深魔砦1-生きている石像
アレコレ封じられているようですが、
アオもサクラも緊迫感は無さそうです。
♯♯ 深魔界 拠点 ♯♯
(どうやら、光だけでなく、術や技も封じられているみたいだね)
(出ないんじゃないから、なんか中途半端だよね~)
(不思議な感じだね……まるで異間平原だね。
ああ、神楽の風穴にも似ているかな?)
(あ♪ それっ! どっちも似てるよね~)
(アオ、魔宝が他の部屋に有る。
この変な結界の元ではないか?)
(ああ、これだね……神眼は使えるね。
なら、掌握も……うん、使えるね)
魔宝を引き込んだ。
(これ……止めるには、光が必要だよ。
呪がかかってる)
(今回は、かなり巧妙だね。
天性は使えるんだから――)
アオが考え始めた時、天井から魔王の闇が噴き出した。
(もおっ! 光が使えないのにっ!)
ルリの複製が分離する。
(ルリ、気をつけて!)(解っている)
複製とアンズは、闇の層を作り、天井から部屋の高さ半分くらいまでを埋めた。
(吸着 出来るとは思わぬ方がいいだろうな。
しかし――)
複製は、その層の下に、闇の牆壁を作り支えた。
本体は人々を掌握で出しながら、光拒絶の魔宝を探していた。
天性は使えるが……
何かに縛られている感が有るな。
それに、竜宝を使う力にも制限を感じる。
何かに似ている……?
相殺か?
しかし、相殺は光の技。
魔王には使えない筈。
闇で真似たのか?
(アオ、牆壁の限界が近いぞ!)牆壁を重ねる。
(ルリ姉、支えるの俺だけでいい。
アオ兄と一緒に人を出して!)
(ならば、掌握だけは外すぞ)(うん!)
(フジ!)
……遮断されているのか。
それなら、千里眼、フジに――
『はい。アオ兄様』
「そっちは大丈夫かい?」
『はい。追加はありません』
「フジ、鏡を持ってるかい? 何でもいい。
……鏡に掌を当てて、神聖光輝を放って。
……うん、お願いね」
(迸案鏡、フジの鏡に繋いでね。
具現環、実体化お願いね)
【お任せください、我等が王】
本体は、迸案鏡と一緒に柄を握り、蒼牙で宙を斬った。
神聖光輝の水竜が次々と立ち昇り、闇の層を泳ぐように飛ぶ。
闇の層で捕らえている魔王の闇が、水竜に喰われているように消えていく。
鏡から溢れた神聖光輝が、結界魔宝に滴り落ちた。
呪が消える。
(アオ兄、こっちも♪)魔宝を差し出す。
(アオ、これも頼む)掌に魔宝が現れる。
次々と神聖光輝で呪を消し、結界を解除した。
(光 出る~♪)ぽ~ん♪
きゅるるっ♪ 追いかけて、ふよふよ~
「フジ、助かったよ。ありがとう。
そっちは大丈夫かい? ……そう、よかった」
【――のか? おい、返事をしろ。
アオ、サクラ、聞こえるか?】
「はい、聞こえました」鏡に向かって話す。
【結界が有ったのか? 鏡を繋ぎ直したぞ】
「はい。解除したところです。
人と魔人を出しますので、お願いします」
【少し待て。天界に移動する】
ルリとアンズは鏡を外し、建物の外に曲空した。
【異空間経由だ。安心して送り込め】
「ありがとうございます、ゴルチル様」
魔人と人を天界に送り込んだルリとアンズは、聳え立つ塔を見上げた。
(さて……
俺達が来ている事は知られている筈なのに、攻撃して来ないのは何故だろう)
(気を消して潜んでるのかもだけど、静かすぎるよね~)
きゅる!
(アオ、最上階に何者か潜んでいるぞ!)
ルリとアンズも探る。
(結界魔宝は、これだ)掌に現れ、光に包まれる。
(ありがとう、ルリ)解除。
(魔王だけど、現魔王じゃないね~)
(あっ!)(消えちゃった……)
「ここを浄化しよう」「罠あるかも~」
「当然有るだろうね」「老練なヤツね」
ルリとアンズが再び入ろうとした時――
「待てよ!」クロ、姫、フジが現れた。
「そっちも放っとくのマズいでしょ」
「キン兄とハク兄が来たから大丈夫だ」
「闇障鐸はキン殿に渡したぞ♪」
「そっか。キン兄なら察知できるもんね」
「知ってたのか?」
「俺達に出来る事は、同じように出来るよね」
「元だからね~」
「ここに居たのは過去の魔王だから、かなり巧妙な罠を残している可能性が有る。
十分、気をつけてね。行くよ」曲空。
「姫、神眼 全開だ」「おぅよ!」
「フジ、先に行け。後ろは任せろ」「はい」
各々、慎重に進む――
(キン兄達 呼んだの、ゴルチル様かなぁ?)
(たぶんね)
(絆竜じゃない俺達を気にかけてくれるのって――)
(うん、御先祖様なんだと思うよ)
(やっぱり~♪
それに、最高神様より偉い神様なんだよね?)
(うん。話し方がね、そう思うよね。
前の最高神様なのか……
ドルマイ様のお父様とかなのか……
カルサイ様が気を遣ってるよね)
(うん。明緑様に話す時の俺と、おんなじよ~な色になるでしょ?)
ちょい照れ~
(そうだね)あはは……(扉だね。広間かな?)
ルリとアンズは突き当たりの扉に掌を当て、中を探り始めた。
(おい! その扉の向こう、何か隠れてるぞ!)
(妙な闇を発しておる! 気をつけよ!)
(凄いな……闇で何も見えないのに……)
(さっすが『海』だね~♪)
(ルリ、見えるかい?)
(二体だ。闇を噴出している者と……何だ?)
(どぉしたの? ルリ姉)
(全く動かぬ者……石か? しかし魂は有るな)
(生きてる石像?)(そんな感じだ)(ふぅん)
ルリは、掌握で室内を探っていたついでに、結界魔宝を取り出した。
(この闇……これが、スミレ様が察知したものか……
男は入ってはならぬぞ)
(ルリさん、もしかして……それ――)
(もしも入ったならば、今日は私が桜華様の代わりをするからな)
(フジ、ここで待つしかない)
(クロ兄様、何故ですか?)
(フジ、お願いだから、そうしてね)
(アオ兄様まで……)
(アオ、サクラ、準備はいいな?
姫様、よろしいですか?)(あいなっ!)乗る。
ルリとアンズが、神以鏡を合せ鏡にして光を溜め込み――
(姫、目を閉じて!)(行くぞ!)曲空。
――放った!
一瞬、輝きだけの世界となり――
色が戻ると――
(闇 出してたヤツ、どこ?)皆、神眼で探る。
(部屋の外じゃっ!)(しまった!)
扉ごと壁が崩れ落ちた。
舞い上がる埃の向こうに、闇と二体の竜影――
(あちゃ~)(こんなに早く)(操られるなど)
(仕方のない奴らじゃ)豪放水!
(そうだなっ)相殺の球を放つ。
(おやすみっ)眠りの球を放った。
ルリとアンズは、二つの相殺の球に片手ずつを当て、もう一度 光を放った。
(何をしたのじゃ?)
(眠らせて、浄化したんだ。
毒を撒かれても大変だし、骨折もしたくないからね)
(アオ!)
(骨折じゃと?)(気にしないで~)きゃはっ♪
(して、闇の元は何処じゃ?)また探る。
(また隠れちゃったね~)キョロキョロ(え?)
ズズ、ン……グググ……ズズ、ズ……ギギ……
背後から重々しい音が響き――
(石像……だよね?)(歩いておるのぅ)
ギシギシ、グググ……と軋みながら手を上げ――
放たれた闇黒色の塊が迫った!
前【忌々しい王子達は罠に掛かったぞ!】
ふははははっ!
魔【余裕を感じますが……】
前【まだまだ、こんなものでは無いわ!
幾重にも罠を仕掛けておる!
よく見ておれ!】わははははっ!
魔【はぁ……】
前【魔神界の結界も破壊したし、最早
憂いは無いな】フフン。
魔【いえ。魔神界の結界は、竜神が新たに
成しており、地下魔界との通路も
作られてしまっております】
前【お前……それを指を咥えて見ておったのか?】
魔【『見ておれ』と仰ったのは、貴方様では
ありませんか?】
前【馬鹿かっ!? この愚か者めが!!
むざむざ作られおって!!】ぐぬぬぬ……
魔【それも含めての策かと――】
前【ぅぐっ……と、当然だっ!
その程度、見越しておったわ!
しかし今は天竜王子達だ!
彼奴等を捕らえ、配下とすれば
神界を覇するも容易き事!
我が策、確と見ておけ!】
魔:魔神界の事、知らなかったんだろ?
手落ちだろ? どうする気だ?
俺は知らぬぞ。己で何とかしろよな。
拠点だって、アイツら、絶対 余裕だよ。
ま、俺は見てるだけ、だからな。




