表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第一章 竜ヶ島編
20/429

砂漠編6-ユキ

【】は、口で喋っていない台詞です。

神とか魂とかの身体が無い方々とか、物とか……

そんな方々も、たくさん登場します。

 アオは咄嗟に防御の構えをとったが、剣を持つ右手を、蛟にガシッと掴まれた。


(アオ様、私は正気でございます。

 戦う振りをお願い致します)

蛟の声が頭に響いた。


そして、蛟の記憶が流れ込んでくる――



――――――



 夕食の支度をしていると、唐突に声が聞こえ、黒い靄に覆われ視界を奪われる。


浮遊感――


息苦しく、次第に意識が遠退く……――




 不意に呼吸が楽になる。


宙を切るような風の感じから、飛んでいるらしい事が判った。


 何処に向かっているのでしょうか……?


朦朧としながらも薄目を開けると、視界が明瞭では無いが、夕闇の中に黒い大きな何かが、ぼやけて見えた。


 魔物……でしょうか?


黒い者が何か言っているが、聞き取れない。


口に何かが注がれ――


徐々に意識が明瞭になる。


「……クロ様……」


「戻ったな、蛟。すぐ助けるから待ってろ!」


「ありがとうございます。

 しかし……いずれ倒さねばならぬ魔物の元に向かっている筈でございます。

 このまま……向かわせてください……」


「無茶だろ。改めて(いど)めばいい」


「いえ……」



 押し問答の末、クロが折れる。

「じゃあ、こっちも飲んどけ」蛟の口に注ぐ。


「無理すんなよ。いつでも すぐ行くからなっ」

そう言って 離れた。


蛟は再び黒い靄に沈む――



♯♯♯



 蛟は頬に当たる冷たく硬い感触で目を醒ました。


 石牢でしょうか……?

 ああ、岩山の内側の一室ですね。


戒めがキツく、痺れもあって身動きがとれない。



 何度か女が来て、その度に甘ったるく、ヌルリとした何かを飲まされた。


 何を飲まされているのかは判りませんが、

 クロ様から頂いた薬が効いているようですね。


痺れが薄れてきたので、戒めの具合を見ようとして、やっと自分が人姿でないことに気付いた。


 あれを解くとは……

 かなり強い魔物のようですね。


 飲まされているものは何でしょう?

 毒ではなさそうですが、

 効果も判りませんね……。


 懐いた振りでもしてみましょうか――



 次に女が来た時、蛟は眠った振りをした。

女は膝に蛟の頭を乗せ、ゆっくりと優しく蛟の頭や背を撫でた。


蛟は目を開け、潤んだ瞳で女を見上げ、

「きゅ~」と甘えた声で鳴いてみた。


女は、たいそう喜び、戒めを解き始めた。


 そして、まだ身体の自由が利かない蛟を抱き上げ、女は居室に向かった――



――――――



 ここで蛟が離れ、体勢を整え、再度 咆哮を上げ、向かって来た!


再び、アオの手首を掴む。

(アオ様、陰陽師様方の方に飛ばして下さい)



 アオに飛ばしてもらった蛟は、飛び交う御札を掻い(くぐ)り、今度は、陰陽師達の腕を掴んだ。


(女の前には、見えない盾が有ります。

 攻撃する時には開きますので、髪の鈴に(いかづち)を撃って下さい。

 では、慎玄様の方に弾き飛ばしてください)


 次は、岩陰に隠れている慎玄に尾を当て、体勢を立て直す振りをする。


(魔物の後ろに回り込み、陰陽師様方の雷で、魔物が体勢を崩したならば、魂の浄化をお願い致します)


そして、もう一度、アオに襲いかかった。



 アオと組んだまま動けない蛟に、魔物は、

【まだ、力が足りぬかえ? 待ちやれい】

蛟に向かい、赤黒い塊を放った。


赤黒い塊は、蛟の背に吸い込まれ、蛟は咆哮を上げ、一回り大きくなる。


魔物は、陰陽師や姫に、炎で攻撃しながら、塊を次々と蛟に放つ。


「ワラワのミズチに何をするっ!!」

姫が、炎を掻い潜って、斬りかかった。


(わらわ)のユキじゃ】

ギロリと睨み、更に強大な炎を放つ。


キンッ! 【ああっ!】


炎を避けた姫の刃が、偶然 鈴に当たり、魔物が後退った、その時、陰陽師達の雷が鈴を割った!


よろけた魔物の背後に、慎玄が立ち上がった。


悉皆成仏(シッカイジョウブツ)!!」


魔物は白炎に包まれ、その姿が薄れていった。


凶悪な表皮が剥がれ、白炎に焼かれ消える。

その内から、(いにしえ)の装束を纏った、儚げな女性が現れた。


【悪うはない気分じゃ……ユキ……】

穏やかな表情で、蛟に向かって手を伸ばす。


蛟が近くに寄ると、その頬を撫でながら、

【束の間……ほんに幸せじゃったぞよ。

 ユキ、幸せを――――】


言葉は続いているようだったが、あとは聞こえなかった。


微笑み、蛟を抱きしめると、かすかな影は光の粒となり、天に昇った――


……静寂……――


舞うように昇る光の粒を追い、天を仰ぐ――


 ――ん? 天!?


「崩壊が始まっております!

 皆様! お乗りください!」


 身体を大きくした蛟は、皆を乗せ、岩壁に空いた穴から外へと飛び出た。

蛟の手には、岩壁の玉が、しっかりと握られていた。


岩山は、崩れながら砂に還っていった。




 飛び去る蛟を見送っていたクロは、

「やるなぁ、アイツら。

 んじゃ、ハク兄に頼まねぇとな」

洞窟へと飛んだ。




 その、更に上空から見ていたサクラは、蛟を追って飛んだ。




♯♯ 竜ヶ峰 洞窟 ♯♯


「ふむ……では、蛟殿は無事なのだな?」


「ああ、皆を乗せて飛んで行ったよ。

 それでも、妙なモン飲まされたり、込められたりしてたから、ハク兄が戻ったら診てほしいんだよ」


「解った。伝えておく。

 無事ならば、これを蛟殿に渡して欲しい」


「何だ? これ……」


「それが有れば、天界の千里眼から、アオ達の様子を見る事が出来る。

 長老様方が心配しているのでな」


「ん。解った」


「クロ、アオ達は、今、この辺りなのだな?」


キンは地図を広げ、一点を突いた。


「そうだな……その辺りだ。

 そこから、北の方に飛んだよ」


「そうか。この砂漠の中央付近、ここに宿場街が有ったのだが、今は廃墟だ。

 その、すぐ西に最も高く、大きな岩山が有る。

 そこを偵察して欲しい」


「解った。廃墟の西だな?」


「行けば判る」


「ん。じゃ、行ってくる!」


「ひとりでは突っ込まぬ事、それだけは守るように」


「解ってるって~ 行ってきます!」

クロは元気よく、キンの部屋を出て行った。



「では、キン兄様、追加の薬を作ります。

 回復と解毒で、よろしいでしょうか?」


「フジに任せる。

 私より、ずっと詳しいのだからな」微笑む。





凜「ユキとして、あの妖魔に何したの?」


蛟「えっ!?」


凜「すっごく仲良くなってたよね~」


蛟「いや……それはですねぇ……」


凜「それは?」


蛟「申せません!」


凜「どうして?」


蛟「そ、それは……」


凜「R15じゃ足りないから?」


蛟「いやっ、そのっ! あのっ!」


凜「うん。蛟は大人だもんね~」


蛟「あの……勝手に……そのような……」


凜「じゃあ、言ってみよ~♪」


蛟「無理でございますからっ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ