旅立ち1-東の国
ただの転載――ではなく、38話までは、ボリュームアップして、書き直しています。
最初は、行き当たりばったりでしたので、データなんて残っていなかったんです。
♯♯ 人界 東の国
中の国との国境近くの村の外れ ♯♯
戦での負傷で片足を失い、兵士を引退し、今は、農耕や農具の修理などをして暮らしている男・十左は、夜中に喉が渇き、井戸に向かい外に出た。
「なんだぁ? ありゃ……」
青く輝く美しい何かが、長く尾を引いて、山裾の森に落ちた。
「竜? ……まさかなぁ」
まだ寝惚けてるなぁ……そうに決まってる。
笑いながら水を汲み、喉を潤したが、
「やっぱ、気になるって!」
馬に跨がり、森に向かった。
馬といっても農耕馬なので、森に着いた頃には、空が白み始めていた。
「この辺りだと思うんだがなぁ……」
青く輝く何かを探す十左が見つけたのは――
「おい! お前! しっかりしろ!」
倒れている若者だった。
脈はある。死んじゃいない!
「あの青いのに当たったんだな」うんうん。
そう一人合点し、若者を馬に乗せ、家に戻った。
♯♯♯♯♯♯
それから数日、若者は眠ったままだった。
目を覚ました若者は、アオという名しか覚えてはいなかった。
アオは十左の居候となり、海の向こうの国と戦をしている この国で暮らすため、十左から護身術として槍や剣を習いながら、農耕や農具の修理をして暮らすこととなった。
♯♯♯♯♯♯
そして月日は過ぎ――
いつものように畑仕事をしていると、村の中心部で火の手が上がった。
「十左! 村がっ!」
「村人を逃がしに行くぞ!」
瞬く間に何本もの煙が立ち昇る。
「金の髪は隠しとけって!」
手拭いが飛んで来る。
十左は槍を手に、農耕馬に跨がり駆けて行く。
アオは剣を手に、十左を追って走った。
「これは……魔物かっ!」
戦が、辺境地まで及んだかと思いきや、魔物の襲来であった。
黒々とした魔物達は、国境の山脈の方から来ている。
「都の方に逃げろ!」
逃げ惑う村人に十左が叫ぶ。
二又の分岐で、
「ここで別れるか……アオ、とにかく皆で無事に逃げるんだ」
「いや、でも、その足じゃ――」
「俺を誰だと思ってる?
鬼槍の十左様はヘマなんてしねぇよ♪」
豪快に笑い、より激しく火の手が上がる方に馬を向けた。
「間違っても魔物と戦おうなんてするなよ!」
十左は、そう言いながら馬を駆って行った。
アオは一瞬迷ったが、
確かに、こっちにも行かないと!
十左を追わず、もう一方の道に走った。
アオは山脈側の道を、北に向かって走りながら、村人達を都の方へと誘導した。
おや?
彎曲する道が山脈に近付くにつれ、増えていた魔物の数が不意に減った。
辺りを見回すと、燃えている家々の向こうを、家よりも大きな白い狐が、宙を蹴って横切り、碧の煌めきの尾を引いた。
何かを見間違えたか? 魔物が飛んだのか?
と、炎を回り込むと、魔物と対峙している青年がいた。
青年の前には、魔物達が湧き出てくる闇のように黒い穴があった。
「早く逃げろ!」「早く逃げよ!」
アオと青年は同時に叫んだ。
「私が盾となっているうちに、早く!」
アオに背を向けたまま、青年は術を繰り出している。
「いや、加勢します!」
言い終わる前にアオは、青年に背後から襲いかかろうとしていた魔物に向かって跳んだ。
青年の周りには、複数の白狐が跳び交い、魔物と戦っていた。
さっきの大狐は何処だろう?
最初に見た大きな狐は、以降、姿を見せなかった。
村人を逃がしてくれているんだろうな……。
そう納得し、アオは、青年と白狐達と共に、魔物と戦い続けた。
残り少なくなった魔物達は、闇の穴に逃げていなくなった。
闇の穴が消えて無くなったのを見届け、青年が白狐の頭を撫でると、白狐は白い煙になって消えた。
「剣士殿、ありがとうございました」
青年が頭を下げる。
「いえ、こちらこそ。
村人が逃げることができたのは貴方のお陰です」
アオも頭を下げた。
「この村の方ですか?」
涼しげな紫の瞳が、雅やかに微笑む。
「ええ。村の外れで暮らして……あっ、十左!
もう一人、戦っているんです!」
「急ぎましょう!」「こっちです!」
二人は、十左が向かった方へと走った。
♯♯♯
十左の名を呼びながら、焼け野原をひた走り、逃げている村人達に追いついた。
「十左は? 一緒ではないんですか?」
「十左さん、皆を逃がしたら追いかけるから、って。
大丈夫だから早く行け、って……」
「いないんですか?」
泣きそうになる村人達。
「すみません。見逃しただけだと思います。
もう一度 探しますので、皆さんは、このまま関所に向かってください」
踵を返した。
♯♯♯
村と周辺を隈無く探したが、十左は見つからなかった。
夜になり、なんとか焼け残った十左の家に戻った。
「旅の方、捲き込んでしまって、申し訳ありませんでした」
アオが頭を下げる。
「いえ、急ぐ旅でも、特に目的があるわけでもありませんので。
明日、また探しましょう」
そう言って、また、雅やかに微笑む。
「夜は危険ですから、式神に探させます」
青年が紙片を数枚、宙に放ち、指で空を切ると、紙片は小さな白狐に変わり、四方に跳ねて行った。
「あ、そういえば名乗りもせず……アオと申します」ぺこり
「私は陰陽師なので名乗れないのですが……」
「では、陰陽師殿とお呼びしても?」
「はい」にこり。
♯♯♯♯♯♯
翌日も、その次の日も、その次の日も十左は見つからなかった。
魔物が襲撃してきた目的は自分なのでは?
失った記憶……故意に失わされたとしたら……
十左を探し、記憶を取り戻す為には――
ぐるぐると、ただ考えるばかりで寝付けず、アオは起き出し、井戸の側で夜空を見上げた。
「もう、ここに居ても仕方ないよな……」
翌朝――
「陰陽師殿、十左を探すのを助けて頂き、ありがとうございました。
もう、ここに居ても見つかるとは思えないので、これから十左を探しながら、魔物と戦う旅に出ようと思います」
「それなら、私も……お供しても構いませんか?」
「それは願ってもないことですが……」
「では、参りましょうか」にこり。
こうして、アオの旅が始まった。
『後書き』は、解説や裏話、その他、
登場人物と私が、わちゃわちゃと
話すスタイルで楽しませていただきます。
?「凜、カンタン家系図、これでいい?」
凜「ありがとね~♪ これは、もうちょい後だね。
さっき貰ったのは、プロローグに付けたよ」
?「使ってもらえた~♪ あ、地図は?」
凜「簡単なのでいいよ」
?「ふぅん。じゃ、これで~♪」かきかき♪
凜「四角……」
?「だいたいそぉでしょ?」
誰と話しているのか? は、いずれ――