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三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
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仁佳西1-岩戸地帯

 前回まで:仁佳と東の戦は終結しました。


 馬車は東の国から、仁佳の西岸に、クロが曲空で移動させていた。


「のぅ、ワラワは、もっと強くなりたいのじゃが、紫苑と珊瑚は、気を読んだりする修行を如何にしておるのじゃ?」


夕食時、姫が紫苑と珊瑚に尋ねた。


「主に瞑想ですが……

母様、確か、この辺りに良い場所があるとか……

以前、社から船に戻る時、仰っていませんでしたか?」


「ええ、幾つか岩戸があるのよ。

岩戸に籠って、気を集中すれば、効率が良くて、格段に高まるわ。

姫様でしたら、風羅(カグラ)の岩戸が良いかしら」


「そこで瞑想すればよいのか?」キラキラ


「では、そちらに向かいましょう」にこっ


「私達にも、合う岩戸があるのですか?」


「今の紫苑と珊瑚には、神楽の風穴が合っているわ。

音は同じだけれど、全然 別物よ。

でも、また東の国に、戻る事になるけれど……」


「どこでも送って行くからな」

クロが旨そうな香りが漂う鍋を持って来た。


「慎玄様には、雷崋(ライカ)の岩戸が良いかしら?」


「私は雷なのですか?」


「ええ、開いてはおりますよ。あとは――」

桜華は慎玄の額に掌を翳すと、術を唱えた。


掌から額へ、光が流れる。


「慎玄様、開いておりますのは、竜の力。

雷は、それに付随している力ですので、竜の力の伸ばし方は、クロ様、お願い致します」


「オレ!? サクラを呼ぼうかな……」


「サクラは、上で忙しいのじゃろ?」


「あ、そっか……じゃ、フジにでも――」


「私が、どうかしましたか?」


「あ♪ また、いいトコに来たなっ♪

慎玄さんの竜の力、引き出してやってくれよ」


「基礎くらいなら……

でも、私も雷ではありませんからね」


「クロ様は、姫様からは、離れてくださいね。

姫様の風の力を伸ばすのですから、供与されると困りますので」


「え……」固まった。


「その気は無くても、兄様は供与してしまいますからね」クスクス


「フジ~、お前なぁ」「その通りでしょ?」

「桜華様までぇ」「過保護ですからね」

「フジ! いーかげんにしろっ!」


「とにかく、クロ様は、修行の間だけは離れてくださいね」


「近くにいらしても、岩戸に籠るのですから、顔も見れませんよ、クロ兄様。

でも……姫様は狙われていますから……

私が護衛致しましょう」


「風羅と雷崋は、近くにありますから、両方お願い致します、フジ様」


「解りました」にこっ


「オレ……何してたらいいんだ?」


「でしたら、アカ兄様の探し物の方をお願いします。

昇龍桜(ショウリュウザクラ)祐貫松(ユウカンマツ)、いずれか一本あればよいそうです」


「何の材料なんだ?」


「護竜宝を本来の目的に使う為の物、としか聞いておりませんが――あっ!

ということは、結心(ユウジン)の弓矢の材料です」


「何するんだ? 本来の護竜宝って」


「神竜と絆を結ぶんですよ」


「ってことは、フジには、もう要らねぇのか?」


「はい。私には、結心の弓矢は不要です」


「姫、どっちかの木、知らねぇか?」


「桜の方は、幻と言われておるからのぅ……

既に、絶えてしもぅておるやもしれぬ。

松の方は、聞いたことも無いわ」


「誰か知らねぇか?」見回す。


「私も、幻の桜としか聞いてはおりません。

東の国の松浄大社の御神木が、松ではありますが……

その松かどうかまでは存じません」慎玄。


「狐の社の近くに、桜の大木がありますが、名前までは……

ただ、種類は沢山ありますよ」


「ハザマの森かぁ」


「もちろん、ご案内致しますよ」


「ありがとうございます、桜華様。

で、特徴とかは?」


「それは、サクラに聞いて欲しいと……」


「まずは、サクラを探さねぇと、かよ~」


「私も、サクラには用がありますので、これから、深蒼の祠に行こうと思っていたのです」


「フジは天界から来たんじゃねぇのか?」


「タツさんの家に置いてある、魔物検知用の竜宝を確認しに行っていたのです」


「そういえば、最近、誰も行ってなかったな。

そういう事だったのか」


「はい。アオ兄様とサクラが、竜宝を組み合わせて作ってくださいました」


「んじゃ、とりあえず深蒼の祠に行くか」


「はい♪」



♯♯♯



 フジを連れてクロが曲空すると、サクラが水槽に光を当てていた。


「どしたの~?」


「昇龍桜と祐貫松の特徴、教えてくれ」


結心樫(ユウジンガシ)の代替え材料だね~

クロ兄、こっち来て」


クロが寄って行くと、サクラは掌をクロの額に当てた。

「こんな木だよ~」掌が光る。


「でもね、どっちも絶滅してるかも。

魔王が、ずっと前に根絶やしにしたから……

だから、あるとしたら見つかりにくいトコ。

ひっそりと生えてたらいいな~って感じ」


「なぁ、この桜……翁亀様の桜に似てねぇか?」


「うん、仲間だよ。翁亀様の桜は降龍桜(コウリュウザクラ)


「てか、サクラが探した方が早いんじゃ――」


「魔界に行かなきゃなんないも~ん。

あるとしたら人界なんだ。クロ兄、お願いっ」


「そっか……解った。

フジは、この後どうするんだ?」


「モモお婆様に呼ばれておりますので、今夜は天界に居ようかと思っています」


「なら、馬車に戻るわ。

ありがとな、サクラ。アオを頼んだぞ」曲空。




「フジ兄、天性 開いたんだね?」


「やはり、これが二つ目なのですね?」


「うん」にこにこ♪


「これも、大器のような気がするのですが……」


「大器だよ。この前 開いたのが『知の大器』。

こっちは、一般的な大器なんだ。

でね、今回のが『技の大器』。特殊なんだ。

『神の大器』って呼ばれてるんだよ♪」


「どのような――あ……聞いても大丈夫ですか?」


「だいじょぶ~♪

その大器に入れた技は、属性とか関係なく使えるんだ」


「ということは……曲空も?」


「使えるよ。

ただし、大器自体を使いこなせるよぉにならないとダメだけどね。

だから最初は、火の技を入れて、どんどん使ってれば、いずれ何でも使えるよぉになるんだよ」


「この天性があるから、サクラはずっと、私に、待てと言っていたのですね……

それで、どうすれば入るのですか?」


「誰かから貰うか、書物から覚えるか~

大器だから、入れる方法は、おんなじだよ。

難度の高い火の技をどんどん吸収してねっ。

また、竜骨の祠に行けば貰えるんじゃない?」


「また……? あっ!?

既に何か入っています! これは――」


「グレイスモーブ様から、でしょ?」


「あ……では、あの時……」


「明日、お礼しに行こっ♪」


「そうですね♪」


「モモお婆様トコに行くの?」


「聖輝煌水の作り方を伝えるだけですので、すぐに、こちらに戻りますよ」にこっ


「うんっ♪ 待ってる~♪」




(サクラ、深神界(フカシンカイ)の鍵、判ったか?)


(ハク兄♪ 東の国にあったよ~♪)


(んじゃ、そっち行くわ)


「お帰り~♪

はい♪ コレ、深神界の鍵♪

琴戴鏡(キンタイキョウ)だよ。

でも……まだ、条件があるのかも~」


「深神界の入り口までは、自力で見つけられたんだがなぁ。

結局サクラ頼りなんて、情けねぇよな」


「そんなふうに思わないでよ~」


「竜宝の王様だもんな」ニヤッ


「それもなんだか……」


「じゃ、博士」ははっ♪


「確かにそぉだけどぉ」むぅ~


「教授♪」ニカッ


「なんで知ってるの!?」


「さっき、護竜剣が教えてくれたんだ♪」


「魔竜王国で竜宝 探すために、仕方なくなったんだよぉ」


「なれるんだから、やっぱ凄ぇよな」


ため息……

「次、交替したら、竜宝の国に行くからね。

護竜槍いる場所 見つけてね」


「ああ、真神界(シンシンカイ)でない事を祈って探すよ」

ハクは笑って曲空した。




「サクラ、ハク兄様がいらしていたのですか?」


「うん♪ フジ兄、おかえり~♪

なんでわかったの?」


「声が反響しているような気がしたのです」


「あ~、そっか。

笑いながら曲空したからだ~」きゃははっ♪


「そうですか」ふふっ♪


「あ♪ フジ兄、こっち来て~」


「はい?」水槽を挟んで向かい合った。


サクラがフジに掌を向け、目を閉じた。

「ん~~~とね……みっけ♪」掌から光が迸る。


「あ……」「スッキリ~♪」「はい……」


「でね~、コレ♪」再び光が迸る。


「これは? 光の技ですか?」ぱちくり


「うん♪ そのうち使えるから~♪」


「ありがとうございます、サクラ。

でも、いいんですか?

こんなに簡単に渡したりして……」


「俺が使えなくなるんだったら困るけど~

いっしょに使えるんだから、困らないもん♪」


「でも、会得には、それなりの修行をしたのでしょう?」


「それはそれ~♪

俺、修行も楽しいも~ん♪

いっぱい火技使わないと~なんだから、フジ兄は、これからガンバらないと~なんだよ。

だから、いっしょ~♪」


「はい♪ それは頑張りますよ♪

あ……慎玄様を伸ばすには、雷技も必要ですよね?」


「そぉだね~。キン兄に頼んどくねっ♪」


「いえ、そのくらいは――」


「説明ついでだから~♪」


「そうですか……」



 キンがアカを連れて現れた。

二人は、雷と火の技を伝授すると、

「頑張れ」と、微笑み、去った。


「キン兄様も……アカ兄様も……簡単に……」


「兄貴達も、み~んな おんなじ♪

フジ兄と いっしょが嬉しいの♪ あ……」


(キン兄♪、アカ兄♪)


(どうしたのだ?)(ん?)


(フジ兄が、感謝色の涙いっぱいポロポロして喜んでるよ♪ ありがと♪)


(そうか。共に頑張ろう、と伝えて欲しい)

(アオもクロも同じだ。貰えばいい)


(うんっ♪)





 フジは、アオの水技も貰った。

アオはまだサクラの中に居る事になっている為、

サクラが小器から伝えたのだが――


桜「フジ兄、いっぱい入ったけど

  だいじょぶ?」

 宙を見詰め、瞳を潤ませているフジに、

サクラは優しい光を当てた。


藤「……あ、もちろんですよ。

  ありがとうございます、サクラ」

 (ありがとうございます、アオ兄様)


青(頑張ってね、フジ)


藤(はい! アオ兄様♪)

 「あ……」抱きつこうとして固まった。


 そう。目の前に居るのはサクラだ。


桜「ん?」小首を傾げる。


藤「いえ……何も……」真っ赤。


桜「あ♪ 外に牆壁で囲い作る~♪」


 フジを引っ張って庭に出た。


桜「ここで、技の練習~♪」


藤「あ……」感激の極み中~


桜「入って入って~♪」押し込む。


藤(……サクラ、ありがとうございます)


桜(がんばるのは、フジ兄だよ~)


藤(はい。頑張りますねっ)


 ひと晩中、嬉々として技を繰り出すフジだった。



桜(やっぱり、フジ兄は、アオ兄が

  だ~い好きなんだね~♪)


青(そう?♪)とっても嬉しそうだ。


桜(俺も~、アオ兄だ~い好き~♪)


青(うん。二人とも大好きだよ。

  って、サクラ!? 何を!? おいっ!)


 ひと晩中、芳小竜を抱きしめ、すりすりするサクラだった。


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