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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
245/429

伽虞禰13-地下視察

 人が見ている場面では、天人や魔人の姿を

書いていますが――抜けがあったら、すみません。


「姫様、私共は、先にハザマの森に入りますね」


「『試練の森』じゃな」


「そうですね」ふふっ♪


「紫苑、珊瑚、その顔は、わくわくしておるのじゃな♪」


「はい♪」揃って、にっこり。


妖狐母子とカリヤは、ハザマの森へと跳んで行った。


「ミズチ、馬車を頼むぞ。

炎鉱石の件、落着したら追いかけるからの」


「はい、姫様♪」


馬車もハザマの森に向けて走り始めた。


「クロ、先ずは仁佳(ニカ)じゃ」


「帝都か?」


「大使館が出来たのじゃ♪」


「初めての場所か……あ! 待てよ。

こうやれば……見えたっ! 姫、行くぞ」

手を繋ぎ曲空。



――真新しい建物の前。


「これか?」「そぅじゃ♪」


「静香様!♪」駆け寄って来る。


「皇太子殿下、御自らお越し下されたのか!?

あ……まさか……お揃いで!?」


駆けて来る皇子達の後ろには、見るからに格式高い輿が、整然と並んでいた。



 白銀の竜(ハク)が降下し、大使達が降りた。


「流石、中の国は竜と共に、なのですね」


「いつも助けて頂いておりまする」


銀竜(ハク)が人姿になろうと光ってしていたが、中断した。


 はて……如何したのじゃ?


 ん? 後ろが騒がしぃのぅ……


振り返ると、門の外に人が大勢いた。


「皇帝陛下がいらっしゃるから当然かの」


「いえ、竜が降りて来たからですよ」


「さよぅか……ならば」ハクに近寄る。

「今日は如何なご予定でございまするか?」


「昼までは大丈夫だ。また乗せて飛ぶよ」


「誠に忝ない」ぺこり。

「それと……

相談なのじゃが、竜の国からも、大使を派遣する事は出来るのじゃろぅか?」


「大使か……いい考えだな。相談しておく」


「よろしくお頼み申す」ぺこり。


「なぁ姫様、そんなに頑張らなくても、もう十分クロを追い越してるぞ。

でもま、アイツだって王子として育ったんだ。

ちったぁ頼ってやれよ」ニヤッ


「そ、そのよぅな……」


「姫~、始まるぞ」話題の主(クロ)、手招きしている。


「二人で頑張りゃいいんじゃねぇか?

俺が王になる頃には、殿は隠居だろ?」


「あ……さよぅじゃな」笑みが拡がる。


満面の笑みでお辞儀して、姫はクロの方へ弾むように駆けて行った。




 大使の就任式としては、かなり大きな儀式となったが、これも今後の両国の友好の為、と全て和やかに運んだ。



 ハクがミカンを呼び、キンとボタンも来て、四竜は人々を乗せ、飛び始めた。



「クロ、次に参ろぅぞ♪」「おう♪」


「次、とは?」皇太子が声を潜める。


伽虞禰(カグネ)に、伊牟呂(イムロ)魯茉丹(ロマニ)の使者が来るのじゃ。

揉め事にならぬよぅ、証言しに参るのじゃ」


「また龍神帝王ですか?」更に声を潜める。


「さよぅじゃ。

伽虞禰と魔界を繋ぎ、炎鉱石を運んでおったのじゃ。

魔王は竜が追い返したのじゃが、伽虞禰に盗人の嫌疑が、かかっておっての」


「私もお供してよろしいですか?

仁佳で起こった事を、三国に伝えたいのです」



♯♯♯



 こうして仁佳の皇太子と共に、伽虞禰城に曲空すると、若殿、老中、使者達が出掛けようとしていた。


「何処に行きなさるのじゃ?」


「我が屋敷の蔵に参ります」


「籠よりクロじゃ♪」「おう♪」竜体になる。


使者達が口あんぐりで固まった。


「噂では聞いておろぅ? さ、乗られよ♪」



♯♯♯



「こちらで御座います」


黒槎柯の案内で、一同、蔵に入ると――


「また、竜!?」一斉。


綺桜の竜(サクラ)が、穿った穴から、壺を持って半身だけ出ていた。

「あ……」(クロ兄、この人達だぁれ?)


(伽虞禰を炎鉱石泥棒だと思ってる人達だ)


(なら、いっか♪)

「魔王が、この向こうに運んでた炎鉱石です。

全部お返ししますので、お待ちください」


「『向こう』とは?」


「地下魔界です。ご覧になりますか?」


「拝見致します」使者達、勇んで進み出る。


「一度には、お二方しか入れませんが――」

桜竜(サクラ)が、竜の鱗のような板を取り出し、使者に当てると、光が迸り、使者を覆った。


桜竜(サクラ)が鏡のような穴に、先に入り、手だけ出した。


「手を取って、くぐるだけじゃ」



 使者二人が、くぐった先では、いくつもの大きな壺が炎鉱石を吸い込んでいた。

その周りでは、竜だけでなく様々な動物や異形の者達が、人の如く立ち、話し、走っていた。


「サクラ様、お客人ですか?」


「ワン将軍、この炎鉱石の所有者殿です」


「そうですか。

もう一ヶ所、御座いますが、ご覧になられますか?」


「えっ!?」後退る。


「もう、魔王は居ませんから、怖がる必要は御座いません。

ああ、怖がっているのは、この姿ですか?

ここにいる者達は、人とは姿が異なりますが、それだけです」



 三つ首の黒大犬(ワン将軍)綺桜の竜(サクラ)は、使者を連れて外に出た。

晴れていて陽も高いのだが、赤みがかった空と、荒れた大地が広がっていた。

その赤茶けた荒野には、今、出て来たのと同じような砦だけが、ぽつりぽつりと建っている。


「ここは『地下界』です。

ですから空は有りません。

ずっと上には、皆さんが住んでいる『地上界』の底が有ります。

あれは、神が創った空に似せた天井です」


「あの陽も?」


「はい。地上から見る陽とは違います」


「確かに……色が違いまするな……」


「炎鉱石が有る場所に移動しましょう」

手を取って曲空した。



――建物の中。


広い部屋の中は、炎鉱石の熱気で近寄る気も失せる程だった。


瑠璃の竜(アオ)が現れた。

「すぐ運べるようにしますので」

次々と大壺を出し、部屋の奥へと飛んで行き、また戻りながら大壺を出している。

大壺は見る間に炎鉱石を呑み込んでいく。


「あの壺には、どれだけ入るのだ?」


「後程、開けて、お見せしましょうか?」


「あの蔵に収まるのなら……」


「回収を急ぐので、満杯にはしませんから、老中殿の蔵でしたら、高さ半分程になると思いますよ」

青竜(アオ)が寄って来た。


「あの壺は……?」


「『集縮(シュウシュク)の壺』という竜の国の日用品です」


「何でも入るのですか?」


「生き物でなければ何でも。

炎鉱石を入れた壺は、さしあげますので、収納用にお使いください」


傍の宙に穴が開いた。「失礼致します!」

魔犬の将校が顔をひとつだけ出し、敬礼した。

「ワン将軍、あっ、天竜王子様方もご一緒でしたか。

こちらも確認お願いします!」


黒大犬(ワン将軍)が顔を入れ、

「アオ様、お願い出来ますか?」穴に入った。


「サクラ、ここは頼んだよ」青竜(アオ)も入った。



 桜竜(サクラ)は説明を続けた。

「先程の建物も、この建物も、魔王――魔物の王の拠点でした。

それを陥落し、炎鉱石を発見したのです。


地下界では炎鉱石は採れません。

ですから、地上の何処かから集めている筈と辿ると、伽虞禰に出たのです。


伽虞禰の方々に罪は有りません。

魔王の配下が、人に化け、また、人を操り、ここに集めていたのです」


「まだまだ夢幻のようですが……

この見知らぬ場所に、何者かが炎鉱石を集めていた事は解りました」


「では、戦にはなりませんね?」


「勿論です」


「戻りますか?」穴を穿つ。


「はい」今度は自ら、その穴をくぐった。



♯♯♯



 老中の蔵では、魔人達が壺を運び込み、整理していた。

その邪魔にならない場所で、仁佳の皇太子が、自国での出来事を話していた。


使者達が、戦になどせぬと納得した時、穴が開き、地下魔界に行った二人が戻った。


「如何であったか?」


「地下の世界とやらに、大量の炎鉱石が集められて御座った」


「あの大きな壺ひとつに、この蔵半分程も入っておるのだ」


桜竜(サクラ)が大壺を持って来た。

「開けて見せた方がいい?」首を傾げる。


「いやいや! それには及びませぬ!」


「次の方、行きますか?」鱗みたいな板、回収。


「では、少しばかり……」で、次々案内。



♯♯♯



「して、各々、如何程 盗まれたのじゃ?」


「産出量と消費、及び備蓄量より計算致しますと、このくらいになり申す」

各々、紙を出す。


「だいたい同じじゃの。

ならば折半で如何じゃ?

伽虞禰は、そこより買い取ればよかろぅ?」


三国、異存無し。


「これにて一件落着じゃ♪」わははは――


千里眼が鳴る。


「何じゃ? ……仁佳の大使か。早速、何じゃ?

……は? 竜の派遣!?

竜が帰ったから次じゃと!?

そのよぅな事はしておらぬぞ!

……人がどんどん押し掛けて来ておるじゃと!?」


クロがサッと動き、穴をくぐろうとしていた桜竜(サクラ)を捕まえた。

「一緒に行こうなっ♪」曲空♪





 サクラはクロに連れられて、人々を乗せ、

仁佳の上空を飛んでいた。


桜(クロ兄、ひどぉいぃ~)


黒(ニコニコ飛びながら器用だなっ♪)


桜(とーぜんでしょっ!)


黒(ま、ちょうどいい休憩だろ♪)


桜(後で手伝ってよねっ!)


黒(その後で教えてくれよなっ♪)


桜(ええぇぇぇ~っ!)


黒(頼むっ)


桜(あ……凜……)


黒(どこにっ!?)


桜(クロ兄の背中……)


黒(ゲッ……マジかよぉ~)


凜「あ~、心配しないで♪ 後書きだから♪」


黒&桜 (…………)


凜「あら? そのまま話してていいのよ?」


桜(だって~、ぜーんぶ書かれるもん……)


凜「嫌なの?」


桜(どぉでも~な時もあるしぃ……)

黒(ヤな時もあるよな……)


凜「ふぅん。今は?」


桜(帰って寝たいかも~)


凜「それはクロが悪いんじゃないのよ~

  私は関係ないでしょ」


桜(でもねぇ……

  なんか悪いこと重なった気分……)


凜「酷いなぁ。

  真面目に中継してるだけなのにぃ」


桜(あ♪)


凜「何よっ!?」


桜(凜におねがいっ♪)


凜「え?」


桜(クロ兄に数学 教えたげて~♪)


凜「いいけど――あっ、クロ! 落ちないで!」


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