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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
288/429

王の道1-即位?

 ハザマの森と、地下魔界の拠点調査よりも、

あちこちの城の方が、動きがあるようで――


♯♯ 老竜の神殿 ♯♯


「サクラ、兄上様がいらっしゃったぞ」


「長老様、失礼致します」


「アオ兄、ちょうどいいトコ♪

初代・魔竜王様のお話を伺ってたんだ」


「第六代・天竜王スカーレット様が、魔界に閉じ込められ、開祖様と成られたのですよね?」


「そうじゃよ。

閉じ込められた場所が魔界と知り、輝紅(ホイホン)と名乗る事とし、魔竜王国を立ち上げたのじゃ。

それまでにも閉じ込められておった天竜達が住んでおったし、一個大隊 纏めて閉じ込められてしもうたからのぅ」


「閉じ込められた地は、最初から地上魔界だったのですか?」


「そうじゃ。天人だけでのうて、他の魔人とも、人とも隔離されたのじゃよ。

その頃の地上魔界は、全ての国が滅ぼされておっての、ただただ荒野でしかなかったのじゃ。


その後、人界や地下魔界への道を開く度に破壊され、唯一 残っておったのが、お二方が通って来られた、あの道なのじゃ。

あの道ものぅ、虹藍の祖父が解空鏡(ゲクウキョウ)を見つけ、やっと通れるようになったのじゃよ」


「条件となっている、闇属性または闇障は最初からなのですか?」


「いやいやまさか。

そのような条件など付けよう筈はございませんよ。

天竜が通れぬよう、魔王が付けたのでしょう。

魔竜が持つ解空鏡を破壊した上でのぅ」


「過去、何度か交流がありましたよね?

その時は、どのように行来していたのでしょう?」


「道が開けた時に、双掌鏡(ソウショウキョウ)を運んだ事があるようですな。

しかし、その鏡も殆ど破壊されてしもうたようで、天界では、お見掛けせなんだのではございませぬか?」


「伯母が一対、友人に譲った物があった事をつい最近 知ったのですが、伯母が亡くなったのは、私共が生まれる前でしたので、存在自体 存じませんでした」


「もしかして……それ、ソラちゃん家の?」


「そうだよ。彼女の叔母様が魔界に帰る時、贈った物らしいよ」


「そぉなんだ……」


「魔竜の闇属性は、魔王の呪なのですか?」


「魔人全てなのじゃが、光属性は生まれぬのじゃ。

閉じ込められた天竜も、代を重ねる毎に、闇属性が増えていったのじゃよ。

魔王により、全て闇に変えられてしまうのか、この魔界が、そういう土地なのか……

それは、まだ分かっておらぬのじゃ」


「天性の光明は、生まれるのですよね?」


「ごく稀にのぅ」


「闇障も生まれるのですか?」


「それも稀……と申すか、開祖以降、王族では唯ひとりだけじゃよ」


「どちらも稀なのですか……」


「何か手がかりになるやも知れませぬからの。

初代よりの知っておる話を順に致しましょう」


「お願い致します」


アオとサクラは、じっくり聞く事にした。




♯♯ 天竜王城 ♯♯


「そんな事があったのに、もうアオは動いているのか……」


【アオは強いから……】


「ギン、それでも王太子の婚儀を早めたいのか?」


「その方が良いと思うのだがなぁ」


【私からアオに話してみてもよいのですが……】


「話してくれるのか?」


【条件があります】


「何だ?」


【次代の王と王妃へのお手本として、きちんと王をなさってください。

そして、ミドリ様を政に加え、もっと大切に、夫婦らしくなさってください】


「うっ……」


【手始めとして、婚儀日程の調整をお任せになってください】


「それは無理だろ……」


【アオ達の婚約の儀は、ミドリ様が調整なさったのでしょう?

ないがしろなどにせず、お任せになってくださいね】


「しかしなぁ……」


【そう……では、婚儀の件は、これまでです。

おとなしく王をなさってください】

姿が薄れる。


「待てっ!」


スミレはギンをチラッと見たが、構わず消えた。


「ギン、まさか……退位したいから、王太子の婚儀を早めようとしているのか?

私を蹴落としてでも王に成りたかったのは、目指す政があったからではないのか?」


「いや……それは……」


「スミレは、三人で統治する方が良い国政が出来そうだと、女王ではなく王妃を選んだのだよ。

ギンを王にすべく、一歩下がったのだよ。

それなのに、まだ何も成していない今、どうして退位など考えているのだ?」


「確かに……俺は何も成していないな……」


「ミドリ殿の事は、申し訳ないと思っている。

あの時、私が再婚しさえすれば、二人は各々もっと良い伴侶と巡り会えたのではないかと……そう、ずっと思っていた。

だから私としても、ミドリ殿に王妃として、きちんと政に参加して欲しいのだよ。

一生の殆どを王家に捧げた事を、後悔して欲しくはないのだよ」


「一生の殆ど……確かに、そうだよな……

責任は果たさねばならんな」顔を上げた。


「兄貴、ありがとう。

ミドリと話してみるさ」

決意の笑みを見せ、立ち上がった。


ギンは扉を開けると、振り返った。

「スミレに会ったら、連れて来てくれないか?

ちゃんと礼を言いたいんだ」



扉が閉まると、スミレが姿を現した。

【ホント、世話の焼ける弟だわ】


「そうだな。

でも、苦労もかけてしまっているからな。

トントンだろう」


【そうね……】




♯♯ 老竜の神殿 ♯♯


「何度も襲撃されながらも、道を塞がれ、反撃が出来ないままだったのですね……」


「長老様、現在こちらと地下魔界とは、どのように行来しているのですか?」


「人界に出、ハザマの森から行っております。

それでもなかなかに遠い上、危険なのですが……

しかし、直接 行くよりも近うございますからのぅ」


「それは御不便ですね……

サクラ、道を開かないかい?

保護は深魔界への道と同じで、どうだろう」


「道を……地下魔界への道でございますか?」


「はい、長老様。

今日明日に出来るものではございませんが、神様のご協力も得られますので、そうお待たせは致しません。

魔王が侵攻や破壊をせぬよう、保護も致します。

開いてもよろしいでしょうか?」


「有り難き事にて、許可など……むしろ、どうか、どうか宜しくお願い致します」


「アオ兄……いろいろ考えてくれてたんだねっ。

ありがとう!」ぎゅっ♪


「おいっ、サクラ!? 長老様の御前でっ」


「いやいや、仲良き事は、素晴らしき事。

微笑ましゅうございますよ」にこにこ。


兄弟、照れる。


「おぉ、そうじゃ! アオ様。

その道、サクラ王の初仕事になさってくださいましょうか?」


「そうですね。それは良いですね!

あ……でも そうなると――」


「すぐにでも、王に御成り頂かねばなりませぬな」ほっほっほ♪


「長老様っ♪ 本当にっ!?♪」


不意の声に、兄弟 振り返る。「あ……ラン……」


「どうじゃ? 虹藍。まだ早いかのぅ」


「私は今すぐにでも!」飛んで来る。


「さて、こちらの王族入りも済ませておるし、婚約者のままでもよいのじゃが……」


「結婚するかい? サクラ」


「いいの? 王太子(キン兄とハク兄)もまだなのに?」


「父上が王太子の婚儀を早めたがっているんだ。

だから、その後でなら大丈夫だよ」


「ランは? いいの?」


「どうして悪いのよ! サクラ……ダメなの?」


「うん、決まりだね。

長老様、すぐに調整致しますので、こちら方、宜しくお願い致します」


「こちらは、いつでもですからのぅ。

天界の方が大変でございましょうが、宜しくお願い致します」


「サクラ、父上と話して、また戻るからね。

こちらで待っていて。

入城許可も貰って来るからね」




♯♯ アオの屋敷 ♯♯


 爽蛇は屋敷に戻ると、託児所に風蛇を迎えに行った。


「琉蛇さん、いつもありがとうございます」


「いえ、お仕事ですので、そのような……

風ちゃん、お昼寝してますから、まだこのままで構いませんけど……」


「ずっと預けたままで申し訳ありませんし、なかなか風蛇にも会えませんから、連れて行ってもよろしいですか?」


「それでしたら、もちろんです。

あの……執事長……風ちゃんは何歳なんですか?」


「そうですねぇ……

私は正確な歳を知らないのです。

弟の子供ですし、弟とは離れて暮らしていましたから。

引き取ったのは、琉蛇さんとお会いする少し前でしたよ」


「普通には育っていないから……」


「そうですねぇ。

ですから、あの時からの歳は確かですが、最初が何歳だったのかを知らないので、想像もできません」


「そうですか……」


「ですが、少しずつ成長しておりますので、ゆっくり大人になれると信じております」


「その……弟さんも何も?」


「魔物と戦っていた時、拐われていく弟を見たのが久しぶりの再会でした。

弟は上空から風蛇を私に託したんです。

それっきり……弟には会えておりません」


「そうだったんですか……

すみません、聞いてしまって……」


「いえ、気になりますよね。

風蛇は普通ではありませんから」


 すみません、琉蛇さん。

 嘘をついてしまって……





凜「結婚しちゃうの!? 末っ子なのに!?」


青「末っ子だと何か問題あるの?

  それに王太子の後だからね」


凜「兄としては、どうなの?

  弟が王様で、先に結婚するんだよ?」


青「孵化した順とかって、気にする事かい?

  それに、年齢より中身だよ。

  王として相応しければ、問題なんて

  何も無いよ」


凜「まぁ、既に成人しちゃってるし~

  百歳越えてるんだし~

  竜だからいいのかなぁ?」


青「『竜だから』って、よく解らないけど、

  人って違うのかい?」


凜「そう言われると……どうなんだか……

  あっ! で、爽蛇は?

  琉蛇さんとの関係は?

  風蛇は本当は誰の子供?

  実は訳有りなの?」


青「それは追々ね。

  爽蛇も幸せになってもらいたいからね」


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