東の国2-王立大学
前回まで:姫が襲われ、
クロは闇に堕ちそうになりました。
♯♯ 魔竜王国 王立大学 ♯♯
サクラは上空からソラの様子を見ていた。
あれが宝物館かな?
博物館みたく大きいね……
光ってるってことは、
何か探してるモノがあるんだね。
そろそろ、布石像の腕輪できたかな?
でも……どぉやって渡したらいいんだろ……
考えつつ、
講義中の今なら無難だよね……
境界の洞窟に曲空した。
(アカ兄、できた?)
(ああ)
天界に曲空し、受け取り、
「ありがと♪」急いで戻った。
大学に置いた布石像に曲空すると――
上空に穿たれた闇の穴から、魔物が湧き出ていた。
闇の穴の直ぐ前に曲空し、光の球をブチ込む!
救えるなら救いたいからっ!
先ずは全力で治癒の光を波紋状に拡散する。
半減っ! 残りは本物だからっ!
浄化の光を、矢のような鋭い線状にして、続けざまに放ちながら高速回転した。
光に当たった魔物が弾けて消える。
それでも下へと抜けた群れに向かって、波動を溜めて放った。
あと少しっ!
地上には建物や木々が有るので、曲空し、地を蹴る時、人姿になり、
三眼と四眼を両手に持って、翼のように後ろに広げ、舞い斬りながら宙を蹴り、昇った。
おしまいっ!
魔物の気が無くなった事を慎重に確かめ、竜体に戻り、元に戻った魔人達に、極大の治癒と浄化を合わせた光を放ち、到着した魔竜軍に治療方法を伝え、託した。
そして、急いで上空に昇ろうとしたが――
「サクラくん!」
見つかっちゃった……
今度こそ気付かない振りをして、曲空で逃げようとしたが、さすがに連発し過ぎて、発動できなかった。
あちゃ~
飛ぶしかない……
「待ちなさいよ!!」大声を上げ、迫って来る。
コレ、気付かなかったなんて……
言えないよねぇ……
諦めて振り返った。
「先生が、お礼を言いたいって……
王子だとは言わないから……お願い」
「でも……俺、あんまり接触したく――」
「探し物って何?
もし、竜宝なら、魔宝学の先生だから何か知ってるかもしれないわ」
「魔宝……」
「ね? 来てよ」
ここで話し続けるのもマズいよね……
「わかった。ありがと」
魔宝学の教授室に向かいながら、
「私だって、住んでた人達が、みんな、いなくなった街や、焼け野原になってしまった街があるって知ってるわ。
ここも……そうなる所だったんでしょ?」
確かに、そぉなったかもしれないけど……
それは俺のせいで、君が狙われてるからで……
あ……とりあえず、コレ渡さないと――
「どこを狙ってたのかは分からない。
もしかしたら、ソラちゃんかもしれない。
俺と接触したから……ごめんね。
だから……コレ持ってて欲しいんだ。御守」
布石像の腕輪を差し出した。
「キレイね♪ ありがとう♪」ニコニコ♪
「手でも足でもいいから、ずっと身に着けてて欲しいんだ」
「うん」頷いて、手首に着けた。「嬉しい……」
これで、ソラちゃんに危険が及んだら
察知できるし、すぐ助けに行ける。
「ずっとだよ」にこっ
「うん。外さない」頬を染める。
ソラは大切そうに何度も布石環を撫でていた。
――が、不意に顔を上げ、立ち止まった。
「ここよ」
魔宝学の教授からの、何かお礼がしたい、という言葉に甘え、大学の宝物館が見たいと言ってみると、快く案内して頂ける事になった。
「宝物館には、魔宝だけでなく竜宝も沢山ございます。
ただ、竜宝に関しましては、専門的に研究している者がおりませんので、説明などは出来ないのですが――」
魔宝学教授が宝物館の扉を開くと、竜宝が一斉に輝いた。
「これは……何事……」魔宝学教授が立ち竦む。
「私に呼応しているのです。
実は、よくある事なのですが……」あはは……
(竜宝達、どぉしたの?)
竜宝達が口々に語りだした。
その殆どが、使って欲しい、修繕して欲しい、だったが――
(待ってね。俺、勝手に触れないからっ)
「あっ! 三眼!?」
三眼が、勝手に背の鞘から抜け、浮き上がり、どこかに飛んで行こうとしている。
(ちょっと! みんな、落ち着いてっ!)
刃が半分しかない剣が、奥から飛んで来た。
「えっ!? 蒼牙!?」受け止める。
これ……蒼牙だけじゃない……
この気は、竜?
……間違いない! 竜の女性だ!
誰が蒼牙に込めたんだろ?
この女性は、いったい誰?
……あっ! もしかしたら――
蒼牙を見詰め、考え込んでいると、魔宝学教授が学長を連れて来た。
「その剣は……?」魔宝学教授、ぱちくり。
「奥から、飛んで来たんです」ソラ。
「兄が使っていた剣なのです」サクラ。
「貴方様は――」学長が目を見張る。
サクラが、教授からは見えないように、サッと口の前に指を立てる。
「本当に光っていますね」学長は話を変えた。
「竜宝が同調する……
竜宝には、お詳しいのですか?」
「多少は……」
「耕運鐸を御存知ですか?」
(耕運鐸、いる?)
たくさんの輝きが一斉に消え、ひとつだけが明滅し始めた。
(来て♪)
耕運鐸が飛んで来て、サクラの掌に乗った。
「農耕用の天候調整器なのに、お蔵入りはツラいね……」
埃を払い、浄化の光を当てた。
あ、浄化で、汚れもキレイになるんだ……
「ほう……
それは、私が天界から持ち込みました、唯一、存じております竜宝なのです。
当学には竜宝の研究者が居りません。
是非とも名誉教授職をお引き受け頂けませんか?」
「いえ……それは……」とっても困り顔。
「授業などは、なさる必要は御座いません。
ただ、肩書きだけ……出来ましたら、竜宝の解説を標して頂ければ有難いのですが。
当学の教授でしたら、ここの出入りと、持ち出しは、ご自由で御座いますので」
出入り、持ち出し自由……それは魅力的……
気持ちが、ぐらりとした時、再び竜宝達が一斉に輝き、騒ぎだした。
(わ、わかったからっ! 待って!
みんな、落ち着いてっ!)
「他の大学や博物館などの宝物館の方にも、声をかけさせて頂きますが、如何でしょう?」
竜宝達、とっても大騒ぎ。
「有り難く、引き受けさせて頂きます……」
竜宝達から大歓声!
「リジュン先生がいらっしゃったら、さぞかし大喜びしたでしょうに……」
魔宝学教授がボソッと言った。
「リジュンさんを御存知なのですか!?」
リジュンさんは魔竜じゃないのに、
ここで出てくるなんて……凄い方なんだ……
「あ……他大学の教授なのですが、魔宝研究の第一人者なのです」
「リジュンさんはご無事です。
今は天界で療養されていますよ」にっこり
「良かった……それは本当に良かった……」
教授は涙を流して喜んだ。
手続きの為に、学長に付いて出ようとした時――
三眼が、再び鞘から抜け、飛んで行った。
(どこ行くの?)付いて飛ぶ。
三眼に呼応して、何かが光る。
「これは!」三眼の大玉が有った。
三眼と大玉を持って、学長の所に戻る。
「どうぞ、お持ち下さい」
お礼を述べ、大玉を三眼に込めた。
三眼が歓喜の光を放つ。
「あと少しだね。三眼」なでなで
三眼が返事をするかのように強く瞬いた。
(ぜんぶ集めたいんだね?)もう一度、瞬く。
サクラは三眼を掲げ、両手に気を込めた。
「一緒に集めようね」術を唱える。
三眼の輝きが増していき、どこからともなく玉が飛来し、漂った。
(これで全部?)三眼と玉が瞬く。
「みんな、元の場所に戻って♪」
漂っていた玉が、三眼に吸い込まれるように収まった。
「良かったね~、三眼♪」なでなで♪
学長は、その様子を微笑ましく見ていたが、あとの二人は、ただただ驚いていた。
学長室に向かう。
魔宝学教授とソラは、それぞれ次の授業に向かった
【サクラ王様、ありがとうございました】
(あ、三眼♪ 話せるよぉになったの?)
【はい。力を取り戻しまして御座います】
(そ♪ よかったぁ~♪
これからもヨロシクねっ♪)
【力の限り、尽くさせて頂きたく存じます】
(もおっ、友達だからぁ、フツーに話してよぉ)
【いえ、それは……】
【私共は、竜の為に存在しております。
故に、尽くせる事こそが生き甲斐なので御座います。
主を得る。それこそが幸福の極みなので御座います】
(四眼までぇ……
じゃあ、話し方は仕方ないけどぉ、友達は決定だよっ!)
【サクラ王様……】揃って静かになった。
(三眼? 四眼?)
【あまりに有り難く】【勿体なき御言葉にて】
【感涙が止めどなく】【申し訳ございません】
(背中、冷たっ!!
ホントに泣いてるのっ!?
なんで、剣が涙!?
ちょっ! 泣かないでっ!!)浄化っ!
学長室に着いた。
竜宝を探す為とは言え、教授なんかに
なってしまったサクラくん。
学生より、ずっと若いので、どう見ても
公園代わりに遊びに来たコドモです。
桜「ひっどいなぁ。
俺、竜宝学博士なんだよぉ」むぅ
凜「いたの!?
忙しさに輪をかけて大丈夫なの?」
桜「どぉだろね~
でも、竜宝 探し易くなるし~
ソラちゃん 護り易くなるでしょ♪」
凜「確かにねぇ。
でも、無理はダメよ~」
桜「だいじょぶ~
俺、若いも~ん♪」
凜「あっそ」
桜「凜、何歳?」
凜「え!? 非公開よっ!」
桜「ふぅん……」
凜「サクラより、ずっと若いわよっ!」
桜「そりゃそ~でしょ。人なんだから~
で? あ、逃げちゃった~」




