表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第三章 大陸編
196/429

東の国4-奪還

 前回まで:アオとサクラは、魔王と戦闘中です。


 アオとサクラの光と、魔王の闇が激しく交錯している荒野に、兄弟達が次々と現れた。


「昨日は、よくもナメたマネしてくれたな!!」

クロが領域供与を極大発動した。


【アオ王様、水竜に光を加え、聖輝水を纏わせ、動きを封じましょう!】


(よし! 具現環、頼んだよ!)


蒼牙から放たれた光水竜は、フジが放つ聖輝水を纏い、闇の牆壁を突き抜け、魔王に絡み付いた。


サクラが浄化の光を環にして、魔王に掛け――


フジが聖輝水を豪速に乗せて放ち、闇の牆壁を消すと、光の牆壁が次々と現れ、魔王を取り囲んだ。


聖輝水の激流は、魔王を光の牆壁に磔にし、その動きを完全に封じた。


クロがアカを連れて、魔王の懐へ曲空、アカが闇黒竜を掴み出すと、クロが再び曲空して、アオの体から離れ――


入れ替りに、アオとサクラが懐に曲空し、自身の体を掴み、即、消え――


キンが昇華で高めた光で闇黒竜を浄化し、遅れて開いた闇の穴と共に、煌めく波動で消し去った。


全員、辺りの気を窺う。


「そこだっ!」

キンが光の刃を極迅雷(ゴクジンライ)に乗せ、放った。


同時に、アカが豪速で突進した。


その交点に向かって、フジが放った豪速聖輝水を、クロが暴風撃(ボウフウゲキ)で更に加速させた。


闇黒色の何かが、雷撃と激流を受け、落ちた。

アカが浄禍器に、その何かを捕らえ、蓋をした。


「何捕まえたんだ?」「黒猫だ」


皆、辺りの気を探る。


「もう、この辺りには、邪気は無いな……

クロ、深蒼の祠に頼む」


全員、クロに掴まり、深蒼の祠へ――



 浄化台には大きな水槽が有り、アオの体が水中に有った。

その水槽に、ハクが浄化の光を当てていた。


「供与、頼む」アカが結界を張る。


「フジ、聖水の最上位のヤツ、ここにくれ。

兄貴、浄化 手伝ってくれよ」

ハクが水槽に集縮の水筒を投げ込んだ。

聖輝水が水筒に吸い込まれる。


聖輝煌水(セイキコウスイ)です。入れ換えますね」

フジが掌から聖輝煌水を注いだ。


サクラが奥の祈祷室から現れ、芳小竜のルリを水槽に入れると、ルリはアオの体に寄り添い、光を帯びた。


サクラも光を当て始めた。


【奪還成功ですね。

アオの『闇の傷』を塞ぎます】


「アメシス様、ありがとうございます。

アオの体は無事でしょうか?」

心配色一色のキンが尋ねた。


【外傷は有りません。

内部も、充満している闇が消えれば、アオの魂を戻す事が叶います】


「先ずは浄化するしかないのですね?」


【はい。私達も交替に参りますので、浄化の光を絶やさないようにして下さい】


「解りました。

見張りも兼ねて、常に誰かが居るようにします」


「サクラ、アオは?」ハクも心配色。


「眠ってるよ。

ちゃんと記憶も戻ったし、体から離す前のアオ兄に戻ってるよ。

だから奪還できたんだ」


「そっか……ひとまず良かったな」


「うん。兄貴達、ありがと♪

これで『闇の傷』もなくなったし、もぉ心配ないよ♪」


「なぁ、『闇の傷』って何だ?」

クロがアメシスとサクラを交互に見る。


「うん…………もう大丈夫だから話すね。

アオ兄が囮になって落ちた時――」


「人界の任の、最初の降下の時のか?」


「そう、あの時だよ。

地上に着いた時、アオ兄は魔物に襲われたんだ。

魔物は、おそらく魔王の影で、とても強い呪をかけた魔宝の小剣を投げてきたんだ。


投げた小剣は、三本。

一本はアオ兄自身が、もう一本はヒスイが弾いて、二本とも滅したんだけど、

あとの一本がアオ兄の鳩尾に刺さってしまったんだ。


もちろん、アオ兄も躱そうとしてたから、剣の傷としては、ごく浅かったんだけど……

すぐにヒスイが抜き取って滅したけど……

強い呪は発動してしまったんだ」


「直ぐに発動したのか?」


「うん、すぐにね。

アオ兄の竜の力に呼応するように呪をかけてたから、その場で発動したんだ。

アオ兄の力は凄く強いから、その呪も、凄く強くなってしまって、魔王を引き寄せてしまったんだ。


魔王が、その傷からアオ兄の体に入る寸前、引き寄せる力を断つ為に、ヒスイはアオ兄の力を封印したんだ。

アオ兄の、心の傷を揺さぶって闇に落とし、アオ兄と同化しようとしてたから、もう……そうするしかなくて……


竜の力と記憶、ぜんぶ封印して、闇の傷が塞がるのを待とうとしたんだけど、

呪が強過ぎて、なかなか塞がらなくて……

だからスミレが、アオ兄と俺達を護る為に、神になる事を決めたんだ。


でも……スミレは半神竜だし、竜として――天竜の王妃として生きたから、神になる道は、とても遠くて――」


【ですから、アオを長く苦しめ、サクラにも辛い思いをさせてしまいました。

申し訳なく思っています】


「スミレ♪ 神になったの!?」


スミレは頷いたが、そのまま視線を落とした。

【間に合わなくて……すみません】


「魔王との本当の戦は、これからだから、スミレは間に合ったんだよ!」


【ありがとう、サクラ】薄く微笑んだ。


アメシスがスミレの肩に触れ、スミレが頷いた。

二神は水槽に光を当て始めた。


【キン、浄化を代わります。

皆、一度、しっかり休んでくださいね】


アメシスとスミレが残り、浄化を続けた。


兄弟は、長老の山で休む事にした。


サクラだけは、ソラの様子が分かり、兄達とも連絡がとれるよう、火神子(ヒミコ)山麓の洞窟内の境界で眠った。




♯♯ 馬車 ♯♯


 桜華と慎玄が、姫の浄化をしていた。

偵察の為、帝の宮殿に行っていた紫苑と珊瑚が戻った。


「母様、姫様は如何したのですか?」


「魔王に闇を飲まされたのです。

心配は要りません。浄化すれば元に戻ります」


「クロ殿は、どちらに?」


「天竜様方は、魔王に奪われたアオ様の御体を奪還する為に動いておりますよ」


「それで、アオ殿とサクラ殿は暫く戻らないと……そういう事だったのですか……」


桜華が頷く。

「慎玄様、姫様をお願いしてもよろしいでしょうか?

私共は宮殿に向かいたいのです。

おそらく、そこに、私共を離散させた者が居る筈なのです」


「決着なさりたいのですね?

解りました。こちらは、お任せください。

では、御存分に……」


慎玄は、三人に回復の術を施し、見送った。


妖狐の母子は、東の国の都に向かった。




♯♯ 神界 ♯♯


 修行に励む神竜の魂達を見詰めつつ、母と娘が話していた。


【そう。王子達は、そんなにも強くなっているのね……

だったら、スミレをもっと鍛えなければ、絆竜の方が強くなってしまうわね。

浄化が終わったら、また預かるわね】


【宜しくお願い致します、お母様】


【それにしても、あなた方が供与だけで、手出ししなくても奪還してしまうなんて……

とんでもない天竜だわね】


【そうなの。

神としては、少し恐ろしいと感じるくらいに強いのよ】


【ガーネは、お父様が見込んだ神竜ですからね。

術は術者の力を反映するのだから、当然よね】


【そうね……

次の最高神とすべく育てていたのでしたね。

禁忌など使わずに、お祖父様に頼めば、再誕なんて悩む程の事ではないのに……】


【相談すら出来なかったのよ。

あの迷信さえ無ければ、今頃、ガーネは補佐神として、あなた方と共に――】


【お祖父様からも、それは何度も聞いたわ。

『こんな事になるなら話しておけばよかった』って、いつも仰るのよ。

そんな時のお祖父様は、とてもとても萎んでしまっていて……

見ているのも悲しくなるの】


【悔やんでも悔やみきれないとは、まさしくこの事なのよ。

だからこそ、今度はガーネの子供達を育てたいのよ】


【王子達の絆神に名乗りを上げたのも?】


【王子達もガーネの子供達とも言えますからね。

特にアオとサクラは、ね】


【でも、アオとサクラは、既に――】


【だから、最も近いキンの絆神候補に登録したのよ。

あ♪ あなた方、スミレとヒスイの絆神にお成りなさいな。

スミレとヒスイでは、荷が重いでしょう?

なのに、天竜は一神としか結べませんからね】


【私達がっ!?

いえ、私はともかく、最高神が絆なんて――】


【すぐにとは言わないわよ。

ヒスイが神に成ったなら、そうなさいな。

王子達は、間違いなく、闇の神と戦うわよ】


【そう、ね……きっと対峙するわね……

それなら、それしかなさそうね……】


【いっそのこと、あの二人を神にしてしまったら?

それだけのものを持っているわよ】


【お母様……】さすがに、それは……




♯♯ 深蒼の祠 ♯♯


 アオの体を浄化しつつ、二神が話していた。


【えっ!? 本当に!?】


【はい♪】


【それじゃあ……】


【そうなのですが……

まだ秘密という事で、お願いします】


【ヒスイには?】


【気付いていると思います】


(あの……)


【兄様っ!?】


(内緒話でしたら、俺には聞こえないように、お願いします)


【ずっと聞いてたの?】


(いや、眠っていたから、聞いていないけど、声で目が覚めてしまったんだよ)


【神にしか聞こえない筈なんだけど……】


(そうなんですか? アメシス様)


【ええ、そのつもりでした】

【どうして、私の言葉を信じてくれないのぉ?】


(スミレは成ったばかりだからね)


【もおっ、兄様ってば、酷いんだからぁ】


(その呼び方は、やめようね)


【あ……つい……】


(すみません、アメシス様。

こんな伯母ですけど、ご指導お願い致します)


【私も成ったばかりですが】


(これまで、お世話になってきて、その御力は十分に知り得ておりますので)


【ねぇ、兄さ――いえ、アオ】


(何?)


【どこにいるの?】


(それも分からないのかい?)


【この中ですよね?】【ええっ!?】


(そうです、アメシス様。

スミレ、もう一度、修行してきたら?)


【酷いんだからぁ!】



 最初は苦笑を浮かべていたアメシスだったが、どう聞いていても、甥と伯母ではなく、兄と妹な会話を、一晩中、楽しんでしまったのだった。





赤「クロ、何故、馬車に行かぬ?」


藤「そうですよ、クロ兄様」


黒「アカ、フジ、そうは言うけどなぁ――」


白「姫様にゃあ、その記憶は無えって

  サクラが言ってたろ?

  お前が行かなくて、どーすんだよっ」


金「アオの事ならば任せよ。行かぬなら――」


黒「キン兄、恐ぇし……ハク兄っ、痛っ!

  アカ! ヤメろって!

  フジ!? ソレ、軟膏じゃねぇかよ!」


 こうして、クロは追い出されましたとさ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ