砂漠編14-輪の弱点
二話/日は多いのか、少ないのか……
実は、ずっと悩んでいます。
一方、魔物から離れてしまった姫も、輪と必死で戦っていた。
最初は、輪に捕まったら外せばよい、くらいに軽く思っていたが、触れそうになった瞬間、直感で禍々しさの違いを察知し、一番近くにいる蛟に、それを伝えようとしていた。
それに致しても、喉が渇いたのぅ……
道具袋から、竹の水筒を取り出そうとしたが、薬草が邪魔で探れない。
薬草も水分には違いないので、噛ってみたが――
「まずっ!」また袋を探る事となった。
輪と戦いながら、蛟に近寄りながら、袋を探るのは至難の技で、次に出てきたのは聖水の瓶。
「薬草よりはマシかのぅ~」栓を抜くと――
輪が後退った気がした。
およ? ならば――
口に含んだ聖水を輪に向かって、ぷーーっ! と吹くと、今度は、はっきり散るように逃げた。
「ミズチ! これじゃ!」瓶を掲げた。
それを見た蛟は、姫の背後に回り、瓶の口を風神の大団扇で扇ぎ、聖水を勢いよく放出させ、拡散した。
聖水がかかった輪は、飛ぶ力を失い、砂の上を這うように、のたのたと逃げ始めた。
蛟と姫は、這う輪を集め、蛟が出した陶器の櫃に放り込んで、蓋をして封じた。
「それは菓子入れか?♪」
「いえ、浄禍器という禍を浄化する竜宝でございます」
「菓子ではないのか……残念じゃ」
やっと周りを見る余裕ができた二人の目に、遠くで暴れている魔獣と、輪を斬り捨てながら魔獣に向かって走るアオが見えた。
蛟と姫も魔獣に向かい、アオを追って走り始めた。
その時、魔獣の足元に、たて続けに三本の砂塵の柱が立ち昇った。
そして、珊瑚の悲鳴が響く。
♯♯♯♯♯♯
天界から人界に向かって急いでいるフジは――
あ……せっかく、ハク兄様にお会いしたのに、
伺うのを忘れておりましたね……
サクラにお願いしましょう。
(サクラ)……おや? (サクラ……?)
(フジ兄、なぁに~)
(寝起きですか?)ふふっ
(バレちゃった~)
(ハク兄様に伺いたい事が有るのですが――)
(うん♪ なぁに?)
(蛟殿の薬は、変更ありませんか? と、お願いします)
(ん♪ ちょっと待っててねっ♪)
(ハク兄♪)
(ん? 何だ? サクラ――あ! そうだっ!!)
(な、何っ!?)
(竜宝学博士♪ 今から言うヤツ、探してくれ)
(その呼び方、やめてよぉ~)
(いいじゃねぇか♪ 本当なんだからよぉ♪
どれも洞窟の倉庫に有る筈なんだ。
言うぞ♪ 鏡なんだけどな、こんくらいの小さなヤツで――)
(ちょい待って! 竜宝名で言ってよぉ。
それに『こんくらい』なんて見えないよぉ)
(あ、そっか。直径が二寸くらいの丸鏡だ)
(だからぁ、竜宝名!)
(知るかよ、んなモン。おとなしく聞け)
そんなこんな延々と続いた。
(そいつらを、アオの蛟に渡して欲しいんだ♪)
(うん……探せたらね……)
(探せよなっ)
(わかったよぉ)
(でなっ♪ 渡したら、長老の山に行って欲しいんだ♪)
(いいコト?)
(団子が待ってるんだよ♪)
(ん♪ 行く~♪)
(よしっ♪ じゃあなっ♪)
(待って! 俺から話しかけたんだよっ!)
(あ……そうだったか?)
(フジ兄が!
『蛟殿の薬は、変更ありませんか?』だって!)
(あ~、そうだな……
強めの解毒薬、増やしてくれ。
随分、闇を込められてたからな)
(わかった~)
(フジ兄、お待たせ~
『強めの解毒薬、増やしてくれ。
随分、闇を込められてたからな』だって~)
(ありがとうございます、サクラ。
ハク兄様は、何か仰っていたのですか?)
(探し物、頼まれた~)
(そうですか。頑張ってくださいね)
(うん♪ がんばる~♪
でね、キン兄が『薬を頼みたい』だって~)
(サクラは本当に、真似が上手ですね♪)
(えへっ♪)
(もしかして……私のも真似ているのですか?)
(うん♪『真似ていますよ』)きゃはっ♪
(自分で聞くのは、恥ずかしいですね……)
(わかりやすいでしょ?)
(それは……確かに……)
(じゃ、そろそろ、俺、起きる~
フジ兄、気をつけて帰ってきてねっ)
(はい。ありがとう、サクラ)(うんっ♪)
【サクラ、もう動くの? まだ寝てないと――】
(うん……寝てる場合じゃないから……)起き上がる。
【少し待って、力、分けるから】
(でも……それじゃ、ヒスイが……)
【私なら、大丈夫だから――】
サクラの返事を待たず、ヒスイはサクラを包んだ。
(無理しないでよ、ヒスイ)
【サクラ程の無理はしていないよ】一瞬、輝く。
(ありがとう、ヒスイ。
もう大丈夫だからね)
【サクラ、声……それに、口調……】
(うん。たまには普通に話させてよ)
【無理ばかりしないで――】
(でも、俺のせいだから……)
【それは、私も同じ……】
(そんな事ないから)
【アオを護れなかったばかりか――】
(ヒスイは、ずっと護ってくれてる!
アオ兄の事も、俺の事も、しっかり護ってる!
だから……そんなふうに言わないで……)
【ありがとう、サクラ……】
ヒスイは、もう一度、サクラを包んだ。
♯♯♯♯♯♯
「悲鳴……珊瑚か!?」「急ぎましょう!」
姫と蛟は、全力で駆けた。
蛟は、何故、飛ばぬのじゃ?
もしや、先程のも無理をしておったのか?
ならば、言えぬのぅ……
駆けるより他には無いのじゃろぅな……
「紫苑と珊瑚の事じゃ、必ずや二人で、なんとかする筈じゃ。
ミズチは、何処ぞに隠れておれ!」
「姫様……そのような……」
「回復できておらぬのであろ?
おとなしくしておれ!」
姫は、速さを増し、蛟を置いて行った。
「アオ! 今、行くからのっ!」
凜「ご子孫への御指導とは、どのような?」
老「主に基礎教育と武術修練、
術や属性技も含めてじゃな。
それと、職能修行じゃ」
老「修練は、国王軍の軍人学校にも行くぞ」
老「職能も職に依っては、外に出るのじゃ」
凜「サクラは、アオが……」
老「それは、事情があってのぅ……」
老「大婆様直々に指導者と成られ、
実質、アオ坊が指導しておったのじゃよ」
老「じゃからの、儂らどころか
祖父母すらも近寄れなかったのじゃ」
老「モモさんは、おやつの差し入れだけは
欠かさずしておったがのぅ」
凜「大婆様?」やっと口を挟めた。
老「最長老様じゃよ」
老「女性の場合、そう呼ぶのじゃ」
凜「じゃあ、一番偉い方!?」
老「そうじゃよ」どうしたのじゃ?
凜「サクラって……」
老「神の子じゃよ」にこにこ
老「アオ坊ものぅ」にこにこ




