静けさ4-保存食
アオの屋敷は、すっかり兄弟の溜り場に
なっているようです。
(アオ、どこに居るんだ?)
(竜宝の国だけど、何かあったのかい?)
(サクラも一緒なのか?)(いっしょ~)
(お前、メシ食ったのか?)(朝は、食べたね)
(それ、昨日の朝だろっ)(あ……また朝だね)
(屋敷に戻れ!)(クロの屋敷かい?)(あっ)
(サクラ、どうかしたの?)(聞けよ、アオ!)
(兄貴達、アオ兄の屋敷~)(無視すんなっ!)
(また集まっているの?)(うん、集まってる)
(とにかく帰って来い!)(あ……)(にゃは)
(とりあえず帰ろうか)(うん♪ ごはん~♪)
「カルサイ様、ありがとうございました。
まずは深魔界で順に試していきます」
【若い神々は、また修行しなければなりませんが、急ぎ指導しますので、今はあまり進まないよう、お願いしますね】
「はい」
【試す為に、神を連れて行く必要が有るならば、私かコバルトを呼ぶがいい】
「はい。御言葉に甘えさせて頂きます。
宜しくお願い致します、ゴルチル様」
【準備は出来ましたからね。
絆神の皆様をお預かり致しますね】
「いろいろ申し訳ございません、ドルマイ様」
【コバルトが迷惑をかけてしまっているのですから、その分、私達を使ってくださいね。
それと、あなた方には体が有るのですから、きちんと食べて、休まないと駄目よ】
すっかり『お母さん』なドルマイだった。
アオとサクラは、大神方々に何度も感謝を伝え、曲空した。
――アオの屋敷。
「アオ! さぁ食え!」
屋敷の主は帰ったとたん、そんな言葉で迎えられた。
アオとサクラは兄弟に、闇と呪に関して話し、絆神達は、また修行の為に離れる事を伝えた。
「で、男だけを操る、あの闇は何なんだ?」
「そっちは魔王の闇だよ。
とにかく闇には触れない事だね。
特にクロは掛り易いみたいだからね」
「なんかバカにしてるだろ~」
「何で、そうなるんだよ。
属性とか体質とか、もしかしたら鱗の色が濃いと掛り易いのかもしれないだろ?
事実よく掛っているんだから、気をつけてね。
クロと戦うなんて嫌だし、大変なんだからね」
「そっか……確かにオレ、よく掛ってるよなぁ。
アオ、オレと戦うのって大変なのか?」
「当たり前だろ。
自分の強さ、ちゃんと認識してくれよ。
その上、光で浄化すれば敵でなくなる魔物達とは違うんだからね」
「オレ、強いのか~♪」うふうふ♪
「アオ兄、クロ兄 調子に乗っちゃうよぉ」
「乗せないと、また籠ってしまうだろ?」
「目の前にいるのに、お前ら、その話――」
「だいじょぶ~、もぉ聞こえてないから~」
「確かに……ひとりの世界に行ってるな……」
「まぁ、クロは、いつも姫と一緒だから、あの魔王の闇は大丈夫だと思いますよ。
望みだって姫の事か、料理の事しかないだろうからね」
「単純だなぁ~」「真っ直ぐなだけですよ」
「上手く言うなっ♪」「さっすがアオ兄♪」
「オレは?」「クロ兄も、すご~いねっ♪」
「そっか?♪」「うんっ♪ すごいよ~♪」
「また、ひとりの世界に行っちまった……」
「アカ、小器に蒼月煌と緋月煌を入れようか?」
「アカ兄は工房で ひとりなんだから、いざって時のために入れといた方がいいよ」
「ふむ……」
「ワカナさんに危険が及ばないようにね」
「ならば頼む」
「うん、後で工房に行くね」
「クロにはソレ入れなくていいのかぁ?」
「入れたいんだけどね~」
「勉強嫌いだからね」
「関係あるのか!?」
「大器も小器も、基本は知識の器ですから、それなりの基盤が無いと取り込めないんです」
「もしもクロ兄の天性が大器だったら、俺、開くの諦めたよ~」
ハク、大笑い。
「ハク兄、笑ってるけど~、ハク兄にも入れないの、解ってる?」
「え!? 俺もなのか!?
双璧があるからじゃねぇのか!?」
「ひとりになっちゃった時とか~、クロ兄と組んでたら、なれないんだよ~」
「あ……」がーん、がーん、がーん……
「でね、兄貴達、もぉひとつね。
心を無にする練習してね」
「負の感情を抱かない為なのだな?」
「うん。あの闇に対抗するには、何も考えないのがイチバンだと思うんだ。
俺、あの時、衝撃は確かにあったし、悲しかったけど、それだけだったのに、かかっちゃったからね」
「出来ているのか確かめたい時は、ゴルチル様か始祖様に御覧頂いてください」
【ふぅん、考えが有って練習していたのか】
「あ、始祖様、そういう事なので宜しくお願い致します」
【ふん、いつでも呼べ。
で、お前ら、いつ来るんだ?】
「では、この後すぐに」
【せっかく揃ってるんだ。皆で来いよ】
「あ、はい。では――」【コバルト!】「あ……」
【ちょっと来なさい!】【うわっ!】
しーん……
「行かなくていいのかな……?」「うん……」
【王子達、各々成すべき事をしろ】
「はい! ゴルチル様!」解散っ!
「あ、そうだっ! アオ待てよ!」「ん?」
「コレ持ってけ」「何だい? これは――」
「弁当だ」「この棒が? 食べ物なのか?」
「硬焼きだが栄養タップリだ」 ポリリッ。
「何で今ソレ食うんだよ!」「美味しいね」
「ま、コレなら持ち歩けるからな。ほらっ」
「たくさん焼いたね」「日保ちするからな」
「ありがとう、クロ」「俺も味見~♪」
「紫苑殿、珊瑚殿と交替よろしく」
「お前らは?」
「人界に検知竜宝 埋める~」ポリポリ♪
「その後、深魔界でいろいろ試したい事が有るんだ」
「ふぅん、気をつけろよ」「クロこそね」
♯♯ 地下魔界 待機場所 ♯♯
「なぁ、フジ……頼みが有るんだが……」
「何でしょう?」
「待機してる間に……」
「はい?」
「勉強! 教えてくれっ!!」
「は? はい……」
「で、だ」にこにこにこ♪
「あの、何を勉強なさりたいのですか?」
「何からやりゃいいんだ?」真剣っ!
「へ? ……ハク兄様……」医師ですよね?
♯♯ 別の待機場所 ♯♯
「姫♪ ここ教えてくれっ♪」「またか……」
「ここだけだから、なっ♪」「全部じゃろ?」
「ホントここだけだから」「真なのじゃな?」
説明開始――
「なぁ、どうしてソコが分かるんだ?」
「そこから説明せねばならぬのか!?
やはりアレが必要か……暫し待て」曲空。
風呂敷包みを抱えて戻った。
「クロは、ここからじゃ」解く。
「絵本!?」
「アオとサクラが用意してくれたのじゃ。
幼子向けの算術本じゃ」
「いや……さすがにソレは――」
「ここからやらねばムリじゃっ!!」
「……はい」
♯♯ 赤虎工房 ♯♯
「アカ兄、試しに発動してみて♪」「ふむ」
恍恒大鏡に映る、紅い髪の美女が頬を染め、視線を逸らす。
「戻る方を早く入――声も変わるのか……」
「慣れれば普段の声も出せるよ」
扉を叩く音がし、すぐ開いた。
「アカ、ギン王様から――え?」
ワカナが目を見開き、固まった。
千里眼が落ちる。
サクラがサッと動き、受けた。
『ワカナさん! どうした!?』
「父上、なんでもないから~」
『ん? サクラか?』
「うん。アオ兄もいるよ」
『何をしているのだ?』
「技、試してるの~」
『それだけなのか?』
「うん。それだけ~」
「アオ、早く戻る方を頼む」「アカなの?」
「うむ……」「かわいいっ♪」「いや……」
ワカナはアカの手を引いて部屋を出た。
『ネイカさん♪ 見て見て♪ アカなのよ♪』
『え……本当に……アカ様?』
『かわいいでしょ♪』
『はい……』
「ネイカさん来てたんだ~」「みたいだね」
(アオ! 助けろ!)
(あ……すぐ行くからね)
アオは笑いながら暗室を出た。
桜「やっぱり、クロ兄の浮き沈み、
気になるよねぇ」
青「そうだね。
ルリ、何か見えない?」
瑠「見えぬ。私より始祖様に伺うべきでは?」
青「始祖様、如何ですか?」
始【前々から、お前らが言ってるから
気にはしているが……見えん】
青「ゴルチル様、カルサイ様、ドルマイ様
如何ですか?」
始【ゲッ! 呼ぶなよっ!】
ド【また何か、一緒には居られないような事を
したのかしら?】
始【うわっ! もう来たっ!】逃げっ!
ド【コバルトは放っておきましょう】
ゴ【さておき、私にも見えぬが?】
カ【ええ。見えませんよね……】
ド【様子は見続けますからね】
青「よろしくお願い致します。大神様」
ゴ【そちらは任せろ】
カ【二人にしか出来ない事を優先して
くださいね】
青「ありがとうございます。それでは」
 




