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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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涅魁北2-嫗亀

 前回まで:北の果ての山の麓に在る

      『永久に凍ったままの湖』

      を見つけました。


 湖へと降下したアオとサクラは、水面に出ているものは無いかと探していた。


「なんにもないね~」


「沈んでしまったのかな……水中を探そう」


「アオ兄、なんか……出てきたっ!」


二人は気を探りながら、急いで近寄った。


(ホントに『浮かぶ洞窟』なんだね~)


小島が()り上がり、止まった。


(なんか……いるよね?)

(悪意は感じないけど……)

(洞窟の中にいるのかなぁ)

(そうかもね)

(入口……水の中?)

(まだ上がって来ている!)


身構え、待機していると――


小島の側面に、人ひとりが屈めば入れる程の穴が見えた。


そして――


(甲羅?)

(――にしか見えないね)


(ってことは――)

(この大きさは天亀だろうね)


(こんなトコに――)

(閉じ込められていたんだね)


頭が出てきた。


「ほぉ……雪を退()かしてくれたのは、お前さんらかのぅ」


二人は水面近くまで降下した。

「雪を消した仲間は、別の場所に移動しました。

私達は、地下界への道を求めて参りました」


「ふむ。

確かに、私の甲羅に、その入口が乗っておる。

お前さんら、天竜か?」


「はい。天竜です。

私はアオ。弟のサクラです」


「どぉして甲羅に、こんなのが のってるの?

重くないの?

それに、こんな寒いトコ、だいじょぶなの?」


「ほっほっほっ♪

サクラは質問だらけじゃな」


「失礼致しまして、申し訳ありません」


「いやいや、アオ、よいよい。

しかし、ここでは、お前さんらも寒かろぅな」


「温かい湖に移動しましょうか?」


「ほぉ、出来るのか?」


「人界でなければなりませんか?」


「この穴なら、何処でも大丈夫じゃ。

何処なりと、お前さんらの都合の良い場所に、連れて行ってくれるかの?」


(一旦、天亀の湖に行こう)(うんっ)


二人は甲羅を掴み、水面から浮かせた。


(もぉ凍り始めてるよ)


周囲に薄氷が迫り、その上に雪が積もりつつあった。


(凄いね……)(行こっ! せ~のっ!)



――天亀の湖。


「お前さんら……この湖を知っとったのか……」


巍岩亀(ギガンキ)様を御存知ですか?」


「よ~ぉ知っておる。

爺は、まだ生きておるのか?」


「はい。お元気です。

今は別の池にお住まい頂いております」


「そぅかそぅか」うんうん。


「その山は、とっちゃダメなの?」


「呪じゃからのぅ……退けたら私の命が無い」


「龍神帝王の呪ですか?」


「その名も知っておるのか……

お前さんら、その気と言い、並みの竜では無いのじゃな」


「ただの竜ですよ」


「ほっほっほっ♪ ただの竜か♪」


「その穴を一度 通らせて頂けますか?」


「向こうには、龍神帝王が()るぞ」


「はい。だから行くんです」


「そぅか……お前さんらなら大丈夫じゃな」

天亀は、そう言って微笑み、首を下げた。


アオとサクラは人姿になり、穴に入った。


 闇の気配……これは呪なのか?

 それと、何か……

 岩の内に、何かが有るのか?


それ以上は分からなかったが、害は無さそうなので探るのは止め、漂っている瘴気を浄化して進み、境界の手前の壁に布石像を埋めた。


寛文鏡(カンモンキョウ)、天界からでも通れるかい?

しかも竜が人姿で」


【可能で御座います、我等が王】


通過した側にも布石像を埋めた。


(あとは、出られるか、だよね~)

(そうだね。神眼を広域にね)(うん)


二人は慎重に気を探り、闇障を発動し、出口から踏み出した。


(ここには、光に対する結界は無いね)


(アオ兄、地図♪)


元・側近達が描いてくれた地図を広げ、案内虫を乗せた。


止まった所に印を付ける。

(うん♪ 確かに深魔界だね~♪)


(魔王の城は遠いけど、魔神界に近い側だね)


(もっと進む?)


(いや、明日が動けないからね。

通路の口に結界を張ったら戻ろう)


(そぉだね。じゃ、竜宝達、お願いねっ)


【畏まりまして御座います、我等が王】


二人は術を唱え、光を込めた。


(光がダメなの、あの結界だけなんだね~)

遥か遠くの、奪還した魔界の方を見る。


(魔界側には、その強い結界が有るし、通路を破壊しきったと思って油断しているのか、ここまで手が回らないのか……

とにかく、抜けが有って良かったね)


そして、闇障で結界を隠した。


(アオ、闇の何かが、こちらに来ているぞ)

(サクラ、穴に隠れよう)(うん)


穴から様子を窺っていると、闇黒色の魔物が二匹、近付いて来――


――穴の上を素通りして行った。


(気づかなかったみたいだね~)

(緊迫感も無かったな)

(ただの巡視かもしれないね)


境界まで下がり、もう暫く様子を見たが、何事も無いので湖に戻った。


「ありがとうございました、天亀様。

地下側の口に結界を張りましたので、巍岩亀様の池にお連れ致します」


「それはそれは……嬉しいのぅ」にこにこ


「じゃ、行っきま~す♪ せ~のっ♪」



――長老の山、中庭の大池。


「おっ! ……お前……生きとったのか……」


「はいはい、やっと出してもらえましたよ」


「何処に居ったんじゃ?」


「人界の北の果て、寒い寒い湖で、氷に閉ざされて眠ってましたよ」


「その山は……」「お前さんこそ、その桜♪」

二人は楽しさと嬉しさを溢れさせて笑った。


「アオ、サクラ、よぅ見つけてくれたのぉ。

ありがとう……本当に、ありがとう」今度は泣く。


「お前さんったら、二人が困ってますよ」


「えっと~、翁亀様、こちらは奥様なの?」


「知らずに、ここに連れて来たのかの?」


「私が名乗らなかったからよ」


「おやおや……『嫗亀(ウキ)』とでもしとこぅかの」


「はいはい。そうしましょ」にこにこ♪


「で、お前、子供達は?」


「それが……途中で離されてしもぅて……」


「あ……」「何?」「ちょっと待ってて~」


サクラは何処かに曲空し、掌に亀を乗せて戻った。


「それは?」


「仁佳城の中庭の噴水の池に、亀さん いっぱいいるんだ♪」


「不思議な気だね」「でしょ♪」


「攻め込んだ時に、この微かな気に気づいたのかい?」


「かわいいから~♪」「そっち?」「うん♪」


「翁亀様、嫗亀様、いかがですか?」


サクラが亀を差し出すと、翁亀と嫗亀はじっと見、顔を見合わせた。

「儂らの子供じゃ。じゃが……この呪は……」


スミレが現れた。【兄様、何?♪】


「この呪、浄化して欲しいんだ」


【難しい呪ね……かなり古いわ】


「出来ないの?」【とは言ってないでしょっ】

「流石、神だね」【うふっ♪ 任せて♪】


スミレは、まさに神々しい光を纏い、術を唱え、亀を光で包んだ。

【サクラ、亀を降ろして】


サクラが亀をそっと地に降ろすと、亀はぐんぐん大きくなり、立派な天亀になった。


「女神様、ありがとうございました」ぺこり


この ひと言で、スミレは すっかり上機嫌。


「スミレ、まだいるんだけど~」


【いいわよ~♪】


ひと晩中、浄化する事となった。




 夜が明け――


「まぁまぁ、亀さんが沢山だこと」にっこり


「あ♪ モモお婆様♪」

「おはようございます」

「すまんのぉ、モモさん」


「いえいえ。

アオ、サクラ、お池を拡げて貰えるかしら?」


「は~い♪」掘る~♪ 「アオ兄、水~♪」


二人は、広い中庭の殆どを池にした。





凜「そういえば、サクラは仁佳城の池で

  亀と遊んでたよねぇ」


桜「うん♪ いっぱいいたから~♪」


凜「翁亀様もボッチじゃなくなって

  良かったね」


桜「うん♪ 通路が見つかったのより

  嬉し~い~♪」


凜「通路が見つかったって事は、

  魔界を進むのね?」


桜「儀式の後ね~♪」


凜「そっか♪ 成人して、

  桜左衛門になるんだっけ?♪」


桜「うんっ♪ カッコいいでしょ♪」


凜「そ、そうね……」


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