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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
311/429

静けさ2-虹紲大臣

 ミドリとの三界旅行から帰城したギンは、

コハクから、アオの考えを聞いたようです。


♯♯ 天竜王城 ギンの執務室 ♯♯


 扉を叩く軽やかな音がした。


「アオか? 入れ」


――が、扉は開かず――


四人、曲空して来た。

「失礼致します」揃って礼。


「何だ? 団体で……」


「父上だけなのですか?」


「呼べば集まるが……何やら楽しそうだな」


「いろいろあった結果ですよ。

お呼びの件は、大臣の方ですか?

それとも、新婚旅行の土産話ですか?」


「親の惚気話なんか聞きたいのか?

当然、大臣の方だ」


「話してくださらないのですか……残念です」


「お前とルリさんの話なら聞くぞ」ニヤリ。


「そうですか? それなら――」ルリが小突く。

「どうしたの? ルリ」「話が進まぬだろ」

「と、申しておりますので、それはまたの機会に。

大臣の件は、どのようにお考えなのですか?」


「ふむ。コハクから聞いた限りでは、全面的に賛成だ。

双方、助け合いが必要だと俺も思う」


「ありがとうございます」にこっ。


「サクラも即位した事だし、一日も早く就任して欲しい。

そこでだ、大臣の名称だが……考えているか?」


「一応は。

懸け橋とか絆とかを表す意味で、絆を結ぶ術と同じ『虹紲(コウセツ)』を付けるのは如何でしょうか?」


「虹紲大臣か……ふむ、それでいいだろう。

現大臣達に打診した所では反対は無い。

と言うか、アオが加わる事を大歓迎している。

明日、この件に関する会議を開くが、まぁすんなり通るだろう。

虹藍様、そちらは如何ですか?」


「はい。こちらでは本日の会議にて、アオ様にお願い致したいと決まりましたので、早い程 嬉しく存じます」


「そうですか」にこにこ♪「これで決まりだな」


四人、安堵の息をつく。


「ただなぁ……」「何か?」


「ひとつ条件が有る」「何でしょう?」


「ルリさんを補佐に付ける事」「えっ!?」

ルリが声を上げ、わたわたしている。


(無理だ! アオ、何とかしてくれっ!)

(大丈夫だよ。別行動はしないからね)


「なんなら二人共、虹紲大臣という事でも――」


「父上が、この姿を御覧になりたいだけではないという事でしたら、どちらでも構いません。

ルリを就任させる理由を仰ってください」


「女性の意見も重要だと考えるからだ」


「それでしたら、喜んでお引き受け致します。

別行動は難しいので、共に行動致しますが、よろしいでしょうか?」


「それはそうなるだろ。

片方は複製なのだからな。

で、補佐にするのか?」


「女性の意見も、と仰るのでしたら、二人で虹紲大臣でしょう」

「アオ!」


「そうか。では、それで会議に掛ける。

おい、廊下の奴等、入っていいぞ」


扉が そっと開き、ハクが顔を覗かせた。


「心配なんぞしなくても反対しやしねぇよ」


「父上が何も言ってくれねぇから、心配にもなるって~」

言いながらハクが入り――


ぞろぞろと王子と婚約者達が続き、コハクとミドリ、最後にアサギが入った。


「こんなに居たのか……」


「皆様、御心配くださり、ありがとうございます」

礼。ルリも慌てて礼。


「ギンがゴネ始めたら、止めねばならんと思ってな」

コハクが笑う。


「一体、俺は皆に、どう思われているんだ?」


皆の視線が、ギンとハクを交互に移った。


「俺、父上と同じ扱いなのか!?」


「ハク、不服そうだな」「いやっ! その――」


「親子だから似て当然という事にしておかないか?」

アサギも笑う。


「親子……」「どうした? ミドリ」


「儀式でなく揃ったのって、初めてではなくて? ねぇ、あなた♪」

ギンに駆け寄る。


「言われてみれば……そうだな」


「皆、立派になって……お相手も揃っていて……

こんな幸せに満ちた光景、初めてだわ!」


「大袈裟だなぁ」


「でも、ずっと離れて暮らしていたのよ……

育てる事も出来なかったのよ……」


「泣くなよ……やっと夫婦を始めたんだ。

これから、親子も始めればいい」


「本当!? よろしいの?

子供達に会っても……触れてもよろしいの?」


「そう変えていくつもりなのだろ? アオ」


「御存知でしたか。

王族であっても、幼少期と成人以降は会えるよう、変えようと思っていました」


「アオ、その複製で子も成せるのか?」


「流石に、それは無理ですよ。

自分の為ではなく未来の為に、そうすべきだと考えたんです」


きゅる? 胸元から顔を出した。


「あ、キュルリ、起きたの?

俺達の子供は、この子ですので」

掌に乗せる。


きゅ~るる♪ ルリの胸に、ぴとっ。「あ……」


ルリが落ちないよう手を添え、目を細めた。


それを見て、

「だから変えようと思ったんです」

アオも微笑んだ。




 ルリの望みは、いくつか有ったけど……



――――――



(アオの……子供が欲しいの……)


 予想はしていたけど……

 さて、どうしようか……


【アオ~♪ あそぶ~♪】


 あ……こんな時に起きてしまったのか。


 いや……

 キュルリを俺達の子供として認めさせれば――


「キュルリ、俺達の子供になるかい?」


【こども? ボク、アオの こども?】


「うん。俺とルリの子供だよ」


複製を作り、

「ルリ、俺達の子と遊ぼう」光の球を投げた。


キュルリが追う。


「キュルリ、母様に渡して」


【かぁさま、は~い♪】ぽ~ん♪


ルリが笑顔になり、「はい♪」ぽ~ん♪



――――――



 そうして、キュルリが満足して眠るまで遊び――


 眠ったキュルリを胸に抱いて、ルリも眠った。

 優しく微笑むようなルリの寝顔を見ていると、

 愛おしくて堪らなくなって、

 俺は二人を包むように抱き、一緒に眠った。



 目を覚ますと、ルリの呪は消えていた。




「父上、キュルリも一緒に行動しても構いませんよね?」


「まぁ、他人から見れば、ただの竜宝だからな。

問題無いだろ」


「これで、だいたい決まりましたよね。

日程はお任せ致します。

では、失礼させて頂きます」


「もう行くのか?」


「キュルリが遊びたがっていますので」にこっ。



♯♯♯



「アオ、どこに行くのだ?」


「もう一度、竜宝の国の祠だよ」曲空。



――祠の入口。


「ルリの望みの ひとつは、実現 出来なくてね」


「だが、呪は解けているぞ」話しながら入る。


【かぁさま♪ あそんで~♪】ふよふよ♪


「キュルリ……話せるのか?

えっ!? 母様だと!?」


【かぁさま すき~♪】すりすり~♪


「だから、俺達の子供だよ」ぽ~ん。【あ♪】


「私は……そんな望みを……」【かぁさま♪】

「持って来たのか?」【はい♪】ふよよ~♪


「キュルリ、行くぞ」ぽ~ん。【きゃあ♪】


【アオ~♪】「運ぶ遊びになったのかい?」


ふよふよ~♪ 【こっち~♪】


「よ~し」ぽ~ん。


【は~い♪】「アオは父様ではないのか?」

【とぉさま?】首を傾げる。「アオの事だ」


ぽ~ん。【アオ、とぉさま、アオ、とぉさま♪】


「混乱したかな……」【はい♪ とぉさま♪】


「理解しているようだぞ」【かぁさま♪】


「可愛いだろ?」「可愛いな」

【ボク かわいい~♪】ぴょこぴょこ♪


「キュルリ、おいで」

少し恐る恐る、ルリは両手を差し出した。


【あ♪ は~い♪】掌に乗った。

――のかと思ったら、掌から胸に跳んだ。

【かぁさま~♪】すりすり♪


ルリは驚きながらも受け止め、キュルリを撫でた。


キュルリが くすぐったそうに笑い、アオとルリも、暖かい何かに包まれたような気持ちで、一緒に笑った。





 キュルリは、アオの因子を持つ『写し身』、

つまり、アオの性格を写したもの、なんです。


でも……かなりサクラっぽいような……

まぁ、アオもルリに甘えている時は、

似たようなものですよね。


青「また勝手な事を――」

瑠「正しいではないか」

青「ルリ~」

瑠「その通りだろ?」


凜「ですよね~♪

  アオは、サクラみたいって言われるの

  嫌なの? サクラは喜ぶのに」


青「嫌とか、そういう事じゃなくて――」


瑠「だが、嫌がっているだろ?」


凜「ですよね~♪」


桜「アオ兄……俺のコト、キライなの?」


青「サクラ、違うからね。大好きだから」


瑠「安心しろ、サクラ。

  アオはサクラの真似が上手いくらいに

  サクラの事が好きだ」


桜「ホント!?♪」

青「ルリ~」


瑠「本当だ。根底が同じだという事が

  よく分かる程にな」


桜「うんっ♪ アオ兄もルリ姉も大好き~♪」


 アオも、まんざらでは無さそうだ。


青「凜!!」真っ赤っか!


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