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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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試練山7-会いたくて会いたくない

 平和に順調に、あっちもこっちも進んでいます。


♯♯ 試練の山 ♯♯


 気を引き締めて進む姫の前方に、いちばん会いたくて――しかし今は、いちばん会いたくない者が現れた。


「見つけた♪ 姫、心配したぞ。

試練なんて受けなくていい。

オレが絶対 護るからな。

だから帰ろう」両手を広げる。


少し前であれば、こんな事など言う筈も無いと、直ぐに偽者と確信出来たが、

復活して以降ずっと、この調子なので、気持ちが ぐらついてしまう姫だった。


 以前のままで良かったのじゃが……


「ワラワは共に戦いたいのじゃ!

護られるだけなど御免被る!

それならば付いて行かぬわ!」朱鳳を構える。


「何 言ってんだよ。

もちろんオレの背で戦えばいい。

ずっと一緒だ」近付いて来る。


「真のクロであれば、ワラワの気持ちが理解出来る筈じゃ!」


目を閉じ、気を探る。


 ……違和感……やはり、偽者じゃ!


 確信はしたが……

 姿形だけとは言え、クロに刃を向けるなど……


情けないと、己が想いに歯噛みしつつ、剣を下げてしまった。


「姫、ここを出よう。

オレに護らせてくれよ、なっ」


姫は目を閉じたまま俯き、唇を噛んだ。

朱鳳が手から離れ、落ちる。


「一緒に帰ろう」ぬくもりに包まれる。


「心配したんだからな。

もう、隠し事なんてするなよ」


髪を撫でる掌も、息づかいも、胸の感触も、その匂いも……

全てがクロと見間違う程そっくりそのままだが、気だけは微かな違和感が有り、偽者だと主張していた。


「クロの真似なんぞしおって……」呟く。


「何 言ってんだよ」ぽふっ


「そなたは……ワラワのクロではないっ!!」


両手を突き出し、渾身の波動を当てた!


恐る恐る目を開けると、クロの姿は消えていた。


ひとまず安堵の息をつく。


 早ぅここを出ねば……


涙を拭って前を見据え、先に進んだ。




 此度(こたび)は誰じゃ?

 ……オナゴが座しておるのか?


 うわわっ!!

「最悪じゃ……」つい声が出てしまった。


相手が顔を上げる。


「静香姫様、華も活けられぬようでは、一国の姫君として面目立ちませぬよ。

ささ、お座りなさいませ」


 このよぅな戦いがあってよいのか?


「志乃、ワラワは、これより魔王と戦をするのじゃ。

華など活けて――」


「問答無用に御座います!

ささ、お座りなされよ!」


 天界に居る筈も無いが……

 今度ばかりは本物としか思えぬ……


「急ぐ故、またの機会にのっ!」跳ぶっ!


シュタッ!

梅の枝が頬を掠めて天井に刺さった。


平衡を失い落下。


「ささ、お座りなさいませ♪」捕まった。


抗えぬ程の力で、強引に座らされた。


 この力は人では有り得ぬ!

 しかし、志乃も人では無いからのぅ……


「私が納得出来る迄、しかと、お活け頂きますからねっ」


隙を窺い、逃げようと目論むが、なかなかどうして隙など無い。


「ぐずぐずしておりますれば、茶も、書も、ご用意致しますよ」

既に茶道具が揃っている。


 そんなに用意されては永遠に出られぬわ!


「ええい! このような事!

暢気にしておる場合では無いわっ!!」

勇んで立ち上がる。


シュカッ!! 鋏が壁に刺さった。

「お活けなされよ、静香姫様♪」にっこり


視線に射抜かれ、座った。


 しかしのぅ…… 如何にすればよいのやら……


仕方が無いので、思い付くままに――


 ワラワがここじゃとして…… ぷすっ

 クロは共に居るじゃろぅ…… ぷすっ

 紫苑と珊瑚が後方中央で…… ぷすぷすっ

 慎玄殿はその更に後ろに…… ぷすっ

 アオとサクラが両翼にて…… ぷすっぷすっ

 して、波動を放つとじゃな。 ぐさっ

 あ、フジはこの辺りじゃな。 ぷすっ

 今は桜華様も居るのじゃ…… ぷすっ


 良い布陣じゃ♪


「まあっ! 静香姫様!」


「な、何じゃっ!?」身構える。


「お見事で御座います!」


「では、行ってよいのか?」


「はい♪ お気をつけくださいませ」平伏。


気が変わらぬうちに、とスタコラ逃げる。


チラと振り返ると、志乃も何も無くなっていた。


少し寂しくも思いながら、姫は進んだ。




 そして――


 此度は間違いよぅも無く偽者じゃな。


目の前に立っているのは、自分自身だった。


「偽者めっ!」と、偽者が向かって来た。


剣を弾き「偽者は、おヌシじゃろ!」炎を放つ。


相手も炎を放ち、打ち消した。


 風の刃! 全て風の刃で弾かれた。


竜を喚ぶと、相手も竜を喚ぶ。


 もしや……


波動には波動、剣で向かえば剣で弾く。


最初の攻撃こそ、相手からであったが、あとはずっと同じ事をしてくるのだった。


 ならばっ!


姫は攻撃を止め、微笑んだ。

そして、ゆっくり歩み寄り、

「仲直りじゃ♪ もうひとりのワラワ♪」

手を差し出した。


相手は一瞬 驚いたが、微笑み返し、姫の手を握った。


「ミズチの所まで、共に参ろうぞ♪」

手を握り直す。


「おぅよ♪」


二人の姫は、仲良く弾みながら進み始めた。


――が、数歩 進んだ所で、偽者の姿が薄くなり、やがて消えた。


「寂しいのぅ……」


暫く佇んでいたが――


 そぅか!

 こちら側では、心を試されておるのじゃな!

 心身共に強くあらねばならぬ。

 といぅ事なのじゃな!


 ならば進むのみじゃ!


前に光が見えた。


思わず駆け出した。



「合格ですね?」「はい」

審判達が微笑み、見送る。


「姫様ぁ~♪」「ミズチ~♪」抱き合う。


「真にミズチじゃ~♪ 次に参ろぅぞ♪」




♯♯ 薫風の祠 ♯♯


 姫は試練の山かぁ……

 神眼で見えるのかな? やってみっか!


クロはアカに習ったように気を高めた。


 ホントなら結界で見えねぇ筈だよな……


 あ……見え……た!


 爽蛇の背で楽しそうに……

 姫ぇ~、そりゃねぇだろ……


 こっちは、こんなに心配して――


 あ、最終か?

 ……見えなくなっちまった。


 見えるのは移動中だけなんだな。

 大丈夫なのかなぁ……


 ……いや、爽蛇に負けらんねぇよなっ!

 姫を笑顔にするのはオレだっ!


 護るには……戦うには……考えろ! オレ!




♯♯ 神楽の風穴 ♯♯


「あなた達……一度見ただけで……」

「凄いわね……とても綺麗だわ……」


それ以上、言葉が続かない程に感心してしまった(桜華)伯母(梅華)だった。


「母様? 間違ってしまったのでしょうか?」

紫苑と珊瑚の声が揃って聞こえる。

紫と紅の光を交互に発する白妖狐から――


「どうして、これで自信無さげなのかしら?

あなた達って、本当に可愛いわ♪」うふふっ♪


「母様ぁ」当然、揃っている。


「何も間違ってなどいないわよ。

むしろ、凄過ぎるのよ。ねぇ、梅華姉様」


「そうね。私達よりずっと極めているわ」


「午後は、そのまま修行してみては?

でも、風穴を壊さないように気をつけてね」


「はい。それでは、戻り――」


「食事! また忘れそうになって~

修行は食べてからよ。いい?」


「桜華も、ちゃんと母親なのねぇ」


「姉様も結婚すれば、すぐ母になってしまうわよ」


「伯母様は……」まだ?


「私のせいなのよね~」


「え? ……すみません、伯母様」母様、何を?


「違うのよ。桜華が邪魔をしたのではないわ。

コギが臣下として生きようとしていただけよ」


「え? ・・・伯母様は、コギ殿と!?」


「あら? あ~、言い忘れてたわ~」うふっ♪


「母様ぁ、そのような大切な事を――」


「もう、知ったんだからいいじゃないのぉ」


「伯母様、おめでとうございます」


「ありがとう、紫苑、珊瑚」にっこり





 志乃さんって?

――姫の乳姉妹で、姫が最も恐れている人。

砂漠編で魔物が化けたのが初登場で、

船を姫に渡してくれたり、

クロやフジが中の城に行った時に

対応してくれたり――

ちょこちょこ登場しています。



凜「姫の乳姉妹ってことは、同い年ですよね?」


志「然様で御座いますれば」


凜「落ち着いていらっしゃいますね~」


志「相応と存じておりますれば」


凜「姫も言ってたけど、よっぽど『姫』らしい

  ですよねぇ」


志「顔を見せずともよき場にての代役としての

  役目も御座います故」


凜「そうなんですか~

  そうなると、姫が出たら落差が凄いですね」


志「静香姫様も、そうあるべき時は

  姫様として立ち居振る舞いなされます」


凜「ホント!?」


志「真実にて。

  静香姫様は賢い御方で御座いますよ」


凜「そうなんだ……」


  サクラとどっちが役者として上なんだろ……


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