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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
234/429

伽虞禰2-城下と地下

 前回まで:風羅の岩戸で皐月が待っていました。


♯♯ 人界 ♯♯


 雷崋(ライカ)の岩戸から慎玄が出てきた時、キンとハクが曲空して現れた。


「紫苑殿より、こちらに向かっておられるそうで御座います」

慎玄が腕輪を示す。


「待つ間に、気の具合を確かめましょう」

キンが慎玄の額に掌を翳した。


「ねぇ、何か聞こえない?」「確かに……」


「アレじゃねぇか?」

ハクが指した彼方から、何かが土埃と共に迫って来ていた。


「兎?」「服を着た兎だな……」

「何か叫んでいるような……」耳を澄ませる。



『――王子さまぁ~っ! 天竜王子さまぁ~っ!』



「俺達、呼ばれてるね~」


クロが姫と蛟を連れて現れた。

「カリヤじゃねぇか」


「ああそうか、思い出したよ」



――ててっ! ててっ! つたっ!


「天竜王子様方♪ お久しぶりで御座います♪

ワタクシ、カリヤがっ、ハザマの森にご案内致します♪」


「カリヤ、せっかく来てくれたけどなぁ、案内は――ほら」空を指す。


妖狐達が宙を蹴って、降りて来ていた。


「もしや……三の姫様……」


「そうなんだよなぁ」


「でも、たくさんの方が楽しいよ~♪」


「そぅじゃな♪ 皆で参ろぅぞ♪」


「ありがとうございます! では早速――」


「皆、集まってくれるかい?」


「およ? 皐月、如何したのじゃ?」


伽虞禰(カグネ)の国に、不穏な動きがあるらしい。

皐月殿、詳しい話を頼むよ」


「はい、伽虞禰にて、民衆を煽動し、暴動を企てる気配がございます。

それ故、治安が悪くなっており、それに乗じて、仁佳(ニカ)と同様、不明者も出ております。


民衆の不満は、鉱山よりの資源の供給が不安定となっており、生活に支障を(きた)しておる故でございます。

それ故か、将又(はたまた)この為に供給が滞っているのか――

強奪等が、魯茉丹(ロマニ)伊牟呂(イムロ)の鉱山地帯にも及んでおります」


「三国が(いさか)いを起こさば、また人が拐われ、魔物にされてしまうではないか!」


「それだけではなく、魔物が人界に来る為の通路が作られるし、負の感情は魔王の闇に繋がるんだ」


「人が現状を知る事で人界を護るってぇのを進めてるのに、それどころじゃなくなるしな」


「つまりは、先にも進めたいが、これも捨て置くなど出来ぬ、という事だな」


「では、手分け致しましょう。

ハザマの森を通過し、魔界へと進行する組と、伽虞禰に残り、鎮圧する組で如何ですか?」


「曲空が出来る者は先へ進み、曲空点を増やして欲しいのだが」


「でしたら、竜の皆様方は魔界へお進みください」


「布石像を埋めておけば曲空できるから、竜みんな行かなくても だいじょぶ~」


「なら、地下への先行は、カリヤ殿の案内で、俺とサクラが布石像を埋めていきます。


キン兄さんとハク兄さんは、天界との行来が多いから、アカに頼んでいる物を運んで下さい。

都度、助けが必要そうな方に加わって頂けますか?


皆さんは、大至急、伽虞禰を鎮圧して下さい。

桜華様、修行の方も併せて宜しくお願い致します」




 そして、キン、ハク、アオ、サクラ、カリヤを残して、馬車は伽虞禰の城下に向かって走って行った。


「アオ、サクラ。マオの話、どう思う?」


「魔王が動けない事は確かですから、俺の因子の話……有り得ると思います」


「俺を捕まえたり、直接 闇に落とそうとしなかった理由は、俺も同感だよ」


「サクラ、上層神界に行けるのは気付いてたのか?」


「うん、方法は知らないけど~

神竜の魂がいるのはソコだからね。

結界が改善されたら、どぉなるか わかんないけどね」


「サクラは、魔王がルリを狙って襲った事も気付いていたよね?」


「魔王が、心に傷を負わせて、闇に染めそうとしてたから、きっとそうだって思っただけ。

ルリ姉を標的にしたのが最初なんだって……」


「私に遠慮して言葉を濁さなくてもいい。

結局その目論見は失敗したのだからな」


「ありがと、ルリ姉。

当時は、魔王が狙ってたのはアオ兄だけだったから、ボタンさん達は標的にされなかった。

でも、今は、俺達みんな邪魔だし、アオ兄にとって大切な兄弟だから、俺達と、その大切なヒト、全てが標的になってしまったんだ」


「ふむ、納得だな」


「どういう方法をとってるのか わかんないけど、魔王は俺達の心を読んでる。

大切なヒトだって認識した瞬間に標的にしてるし、アオ兄と俺が同調する事も知ってるから。

今こうして話してるのも筒抜けなのかもしれない」


「だからこそ、今、動かないといけないんだ。

魔王が動けない今のうちにね」

アオとサクラは目を合わせ、頷いた。


「そうか。

ならば、突っ込んで行く二人の背中を預かろう」


「その為に俺達を残したんだろ? 任せとけ」


弟達は、揃って深く頭を下げた。


「カリヤさん、ハザマの森の入口を思い浮かべてね」


アオとサクラが、カリヤの肩に手を置き、キンとハクの手を取った。


「行くよっ♪ せ~のっ!」曲空!



――伽虞禰の国 北部、ハザマの森 入口。


サクラが小さな石像を取り出した。


「随分、小っこくなったなっ♪」


「うん♪ アカ兄が改良してくれた~♪」


布石像を地に置き、掌を当て、押し込んだ。


「キン兄、ハク兄、この深さ だいじょぶ? 掴める?」


「大丈夫だ」「んなモン、楽勝だ♪」




 狐の社、魔界の入口でも同様に埋めた。


「カリヤさん、ここに残る?」


「いえ、ワタクシも、お供させてくださいませ。

ワン将軍をお訪ねになるのでしょう?」


「じゃあ、序関の砦、お願いねっ」曲空♪



――地下魔界、序関の砦。


 ワン将軍には直ぐに会えた。

先達(せんだっ)ては、大変お世話になりました」


「いえ、こちらこそ、多大なるご協力をありがとうございました」


「とうとう地下に……お待ち致しておりました」


「早速ですが――」


「心得ております」

ワン将軍は地図を広げ、序関の砦と、付近に在る魔王の拠点の位置を示した。


「牛魔国との間に敵拠点が出来てしまい、連携が取れなくなっております」


「ならば、そこから潰しに掛かりましょう」


「カリヤさん、ここにいてね~」




 アオ達はワン将軍と魔犬部隊を連れて、目指す拠点に向かった。


サクラは目を閉じ、神眼で内部を確認すると、穴を穿ち――

「呼ぶまで待機しててくださいねっ」

魔犬部隊を留め、進入した。



 アオとサクラが前方に、キンとハクが後方に光を放ちながら、一気に進み、敵の態勢が整う前に、奥に居た影を捕らえ、即、浄化した。


サクラが先導して到着した魔犬部隊に占拠してもらい、アオ達は次の拠点に向かった。

ワン将軍と精鋭数人には、牛魔国に向かってもらった。




 次の拠点に入る。

(ココ……一度 来てる。

……リジュンさんのご家族が閉じ込められてたトコだよ)


(なら、影に向かって最短で)


あっという間に占拠。


「魔物にされていた方々は、私共がお預かり致します」

コギが妖狐部隊を引き連れて現れ、恭しく礼をした。


「ありがとうございます。

では、心置きなく進ませて頂きます」




 魔人達への指示をキンとハクに任せ、アオとサクラは二人の神竜を連れて、深蒼の祠に曲空した。


「ムーントさん、こちらのお二人も影にされていた方です」


「説明と長老の山に連絡、お願いね~」


神竜を残し、二人は嵐の如く去って行った。




 そうして次々と中小の拠点を占拠し、影にされていた神竜達と、幹部にされていた魔人達を深蒼の祠に預け、進んだ。


「とうとう大拠点だね……」見上げる。


魔王が移動しながら使う拠点のうちのひとつが目の前に在った。


目を閉じ、術を唱えていたサクラが、

「見えたよっ!」穴を穿った。





凜「アオ、サクラ、そんなサクサク進んで

  大丈夫なの?」


桜「わっかんな~い♪」


青「いろいろな可能性を考えた上で

  動いているから大丈夫だと思っているよ」


凜「アオがそう言うなら……」


桜「俺は?」


凜「さっき、わかんないって……」


桜「口調で判断して~♪」


凜「……自信満々なのね」


桜「うんっ♪」


凜「ワン将軍達、大丈夫なの?

  魔物に襲われたりしない?」


青「これまでずっと戦線維持していたんだから

  大丈夫だよ」

桜「地下のコト、よく知ってるんだからね~」


青「攻略した拠点を占拠してもらわないと

  いけないから、各国に走ってもらえるよう

  頼んでいるんだ」


凜「そっか。じゃあ、どんどん進むのね?」


青「深魔界の結界まで進むつもりだよ」


凜「ホント、自信満々ね~」


青「そうでないと進まないからね。

  これからもね」


凜「慎重なんだか大胆なんだか……」


桜「両方兼ね備えないと勝てないんだよ~」


凜「こっちは大胆不敵だ……」


桜「大胆巧妙って知ってる?」


凜「え?」


青「うん。そうありたいね」


凜「文字そのまんま?」


青「良い意味でね」


凜「なら、アオの事だね」


桜「俺は? 俺もでしょ?」


青「サクラの事だよ」


桜「うんっ♪ アオ兄だ~い好き~♪」


凜「はいはい」


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