が必要なんだろうと思うんだ。
今度こそ神聖光輝では誤魔化せない。
そんな気がするんだよ」
「神様が解かないとダメとか?」
「そう。だから道が必要なんだ」
【アオ、無茶はしないでくださいね】
「はい。一歩一歩、確実に進みます。
その為にいろいろ試しているのですから」
【また深魔界に行くのですか?】
「いえ、この後は警護を交替しますので」
【では、私も参りましょう】
「スミレ様が修行中だから、ですか?」
【私はスミレと、ドルマイはヒスイと絆を結びましたから、共に戦いますよ】
「カルサイ様……御自ら……」
【私自身、最高神としても、この戦を傍観など出来ないのです。
それに……息子の監視もしなければなりませんので】
アオとサクラ、じっと笛を見る。
――が、気配は有るものの、声はしなかった。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
そして夕刻、警護を交替した。
「アオ、あの呪は、本当に大したものでは無いのか?」
「いえ、単独でも、場合に依っては非常に危険です」
「『場合』とは?」
「アカのように並外れて精神力が強いとか、クロのように望みが明確な場合は、たいした事にはなりません。
ですが、望みが複雑であったり、実現困難であったり、秘めた望みが有ると、暴走する恐れが多分に有ります」
「『暴走』とは具体的には?」
「解決には結びつかない破壊行動を起こします。
本人は意識を失っています。
ですので、思考は停止しています。
叶える為に、どうすれば良いのかを考える事が出来ないのです。
その状態で望みは膨らみ、叶わない事への苛立ちも肥大します」
「それで、見境の無い破壊行動へと『暴走』するのだな?」
「はい。アカですらも、自分から工房へは行けませんでした。
放っておけば暴走したでしょう。
ルリには悪かったのですが……
確かめる為に少し焦らした所、すぐに狂暴化する事が判りました。
俺を求めながらも、俺を殺そうとする。
その矛盾すらも解らないのです。
それに因って実現不可能となった場合――」
「死ぬまで破壊し続ける、か」「はい……」
「秘めた望みがある場合、叶えられないから暴走しちゃうの?」
「まず、表面上の望みをいくら叶えても呪が解けない。
なかなか言ってもくれないから、いずれは暴走したんじゃないだろうか。
ルリは意識を失っていても、その望みは叶わない事が分かっているから、抗い続けていたんだと思う……」
「解けているという事は、叶えたのか?」
「反則的に……
ルリが叶ったと認めてくれたから……」
若「あら? アカ、もう戻っちゃったの?」
赤「む……?」
若「可愛いのにぃ」
赤「あの方がいいのか?」
若「そうじゃないけどぉ」
赤「けど?」
若「みんなに見せた~い」
赤「む……
兄弟皆、同じだ。サクラに頼め」
若「あ、そうね♪
アオ様も、そうよね♪
お願いしてみようかな~」
はしゃぐワカナの後ろで、アカは静かに
ため息をついた。
桜「え? 俺って いつでもアンズになると
思われちゃってるの?」
青「なるんじゃないのかい?」
桜「え~っ、ぷぅ~。
アオ兄がルリ姉で行けばいいのに~」
青「ルリが主になるならね」
瑠「嫌だ!」
青「だ、そうだよ」
桜「そぉなの?」




