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三界奇譚  作者: みや凜
第一章 竜ヶ島編
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砂漠編15-妖狐と竜

 前回まで:禍々しい輪は聖水に弱かった。


 距離が有り過ぎます……仕方ありませんね……


そう思った蛟が、聖獣に戻って飛ぼうとした時、魔獣がアオに向かって跳躍した。


蛟は聖獣に戻ると、先に走った姫を背に掬って乗せ、アオの元に飛び、

「姫様、アオ様をお願い致しますっ!」

自分の聖水と風神の大団扇を渡して、砂塵の柱が立った方に向かった。


「あい解った!」

姫は聖水を扇ぎ飛ばし、アオに纏わり付く輪を落とし、剣を抜き構えた。



♯♯♯



 蛟が飛んだ方向には、魔物が立っており、淡く光る盾に護られた慎玄が倒れていた。

魔物は慎玄の方には向いておらず、魔物の向こうの何かを見ていた。

蛟は、魔物の視界に入らぬよう、慎玄に近づくと、輪に聖水をかけて外した。


「紫苑殿と珊瑚殿が囚えられてしまいました」


慎玄の小声が聞こえたのか、魔物が二人の方を向いた。


「これはこれは……

蛟が()るということは、ここにいる竜は……

ならば、何としても生け捕りにせねばなりませんな」


嬉しそうに ほくそ笑みながら、魔物は背後に向かい、

「では、早速、活躍してもらおうかの」


魔物が動き、その背後の宙に、二匹の妖狐が吊るされているのが見えた。


「まさか……あれが……」


「ええ、そうです」


魔物は、瓢箪を妖狐の口に当て、何かを飲ませた。


 もしや、あれはっ!?


蛟がハッとした時、妖狐達の目が赤く光った。


「竜を捕らえるのです」


魔物の声に従い、二匹は宙を蹴って、アオに向かって跳んだ。


蛟は慌てて妖狐を追いかけようとしたが、

「易々通れると思うでないぞ」

魔物が立ち塞がった。



♯♯♯



 アオは輪の襲来がなくなったので、姫と連携して存分に戦い、魔獣を倒した。

魔獣の姿が消えていく、その向こうから、妖狐が宙を跳んで来るのが見えた。


妖狐の正体を知らないアオと姫は、剣を構え、二匹に向かって走った。


二匹と二人の距離が縮み、妖狐達から炎と雷が放たれた。


 この術……似ている……


アオが雷を(かわ)しつつ、そう感じた時、

「アレは、紫苑と珊瑚ではないのか?」

姫が炎を避けながら言った。


「兎や蛟のよぅに操られておるのやもしれんぞ!」


アオは頷いた。


アオは攻撃を避けながら、良い策がないか考えていた。



――背後に落ちている輪のことなど、すっかり忘れて……



 輪にかかった聖水が乾いたのか、効果が薄れたのか――

輪は一つ二つと宙に浮き、暫く漂った後、アオに向かって音もなく飛んで行った。


そして、妖狐の雷を避けて跳んだアオを背後から捕らえた!


アオを捕らえた輪は、漆黒から鮮やかな血赤へと変わっていく――


妖狐達は妖しく光る網を張り、アオを包もうとしていた。


アオの身体から瑠璃色の閃光が迸り、一瞬、竜の姿が見えたかに思えた、その時、


天から艶やかな黒い疾風が駆け抜けた!


アオを捕らえていた輪は弾け散り、妖狐達は気を失い落下した。


それを見た魔物は、

「もう一匹おったか……」顔をしかめた。


「二匹とも欲しいのぅ……

だが、せっかく捕らえた御狐殿を奪い返されるのも惜しい……

ここは退くとしようかの」

新たな赤黒い輪を投げ、妖狐達を捕らえ、引き寄せた。


そして、妖狐達を連れた魔物は、闇の穴に入った。


闇の穴が溶けるように消える。



♯♯♯♯♯♯



 竜ヶ峰の工房で、アカが、サクラから頼まれた剣を鍛えていると――


暗室の扉が開き、サクラが、ふらりと出て来た。


(無理はするな)


(ヒスイが、力、分けてくれたから、もぉ、だいじょぶだよ……)


(どう見ても大丈夫では無い。寝ていろ)


(その剣……どぉ?)


(竜宝には違いないが……

以前、キン兄が言っていた通り、力を感じない)


(その、いっぱいある穴に入りそぉな玉、見つけたんだ。

だから、使えると思うんだ)


(ふむ。玉……雅剣(ガケン)という事か……

確かに、不自然な窪みだらけだな。

(つか)に三玉か……

ならば『華雅(カガ)三眼(サンガン)』。おそらく、そんな名だ)


(うん。そぉだと思うよ)

 俺の中で、そうだと言ってるから……


(何処に行く?)睨む。


(アオ兄トコ……行かなきゃ)


(行って何が出来る? 今のサクラでは――)


(俺自身、だいじょぶ……

アオ兄と同調してるだけだから……)


アカは立ち上がり、奥の部屋から薬袋を持って戻った。


(飲んでおけ)サクラに押し付ける。


(ん……仙竜丸(センリュウガン)?)


(そうだ)


(ひとつだけ?)


(貴重だからな)


(じゃあ、アオ兄に――)


(着く前にサクラが倒れる。飲め)


アカに睨まれ、サクラは渋々薬を口に入れた。



♯♯♯♯♯♯



 キンの部屋では――


「では、その薬を、すぐに作ります」


「うむ。頼む。

出来たならば、アオに届けて欲しい。

それで、ハクは?」


「天亀の湖――

翁亀(オウキ)様の所に向かっております」


「最果ての湖か……ふむ。

翁亀様ならば、あの輪の事も御存知であろう。

では、そちらは、ハクに任せるより他に無いな」


(キン兄♪

ハク兄から『長老の山に行け』って言われたから、行ってくるね~♪)


(サクラ、もう大丈夫なのか?)


(だいじょぶ~♪ 俺、元気~♪

あ! ハク兄から、もひとつ頼まれてた~♪

倉庫に入らせてねっ♪)


 この話し方ならば、サクラの声だけは、

 フジにも聞かせているのであろうな。


「フジ、サクラと共に、長老の山に行ってくれるか?」


「はい。ハク兄様からの御指示の件ですね?」


「うむ。頼む」


「では、薬を急ぎますので」礼。



♯♯♯♯♯♯



再び、工房では――


「アカ兄、ありがとね~♪」ぴょんぴょん♪


「本当に大丈夫なのか?」


「俺、竜宝薬、効果テキメンだから~♪

んじゃ、いってきま~す♪」ぴょんぴょん♪





ぴょん♪ ぴょん♪ ぴょ~ん♪


凜「サクラ!♪ やっと元気になったのね~♪」


桜「なんでこんなトコ(倉庫)にいるのっ!?」


凜「そこは気にしな~い。

  伝言あって来たのよ」


桜「誰から?」


凜「知らないわよ。とにかく聞いて。

 『全て己のせいだなどと、(はなは)だしく

  烏滸(おこ)がましい思い上がりだ。

  先ずは、そう思う事が相応しい程に

  己が力を高めよ』だそうよ」


桜「……そう……ありがと」


凜「はいっ♪ 切り替えるよっ♪」


桜「ん。凜、ありがと♪」にこっ


凜「よしっ♪」


桜「アオ兄にチカラ貸してくれるヒト~♪

  光って~♪」


凜「キレイ……」


桜「ほら♪ 凜も集めて~♪」


凜「私も!?」


桜「トーゼンでしょ♪」


凜「仕方ないなぁ」くすっ♪


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