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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
312/429

静けさ3-呪の臭い

 アオがサッサと何処かに去ってしまい、

残された兄弟は、各々婚約者を送り、また

集まったようです。


「アカ兄も解けたんだね?♪」


「ああ」


「何か作ったの?」


「ついて来い」曲空。



――赤虎工房。


「これだ」「これ……繝雅(ケンガ)だ♪」


繝雅が光を帯びる。


「魂が入ってる……繝雅、目覚めて……」

サクラが目を閉じ、術を唱えた。


繝雅が輝き、華雅が明滅する。


【完成させて頂き、ありがとうございます。

赤虎様、そして、我等が王】


「繝雅~♪」なでなですりすり♪【お、王っ!】


「うん♪

繝雅は大剣だから、力があるアカ兄が使うのがイチバンだねっ♪

はい、アカ兄♪」


「ふむ、宜しく頼む」


【宜しくお願い致します、赤虎様】


「アカ兄は何をどぉ望んだの?」


「ただ、いつも通り鎚を振るいたいと……

それだけだ」


「満足したんだ……」


「アオが工房へと言ってくれたからな。

ここに入っただけで、随分と落ち着いた。

ワカナが何も言わなくても的確に準備し、繝雅を差し出してくれた事で、ほぼ解けたのではないだろうか」


「ただならない気迫でビックリしたわよぉ。

この中途半端な剣が気になってるのは気付いてたから、咄嗟に渡したの。

あとは何も言わずに、ひたすら打って……剣しか見てなくて……って、それはいつもの事ね」

ワカナが笑いだした。


「だから、いつも通りだと言っている」赤面。


「そうね。だから呪だなんて思いもしなかったわ」あははは♪

「おい……」


(サクラ、今回の呪は、掛りきる迄に少し猶予が有る。

だから、その間に無難な望みを決める事が出来る)


(クロ兄はソッコーかかってたよ)


(仕方の無い奴だ。

兎に角、この呪、単独であれば問題は無い。

しかし、先日サクラを襲った闇と合わせられると厄介極まりない)


(些細な負の感情を増幅する闇……そぉだね……)


(神ならば見極められるのではないか?)


(うん。そぉだと思うけど……闇障を持ってるアオ兄と俺しか連れて入れないから……その余裕がある時はいいんだけど……考えるよ。アオ兄にも相談するね)


(ふむ。頼んだぞ)




♯♯ 竜宝の国 祠 ♯♯


「他の望みは、全て叶えて貰ったのだな……」

存分に じゃれて満足し、眠ったキュルリを優しく抱いて、ルリが言った。


「俺ならば叶えられる望みしか、ルリは言わなかったからね。

最後の望みは、俺が無理矢理 聞き出したんだ。

そうしなければ解けないと思ったから……」


 潤んだ瞳で俺を見上げ、言葉を絞り出した、

 あの時の辛そうなルリを思い出した。


「すまない……」そっと抱きしめた。


「いや、謝る必要は無い。

私も、そうしなければ解けなかっただろうと思う。

しかし、こんな解決法が有ったとはな」


「キュルリは俺の写し身なんだ。

封印された俺の力と記憶を解放する為の術に必要な竜宝だったんだよ。

だから、ある意味、俺の子供なんだ」


「そうか……確かにアオの子なのか……」

起こさないよう優しく撫でる。



「アオ、あの呪を受けて感じた事なのだが……

あれは、これまでの呪とは違う。

魔王が生み出した呪ではないと思うのだ」


「それは、どういう――?」


「どう表現すればよいのか分からないが……

強いて言うなら、魔王に憑り着いた呪ではないかと思うのだ」


「そうか……神を魔王に変えた呪か……」


「ただ……私でさえ、あれだけの猶予が有ったのだ。

神ならば、何とか対処出来たのではないのだろうか」


「そうか! あの闇だ!

サクラはどこだろう……話せるかな……とにかく外に!」


ルリの手を引いて、急いで外に出ると、石段にサクラが腰掛けていた。


「サクラ……待っていてくれたのかい?」


「話が出来ないの、ここだけだから」にこっ。


「あの闇と呪!」同時に言った。


「やっぱり気づいてたんだ~」

「サクラもだろ」「アカ兄だよ」


「そうか、アカも解けていたね」


「うん。

クロ兄なんて、ソッコーかかって、姫を見たとたん解けてたんだけどね」


「姫に張り倒されたんじゃ――」


「解けた瞬間、ぱぁーん! ってね♪」きゃは♪


「あの二人は……」アオとルリも笑う。


「だから、あの呪だけなら、だいじょぶ」


「そうだね。問題は、あの闇だね。

サクラ、あの闇を受けた時、何か感じなかったかい?」


「うん……すぐに意識 飛んじゃって、あんまり覚えてないんだけど、あの闇……なんか違う臭いがした」


「臭い?」


「なんだろ……でも、臭い」


「俺の勝手な想像なんだけど、あの闇と呪は、最初の神々の争い――『大神戦』の中で生まれたものではないかと思うんだ。

それを、経緯は分からないけど、神が受けてしまった。

そして、初代魔王となったんじゃないかと思うんだ」


「そっか。生み出したヒトが違うから、違う臭いがしたんだ……」


「勝手な想像だよ」


「ううん、納得だよ! でも、そぉなると――」


「やはり初代魔王も何とか助けたいよね」


「うんっ!」


「俺達皆が、これから受けない為に。

そして、初代魔王も、以降の魔王達も助ける為に考えよう、サクラ」


「うんっ!

星輝の祠に行かない? 大神様に相談しよっ」


「そうだね。行こうか」立ち上がる。


【おい、子孫共!

先ずは俺に相談するとか無いのか?】


「あ……始祖様……」


【大枠、アオの想像通りだ。

だが、親父もオッサンも、その事は語れない】


「オッサン?」「きっとゴルチル様だよ」


【そうだよ。オッサンは俺の師匠だ。

あのオッサンが突き飛ばしたせいで、俺は呪を受けたんだよ】


「呪で済んだのでは?」【そうとも言う】

「助けてもらったんだね~」【煩いっ!】


【だがまぁ、魔王と成った神をも救いたいなどと大それた事を考えるバカ子孫共を、俺は助けたい。

だから、またヒヨッコ神達を借りるぞ。

対処法を伝授せねばならんからな】


「ありがとうございます!」


【それと、クロの神眼は半分程 開いた。

あとは戦っているうちに何とかなるだろ】


「ありがとうございます!」


【サクラ、そろそろ笛を吹けよ】「あ……」

【お前ら、複製で楽団を作ってもいいんだぞ】


(………………)


【心を無にしやがって!

そんな事 上手くなる暇が有るんなら、神を運ぶ方法を考えやがれっ!

まぁいい。楽しみに待つからな!】


シルバコバルトの気配が消えた。


「運ぶ方法を相談しよう」「そぉだね~」


気配を感じ、振り返る。


「カルサイ様……」「ドルマイ様は?」


【ここまでは一緒だったのですが……

とにかく、考えましょう】にこり。




♯♯ アオの屋敷 ♯♯


「アオ、帰って来ねぇなぁ」


「アカ、サクラと、こちらを出た後、何処に行っていたのだ?」


「工房だ」


「その後、サクラはどこ行っちまったんだ?」


「アオの所だ」


「アオ兄様は、どちらに?」


「知らん」


アカを除き、顔を見合わせる。


「戻るのを待つだけ、か……」


「爽蛇~♪ この前の酒は?」


「ハク様、今日は、こちらをお持ち致しました。

マキノ様より頂きました『跳月(チョウゲツ)』で御座います」


「おっ♪ 銘酒じゃねぇか♪

流石、左大臣殿だなっ♪」


「お食事は、こちらに置かせて頂きますね」


「おっ♪ この焼き具合! 絶妙だな♪

それに、この組み合わせ! よく知ってたな♪」


「ありがとうございます♪ クロ様♪」



 アオの屋敷は、今宵も賑やかに更けてゆくのでした。





前【おい。これに因子を込めよ】


 差し出された透明な箱には、何やら蠢いていた。


魔【それは……】気色悪っ!!


前【生命力最強の生物だ】カササササッ。


魔【貴方様の因子の方が強いのでは――】


前【当然だ。しかし今は回復に専念したい。

  だから、お前の因子で我慢する】


魔:ったく、好き勝手な事を――うわわっ!

  寒気が怖気でゾワゾワするっ!!

  黒くて艶々だしっ!!

  受け付けられねぇって!!


前【早くしろ】


 魔王は仕方なく、出来る限り見ないようにして

因子を込めた。


 前魔王は、因子の定着を確かめると、

さも嬉しそうに、その透明な箱を

掌握で何処かへと送った。


魔【何処へ?】


前【隣室だ】


魔【私の部屋にっ!?】


前【影になっておろうよ】ふふふ……


魔【ううぅ……】吐きそうだ……


前【あの虫で兵を増やせばよい】


魔【……はい】


前【兵不足の件は、これで解決だな。

  では、次の策は、この闇を使う】


魔:まだやるのかよ……やっと起き上がれた

  ばっかなのに懲りない奴だな……

  アイツら皆、女になってやがるのに……


前【最早、グゥの音も出ぬか】ふはははっ。


魔:しゃあねぇなぁ……

 【その闇は如何なものですか?】


前【まぁ見ておれ。

  忌々しい竜共が半減するぞ!

  しかも脅威も光も諸ともだ!】わはははっ!


魔:確かに『脅威』だけは男のままだが……

  どうしてそれで『光』までもが……

  いや、考えるな。関わるな。

  今度こそ知らねぇ。

  俺は無関係だからなっ!


前【また言葉を失う程に驚いたか】ぬはははっ。


 前魔王は上機嫌な笑い声を残し、姿を消した。


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