人魔神3-仏陀
優鬼と飾鬼は、まだ神化していない、
身体を持つ状態のようです。
♯♯ 天界 ♯♯
アオとサクラは、閻魔族の優鬼と飾鬼を連れ、星輝の祠を訪れた。
「カルサイ様、ドルマイ様、先程は ありがとうございました。
優鬼様と飾鬼様をお連れ致しました」
【閻魔様方、お呼び立て致しまして、申し訳ございません。
今後の事も考えたく存じますので、これまで どのようにお過ごしなされていらっしゃったのか、お聞かせ願えますか?】
「竜神様、お招き頂きまして ありがとうございます」
「私共の結界を御覧になられて不思議に思われたのですね?」
【ええ、長きに渡って如何に防がれていらしたのかをお教え頂きたいのです】
「これまで防いでいた結界は別のもの。
それが破壊されてしまったのです」
「残っていた結界は最古のもの。
しかも闇のみ通過などという条件を龍神帝王により付けられたものなのです」
「龍神帝王が地下魔界を占拠し、かつての人界であった地に逃げ込んだ人神を滅ぼし、そこに居座った時――」
「魔神界も風前の灯と古の閻魔族は覚悟したのですが、侵攻される事は無く――
異間平原、特に蒼月が牆壁となっている事に気付き、その力を込めた結界を成していたのです」
「それと もうひとつ、その蒼月の結界を護る為に、闇拒絶の結界も成しておりました」
「それでは貴殿方も出られないのでは?」
「その通りで御座います。
閻魔族の基本属性は闇ですので、出る事は出来ませんでした」
「この二つの結界が破壊された後、蒼満月の呪縛が無くなったのが今朝なのです」
「闇拒絶なのに、どのように破壊されたのですか?」
「詳しくは分かりませんが、禍々しい気を持つ腕輪を着けた竜達が、光で破壊してしまったようです」
「その竜達は?」
「大王が腕輪を破壊したところ、意識を失い、今も眠っております」
(血を吸わない竜血環?)(かもしれないね)
「蒼月の結界は、闇色の竜達が破壊しました。
結界に触れた竜達は気絶し、闇色ではなくなっております」
「もしかして、蒼月の結界に触れると女性になってしまいますか?」
「ご存知でしたか……
その通りで御座います。
実は、この飾鬼は私の弟なのです。
その戦いの時、結界に触れてしまい、こうなってしまったのです」
「緋満月をお待ちなのですか?」
「いいえ、私 何故か、こちらの方が落ち着きますので、このままでと思っております」にこにこ。
「力も失いますよね? 大丈夫なのですか?」
「確かに失いましたが、残った力を増幅できる物を身につけておりますので、大丈夫です」
「俺達の事は、どうやって知ったの?」
「異間平原により空間が捻れておりますので、魔神界の真上は大半が魔竜王国なのです。
そこから聞こえて参ります情報にて、闇使いの天竜王子様が、龍神帝王と戦っていらっしゃると存じ上げましたの」
「だから俺の名も知ってたんだ~」
【サクラ、魔竜王国と魔神界も繋ぎましょうか?】
「いいの!?♪」「よろしいのですか!?」
【では、後程】にこっ。
「竜神様とは計り知れぬ御力をお持ちなのですね……」
「カルサイ様は大神様だから特別~♪」
【サクラは一応、気を遣っているのだな。
最高神、連れて来たぞ】
【ゴルチル様……】「言っちゃった~」
【そちらは閻魔大王の息子達なのだから構わんだろ】
「そぉなの?」「ええ、まぁ……」
【アオ、サクラ、その格好は どうしたのだ?
ここにも何か有るのか?】
「格好?」「あ……」
互いを見て、慌てて戻した。
【まぁ、可愛いから、そのままでも構わぬが、ここには何も無いのだな?】
「はい」「戻し忘れていただけです」
【ではどうぞ、こちらに】
ゴルチルの後ろから、人が入って来た。
「あ……もしや、人神様……」
【神界にお住まい頂いております、仏陀族の長・蓮仏様でございます】
カルサイが着席を促す。
【どうにか生き延び、地下界から出ました我等が祖先は、竜神様に救われ、以降、天神界に住まわせて頂いておりました】
「共に戦いながら、お助けする事が出来ず……
誠に申し訳なく存じます」
【それは昔々の事。
互いに無事で何よりで御座います】
「御許し頂き、恐縮至極に御座います」
【再び手を携える事、叶いましょうや?】
「よろしいのですか!?
この上なく……嬉しい限りの御言葉で御座います」涙ぐむ。
手を取り合い、喜び合っている神々を感慨深く見詰めていると、千里眼が鳴った。
「すみません、ゆっくりなさってください」
アオとサクラが曲空し、ゴルチルが追った。
【ご心配には及びません。
常の事でございます】
【彼らは私共の子孫。
並の神より強き竜でございます】
♯♯ 人界上空 ♯♯
(フジ! クロと姫は!?)
(地下魔界です!)
人界の砂漠……という事は、西の国なのか?
あれは……?
アメシス様は何を探しているんだ?
(追っていた魔物を掴んだら、穴に入ってしまったのです。それで――)
(砂漠上空に出たんだね?)
(はい)
(で、アメシス様が光を放って、どぉなったの?)
(戻した魔人達が消えてしまったのです。
下には落ちたのですが……忽然と……)
(アオ、砂の中に鏡が有るぞ!)
(ルリ、ありがとう。掴めるかい?)(うむ)
掌握で掴んだ鏡が引き寄せられた。
(砂は入らないんだね~
この向こう行ってみる?)
(確かめてからね)掌を当てる。サクラも。
(この感じ、深魔界だよね……拠点かなぁ?)
(たぶんね。建物の中は光封じだね)
(排除じゃないから行ってみる?)
(通れるのは、闇または無属性だね)
(フジ、クロと姫を頼んだよ)(はい)
(スミレ、ヒスイ、フジと一緒に行ってね)
【うん……気をつけてね】
(何か気になる?)
【なんだか……表現 出来ないんだけど……】
(そう? 気をつけるよ)
【あ! ルリとアンズで入って!】
(ほえ?)
【とにかく! そうして!】
(わかったよぉ)
(サクラ、何か察知しているんだよ。
おとなしく、そうしよう)
(アオ兄様、その鏡は どうしますか?
放置できませんよね?)
(そうだね……)
【見ておいてやろう】
(ゴルチル様、ありがとうございます!)
アオとサクラは女姿になり、闇を纏って、鏡をくぐった。
――建物内。
その部屋には、人と魔人が大勢 倒れていた。
(人が、こんなに……)
(既に拐っていたんだね)
(って事は――)
(これから魔物にするつもりだったんだね)
(鏡は――やっぱり、これも一方通行だね~)
(魔物の気が無いね……)
(どこから出たのかなぁ……)
(フジが追ったので全てだとは思えないけど、とりあえず、この人達を外に出そう)
(うんっ)
抱えて(せ~のっ)
(ん?)(あれれ?)顔を見合わす。
(曲空できないねぇ)
(仕方ない。破壊するか)
水と炎が絡みながら壁に――
(吸い込まれちゃった……)(困ったね……)
桜「俺、かわいい~♪」
凜「サクラはアンズで平気なの?」
桜「ん~、俺けっこうアンズ歴 長いから~
あんまり気になんな~い」
凜「そっか~
大学も修練もアンズだったんだよね?」
桜「うん♪
俺、隠れ住んでたから~」
凜「苦労したんだねぇ」
桜「そんな事ないよ~
アオ兄とヒスイが いっしょだったから♪
あ、スミレもねっ♪」
凜「その辺の話、まとめたいから
ちゃんと話してよぉ」
桜「ん~、アオ兄に確かめてからねっ」
凜「じゃあ、大学と修練の話なら
アンズちゃん単独でしょ?」
桜「ん~とね~」
凜「ん?」
桜「なんかイヤ~♪」きゃはっ♪ 曲空♪




