闇拠点8-進む為に
ハクは魔物と戦っても闇に反応しないのか?
――かつては反応していたようです。
アオは天竜王城から地下魔界に行った。
ワン将軍とコギに会い、全ての大拠点に隠し部屋が存在する事を告げ、たとえ隠し部屋を発見しても決して中には入らないよう頼み、天界に戻った。
(兄貴達みんな集まったよ~)
(ありがとう、サクラ)曲空。
――フジの屋敷。
「サクラから、新たな闇の力について聞いた。
負の感情を抱かぬ事が肝要なのだな?」
「はい。
些細な負の感情を増幅し、心を縛り、闇に染めるんです。
そして、それ自身も、染まった闇の力を吸収し、肥大化するんです」
「サクラを捕らえるくらいだから、太刀打ち出来ねぇんじゃねぇのか?」
「本人は、そうかもしれませんが、肥大化した闇の力は捕らえ易いので、単独行動しなければ対処可能だと思います」
「捕らえるには掌握が必要ですよね?」
「掴めなくても神眼があれば攻撃できるよ。
フジ、神聖光輝は作れたよね?」
「はい。使えるのですか?」
「闇だから有効だと思ってるんだ。
あれは、神の光の聖水だからね。
クロが入り浸ってるから、ちょうどいいよね。
キン兄さんとハク兄さんも、一緒にいる事が多いから大丈夫だと思います」
「アカ兄の工房には、闇を感知する竜宝を置くからねっ。
それ、俺とアオ兄に繋ぐし、ワカナさんが ずっと一緒だから、だいじょぶだよ」
「そうだね。
魔王の闇の力は、なぜか女性には効かないんだよね」
「そういやオレ、桜華様に、ひっぱたかれたんだよな~」
「俺、ルリ姉」きゃははっ♪
「ルリが俺の尾を使ったから粉砕骨折したよ」
「壁 破壊しちゃったよね~」
「仕方ないだろ!」「あ、起きたの?」
「寝てなどおらん」「疲れていない?」
「疲れてなど無い」「いいよ、寝てて」
「静かにする。話題に出すな」「うん」
「仲いいよな~」
「そりゃそーでしょ」
「喧嘩したら逃げ場ねぇよな」
「大変な事も有るだろうな」
「特に無いが……」
「そっか。工房も、ずっとだなっ」
「いいなぁ」
「勉強、見て頂いたら如何です?」
「勉強?」
「うん、数学♪」
「え~っと、そろそろ続きを――」
「さっきの分身の術、どうやるんだ?」
「あれは、闇属性の技だから、闇障がないと出来ないんだ」
サクラに首飾りを渡し、額に掌を翳した。
「やってみる~♪」気を高める。
首飾りの小鏡が発した光がサクラを包み、もう一筋、前方に放たれた光がサクラを形成した。
――二人……三人……四人……五人――
「もういいって!」爆笑。
「ハク兄、今、双璧したら、どぉなるの?」
「そっか」双璧発動。
首飾りの光がハクを包み、サクラの前にハクが形成された。
「へぇ~♪ こぉなるんだ~♪」
それぞれ複製を操作してみる。
「おっ♪ 意外と普通に動くなっ♪」
「面白ぇ♪ それぞれ動くのなっ♪」
サクラがサクラと鬼ごっこを始めた。
「そんなに同時に……流石、器用だね」
「本体! 戻って来い!
騒いでると魁蛇さんが来るだろっ!」
「来たら、なぁに~?」「どぉしてぇ?」
「魁蛇さん、恐いの?」「恐くないよ~」
「クロ兄は恐いんだよ」「そっか~♪」
「う・る・さ~いっ!」
「サクラ、解除してあげて」笑いながら。
本体に複製が吸い込まれた。
ハクも真似る。
「ハク兄、それならコレも」女姿になる。
「それは後にしようぜ」後退る。
「一度なれば安心なのだから双璧しろ」
「兄貴は?」「私は大丈夫だ」「何で?」
「とにかくなっておけ」「皆いるだろ!」
「みんな、おんなじ姿なんだからぁ、恥ずかしくないない~」にこっ♪
アオが、クロ、アカ、フジに手招きして、集まり、皆でハク達に背を向けた。
「一度でも女性になったら、魔王には因子が定着しないし、魔王の因子も、こちらには定着しないんだ。
それに、依代にも出来ないらしい」
「だからアオの体に入れなかったのか~」
「でも、私達を異間平原に送ったのは、魔王の配下でしたよね?」
「知らなかったそうだよ」
気配を感じ、四人が振り返る。
「何で今こっち向くんだよ!」
「ハク兄♪ か~わ~い~い~♪」
「うっせー! サクラ! 早く戻れよ!」
女姿のまま輪に加わり、座った。
「これで、みんな安心だねっ♪」
「アオ! 女姿になって解除してくれっ!」
「話題に出すなと言ったろ!」
「違うよルリ、落ち着いて――」
「胡座をかくな!」「あ……ハク兄さんに――」
アオが女姿になり、ハクの前に正座し、小言を始めた。
「女の姿で、着物で胡座とは――」
ルリが主になっているらしい。
(アオ~、止めてくれ~)(無理ですよ)
(戻りてぇ~。頼むよぉ)(我慢してください)
「全て聞こえております!
ハク様、王族、しかも王太子なのですから――」
「……あ、話を戻す。
依代として利用価値が無くなったという事は、容赦なく攻撃される、という事だ」
キンが引き継いだ。
「それに、闇に堕とせば配下にはできるから、そっちは、なくならないからね~」
「俺は何故ならなくていいのだ?」
「アカ兄は、卵で女性だったんじゃないかって、アオ兄が言ってた~」
「そうか。
『奇跡の王子達』の謎が、またひとつ明らかになったな。
七人全て男ばかりではなかったのだな。
アカの因子は、既に採取されていたが、定着しなかったそうだ。
そこからの推測だ」
「俺の因子を……?」
「竜宝を開発させようと考えたらしい」
アンズが地図を広げた。
「これから、ここに進むんだよ」
「ただし、光属性を拒絶する強固な結界が張られている」
「じゃあ、キン兄とアオとサクラは――」
「うん。現状ダメだね~
でも、方法はあるハズなんだ」
「魔王が態勢を整える前に探したいから、また留守がちになるけど――」
輪に戻る。
「他の事なんか気にすんな。
そっちは二人にしか出来ねぇ事なんだからな」
「ありがとう。そうさせて貰うよ」
「で、いつまで、そのままなんだ?」
「ルリが許してくれるまで、かな?」あはは……
「この、奥の城まわりには、もっと強い結界があるんだよ~
でね、ここには歴代魔王がいるかも、なんだ」
「魔王は、ひとりじゃねぇのかよ!?」
「うん。
前から思ってはいたんだけど、引き継がれてるのは確かになったよ。
隠居だから、どこまでの力が有るのかは分からないけどね」
「それと、これからの魔物は、傀儡や獣化じゃなくなると思うんだ。
量産してた拠点をもらっちゃったからね~」
「あの、治癒の光が効かない魔物か?」
「そう。だからフジ兄には、神聖光輝を覚えてもらったんだ。
でね、姫には、コレ作ってもらった~♪」
「水鉄砲?」
「うん♪ 集縮に増幅鏡が入ってる筒を昇華器で強化してるんだ。
これに神聖光輝を入れるんだよ」クロに渡す。
「その、神聖なんたらの壺爆弾は作るのか?」
「もぉ量産してるよ~♪
明日、地下にも持ってくんだ♪」
「あと、姫には、これも――万有甲。
クロの逆鱗に着けておいて。
姫が落下しないように、必要に応じて、クロが『展開』してあげて。
解除は『還鱗』だから」
「それとぉ、魔界の境界 越えるのは、こっち。
万装甲。姫にあげてねっ」
「お前ら、ホント……スゲー動いてんだな……」
「そうかな?」「フツーでしょ」
「自覚ねぇのかよ」
「自覚はクロの方が……」「そぉだよね~」
「クロ、この二人の速さだと、展開は早いかもしれない。
大至急、天性を使い熟せるようになって欲しい」
「天性 使いながら戦うんだよ~
姫も護りながらねっ」
「う……」
「う……」ハクがルリに寄りかかった。
「え!? ハク兄さん!?」
「足……シビれた……」ぷるぷる……
「伸ばしててください」くすくす♪ 治癒。
「お前ら……何で平気なんだぁ?」
「慣れ、かな?」「座り方じゃない?」
「アカ、次の矢は出来たのか?」
「朝には出来る」
「ではクロ、明日、虹紲を行う」
「立ち会いは、俺とフジで」
「サクラは?」
「カルサイ様とドルマイ様が、ヒスイを神にするの、大急ぎでしてくれてるから~」
「では、明日は、そのように。解散」
次々曲空して――クロとハクがアンズを掴んだ。
「頼むっ」二人、拝む。
「朝早いんだけど~」サクラに戻る。
「助かったぁ♪ じゃあなっ」曲空♪
「なぁ……サクラ。オレは、どうしたら……」
「いつから、数学、解かずに正解してたの?」
「ずっと……だな……解いた覚えが無ぇ」
「その時、既に神眼は少し開いてたんだよ。
クロ兄のは、自覚しなくても少しくらいなら開くくらい、大きくて強いから。
天性は、願えば叶うトコがあるから。
まずは、どうなりたいか、どうしたいのか、考えてみて。
開いて大丈夫な分だけは開けとくから」
クロの額に掌を翳し、光を放った。
「ありがとう……サクラ……」
「もぉ~~っ!
元気なくなったら、クロ兄じゃないからぁ」
光の球を大きくし、クロを包んだ。
「特別だよ。
そこで眠れば、夢が教えてくれるよ」
もうひとつ光の球を作り、クロに押し当てた。
「これ――」眠りに落ちた。
「おやすみなさい、クロ兄」
フジに歩み寄り、光を当てる。
「クロ兄は眠っただけだから心配しないでね。
フジ兄、無理しないでね。
おやすみなさい」曲空。
金「ハク、反省しているのか?」
白「ただ座っただけだろうがよぉ」
金「王太子と成ったのだ。
常に意識して行動するように」
白「だがなぁ、女としての振る舞いなんて
必要無ぇだろ?」
金「ふむ……
しかし、良い修行にはなりそうだな。
ミカン殿と共に王妃修行をしてはどうだ?」
白「いやっ! 必要無ぇだろーがっ!!」
金「決めた。心して置くように」
白「待ってくれ! 兄貴っ!!」




