砂漠編10-竜の治療
登場人物は多いです。はい。m(__)m
その夜、蛟は日課となっている水底での養生を終え、月明かりに照らされている岩山を見詰めていた。
「お前、また、無茶な偵察しようってんじゃねぇだろうな」
蛟が驚いて振り返ると、月を背にした男の銀の髪が揺れていた。
「具合は どうだ?」
「ハク様!」蛟は膝を突き控える。
「特別扱いは嫌ぇだって言ったろ。
頭上げろよ。医者として来ただけだ」
言いながら蛟に近付き、診察を始めた。
「確かに多いな……出していくぞ。堪えろ」
ハクは、蛟を光で包むと、淡く優しい光に包まれた手で、蛟の背から黒い塊を掴み出した。
塊をひとつ出す毎に、蛟は礼を言い、
ハクは「うるせぇ」とか「黙ってろ」とか、乱暴に言いながらも、優しく治療を進めていった。
「コイツは、しつこい毒だからな。
まだ、満足に動けねぇ事だけは忘れんな」
治療を終え、黒い塊を入れた浄禍器を抱えて、立ち上がる。
「偵察は、クロに任せておけ。
薬は、また運ばせる」
飛んで行こうとした時、
「あの……ハク様、ひとつだけ――」
「ん?」
「これを――」
魔物に嵌められていた輪を差し出し、人姿になれなかったことや、外し方など話した。
「わかった。調べておく」
輪を受け取り、白銀の竜は飛び去った。
♯♯♯♯♯♯
(ヒスイ! 助けてっ!
お願いっ、すぐ来て!!)
【サクラ、どうしたの?】
(なんで、スミレなのっ!?)
【何よ~ せっかく来てあげたのに~】
(それどころじゃないんだよ! ヒスイは!?)
【上よ】
(お願い! 呼んで!)
【それが、頼む態度なのぉ?】
(遊んでる場合じゃないんだっ!!)
【解ったわよ。呼んだから待ってて】
(ありがと……)ふらっ
【ちょっと! サクラ!?】
【スミレ、どうしたの?
……えっ? サクラ!?】
(ハク兄が……)気を失った。
【サクラをお願い!!】 【ヒスイ!?】
【力、使い過ぎただけだからっ! 回復!!】
♯♯♯
サクラが目を開けると、二人が心配そうに光を当てていた。
(……ハク兄は?)
【持っていた輪は、眠らせたよ】
(ん……)
【竜でない者が触れたら、たぶん、目覚めてしまうけど……】
(ありがと……ヒスイ……)
【ごめんね。上に居ると聞こえないから……】
(知ってる。それも、俺のせいだから……)
【そんな事ないからね。
サクラのせいなんかじゃないよ】
サクラが力無く首を横に振る。
【私に力が無いだけだから……】
(それも……俺が……)
【言いっこなしだよ】
(ありがと……)
【無理したんだから、眠って――】
(あ! アオ兄は!?)
【うん。
同調して倒れていたけど、もう大丈夫だからね】
(ヒスイ~ ありがとぉ)うるうる
【泣いてないで、眠ろうね】光の色が変わる。
(ん……)すぅ……
【それで、スミレは修行中なのに、どうして ここに居るの?】
【アオが旅に出た、って聞いたから、様子を見に来たくて……
でも、なかなか許可が頂けなくて、やっと来れたのよ~】
【おかげで助かったけど……】
【でしょ♪
で、ヒスイは、サクラに付いてるのよね?】
【そうするけど……何?】
【私、兄様に付いてるわ♪】消えた。
【スミレ、その呼び方は――】
【あら、つい出ちゃうのよね~♪】あはっ♪
♯♯♯♯♯♯
「兄貴、これ、見てくれるか?」
キンの部屋の扉を開けるなり、輪を見せた。
「ハク、それは……?」顔をしかめる。
「蛟から預かったんだ。
蛟は人姿になれなかったらしい」
「嫌な気を放っているな……」
「兄貴も、そう思うか……
なら、ヤバいヤツって事で確定だな」
「休む暇も無いが、急ぎ、長老の山に行ってくれるか?
それが何なのか確かめて欲しいのだ」
「そうしようと思ってた所だ」
ハクは、すぐに飛び立った。
あの感じは……アオが危険だな……
(サクラ……サクラ?)
返事が無いな……
キンは、千里眼の前に立った。
「シロお爺様、キンです」
『おお、キンか。
丁度、連絡しようとしておったのじゃ。
ハクが、アオの蛟から輪を受け取ったじゃろ』
「その輪の事で、ハクが、そちらに向かっております。
あれは一体……」
『そうか。ならば、待つとするかのぅ。
そのものを見なければ何とも言えんが……
あれはのぅ、竜にとって命取りな、厄介な魔宝じゃろうな』
「魔宝……ですか……」
『こちらも、対抗する竜宝を用意しておくからの』
「お願い致します」
『サクラは居るのか?』
「いえ、ずっとアオの近くに居ります」
『ならば、何ぞ有っても連絡が来るのぅ。
ひと安心じゃ』
「サクラが何処に待機しているのか、見る事は出来ますか?」
『余程、アオに近ければ見えるじゃろうが……
どうかしたのか?』
「いえ、何も。ただ、伺ってみただけです」
『そうか。では、蔵に行くからの』
「はい。宜しくお願い致します」
サクラが、どうしているのか気になるな……
しかし、また、長老の山から千里眼に
連絡が入るであろうな……
キンは、アカの工房に向かった。
♯♯♯♯♯♯
【ヒスイ、サクラはまだ眠ってるの?】
【暫く目覚めないと思うよ。アオは?】
【目覚めたわ。
同調しただけだから、もう大丈夫よ】
【そう。良かった……】
【だから、私は上に戻るわね】
【うん。気をつけてね】
【私? 大丈夫よぉ。
落ちたりなんかしないから~】
【そうじゃなくて、魔物に気をつけてね】
【あ、ハクが飛んでるわ♪
付いて行くから心配しないで♪】
楽天的過ぎるから心配なんだけど……
凜「アオ!? しっかりして!」
翡【大丈夫。サクラと同調しただけだよ】
凜「って何? 貴方は?」
翡【私は……それより、アオを貸して】
凜「はい。で、同調って?」
翡【アオとサクラは連動するんだ】
凜「そんな大事なこと、ここで言う?」
翡【そうだね】くすっ♪




