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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
309/429

深魔砦4-ルリの望みとアオの幸せ

 しつこい攻撃は終わったのでしょうか?


(アオ……ここは?)(祠だよ。竜宝の国のね)


(私は……何をし――)(眠っていただけだよ)


(そんな筈は無いだろ)(眠っていたんだよ)


アオはルリを包み、髪を撫でた。

(ありがとう、ルリ。

ますます愛おしくて仕方ないよ)額を着ける。


(そうか。人界で――)唇を塞がれた。

(アオ……)


(思い出さなくていいからね)


(塞いでも話せるのだが……)


(うん。そうだけど、話す気が失せるだろ?)


(まぁな……)


(それでいいから)抱きしめ合う。


 あの呪が、どんなものなのかをアオに告げ、

 融合を解くよう懇願した後……

 そこから、私の記憶は全く無いが、

 この世界は滅びては いないらしい。


 それは良かったのだが……

 一体、私は何を要求し、

 アオは、どう叶えたのか?

 知りたい思いと、それを知る事への恐怖が

 何度も何度も交錯する。


(ルリ……俺は何も酷い事はされていないから、思い悩む事なんて何ひとつ無いんだよ。

本当だから安心して)


(そうは言うが……)


(うん……そうだね……知りたいだろうね。

でも……俺が話したくないのは、俺の方が、ルリに望みを叶えて貰ったって気持ちが強いからなんだ。

だから気恥ずかしくて言えない。

それだけなんだよ。


ルリは俺を護る為に呪を受け入れ、呪に支配されて意識を失っても、ただひたすらに俺を護ろうとしてくれたんだ。

その大きな大きな優しさと、ルリが今ここに生きていてくれている事、そして、ルリと出会えて、ルリが生きている事に繋がった全てに、感謝とか喜びとか……そういう幸せに浸っているだけなんだよ)


(アオ……そんな御大層に……恥ずかしいから……)


(ね? だから、これ以上は言わせないで)(ん……)


 アオの気は澄みきっている。

 嘘偽りは微塵も感じない。


 良かった……共に無事で……

 アオが護りたいと願う、この世界が無事で……



――――――



 魔王の欠片達が逃げ、兄弟が話していた時――


(ん? ルリ、どうしたんだい?)


(金虎様を呼んでくれ……アカ様が危ない……)


(何があった!? ルリ!)(早く……)

「スミレ、金虎様を呼んで!」【はい!】



【如何した?

赤虎、まさか呪を受けたか?】


「魔王の欠片を掌握した時に受けてしまったようです。

解呪をお願いします!」


(この呪は強い……望みを叶えるまで……止まらぬ……強烈な衝動で……心が破壊されそうだ……)


アオはルリを浄化の光で包んだ。


(話さなくていい。融合しているんだからね)


(切り離せ! ……頼む……アオに呪が……)


(わざと受けたのかい?

俺が受けないように?)


(当然だろ……

アオが暴走したら……この世は終わりだ)


(望みを叶えればいいんだね?)


(ああ……そうだ……)


【この呪は……最高神であろうが解けぬ】


「望みを叶えれば解けるそうです!

サクラ! さっきの拠点に戻って!

皆が危ない!!」


「でも……アカ兄とルリ姉が……」


「金虎様! アカを工房へ。お願いします!」


【ふむ】アカの肩に手を当て、消えた。


「サクラ、ルリの事は俺にしか無理だろ?」


「うん……」


「また自分のせいで、とか考えているんだろ?

俺もルリもアカも、各々自分の考えで納得して行動しているんだ。

サクラが気に病む事など何も無い。


この呪は、望みを叶える為なら手段は(いと)わない。

この世を終わらせても構わない。

そんな強い衝動を(もたら)す。

誰かが受けてしまう前に、急げ! サクラ!!」


「うんっ!」曲空!


(アオ……融合を解け……融合したままだと……私も、アオの力が使えるのだぞ! 早く!!)


(大丈夫だよ。俺に任せて)曲空。



――白い建物内。


(私が耐えられるうちに、早くっ!!

切り離して眠らせてくれ!!)


(ここなら誰にも聞かれない。

だから何でも望みを言っていいんだよ。

ねぇルリ、何でも叶え……言っ…………)



――――――



 語り掛けるアオの穏やかな顔が間近に有った。

 かろうじて覚えているのは、そこまでだ。


 目が覚めた時も、

 アオの優しい微笑みが迎えてくれた。


 アオの優しさこそ大きいぞ。

 私は本当に幸せ者だな……


(アオ……)


 眠ったのか……疲れさせてしまったな……


(ありがとう、アオ)


(うん……)


 寝言で返事か?


(ルリ……大好きだから……ね……)


 その点は負けぬ。


(アオ……今度は私が望みを叶える番だな……)


(本当!?)


(また寝た振りか!?)


(違う違う)あははっ。


(上手く返事すると思ったら~)睨む。


(今、起きたんだ♪

その目、可愛いよ)にこっ。


(なっ――)


(真っ赤になって~、それも可愛い♪)


(うるさいっ!)


(もう、照れなくていいから~)


(まさか……)


(さっきみたいに甘えていいから~)


(話せ! アオ!

何があったのか話してくれ!)


(俺の宝物だから話さないよ♪)


(アオ!!)


(最高の幸せをくれたんだ。それだけだよ)


(アオ……)


 そんな優しい笑顔を向けられたら

 何も言えなくなるだろ……完敗だ。アオ……


 秘めていた、どの望みを知られたのかは

 分からないが……

 そんな事、どうでもよくなった。


 ただ……今が幸せだ……


(好きだ……アオ……この上なく……)唇を求めた。



♯♯♯



(皆の所に戻ろう)


(休まなくていいのか?)


(心が満たされているからね♪)


(あのなぁ……)


(心配だし)


(それはそうだが――)(それにね――)


アオは複製を作り、自身は女姿(ルリ)になった。

そしてルリを主にし――


(さっき約束したからね♪)

(なっ、何を!?)

(何をって? ルリの望み♪)

(やめろ! アオ!)


(俺に任せて、ね?)曲空。



――深魔界、拠点。


 兄弟四人が丸く座って話していた。


「あっ♪ アオ兄♪

おかえ――ルリ姉だいじょぶなの?」

振り返ったサクラが不安そうな顔をする。


「大丈夫だよ。ね、ルリ」額に、ちゅっ。

「やめっ! ばっ――!

アオ! 離せっ!」囁きで抗議。


兄弟皆、固まる――


「ルリ姉……立てなくなっちゃったの?」


「違うよ」にこにこ♪「これも望みだから♪」


「え…………???」

たっぷり固まり――「えーーーーっっ!?!」


本体(ルリ)は真っ赤になった顔を見せまいと、複製(アオ)の胸に しがみついている。


「マジかよ……」「はい♪」輪に加わり座る。


フジとサクラが恥ずかしい気に背を向けた。


「ルリが本気で拒絶したなら、俺は彼方に吹っ飛ばされていますよ」


「確かにな……しかし直視も厳しいぞ」

キンも背を向けた。


「仕方ないね。

ルリ、手を繋ぐだけにしようね」

隣に座らせて手を繋ぎ、俯いたルリの額を自分の肩に導いた。


「やるなぁ、アオ♪

俺、ミカンの所に行ってもいいかなっ♪」


「いいですよ。もう来ないでしょうから」


「何で言いきれるんだ?」


「監視の気配も消えたから、だろ? アオ」


「地下室から、ずっと見ていてくれて、ありがとう、クロ」

見上げて微笑んだ。


ハクが振り返ると、クロと姫が立っていた。

「お前ら……せっかく二人きりにしてやってるのに……」


「何かが潜んでたのに呑気だよなぁ」

「致し方なかろぅよ。

クロの神眼でも見辛かったのじゃからのぅ」


「アオ兄、見えてたの?

それでずっと、お姫さま抱っこ?」

恐る恐るな感じでチラ見してから、座り直した。

サクラの様子を見て、キンとフジも座り直す。


「まぁね。

すぐ降ろすつもりだったんだけど、ルリが何か居るって言うから、様子を見ていたんだ」


「しかし、あれは無いだろう」額を指で擦る。


「あんな呪なんかでは、この世界は滅ぼせない。

それどころか、平和になるって事を魔王に見せつけただけだよ」


「ルリ殿の望みなどと言うから驚いたぞ」

「アオが壊れたのかと思っちまったよ~」


「まさか」複製(アオ)本体(ルリ)が同時に言い、笑った。


ひとしきり皆で笑い――


「浄化も終わってるし、出るか?」

ハクが見回した。


「そうだな。

ここに結界を――アカは大丈夫なのか?」


「この世界が滅びてはいないので、大丈夫だとは思いますが、見て来ます。

結界は俺がしますので、戻ってください」

複製(アオ)本体(ルリ)は、手を繋いだまま曲空した。


「振りだけではなさそうだな」フフッ。

「ルリさんも可愛い女性だって事だなっ♪」


 だよね。まさか、竜宝の国から、

 ここに潜む何かが見えるなんて、

 あり得ないもんね。



♯♯♯



 兄弟が各々の持ち場に戻って少しして、結界用の竜宝を入れた集縮の壺を抱えたアオの複製(アオ)本体(ルリ)が戻った。


「あれ? サクラ、まだ居たの?」


「アカ兄は?」


「一心不乱に鎚で打っているよ。

満足する剣が仕上がるまで、あのままだろうね。

サクラ、大丈夫だからね」


「結界、手伝うよ」


「いいよ。虹藍様に会いたいんだろ?

顔に書いてるよ」


「ふえっ!?」顔を擦る。


「会うまで消えないよ」ぽふっ。

「見せつけて、すまないね」「おいっ」真っ赤。


「ホントに行っていいの?」


「二人きりにしてくれないのかい?」


「わかったよ」あははっ。

「お幸せに♪」曲空。


(サクラ、いろいろ ありがとう)


(俺……何も……)


(大きな幸せを貰ったよ)


(それはアオ兄が――)


(だから、いい加減 自分を責めるな)


(……うん……)


(ありがとう、サクラ)


(アオ兄……ありがと♪)





 魔界編に入って、敵は魔物ではなく

『呪』に変わったようです。


触れれば掛かってしまう厄介な敵に対して

これから如何に戦うのか。


神の力を生かしきれるのか。


ま、深刻な物語ではありませんので、

『呪』に対するは『愛』だ!

てな具合に、なんとかするでしょう。



桜「お気楽ノーテンキなのは凜だけだからぁ」


凜「いや、なんとかするんでしょ?」


桜「するけどぉ。

  凜みたくカンタンに言われると~」


凜「自信ないの?」


青「サクラを苛めるな!」


凜「あ、来た……氷王子」


桜「アオ兄~♪」


青「サクラ、凜なんて相手してはいけないよ。

  おそらく呪に掛かっているんだからね」


桜「そっか~」


凜「掛かってないし!

  不憫そうに見るなっ!」


青「ほらね。解呪できる大神様を探そう」


桜「うん♪ 三界の平和のために~♪」


青「そうだね。ああ、そうか!

 『闇の神』の正体は――」


桜「ああ~、そっか~♪

  じゃあ『闇の神』ってヘナチョコだね~♪」


青「そうだね。行こう」


凜「何を二人で納得してるのよぉ?

  あ、また曲空した……」


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