旅立ち2-陰陽師
『つかみ』が、ぜんぜんオッケーじゃない!
自覚しています。はい。
アオと陰陽師は、十左の家を出た。
「アオ殿、まずは、どちらに向かいましょう?」
「そうですね……」う~ん。
「陰陽師殿は、この辺りに詳しいんですか?」
「いえ、私は、もっと北に住んでおりましたので、この辺りには疎うございます。
アオ殿は、お暮らしでしたのですよね?」
「そうなんですが……俺は、ここに住んでいた間、この髪色ですから、村の外には数える程しか出なかったんです。
それに、記憶を失っていて、十左と会うまでの事を何も覚えていないんです」
「そうですか……記憶を……。
まあ、私も幼少の記憶が無く、両親の顔も声も覚えてはおりません」
「今まで、どうやって?」
「祖父母に育てて頂きました。
それと、狐――いえ、近所のご夫婦にお世話になりました」
「狐……」何か引っ掛かるような……う~ん――
「そのようなこと申しておりませんよっ。
あ、確かに、金の髪は東の国だけでなく、中の国でも珍しい色ですね」
「そうらしくて、十左には、いつも『手拭いを被っておけ』と言われていましたよ」
「戦の相手方には、明るい髪色の方々もおりますからね。
何とも申し訳ないことですね」
「陰陽師殿が そのように思われることなど、何もありませんよ。
二人共、不案内となると……
では、村を襲った魔物達が出てきた闇色の穴が現れた山脈の側を調べつつ、国境を越えましょうか?」
「そう致しましょう」にっこり。
「でも、どの辺りから登るのがいいんでしょうね」
「山裾を歩きつつ考えましょう」
そんなこんなで二人は、村の中央、闇の穴が現れた場所へと歩き始めた。
♯♯♯
「特に何もありませんね……」
「はい。禍々しいものは何もございませんね」
「山は、どうなんだろう……」
闇の穴が開いていた場所で、二人は山を見上げた。
中の国との国境になっている山脈は、高く険しい山々で街道などは無い。
その為、東の国と中の国とは、隣国にも拘わらず、国交が殆ど無い。
しかも、今や、魔物の巣窟となっている可能性も有る。
だから、いつでも戦えるように、
備えておかないといけないよな。
「陰陽師殿は、術力が尽きたら、どう戦うんですか?」
「術が使えなければ、ただの人です。
尽きぬよう細心の注意を払いますが……もしも尽きてしまえば、逃げるのみですね」
「術力の回復は、できないんですか?」
「勿論、自然に回復は致しますが、それは緩やかなるもの。
瞬時に回復する為には、高位の僧侶や神官の御力が必要となります。
勿論、尼僧や巫女も同じでございます。
神官、巫女は回復に関しましては、僧侶、尼僧には劣りますが、攻撃の術も使えます」
「体力も回復できますよね?」
「はい。勿論でございます」
「では、山に向かう前に、僧侶を探さなければなりませんね。
この村の北に、僧達が山で修行するための拠点となっている寺が有るらしいんです。
そこに行ってみましょう」
「はい」にっこり。
♯♯♯
村を抜け、十左がアオを見つけた森を抜け、昼近くに北の寺に着いた。
寺の住職は穏やかに微笑みながらアオの話を聞き、ゆっくり頷いた。
「然様ですか。魔物退治を……ふむ。
でしたら、中の国に向かうのは善きことです」
「こちらには、適した方は、いらっしゃらないんですか?」
「この辺りで修行している僧達は皆、若く、まだまだ未熟なのです。
ここでの修行を終え、中の国にございます山深い大滝へ、更なる修行に向かいました慎玄を訪ねなさるのが最善でございましょう」
山に入る前に僧侶を仲間にし、
かろうじて修行の為の道が有る
ここから登りたかったんだけど――
「慎玄様ですね? 分かりました。
お教えくださり、ありがとうございました」
アオと陰陽師は寺を出た。
「他に回復方法は有りませんか?」
「そうですね……あとは薬草ですね。
あまり好きではありませんが……」苦笑。
「仕方ありませんよね。
では、修行の山道とは逆方向ですが、大きな市場が有る、すぐ北の町に行きましょう」
北に向かい歩き始めた。
「その町には行ったことが、おありなのですか?」
「一度だけ。
十左の農耕馬に乗って行ったんですけど、その時は寺には気付かなくて……」
「農耕馬?」
「畑を耕す馬です。だから遅くて」あはは……。
「アオ殿でしたら、走った方が速いのでは?」
「修理した農具を届けに行ったんですけどね。
荷物が重いから、って十左が煩くて。
結局、森の木に馬を繋いで、農具を担いで走りましたよ」
「どのような物を?」
「荷車いっぱいの大きさの木箱でしたよ」
「え……?」見かけに依らず……なのですね。
♯♯♯
そして、二人は町で様々な薬草を調達した。
「あ、剣刀の店……寄っても構いませんか?」
「でしたら、私は紙を調達したいので、そちらの道具屋に参ります」
「では、町の入口で落ち合いましょう」
アオが新たな剣を買い、町を出ようとした時――
あれは……巫女?
巫女は回復と攻撃、両方の術が使える、と
陰陽師殿が言っていたな――
前を行く巫女(らしき者)を追い越し、声を掛け、事情を話すと、
「私も修行の旅をしております。
特に目的地があるわけでもございません。
お役に立つことができるのか、自信はございませんが……私でよろしければ……」
紅の瞳が雅やかに微笑んだ。
その時アオは、己の背後、町の外に陰陽師が居り、巫女(?)と目で語り合っていたことには気付いていなかった。
♯♯♯
三人で山脈に向かう途中、アオの後ろで、陰陽師と巫女(?)は、ずっと静かに話しているようだった。
お二方共、修行の旅をなさっているんだから、
情報交換もしたいだろうし、
術の話なんかもしているんだろうな……。
アオは後ろを向かずに、これからのことを考えながら歩いていたが、
あ、これだけは確かめておかないと――
振り返り、
「ところで、巫女様は、どんな術が使えるんですか?
回復などできますか?」
「あ……申し訳ございません……」
「あっ、まだ会得されていませんでしたか?」
「いえ……その……巫女ではなく、陰陽師なのですが……」
「え!?」口あんぐり、立ち止まる。
陰陽師(男)が愉しげに笑う。
ちょうど、こちらに向かって来ている行商人が見えたので、慌てて大量の薬草を買った。
当初は、和風でロープレ風な、
なんちゃってファンタジーということで、
カナリいい加減な話を展開していました。
つまり、勇者アオと二人の魔法使いが
旅に出て、仲間を増やしては――と、
大好きな有名ロープレ風な感じで、
とっても軽~く書いていたんです。
その雰囲気を無かった事にしてしまうか、
どうしようかと、随分と悩みましたが――
結局、残してしまいました。
ですので前半は、その色が濃いのですが、
その先は――
?「最初は、こんなだったんだね~」
青「そうだけど、当初は数行だったからね。
プロローグから、この辺りまでは、
第一章の後で作ったらしいよ」
?「ふぅん。なんか、凜らしいねっ」
青「行き当たりばったりなところ?」
?「そ♪」
青「確かにね」
凜「あのねぇ」
青「逃げるよっ」
?「うんっ!」