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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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試練山5-審判様

 前回まで:姫は難無く着実に進み、

      紫苑と珊瑚は新たな術を会得し、

      アオとルリは楽しそうです。


♯♯ 試練の山 ♯♯


「して、次は?」


「これより、下りの試練で御座います。

次は、また洞穴。この穴から、お入り下さいませ」


「また、ミズチが居る穴に出ればよいのか?」


「はい。お待ち致しておりますぅ」


「ミズチは、ずっと、ただ待っておるのか?」


「はい……そうで御座いますが、何か?」


「いや、ずっと誰ぞ付いて来ておるよぅじゃからの」


「それは審判様で御座いますよ」


「さよぅか。そぅであろぅな」ふむふむ

「納得致した。では、いざ行かん!」


姫は意気揚々と洞穴に入って行った。


「上りの審判様、如何なさいましたか?」


「なかなかに面白いのでな。

下りも眺めようかと思いまして。

私が審判の任に就いて、初めての人ですからな」


「そうで御座いますね……

長く、人との交流は、途絶えておりましたからね」


「王子様方は、既に素晴らしき功績を成されましたな。

この方は、クロ様とご縁がお有りなのですか?」


「はい。

いずれ、クロ様とご結婚なさる方で御座います」


「そうですか。それは、めでたき事。

では、私は離されぬうちに参らせて頂きますよ」


上りの審判は姫を追い、爽蛇は終点に向かった。




♯♯ 天竜王城 ♯♯


「これより夕刻まで、ギン王様のご予定は無いのね?」


「はい。王妃様」


「では、今日こそは、お話し致しましょ♪」


ミドリが意気揚々と、ギンの執務室に向かっていた。


アオとアンズの見合い話を進める為に――


いそいそと向かっていると、廊下のずっと向こうに、ギンの背中が見えた。


 お出掛けなのかしら?


小走りに追いかける。


ギンが飛んだ。


 長老の山かしら?


ミドリも追いかけて飛ぶ。



 ギンは長老の山の手前で降下した。

木々の繁りの中に、白い建物が見える。


 ここは……深蒼の祠でしたっけ?


ミドリも降下し、祠に向かって低く飛んだ。


 あら?


木々の上を越して、一瞬アオの姿が見えた。

人姿で、何かに攻撃をしている。


 ギン様はアオに会いにいらしたのかしら?

 丁度よいわね♪


 えっ!?


今度は女性が跳び、光を放った。


 あれは……ルリさん? それともアンズさん?


立ち止まって、もう一度と、木々の上を見る。


見えたのは、女性。


 あの髪色はルリさんね!

 二人で鍛練しているのかしら?


 あ! もしかして……

 ルリさんが、お慕いしている殿方は、

 アオなのかしら?

 それならそうと仰って下さればよかったのに

 恥ずかしかったのね♪ 可愛い方だわ♪


木々を抜け、近付き、幹の陰から見てみる。


 あら? アオひとり??

 まあっ! ルリさんに!?

 またアオに!?!?


ミドリは、目まぐるしく姿が変わるのを見て、口あんぐりで言葉を失ったまま立ち尽くした。


アオが気付いた。(ルリ、中断だ)


「母上」近寄る。「ご覧になられたのですね?」


ゆっくり頷く。「わ……悪気は無かったのよ……」


「解っております。

私の方こそ、隠していて申し訳ございません。

ルリは既に亡くなっており、今は私の中で生きているのです」嘘ではない。


「そうだったの……」あまりの事に鵜呑み。


(いいのか? アオ、言ってしまって――)


(いいんだ。

後で説明するけど、母上の勘違いを真実に変えてしまうね)


 同時に存在していた矛盾さえ

 気づかれなければ、なんとかなる筈。


「それで……あなたとルリさんは……?」


「はい。いずれ結婚を、と考えておりました。

しかし……こうなっては……もはや……

ですので、ルリも母上に尋ねられました時、私との事を言い出せなかったのです。

ですが、私とルリは、こうして生涯 共にいられますので、十分 幸せなのです。

現実的には、独身を徹す事にはなりますが、見守っては頂けませんでしょうか?」


「ダメよ!」


「母上!?」


「アオ、ルリさんにも花嫁衣装を着させておあげなさい。

ちゃんと婚儀をしなきゃダメよ!」


「母上……体が ひとつしか無いのですよ?」


「アオ役は影武者でいいでしょ♪

先日も、そうだったのでしょ?」


「その先の公務にも無理が――」


「なんとかなるわ♪

私なんて、何も公務してないでしょ?」


 そこを堂々と仰られましても……


「任せて♪

キンとハクの婚儀が終わったら、すぐしましょ♪

そうと決まれば、急いで準備しなければね♪」


ミドリはルンルンで飛んで行った。



「アオ、大丈夫なのか?」

ギンが木の陰から現れた。


「どうなんでしょう……」あはは……


「俺が無理強いしたばかりに……

阻止した方がいいよな?」


「いえ……あのルリではありませんが、本当に、今、俺の中にルリがいるんです。

双青輝だったルリが」


「そうか。それで、二人は結婚したいのか?」


「はい。既に結婚したつもりでいます。

父上が、今日いらっしゃる事は予測していましたので、報告しようと思っていたのですが、まさか母上が、城からお出になるとは思ってもいなかったので――」


「俺も、まさか付けて来ているなどと思いもよらなかった。

アイツの気の力は、封じられていたアオより弱いからな。

気は強いんだがなぁ」苦笑。


(アオ、もうひとり『ルリ』がいるのか?)


(うん……俺が女姿になっていた時に、つい、ルリと名乗ってしまったんだよ)


(そうか。そのルリと婚儀を、と王妃様は仰っているのだな?)


(そう。でも、姿は、どちらのルリも同じだから、たぶん問題無いよ)


「まぁ、俺としても、きちんと妻がいると公表した方が、面倒を起こさなくていいと思うぞ」


「面倒?」


「既に、見合い話が、わんさかだ」


「なぜ、王位も継がない俺なんかに?」


「もう残っているのは、お前とサクラだけだからな。

王族と繋がる道が狭すぎるから、集中するさ。

サクラも早目に公表せねばならんからな。

そうなると、アオに一点集中だ」


と~ってもウンザリ顔のアオ。


「だからだ。

この際ミドリの好きなようにさせてやれば、他の兄弟も気が楽になるだろうし、

見合い話の山に埋もれる事もなくなるだろうから、乗ってみてはどうだ?」


「そういう見合い話なら、一生 続きますよね……

それなら、婚儀も仕方ないかな」


(婚儀とは、具体的に何をするのだ?)


(堅苦しい儀式と、国民への御披露目だよ。

ルリが嫌なら、俺が全てやるから、心配しないで)


(アオが花嫁をやるのか?)


(仕方ないだろ……

ルリがやってくれるなら嬉しいんだけど……)


(アオが嬉しいなら、やってもよいが……)


(ただし、横に立つのは影武者だよ?)


(アオは目の前にいるのだから、それでよい。

現実は無理なのだから、我慢するさ)


(工夫は、当然するつもりだよ。

俺だって、ルリが影武者と腕を組むなんて嫌だ)


(そうだな)笑いだした。


(楽しいのかい?)


(真剣に考えるのが、なんだか可笑しくなってしまっただけだ)


(何にせよ、楽しんだ者勝ちかな?)


(そうとも言えるな)


(ルリが、そう言ってくれるなら、やってみるか)


(二人で乗り越える事なら、何でも楽しめるさ)


(よし! 決まりだ。婚儀をしよう!)

「父上、身一つでの婚儀、ルリと共に乗り越えてみせますよ」にこっ


「話し合いの結果は、そうきたか。

双青輝のルリ殿は、流石、器の大きい女性だな」


「あっ、ありがとうございますっ! 国王陛下!」


「おまけに可愛い女性だな♪」


「いや、あのっ、そんな勿体無い御言葉をっ!」


声だけルリだったのを、アオがルリを主にし、ちゃんと女姿(ルリ)になった。


とたんに王の相好が崩れる。


ルリが、慌てたまま真っ赤になって俯いた。


「ルリ殿、アオの事、お願いします」


「はいっ! 私に出来る事、全てを以て尽くす事をお誓い申し上げます!」


「そんなに畏まらなくて構わない。

俺が認めたから、これからは堂々と、その姿で城にも来ればいい」


「父上……それは父上が、この姿をご覧になりたいだけなのでは?」


「バレたか」わはははっ♪


「父上~、ルリは俺の妻なんですからね」


「しかし、アオは今、城に入るには許可だ何だと面倒だろ?

ルリ殿なら、そんなものは要らん。

だから利用すればいい。それだけだ」


「そういう事なら、最大限 利用しますが、『人界の任』それ自体が昔話になるよう、魔界に進みますので 、これからは、そうそう天界には来ませんよ」


「とうとう、魔王と対決するんだな?」


「はい。

兄弟と仲間とルリがいる今こそが、最強の時だと思いますので、

神様の御力を得たら、すぐに魔界へと向かうつもりでいます」





凜「サクラ、ずっとウロウロ何してるの?」


桜「次回は、ちゃんと出るから~」


凜「ふぅん。で、おさらいしたいんだけど」


桜「いいよ~」


凜「竜は普段、人姿なんだよね?」


桜「若い竜は、だいたい人姿。

  お年寄りは、竜体だよ」


凜「『若い』って?」


桜「んとね~

  3000歳くらいまでかな。

  6000歳より上が、お年寄り。

  人姿だとホントに動けないから、

  おっきいけど竜体のままでいるの」


凜「その間は?」


桜「好みだと思う~

  竜は、ずっと大きくなっていくから

  おっきいのヤダってヒトもいるし~

  人姿が衰えていくの見たくないって

  ヒトもいるから~」


凜「サクラ……魔竜王になっても、

  ずっとその話し方なの?」


桜「どぉしよ~ねぇ」えへっ♪


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