砂漠編12-輪
場面転換、多いです。すみません m(__)m
♯♯ 天界 ♯♯
「爺様、ありがとうございます」
クロが門をくぐった時、長老達の背後、木の陰からハクが現れ、頭を下げた。
「それでは、亀の爺様に会いに行きます」
「アレは少々変わり者じゃが、古い事なら一番よ~ぉ知っておる。
上手く聞き出すんじゃぞ」
頷いて、飛ぼうとしたハクに、
「あ~ そうじゃ……
モモさんに、亀の好物を頼んどいたから持って行け」
再び、頷いて飛ぼうとすると、
「あ~ そうじゃ。
帰りに、もぅ一度、長老の山に寄ってくれるかの?」
「いつになるか分かりませんよ」
「いつでも構わん。急ぎはせんからの」
頷いて飛ぼうと――
「あ~ そうじゃ!
ミドリ殿が来ておったな……
見つからんようにな」
ハクは、あからさまにウンザリ顔になる。
「母上は何用で?」
「千里眼を覗かせろ、とか……
いろいろ無茶を言うておったぞ」
千里眼は長老しか覗けねぇ決まりに
なってるってぇのに……
ため息しか出ない。
呆れ顔のまま飛び始め――
「あ~、そうじゃ――」
降りずに、振り返る。「何ですか?」
「気をつけて行くんじゃぞ~」
「はい。
爺様方もお気をつけてお帰りください」苦笑。
やっと、長老達から離れる事が出来た。
ったく、母上は相変わらずだな……
ハクは、ブツブツ言いながら長老の山に向かった。
♯♯♯
長老の山のかなり手前で、上品な桃色の鱗の煌めきが見えたので、ハクは速度を増した。
「モモお婆様、わざわざ有り難うございます」
お付きの蛟から大きな箱と樽を受け取り、ハクは丁寧に頭を下げた。
「今は、山に近付かぬ方が良いと思ったの」
こんな遠くまで聞こえる母の金切り声とは、あまりに違う穏やかな声。
母の行動が、自分たちを心配しての事だとは解ってはいるが、しきたりを守らねばならない立場にいることを理解して欲しいものだと、反抗しまくってきたハクですら、そう思った。
「さ、見つからぬうちに……」
ハクは山を見つめて、ため息をついていた。
優しく促され、急いでいた事を思い出し、もう一度、礼を言って飛び立った。
♯♯ 人界 ♯♯
魔物は間合いを詰めながら、
「確かに竜の匂いがするのだが……
まぁよい。皆、捕らえれば済む事よ」
言うなり、何かを放った。
それは、あの輪に似ていたが、より強い邪悪な気を溢れさせていた。
次々と放たれる輪は、黒い尾を引きながら、素早く動き、纏わり付いた。
叩き落としても、斬り捨てても、即座に元に戻り、再び襲ってくる。
しかも、伸縮自在で、大きく口を開けて齧り付くような動きをしたり、長く伸びて絡まり付こうとする。
アオ達は皆、互いを庇う余裕もなく、防戦一方となった。
「粘るのぉ。だが、いつまで保つかの」
魔物は、薄ら笑いを浮かべながら眺めていたが、
「もう少し面白くしようかの」
魔獣を召喚した。
「生け捕りにせよ」
魔獣は咆哮を上げると、紫苑と珊瑚に向かった!
♯♯ 天界 ♯♯
天亀の湖は、天界の果て、ハザマの森の近くに在る。
ハクは、その湖に住む巍岩亀という老天亀に会い、蛟から預かった輪について教えてもらおうとしているのだった。
ハザマの森とは、三界の間に在り、且つ、三界と交わる不安定な領域である。
古くは、三界各々の神を象徴する『羽』『座』『魔』の字を当てていた。
今は妖狐王が護る この領域にも、魔物は度々現れており、地下魔界に次いで危険な場所だと言われている。
そんな所に、よく住んでられるよなぁ……
ま、大きな亀らしいから、
移動も難しいんだろうけどな……
『輪を返して貰おう』
低く響く声と共に、眼前に闇の穴が穿たれ、闇黒色の竜の如き魔物が現れた。
「んなこと言われてホイホイ返す馬鹿がいるとでも思ってんのか?」
「身の程知らずの小童が!」
闇黒竜は、闇の塊を続けざま放つ!
ハクは塊を避け、銀雷の波動を放った。
闇の波動と銀雷が交錯する。
どちらも相手に当てる事ができないまま、戦い続けていた。
クッソ!
剣、借りて来れば良かったなぁ……
こないだので欠けて、
アカに預けちまってたんだよなぁ……
竜達は、斬る為よりは、むしろ、術や技を放つ際に、気を込め、溜める為に好んで剣を利用する。
チョロチョロうっとーしいんだよっ!!
放射状に銀雷を放つ!
「あっ!」「ん?」声の方をチラ見。
「兄様、これを!!」投げる。
「ありがとなっ♪」受け取る。
瞬間的に剣に気を込め、
「轟雷!!」「爆炎!!」
激しく鋭い銀雷に、紫炎が絡み、闇黒竜を貫き、包んだ。
闇黒竜は苦しみ悶えながら、闇の穴を穿ち、逃げ込んだ。
「ありがとな、フジ」ニヤッ
「いえ、アカ兄様から頼まれただけですので……」照れる。
「いや~ 助かったよ♪
やっぱ、フジは速ぇよなっ」
「いえ……そんな……」照れまくり~「あの……」
「ん? 何だ?」
「天亀の湖でしたら、私も一緒に参りましょうか?」
「いや――」真顔になる。「俺は大丈夫だ」
「はい。
分かっておりますが、危険な場所ですので……」
「アオの方が心配だ。行ってくれるか?」
「あ……はい!」踵を返す。
「この輪……いったい何だってんだ?」
小さくなっていくフジの後ろ姿を見詰め、ハクは呟いた。
「やっぱ、アイツ、速ぇな~」
凜「長老様、『長老の山』って、
どんな所なんですか?」
老「天竜王国の王都の、ずーーーっと奥に
在ってのぅ」
老「王都の外れじゃとは思われておらぬ程
遠いのじゃがな」
老「ま、そんな山奥で、王族の隠居が
のんびりと暮らしておるのじゃよ」
凜「老後って……長そうですよね?」
老「長いぞ~」
老「たっぷりと楽しめるわぃ」
老「昔は王族会に縛られておったが、
アオ坊が暮らし易ぅしてくれたからの
毎日、楽しいわ」
凜「何をなさってるんですか?」
老「芸術を極めるもよし」
老「研究に勤しむもよし」
老「子孫の指導もするぞ」
凜「子孫……そういえば、
大勢いらっしゃいますが……」見回す。
老「そりゃあ、何代も居るからのぅ」
老「此奴は儂の孫じゃよ」
凜「なるほど~」




